Daily Archives: 2025年11月14日

解雇428 経歴詐称等を理由とする解雇が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、経歴詐称等を理由とする解雇が認められた事案を見ていきましょう。

Aston Martin Japan事件(東京地裁令和6年11月27日・労判ジャーナル159号48頁)

【事案の概要】

本件は、イギリスに本社を置く自動車メーカーの日本法人であるY社との間で期間の定めのない雇用契約を締結した元従業員Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金等の支払、Y社がした解雇は無効であり、不法行為に当たるとして、これによる精神的苦痛に相当する200万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

損害賠償請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件解雇の理由として、Xが、〔1)英国籍であるにもかかわらず日本国籍であると偽ったこと、〔2〕前職における年間給与総額が約600万円にすぎないのに約700万円であると述べたこと、〔3〕経歴書に前職における地位(役職)が「デジタルプロジェクトマネージャー」であると記載したこと、〔4〕前職において秘密情報の持出しを行ったにもかかわらず、その事実を否認する本件誓約書を提出したことを主張するが、いずれも就業規則所定の解雇事由に該当すると評価することはできないか、仮に該当すると評価するとしても、これらをもって直ちに解雇につながる事由であるとはいえないから、本件解雇は客観的に合理的な理由があるということはできず、また、Y社がXを即日解雇とした時点においては、Xの経歴詐称や前職における情報の持出しを疑っていたにすぎない段階であり、Xに対してY社のかかる疑念を明示的に説明した上でその言い分を聴取するなどの手続も経ていないことや、Y社による書類の追加提出の求めに対し、その対応に不誠実な点があったとは認められないこと等を踏まえると、本件解雇が社会通念上相当であると認めることはできない。

2 Xは、本件解雇及び本件予備的解雇は不法行為であり、これにより精神的苦痛を受けたと主張するが、本件解雇及び本件予備的解雇は無効であるものの、解雇手続が別途Xに対する不法行為となるほどの違法性があるとは認められず、またXには賃金請求が認められることからすると、Xにおいてさらに填補すべき損害があるとは認めることができないから、Xの損害賠償請求は理由がない。

解雇に至る手続の履践が不十分であったことが敗因の1つとされています。

解雇をする際は、事前に顧問弁護士に相談をするようにしましょう。