おはようございます。
今日は、機密情報へのアクセス等を理由とした解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。
Velocity Global Japan事件(東京地裁令和6年9月25日・労判1330号69頁)
【事案の概要】
(1)Xは、解雇が無効であると主張し、Y社に対し、Y社との間の雇用契約に基づき、次の各請求をしている。
ア 雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
イ 令和5年1月支払分の賃金及びこれに対する支払期日の翌日以降の法定利率による遅延損害金の支払
ウ 令和5年2月から判決確定日まで各月支払分の賃金及びこれらに対する各支払期日の翌日以降の法定利率による遅延損害金の支払
(2)Xは、Y社による解雇が不法行為に当たると主張し、Y社に対し、不法行為に基づき、損害賠償金及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降の法定利率による遅延損害金の支払を請求している。
【裁判所の判断】
1 解雇無効
2 Y社は、Xに対し、75万2349円+遅延損害金を支払え
3 Y社は、Xに対し、令和5年2月から本判決確定の日まで、毎月末日限り50万円+遅延損害金を支払え
【判例のポイント】
1 Y社は、本件解雇の事由として、XがY社の顧客であるA社のサーバー内の資料にアクセスし、当該資料に記録された情報を業務以外の目的で使用しようとしたとして、このXの行為は就業規則49条12号及び13号に該当する懲戒事由であると主張する。
しかし、Xがアクセスした資料に記録された情報を業務以外の目的で使用しようとしたと認めるに足りる証拠はない。
2 Y社は、Xがその業務との関係でアクセスを許されているのは原則として日本市場における治験業務関連の資料のみであり、それ以外の資料については業務との関連が薄いと主張する。
しかし、Xは、A社の日本における既存顧客及び新規顧客に対する営業活動を担っていたのであって、将来の顧客の要望に備えてA社の業務に関する幅広い知識を得ることは業務の一環といえる。実際に、顧客の要望に応じて説明や資料提供をする対象事項は治験部門に限られていなかったと認められる。そうすると、Xがアクセスした資料については、治験部門以外のものを含めて、Xの業務との関連が薄いとは認められない。
社内規程等でアクセス権限が明確化されていない場合、業務目的か否かは解釈になってしまいます。
日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。