おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。
今日は、更新回数1回の契約社員の雇止めの有効性に関する裁判例を見ていきましょう。
SBモバイルサービス事件(東京地裁令和7年1月15日・労経速2588号35頁)
【事案の概要】
Xは、Y社と有期雇用契約を締結していたが、Y社は、令和2年7月31日の契約期間満了をもって当該契約を終了させるとの対応をした。本件は、XがY社に対し、以下の請求をする事案と解される。
(1)本件麗止めが無効であるとして、XがY社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び令和2年8月1日から令和5年7月31日までの賃金717万3360円の支払
(2)令和2年8月1日から令和5年8月1日までの期間について、同一労働には同一賃金が支払われるべきであるとして、B社グラフィックデザイナーとXの賃金を比較した差額261万8640円の支払
(3)Y社において、パワーハラスメントを受けたとして、不法行為又は債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、損害賠償金2302万1570円(休業損害528万0390円、治療費・交通費195万9100円、パワハラ慰謝料300万円、逸失利益873万2080円、入院代慰謝料115万円、後遺障害慰謝料290万円)並びにうち休業損害及び治療費・交通費の合計723万9490円に対するXがパワーハラスメントにより適応障害との診断を受けたとする日である令和2年1月20日から年6%の割合による遅延損害金の支払
(4)厚生年金使用者負担分相当額65万8800円及び入社祝い金3万円の支払
(5)傷病手当金を受給していた際にY社から控除された1万7795円の支払
(6)A社の就業規則及びY社の知的財産に関する就業規則の開示
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件雇用契約が更新後に期間満了となる令和2年7月31日の時点において、更新の回数は1回で、約期間は通算で9か月にすぎない。また、更新に際しては、新たに雇用契約書が締結されており、同日の時点において、本件雇用契約の終了が期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視することはできず、本件雇用契約は労働契約法19条1号には該当しない。
さらに、前記の事情に加え、Xの令和元年11月19日から同年12月2日までの「WEB スキル基礎研修」の達成率は考しくなく、本件雇用契約の更新後も、Xの業務等の状況は芳しくなく、他の同僚がXに割り振られた業務を引き取る事態が発生しており、復職後も、クルーの「ランク1」にも達しないと判断される状況であったのであるから、本件雇用契約の更新後に期間満了となる令和2年7月31日の時点において、Xに契約の更新の合理的期待があったとは認められず、本件雇用契約は労働契約法19条2号に該当しない。
したがって、本件雇止めは有効であり、本件雇用契約は今和2年7月31日の経過により終了したものと認められる。
よって、Xの雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認請求、賃金の支払請求及び雇用が継続していることを前提とした同一労働同一賃金を根拠とする金員の支払請求はいずれも理由がない。
原告本人訴訟のため、主張や争点の整理が大変であったことが伺えます(上記事案の概要「以下の請求をする事案と解される」)。
更新回数が少ない事案であっても、上記のとおり、雇止めの合理的理由が存在することをしっかりと主張立証する必要がありますので、油断してはいけません。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。