Monthly Archives: 2月 2026

解雇433 解雇無効判決後の自宅待機命令の違法性等(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、解雇無効判決後の自宅待機命令の違法性等に関する裁判例を見ていきましょう。

西日本総合保険事件(福岡高裁令和6年6月25日・労判1337号79頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結したXが、Y社に対して、〈1〉雇用契約に基づき令和4年7月分から同年10月までの各月の未払賃金+遅延損害金の支払、〈2〉雇用契約に基づき令和4年11月から雇用契約終了までの間、毎月25日限り16万8000円の賃金+遅延損害金の支払、〈3〉雇用契約に基づき令和2年4月分から雇用契約終了までの間、毎月25日限り図書カードNEXT1000円分の交付、〈4〉賞与に係る期待権侵害(債務不履行又は不法行為)に基づき令和2年12月から雇用契約終了までの間の賞与相当損害金+遅延損害金の支払、〈5〉違法な自宅待機命令等(不法行為)に基づき慰謝料等及び同割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、上記〈2〉、〈3〉、〈4〉のうち、判決確定日の翌日以降に履行期が到来する部分について、将来請求に係るもので訴えの利益がないとして訴えを却下し、上記〈4〉のうち、令和2年12月から令和3年12月までのものについて訴訟上の信義則に反し不適法であるとして訴えを却下し、上記〈1〉の請求を認容し、その余の上記〈2〉のうち令和4年11月から令和5年1月までの賃金の一部及び遅延損害金の支払並びに同年2月から判決確定までの間の月額賃金16万8000円及び遅延損害金の支払を認容し、その余を棄却し、その余の上記〈3〉、〈4〉の請求及び上記〈5〉の請求はいずれも理由がないとして棄却した。

【裁判所の判断】

1 本件控訴及び附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
(1) 本件訴えのうち、本判決確定の日の翌日から毎月25日限り16万8000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める部分、本判決確定の日の翌日から毎月25日限り図書カードNEXT1000円分の交付を求める部分、令和2年12月25日、令和3年6月25日及び同年12月25日限り各10万8550円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める部分、本判決確定の日の翌日から毎年6月25日及び12月25日限り各10万8550円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める部分をいずれも却下する。
(2) Y社は、Xに対し、本判決別紙未払賃金一覧表の「未払賃金額」欄記載の各金員+遅延損害金を支払え。
(3) Y社は、Xに対し、令和6年4月から本判決確定の日までの間、毎月25日限り16万8000円+遅延損害金を支払え。
(4) Y社は、Xに対し、55万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 当裁判所も、本件自宅待機命令は、当初は業務上の必要性があり、Y社に対する不法行為を構成するものではなかったと判断する。
しかしながら、Y社は、もともと令和4年7月中にはXに復職後の担当業務を伝える予定であったものであり、にもかかわらず令和5年6月30日時点で本件自宅待機命令は1年にも及んでいるもので、上記の事情があることを考慮しても、Y社としては、同日までには検討を済ませ、Xを復職させていて然るべきであったといわざるを得ない。
したがって、本件自宅待機命令は、令和5年7月1日をもって、業務上の必要性を欠く違法なものとなっており、Xの雇用契約上の地位を脅かし、その人格権を侵害するものとして不法行為を構成するに至っているといわざるを得ない。

2 本件自宅待機命令が不法行為に転化した令和5年7月1日以降、Y社は月額16万8000円の賃金を支払い続けていることなども総合考慮すると、令和5年7月以降、Xが本件自宅待機命令により被った精神的損害に対する慰謝料としては50万円が相当と判断する。また、弁護士費用としては5万円を認めるのが相当である。

業務上の必要性を欠く自宅待機命令は、仮に賃金を支払い続けていたとしても、不法行為となり得ますのでご注意ください。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

本の紹介2224 資格試験「半年・独学」勉強法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

このような本を数冊読むと、王道の勉強法がわかってきますね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

何か目標を達成しようと決めたときには、それに対するお金の投資は惜しむべきではありません。とくに書籍代や知識を得るためにする投資は、長い目で見ると非常にいい自分への投資と考えることができます。」(54頁)

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解雇432 調査協力指示違反等を理由とする普通解雇が有効された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、調査協力指示違反等を理由とする普通解雇が有効された事案を見ていきましょう。

X社事件(東京地裁令和7年2月7日・労経速2589号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され特定有料老人ホームの施設長等を務めていたXが、Y社に対し、雇用契約に基づき、①令和3年4月16日付でした同年5月30日をもって普通解雇する旨の意思表示が無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②本件解雇前に支払われた令和3年4月分及び同年5月分の給与につき、されるべきであった昇給がされなかったと主張して、支払われた賃金と昇給後の賃金との差額1万円(各月5000円)+遅延損害金の支払、③民法536条2項に基づき、本件解雇後の賃金(令和3年6月分から本判決確定まで。ただし令和3年から令和6年まで毎年4月に月額5000円の定期昇給がされたとした場合の賃金額。)及び賞与(令和3年夏季から令和5年冬季)+遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの上記各業務命令違反行為のうち、特に本件調査協力指示違反については、Y社の従業員に対する安全配慮義務の履行を困難にするものと言わざるを得ず、企業秩序の維持に重大な影響を与えたといえる。また、本件立入禁止命令違反についても、これまで良好な関係を維持していた重要な取引先である本件医療法人及びXグループとの関係を破壊しかねないものであり、実際、Y社が、本件病院から、口頭での叱責にとどまらず、院長名義の書面での抗議を受けたことからしても、その影響が小さいとはいえない。
したがって、違反の程度が軽度であるとは到底いうことができない

2 また、Xは、Y社から本件訪問1に係る報告書の提出を求められた際、B専務に対し、激しい口調で「よくこういうメールが来れるなと。報告書出せと。親分(判決注:A会長)のこと助けに行ったのが。」、「Aも守れない人たちだったら辞めたらどうですか。」と述べ、本件訪問1はA会長の妻であるDの依頼でA会長を助けたのであるから何ら問題はなく、むしろ報告書を出すように命令する社長やB専務がY社を辞めるべきである旨の発言をし、その後、報告書を求める理由(本件病院で混乱が生じたと聞いており、今後、本件訪問1について病院側から詳細な説明を求められた場合の対応として必要であること)を説明した上で出した2度にわたる提出命令に対しても、「報告書を提出するのであればDに提出する」などと独自の見解を述べてこれを拒否した。
また本件立入禁止命令のわずか3日後に本件訪問2を敢行し、その理由として、A会長の親族から「A会長が快適に療養生活を送れるよう、医師及び看護師の医療的ケアの及ばない精神的なケアをするように個人的に依頼」されたと回答し、「貴社がその内容をあれこれ詮索すべき範疇を超えていると考えられます。」として、Y社が本件訪問を制限する理由もなければ、報告を求める権限もないとの考えに固執し、全く歩み寄りの姿勢を見せることがなかった

3 さらに、本件調査に当たっても、Y社から、本件調査委員会が中立性及び公平性に配慮して組織されたこと、及びY社に安全配慮義務違反がなかったとの結論を得るためにはXによる事実・資料の提示が必要であることを説明され、協力を指示されたにもかかわらず、不公正な調査が行われているとの考えを変えることなく、本件調査委員会への協力を拒み、本件接触行為に至ったといえる。
このようなXの姿勢は、本件調査委員会による調査結果が出された後、Y社から、本件調査委員会の調査における言動やそれによってY社や役職員に与えた影響等について、どのように受け止めているかを回答するよう求められた際、「事前に関係者への接触については、株式会社Xより、禁止されていませんでした」、「お会いしてくれた方は自らの意思で応じてくれました。」、「私の言動が貴社や役職員へどのような影響を与えたのでしょうか。」と述べるなど、本件解雇に至るまで変わることがなかったと言わざるを得ない。
そうすると、Xは、今後も、Y社からの指揮命令に対し、自己の考えに固執し、歩み寄りをせず、これに従わない可能性が相当程度あると言わざるを得ない

4 さらに、Y社は、全従業員が60名程度の中小企業であり、東京本社(従業員8名程度)、本件秘書室、本件施設及び北海道A市にて営業する「グループホームX」で構成されているところ、Xが本件ハラスメント言動及び本件不適切言動をしたと認識している以上、Xを本件施設及び同様の介護施設である「グループホームX」に配置することはできず、本件秘書室も、本件病院が了承しないため、配属の可能性はない。そして、上記各業務命令違反はいずれも、Xを東京本社に配属し、社長及びB専務が上司として業務上の指揮命令を直接に及ぼす体制のもとにおいて生じたことからすれば、Xを配置可能な他の部署は見当たらず、配置転換によって解雇を回避することも困難であったと認められる。
そうすると、Y社において、今後も予想される、XがY社の指揮命令に従わないことによる業務上の支障を回避するために取り得る手段は乏しいものと評さざるを得ず、普通解雇という手段を選択することも、やむを得ないものであったと解される。

解雇事案においては、業務命令違反行為の悪質さのみならず、上記判例のポイント2、3のような視点も忘れないようにしましょう。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。 

本の紹介2223 一生モノの勉強法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

京大の鎌田先生の勉強法に関する本です。

いかに勉強時間を捻出するか、あらゆる勉強の基礎となる「読む力」の大切さ等が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ノンフィクション作家の佐野眞一さんは、日本人に『読む力』が衰えていることを危惧しています。佐野さんによれば、『読む』というのは、ひとり読書にとどまらず、相手の気持ちを『読む』、あたりの気配を『読む』、将棋の手を『読む』ことにも通じているといいます。つまり『読む力』の減退は、単なる『活字離れ』などという次元を超えた由々しき問題であるということなのです。」(113頁)

読む力に限らず、書く力も、です。

AIの進化によって、私たち人間の基礎的な力は日々、衰える一方です。

もはやAIがないと何もできない、という時代になろうとしています。

人間がメイン、AIがサブというのはファンタジーで、実際はその逆です。

みなさんが思い描く10年後の未来は明るいでしょうか。

労働時間120 労働者が服務規律に定める時間外勤務手続きを履践していなかったとしても、使用者が労働者の時間外勤務について認識・容認していたことから、黙示の時間外勤務命令があったとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、労働者が服務規律に定める時間外勤務手続きを履践していなかったとしても、使用者が労働者の時間外勤務について認識・容認していたことから、黙示の時間外勤務命令があったとされた事案を見ていきましょう。

幸手市事件(さいたま地裁令和7年5月16日・労経速2589号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y市の職員であるXが、Y市に対し、①時間外勤務手当の未払があると主張して、Y市職員の給与に関する条例に基づき、124万8592円(未払時間外勤務手当117万2324円と+遅延損害金、②労基法114条に基づき、付加金112万3683円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、118万9195円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、付加金107万5198円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、令和元年6月頃にも担当業務の処理に困難を来してA社会福祉課長に相談し、C主席主幹にXの担当業務の一部を引き取ってもらったことがあったが、業務負担軽減効果は一時的なものにとどまったこと、A社会福祉課長は、Xの記入のある休日登庁簿に承認印を押印することなどを通じ、Xの休日登庁の状況を把握していたと考えられ、また、令和2年3月の期末面談の際も時間外勤務命令簿によって命じられた時間外勤務の多さをXに指摘していることからすれば、Y社は、この頃までにはXが業務を遂行する上で他の職員と比較して多くの時間外勤務を要する傾向があることを認識していたものと認められる。
そして、Xの請求期間である令和2年度も、B社会福祉課長は、申し送り等によりXの上記勤務傾向を把握していたと考えられ、時間外勤務命令簿によって命じたXの時間外勤務の長さや休日登庁簿の確認を通じてXの週休日等における登庁状況を認識していたことはもちろん、日常的なXの勤務状況を事実上認識していたと考えられる。これにもかかわらず、Y社は、Xについて、業務軽減対策をとるなどの対応をしていないのであって、時間外勤務命令簿によって命じられた以外の時間外勤務についても、これを認識して容認しており、Xに対しては黙示の時間外勤務命令があったものと認めるのが相当である。
以上によれば、Xは、命令権者の指揮命令下において、時間外勤務を行ったものと認められるから、時間外勤務手当が発生することとなる。

これでは、黙示の時間外勤務命令が認定されてもやむを得ません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2222 東大×ハーバードの岩瀬式!加速勉強法#2(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

勉強法にとどまらず、人生全般についての著者の考え方が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『キャリアとは偶然の積み重ねで構築されていくものであり、そのつどチャンスだと思うことに全力で向かっていく過程こそがキャリアだ』と捉えるのです。」(155頁)

いわゆる「プランド・ハップンスタンス」(Planned Happenstance:計画された偶然性)というやつです。

久しぶりに聞きました(笑)

年を重ねて、過去を振り返ると、この理論がよくわかります。

目の前で起こる「偶然」をチャンスだと思えるかどうか。

そのチャンスを掴めるかどうか。

そのための準備を日頃からしているかどうか。

この過程こそが「キャリア」なのです。

賃金298 株式会社の労働者に対する賃金未払いについて、代表取締役の任務懈怠を認め、会社法429条1項に基づく損害賠償責任を認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、株式会社の労働者に対する賃金未払いについて、代表取締役の任務懈怠を認め、会社法429条1項に基づく損害賠償責任を認めた事案を見ていきましょう。

MAGUMOほか事件(東京地裁令和7年3月31日・労経速2502号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の経営するラーメン店の営業に携わっていたXが、XとY社との間には雇用契約が成立しているところ、令和元年8月分から令和3年1月分までの賃金が支払われていないと主張して、①Y社に対しては、雇用契約に基づく未払賃金請求として、各支払を求め、また、②Y社の代表者であるY2に対しては、会社法429条1項の任務懈怠責任に基づく損害賠償請求として、各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

 Y社は、Xに対し、596万1420円+遅延損害金を支払え。
 Y2は、Xに対し、540万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 株式会社の取締役は、会社との委任関係に基づき、会社に対して、善管注意義務(民法644条)及び忠実義務(会社法355条)を負い、法令等を遵守して会社のため忠実にその職務を行わなければならないところ、労働基準法は、使用者に対して賃金の全額払いを義務付けている(労基法24条)。そして、本件において、Y2には、Xに対する1年半もの長期間にわたる賃金の未払につき任務懈怠があり、かつ、その点について少なくとも重過失があったと認められる。 

2 Y2には任務懈怠につき少なくとも重過失があり、会社法429条1項により、Xに生じた損害を賠償すべき責任を負うところ、Xが現時点まで未払賃金の支払を受けることができておらず、しかも、Yらが本件訴訟の追行を放棄したというべき経過もあることを踏まえると、本件においては、XがY社に対して未払賃金の支払請求権を有しているという点を考慮しても、Xには、未払賃金相当額(540万円)の損害が生じているというべきである

会社と代表者が各自、未払賃金相当額についての損害賠償責任を負うとされています。

すごいですね・・。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2221 「勉強脳」をしつける勉強法#2(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

「しつける」、すなわち、習慣化することの大切が説かれています。

良くも悪くもすべては習慣です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

時間をしっかり守っていれば、忙しい状態のなかにゆとりが生まれてきます。生徒でも遅刻癖がある子はいつも心にゆとりがないために、勉強に集中できません。」(56頁)

いつも何をやるのもぎりぎりという人は、きっといろんなことがいっぱいいっぱいなのだと思います。

いわゆるキャパオーバーの状態です。

見ていて、ゆとりというか余裕がありません。

でも、そんな人にチャンスは訪れません。

だって、ただでさえいっぱいっぱいなのに、新しい扉を開ける余裕などないのですから。

いつも予定にも心にも余白を残しておくと、新しいチャンスを掴む余裕が生まれます。

労働時間119 ITシステムにスケジュールを登録していたこと等を考慮して事業場外みなし制の適用を否定した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、ITシステムにスケジュールを登録していたこと等を考慮して事業場外みなし制の適用を否定した事案を見ていきましょう。

ファミリーテック事件(東京地裁令和7年1月17日・労経速2587号33頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、以下の各金員の支払を求める事案である。
(1) 雇用契約に基づき、割増賃金801万6858円(令和3年12月分から令和5年8月までの割増賃金)+遅延損害金
(2) 労基法114条の付加金として、673万6848円+遅延損害金
(3) 雇用契約に基づき、246万9820円(令和4年2月分から令和5年8月分までの未払賃金238万3600円、同年6月から同年8月までの立替金8万6220円の合計)+遅延損害金

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、106万2646円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、始業時に工事現場に直行することが多いものの、Xを含む従業員のスケジュール(原告については、工事名、業務の内容及び場所)が、事前にサイボウズに登録されており、変更がある場合はその旨を記入することになっていた。また、Y社は、Xを含む、現場にいる従業員に携帯電話等で連絡することができたことに加え、従業員が使用する携帯電話に位置情報共有アプリである本件アプリが入れられており、Y社は、従業員の位置情報を把握することができた。Xは、現場から直帰することもあるが、その回数は多くなく、多くはY社本社に帰社し、業務を行っていた
これらの事情によれば、Xが事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難い場合(労基法38条の2第1項本文)に該当するとはいえず、Xに事業場外みなし労働時間制が適用される旨の被告の主張は採用できない。

2 XとY社の間で、本件雇用契約とは別に、業務委託ないし請負契約が締結されていなかったと認められ、営業報酬は、Xの本件雇用契約における労務の提供による対価としての賃金と認めるのが相当である(なお、Y社代表者は、営業報酬がXの業務上の成果に応じて支払われる歩合であるかのような供述もするが、営業報酬について、Xの労働給付の成果に応じて一定比率で定められている仕組み等が存在したと認める証拠はないから、営業報酬は、労働基準法施行規則19条1項6号の「出来高払制その他の請負制」の賃金であるとは認められない。)。

上記判例のポイント1と同様の理由から事業場外みなし労働時間制の適用が否定されている事案は枚挙に暇がありません。

安易にみなし労働時間制を導入することはやめましょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。