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有期労働契約131 1年間の有期雇用契約の試用期間該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、1年間の有期雇用契約の試用期間該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

TBWA HAKUHODO事件(東京高裁令和7年4月10日・労判1338号5頁)

【事案の概要】

Xは、令和4年3月1日から、Y社において、雇用期間を1年間、年俸450万円(月額37万5000円)とする契約社員として勤務していた(本件労働契約。本件労働契約の雇用形態、労働条件等については、後記のとおり争いがある。)。XとY社は、令和5年1月頃以降、本件労働契約の更新について交渉していたが、合意に至らなかった。その後、Xは、本件労働契約における雇用期間が満了した令和5年3月以降も引き続きY社において就業していたが、同年7月11日以降は就業していない。
本件におけるXの請求の要旨は次のとおりである。
(1) 本件主位的請求
本件主位的請求は、Xが、本件労働契約における1年間の期間の定めは試用期間を定めたものであり、本件労働契約は期間の定めのないものであって、試用期間経過後の令和5年3月1日からは正社員相当の賃金である年俸600万円(月額50万円)の請求権を有すると主張して、Y社に対し、
〈1〉年俸600万円で期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、
〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月分から本判決確定の日までの賃金月額50万円+遅延損害金の支払並びに
〈3〉令和5年3月分から同年6月分までの未払賃金合計50万円(月額賃金50万円と同37万5000円の差額の4か月分)+遅延損害金の支払を求めたものである。
(2) 本件予備的請求1
本件予備的請求1は、Xが、民法629条1項により本件労働契約は期間の定めのない労働契約として更新されたと主張して、Y社に対し、
〈1〉年俸450万円で期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、
〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月分から本判決確定の日までの賃金月額37万5000円+遅延損害金の支払を求めたものである。
(3) 本件予備的請求2
本件予備的請求2は、Xが、仮に民法629条1項による更新後の労働契約が1年間の期間の定めのあるものであるとしても、令和5年3月以降は労働契約法19条2号に基づき引き続き更新されている、又は仮に民法629条1項による更新自体が認められないとしても、本件労働契約は令和5年3月1日頃に明示若しくは黙示の合意により1年間の期間の定めのある労働契約として更新されており、令和5年3月以降は労働契約法19条2号に基づき引き続き更新されていると主張して、Y社に対し、
〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、
〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月分から本判決確定の日までの賃金月額37万5000円+遅延損害金の支払を求めたものである。

原審は、Xの主位的請求について、〈1〉Xが、Y社に対し、年俸450万円(毎月37万5000円)の支払を受ける期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月から本判決確定の日まで、毎月25日限り、37万5000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員の支払を求める限度で認容し、その余の主位的請求を棄却した(予備的請求1及び同2の各請求は、いずれも、認容された主位的請求の範囲内の請求である。)。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Y社が、Xに対し、本件労働契約の試用期間中である令和5年2月28日までに、本件労働契約について1年間の期間の定めのある契約として更新することを申し入れたことは認められるものの、これをもって、Y社が本件労働契約において留保された解約権を行使したと認めることはできない(なお、Y社がXに対して、契約期間について定めのある雇用契約書を交付したのは、上記試用期間経過後の同年3月1日以降のことである。)。
かえって、Xは、令和5年3月1日以降同年7月10日までの間、引き続きY社において就業していたことが認められるのであって、客観的に合理的な理由が認められる状況にもないことも考慮すると、Y社が、試用期間中に留保された解約権を行使したとは認め難いと言わざるを得ない。
したがって、Xが、Y社に対して、本件労働契約の試用期間の満了前に、本件労働契約における留保解約権を行使した事実を認めることはできない。

2 (原審:東京地裁令和6年9月26日)
本件においては、〈1〉Y社において、従前、正社員として採用する者に対しても、原則として最初の1年間は契約社員として期間の定めのある労働契約を締結し、この期間が経過した時点で適任と認められた者に限り、期間の定めのない労働契約を締結して正社員として雇用するという採用方法をとっており、これを変更した令和元年5月以降も、一定の場合には上記と同様の採用方法をとることが可能であったこと、〈2〉本件オファー面談の際、Y社の人事局長であったCが、Xに対し、本件労働契約における1年間の期間の定めが試用期間を設けるものであり、1年後には正社員となる旨の説明をしたこと、〈3〉Xは、これを踏まえて内定を受諾し、もって本件労働契約が成立したことが認められる。
これらの事情からすると、本件労働契約における1年間の期間の定めについては、Xの適性を評価・判断する趣旨・目的で設けられたものと認められるから、上記期間は、契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。
したがって、本件労働契約については、1年間の試用期間中における解約権が留保された、期間の定めのない労働契約であるというべきである(最高裁昭和48年12月12日、最高裁平成2年6月5日参照)。

有名な論点ですが、上記判例のポイント2は非常に重要ですので、しっかりと押さえておきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。