Daily Archives: 2026年3月11日

配転・出向・転籍60 出向命令の有効性と自由な意思に基づく同意(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、出向命令の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

図書館流通センター事件(東京地裁令和7年6月26日・労経速163号2頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であって令和2年7月1日から現在までa株式会社へ在籍出向しているXが、Y社に対し、Xのa社への出向は、XとY社との間の本件に先立つ訴訟で成立した訴訟上の和解の履行として、同日から令和5年6月30日までを出向期間とする出向命令に基づき行われたものであるが、その後の同年7月1日から令和8年7月25日までに出向期間を延長して再度された出向命令は、権利を濫用したものとして無効であると主張し、現在、a社において勤務する労働契約上の義務のないことの確認を求めるところ、これに対してY社が、Xのa社への出向はX、Y社及びa社の間で令和2年7月1日に成立した個別の出向合意に基づき現在まで有効に行われていると反論するとともに、仮に令和5年7月1日以降の出向がXの指摘する再度の出向命令に基づくものであったとしても、同命令は権利を濫用したものとはいえず有効であると反論し、Xの上記確認請求を争う事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件同意書は令和2年7月1日付けであるものの、Y社からXへの本件同意書の交付は、Y社の人事部長であるBによって本件辞令1と同時にXに行われていたものであって、しかも、その交付時に、Bは、Xのa社への出向に関して、出向期間が無期であることを含め、出向期間に関して特段の説明を行っていなかったことが認められる。出向期間の有無やその長さは出向する労働者にとって重要な要素であることに加え、Y社において、「出向期間は当年7月1日から令和5(2023)年6月30日までとするが、延長することがあるものとする。」との記載がされた本件辞令1をXに交付しておきながら、前件和解の履行として、Xとの間で、敢えて本件辞令1の上記記載と異なる内容として出向期間を無期とする個別の出向合意をするのであれば、単に本件同意書の契約期間欄の「2020年7月1日~」との表示のみならず、出向期間を無期とすることについての十分な説明を尽くした上でXの同意を得なければならないところ、Y社においては、本件同意書の上記交付時を含め、本件訴訟に至るまで、Xのa社への出向期間が無期であることの説明をしたことはなかったことが認められる。
そうすると、仮にY社において前件和解に至る経緯の中で出向期間を無期とすることがXとの間で共通認識となっているとの認識があったとしても、XがそのようなY社の認識を理解して自由な意思に基づく同意として本件同意書に署名及び押印をしたとは認められない
したがって、XとY社及びa社との間で、Xのa社への出向に関し、本件同意書により、本件辞令1の出向期間の記載と異なった無期の出向合意が成立したとは認めることができない。

ここでも「自由な意思に基づく同意」の有無という判断枠組みが用いられています。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。