配転・出向・転籍60 急性前骨髄球白血病に罹患した従業員の職場復帰に当たり、配転命令を発令したことが有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、急性前骨髄球白血病に罹患した従業員の職場復帰に当たり、配転命令を発令したことが有効とされた事案を見ていきましょう。

トーカイ事件(東京地裁令和7年2月18日・労経速2591号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、Y社が病院リネンサプライや病院運営の周辺業務を受託していた病院であるA大学病院内のY社の病院駐在事業所において勤務していたXが、Xを本件事業所からY社のシルバー事業本部東部第一営業部東京営業課(勤務場所・Y社東京支店)へ配転する旨のY社の命令は、配転命令権の濫用に当たり無効であると主張して、Y社に対し、Xが東京支店において勤務する本件雇用契約上の義務がないことの確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの職場復帰について、主治医意見は、就労について医学的な問題はなく、感染症のリスクもないというものである一方、産業医意見は、本件事業所が本件大学病院内にあるという特殊性を踏まえ、職場異動が必要であるというものであった。しかるに、本件配転命令発令時点において、本件産業医について、その資格や能力等の点について問題があることをうかがわせる具体的な事情が存在し、かつ、それをY社が認識していたことを認めるに足りる証拠が存在しないことを踏まえれば、Xに対する安全配慮を考慮して本件配転命令を発令することにしたY社の判断は、Xが本件配転命令に強く反対していたことを考慮しても、使用者が負う雇用契約上の安全配慮義務に照らし合理性を有するものであって、事業の合理的運営に寄与するものといえる。
以上によれば、本件配転命令には業務上の必要性が存するものと認められる。

2 確かに、Xが、令和3年5月6日、本件事業所に関して、時間外手当未払やパワーハラスメントについて、J労働組合への電話を通じて、被告に内部通報を行い、その結果、Y社が従業員に対して約1000万円の未払賃金の支払いをすることになったことが認められるが、本件配転命令には業務上の必要性が存するものと認められるから、前記事実をもって直ちに、被告が原告に対する報復措置として本件配転命令を発令したと推認することはできない。
かえって、以下の事情に照らせば、本件配転命令は、Xに対する報復措置ではない可能性が高いものというべきである。すなわち、Xは、B大学病院のY社の事業所で勤務していた頃から、労働者の権利を守るために様々な活動をしていたが、そのようなXに対して、当時のY社の役員が、本件大学病院は非常に特徴があって、なかなか癖のある大学なので、「おまえ(Xを指す)のようなタフな男でないと務まらないので是非(本件事業所での勤務を)やってほしい」という趣旨の話をしたことが認められる。このような役員の言動は、Y社として、Xの労働者の権利を守るための活動について敵視していたことはなく、Xの行動力について一定の評価をしていたことをうかがわせるものである。この事情に加えて、X自身、本件事業所で勤務するまで、Y社から敵視されているとの認識はなかった旨供述していること、本件配転命令以外にY社がXに対して不利益な措置をしたことを認めるに足りる証拠はないこと等の事情も併せ考慮すれば、Y社がXを敵視していたとはいい難く、本件配転命令が原告に対する報復措置であったと推認することは困難である。
以上によれば、本件配転命令が不当な動機・目的をもってなされたものであるとは認められない。

上記判例のポイント1のように、主治医と産業医で意見が異なることは珍しくありません(むしろよくあることです)。

その場合に、会社としてどちらの意見に基づくべきかを検討する必要があります。

本件では産業医意見に基づき配転命令を行ったことに合理性が認められましたが、どんな場合でもそのような結論になるとは限りませんので注意が必要です。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。