労働時間120 労働者が服務規律に定める時間外勤務手続きを履践していなかったとしても、使用者が労働者の時間外勤務について認識・容認していたことから、黙示の時間外勤務命令があったとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

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今日は、労働者が服務規律に定める時間外勤務手続きを履践していなかったとしても、使用者が労働者の時間外勤務について認識・容認していたことから、黙示の時間外勤務命令があったとされた事案を見ていきましょう。

幸手市事件(さいたま地裁令和7年5月16日・労経速2589号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y市の職員であるXが、Y市に対し、①時間外勤務手当の未払があると主張して、Y市職員の給与に関する条例に基づき、124万8592円(未払時間外勤務手当117万2324円と+遅延損害金、②労基法114条に基づき、付加金112万3683円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、118万9195円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、付加金107万5198円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、令和元年6月頃にも担当業務の処理に困難を来してA社会福祉課長に相談し、C主席主幹にXの担当業務の一部を引き取ってもらったことがあったが、業務負担軽減効果は一時的なものにとどまったこと、A社会福祉課長は、Xの記入のある休日登庁簿に承認印を押印することなどを通じ、Xの休日登庁の状況を把握していたと考えられ、また、令和2年3月の期末面談の際も時間外勤務命令簿によって命じられた時間外勤務の多さをXに指摘していることからすれば、Y社は、この頃までにはXが業務を遂行する上で他の職員と比較して多くの時間外勤務を要する傾向があることを認識していたものと認められる。
そして、Xの請求期間である令和2年度も、B社会福祉課長は、申し送り等によりXの上記勤務傾向を把握していたと考えられ、時間外勤務命令簿によって命じたXの時間外勤務の長さや休日登庁簿の確認を通じてXの週休日等における登庁状況を認識していたことはもちろん、日常的なXの勤務状況を事実上認識していたと考えられる。これにもかかわらず、Y社は、Xについて、業務軽減対策をとるなどの対応をしていないのであって、時間外勤務命令簿によって命じられた以外の時間外勤務についても、これを認識して容認しており、Xに対しては黙示の時間外勤務命令があったものと認めるのが相当である。
以上によれば、Xは、命令権者の指揮命令下において、時間外勤務を行ったものと認められるから、時間外勤務手当が発生することとなる。

これでは、黙示の時間外勤務命令が認定されてもやむを得ません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。