Author Archives: 栗田 勇

賃金146 出向手当は固定残業代として有効?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、出向手当は固定残業代の性質を有しないとされた裁判例を見てみましょう。

グレースウィット事件(東京地裁平成29年8月25日・労経速2333号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社に対し、労働契約に基づき割増賃金、交通費等の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求の一部を認容

【判例のポイント】

1 時間数を示さず、固定残業代の金額を示すことでも特段の事情がない限り固定残業代によらない労働契約、労働基準法37条等に基づく通常の計算方法による残業代の金額と比較することは可能であり、固定残業代では不足があるときには法定の計算方法による割増賃金との差額を支給すべきことには労働契約上に特別の定めを要しないことにかんがみると、時間数の明示や差額支給の定めは要しない

2 Y社の就業規則における交通費貸付けの定めは、実質的には労働契約の不履行につき、支給済みの交通費と同額の違約金を定めるものにほかならず、交通費が必ずしも多額にならないことを考慮しても、労働者の足止めや身分的従属の創出を助長するおそれは否定できず、労働基準法16条の賠償予定の禁止に違反し、その効力は認められないというべきである。

3 就業規則の内容が労働契約成立時から労働条件の内容となるためには、①労働契約成立までの間に、その内容を労働者に説明し、その同意を得ることで就業規則の内容を労働契約の内容そのものとすること、又は②労働契約を締結する際若しくはその以前に合理的な労働条件を定めた就業規則を周知していたこと(労働契約法7条)を要する。
ただし、上記②の場合は労働契約で就業規則と異なる労働条件が合意されている部分は、就業規則の最低基準効(同法12条)に抵触しない限り、労働契約が優先する(同法7条但書)。労働契約で用いられている用語につき、就業規則が一般に理解される意味とは異なる特別の意味で用いているからといって、就業規則での特別の意味で解釈することは労働者と使用者の個別の合意による労働契約の内容を使用者のみの制定による就業規則に基づいて変更し、就業規則を優先させることに等しく、使用者による労働者に対する労働条件の明示義務(労働基準法15条)及び理解促進の責務(労働契約法4条)並びに労使の対等な立場における合意原則(労働契約法1条、3条1項、8条、9条本文、労働基準法2条1項)の趣旨に反し、労働者に対し予測可能性なく労働条件を押し付ける不意打ちにもなりかねないから、労働契約締結以前にその就業規則も示して、就業規則の内容が労働契約そのものとなり、労働契約の用語を就業規則での特別の意味で用いることが労働契約に取り込まれたといえる上記①の場合に当たらない限り、労働契約法7条但書の趣旨に従い、その労働契約はやはり一般に理解される意味で解釈されるべきである(就業規則の最低基準効に抵触する場合は除く。)。

固定残業制度の有効要件について、上記判例のポイント1を参考にしてください。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介777 裸の錬金術師(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
裸の錬金術師〜今すぐ人生を大逆転させる魔法の言葉81〜

タイトルはあれですけど、内容はとても良い本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

部屋が散らかってきていてもすぐ片付けられず、溜めて溜めてようやく片付け始める人。こういう日常的な癖はビジネスにも出る。・・・私は気づいた瞬間に行動に移すようにしている。当然めんどうだと思うことはあるけど、ここで怠けたら一般人のままだと思い、すぐ行動する。そして、成功している人ほど他人のそういう行動力をよく見ている。彼らは日頃から即行動しているので、他人の行動力も気にするのだ。」(89頁)

何度かブログでも書いてきたことですが、特に机の上は心を映す鏡だと思います。

いろんな書類が山積みにされ、散らかり放題散らかっている人は、心に余裕がないのでしょう。

中には、乱雑に書類が置かれていても、どこに何があるかわかるからそれでいい、という人もいるでしょう。

そのような人にまで何かを言うつもりはありませんが、少なくとも上司や同僚からは「だらしない人」「仕事ができない人」という評価をされるのは止めようがありません。

上司としては、重要な仕事をこんな人にはとても怖くて任せられないのです。

派遣労働26 派遣先における面談後の不採用と損害賠償請求の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、派遣先における面談後の不採用に対する損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

バックスグループ事件(東京地裁平成29年6月7日・労判ジャーナル71号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用契約の締結を申し込んだ派遣労働者Xが、Y社に対し、Y社がXと雇用契約を締結する前に派遣労働者の就労予定先であるA社の担当者と派遣労働者を面接させたうえ、A社の意向を理由としてXを採用しなかった旨主張し、かかる経緯に照らせば、A社とY社は実質的には労働者派遣契約を結んでおり、Y社が派遣労働者に本件面接を行わせ、本件面接の結果派遣労働者を不採用としたことは、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(以下、告示37号)に違反し、Xに対する不法行為に当たるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料95万円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、不法行為の根拠として告示37号違反を主張するところ、告示37号の目的は、労働者派遣法の施行に伴い、労働者派遣法に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることに鑑み、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることであり、労働者派遣事業と請負との区分に関する基準であるから、事業者(使用者)に関する何らかの義務を定めるものではなく、本件においてXが指摘するY社の各行為について、告示37号違反による不法行為を認めることはできない

2 本件面接について、労働者派遣法が禁ずる事前面接に当たるとのXの主張は、派遣先による特定行為を禁止する労働者派遣法第26条6項に違反する旨の主張とも解されるところ、同項は「派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」と規定しており、いわゆる努力義務にとどまると解される上、その義務の主体は「労働者派遣の役務の提供を受けようとする者」であるから、仮に本件面接が同条項の特定行為に当たるとしても、それによって直ちにXの個々具体的な保護法益が侵害され、その責任をY社が負うとは認め難く、Y社が本件面接を行わせたこと自体がXに対する不法行為に当たると認めることはできず、さらに、契約締結自由の原則により、一般に企業には従業員の採用に当たって広範な裁量が認められるところ、同項の趣旨及び本件に顕れた一切の事情を考慮しても、Y社がXを採用しなかったこと自体が権利濫用に当たるとも認め難いから、Y社はXに対し不法行為責任を負わない。

特段異存はありません。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介776 人生の「師匠」をつくれ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
人生の「師匠」をつくれ!

どんなものからでも学ぶことができますよね。

大切なのは受け手側の意識です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『今、私を試していますね。頼まれごとは試されごと。見ていてください。あなたが思ってもいなかった速さで、あなたが思っている以上にピカピカに、このフロアを磨き上げてみせます!私の仕事は、あなたの予測を上回ることです』どんな雑用だろうと使い走りだろうと、すべてこの心意気で、一生懸命やるのです。何も考えずにただモップを握る人より、ずっときれいに掃除ができるでしょう。」(34頁)

これが結果を出す人の意識です。

掃除をするように命じられたときに、こう考える人とこう考えない人の差は計り知れません。

一事が万事、この意識の差が出てしまうのです。

「やらされている」という受け身の意識からは何も生まれません。

すべての頼まれごとは次の仕事につながる試されごとなのです。

掃除の仕方を見て、この人間は信用できるかどうか、大切な仕事を任せても大丈夫かどうかを見ているのです。

不当労働行為193 組合員の配転、賃金減額と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、申立外会社からの受注業務削減を理由として組合員3名を配転したこと、および同人らの賃金を減少させたことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

大分運送事件(大分県労委平成29年9月29日・労判1170号89頁)

【事案の概要】

本件は、申立外会社からの受注業務削減を理由として組合員3名を配転したこと、および同人らの賃金を減少させたことが不当労働行為に当たるかが争われた事案を見てみましょう。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 申立外会社からチャーター便業務の寝具部門に係る集配車両を減車する旨通告されたため、Y社は余剰となった従業員の配置転換を行うことは困難と判断し、全従業員に対して希望退職の募集を行っており、当該募集手続において、Y社は、組合員・非組合員を区別していないことが認められる。

2 さらに、当該減車が行われた後、結果的に非組合員のみが申立外会社の寝具部門を新規に受注したCに採用されたが、誰を採用するかは同社の自由意思に委ねられる性質のものであるので、同社から告げられた移籍予定の従業員に対し、Y社は異論を述べる立場にはないと考えられる。
これらのことに鑑みると、Y社には本件配置転換を行うに当たり業務上の必要性があったとみることができ、手続においても相当であったとみることができる。

組合員と非組合員を区別していないということがとても重要です。

そして、区別していないということを裏付ける証拠をしっかり持っておくことがとても大切です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介775 1日1つ、なしとげる!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
1日1つ、なしとげる! 米海軍特殊部隊SEALsの教え

著者は、米海軍特殊部隊SEALsとして37年のキャリアをもつ海軍軍人の方です。

原タイトルは「MAKE YOUR BED   Little Things That Can Change Your Life…And Maybe the World」です。

毎日、小さなことを完璧にやること、それを毎日継続することの大切さを説いています。

とてもいい本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

SEALsの訓練の場には、鐘が用意されています。宿舎などがある施設の中央に吊り下げられた真鍮製の鐘で、訓練生なら誰でも見えるところにあります。訓練を投げ出したくなったら、この鐘を鳴らすだけでいいのです。この鐘を鳴らしさえすれば、朝5時に起きなくていいし、凍てつくような冷たい海で泳ぐ必要もありません。鐘を鳴らしさえすれば、長距離走も障害物コースも体力訓練もなくなり、辛く苦しい訓練に耐える必要もありません。そう、鐘を鳴らせばいいのです。
でも、世界を変えたいのなら、絶対に、間違っても鐘を鳴らさないでください。」(146~147頁)

そういうことなのです。

成功したいのなら、鐘を鳴らしてはいけないのです。

毎日、弱い弱い自分との闘いなのです。

小さなことの積み重ねでしか、人生を変えることはできません。

多くの人が途中で投げ出してしまうことを最後までやり続けられるかどうか。

成功したい人は、間違っても鐘を鳴らしてはいけません。

不当労働行為192 労組の受け入れがたい提案への固執と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、労働協約改定を議題とする団交において、労組の受け入れがたい提案に固執して労働協約を失効させた会社の対応が支配介入に当たるとされた事案を見てみましょう。

セコニック事件(東京都労委平成29年5月9日・労判1167号146頁)

【事案の概要】

本件は、労働協約改定を議題とする団交において、労組の受け入れがたい提案に固執して労働協約を失効させた会社の対応が支配介入に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

支配介入にあたる

【命令のポイント】

1 これらY社の主張する理由は、第3条と組合案第48条以外は全て合意している労働協約の締結を拒否する理由としては、極めて説得力に乏しく、また、これらの条項と、就業規則との重複解消、時間内組合活動の無給化など合意済みの事項が相互に密接不可分であって、全てが合意に至らない限り労働協約を締結しても無意味であるとの事情も認められず、Y社の説明する上記理由がY社が部分合意を拒否する真の理由であったとは、およそ考え難い
むしろ、Y社の頑なな態度から、Y社は、組合が会社案に同意しないことの報復として、合意している部分を含めて本件労働協約全体を失効させ、もって組合の弱体化を企図したものといわざるを得ない

2 したがって、Y社が、組合に対し、本件ユシ協定を解約するが、組合員の範囲を制限する規定は維持するという、組合が受け入れられない労働協約の改定案を提示し、その条件に固執した結果、本件労働協約の失効に至ったことは、組合運営に対する支配介入に該当する

上記命令のポイント2のやり方には十分注意しましょう。

会社としては支配介入という認識はないとしてもこのように判断されてしまいますので。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介774 自分を安売りするのは“いますぐ”やめなさい。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
自分を安売りするのは〝いますぐ″やめなさい。

自分の価値を高めるためには、どのような習慣を身につければよいのかが書かれています。

自分を商品として認識している人は自然にやっていることが多いです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

個性を発揮するのは基礎基本が身についたあとの話であって、大して仕事ができないうちに言うことではありません。中途半端な人ほど個性を気にします。本当に仕事ができる人は、個性よりも仕事の成果を優先するものなのです。徹底的にパクるときのコツは、成果を出している人、1人に絞ることです。まずあなたの師匠と言えるような存在を探してください。なぜかと言えば、複数人から学ぼうとすると迷ってしまうからです。」(193頁)

同意見です。

いろいろな人のいいところを真似することはいいのですが、

基礎基本となる考え方、仕事のしかたについては1人のメンターからしっかり学ぶほうがいいですね。

個性なんて結果として出てくるものであって、個性をどうこう言っている暇があったら成果を出すことに専念すべきです。

日々、努力を続ける。

それを365日休まず続ければ、自然と成果が出ますので。

不当労働行為191 団交における使用者の説明と誠実交渉義務違反(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、日々雇用労働者である組合員2名の賃上げに関する団交における会社の対応が不当労働行為とされた事例を見てみましょう。

千代川運輸事件(東京都労委平成29年5月23日・労判1167号144頁)

【事案の概要】

本件は、日々雇用労働者である組合員2名の賃上げに関する団交における会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 損益表は、Y社が、Y社の総勘定元帳等から、本件事業部門における車両1台当たりの売上げと経費の平均のみを抜き出し加工した資料であるところ、Y社は、損益表の基となる資料等から何ら組合に示していないので、組合は、損益表だけではその数字の真偽及び内容を十分に検討することができない。現に、損益表の売上げと経費には、運送業務以外の倉庫管理業務の売上げや、管理業務に従事する人の給料も含まれていたことが、本件審査手続において明らかになったが、Y社はそうした説明も一切していない
したがって、損益表やY社の5月1日付回答書や5月21日の団体交渉における説明は、本件事業部門に限ってみても人件費総額や運転手の平均年収の推移等の分かる資料の開示等を求める組合の要求に対し不十分なものであったといわざるを得ない。

2 さらに、本件団体交渉当時、Y社全体では黒字であり、このような状況下で実施された団体交渉において、賃上げ余力はない旨を説明していたのであるから、自らのかかる説明を裏付ける根拠として、組合の要求する4点の資料を全て提示するかどうかはともかくとして、少なくとも、組合が他部門を含むY社全体の経営状況と、その内訳としての本件事業部門の収支状況を正確に把握した上で、その内容を分析、検討して交渉に臨めるだけの資料を提示するなどして説明を行う必要があったというべきであり、損益表を提出して本件事業部門について説明したことをもって、組合の団体交渉に誠実に応じていたということはできない。

誠実交渉義務とは、換言すれば、会社が説明を尽くすということなので、賃上げをするかどうかということよりも、賃上げをしない理由を説明することが求められているのです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介773 群れない。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
群れない。 ケンブリッジで学んだ成功をつかむ世界共通の方法

サブタイトルは「ケンブリッジで学んだ成功をつかむ世界共通の方法」です。

個人的には、「日々努力することを継続すること」、「人が休んでいるとき、遊んでいるときに努力すること」が成功をつかむ世界共通の方法だと思っています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間が生きるとは、ひたすら死に向かって生きていることに他ならない。死を意識すると、人生が有限という事実に、目を向けざるを得なくなる。その意味でも成功者は、群れているヒマなどないってことを理解している。キミもやたらと群れることで時間の垂れ流しをしてはいけない。一時間は誰にとっても同じ一時間だが、どう使うかで、その価値は大きく変わってくるからだ。」(159~160頁)

会合や同業者の集まりで群れていて、いいことなんてほとんどありません。

ただなんとなく定例会だから出ているにすぎないのですから。

時間が無限に続くのであればともかく、限りある貴重な時間を無駄なことに使いたくないのです。

モッタイナイ。

自分が大切だと思うことのために大切な時間を使いたいのです。

だからできる限り、会議や集まりには出席しないと決めています。