Author Archives: 栗田 勇

解雇251 解雇が有効な場合の社宅の明渡しと使用料相当損害金の支払い(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、解雇無効地位確認等請求と社宅明渡等請求に関する裁判例を見てみましょう。

日経大阪中央販売事件(大阪地裁平成29年7月7日・労判ジャーナル67号14頁)

【事案の概要】

本件は、新聞配達業等を営むY社の元従業員Xが、Y社から解雇の意思表示を受けたが当該解雇は無効であるとして、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認とそれを前提とした賃金の支払いを請求(本訴)し、Y社は、Xに社宅を貸与していたが、解雇による労働契約の終了によってXは社宅の使用権限を失ったとして、Xに対し、社宅の明渡しと使用料相当損害金の支払いを請求(反訴)した事案である。

【裁判所の判断】

本訴請求は棄却

反訴請求は認容

【判例のポイント】

1 XとY社間の労働契約では、新聞配達が業務の内容とされており、即売用の新聞を他の営業所に届ける業務も当然に含まれると解されるうえ、その区域についても限定がないから、使用者が合理的な範囲で設定できるものと考えられるところ、同一の業務命令(ホテル等への即売分を毎日新聞堂島販売K営業所に配達するようにとの指示等)が繰り返されていたにもかかわらず、Xは従わない旨を明確にしていること、Xが今後において業務命令に従う見込みがあるとは言えず、解雇等の手段を執らなければ、Y社において継続的に業務命令違反が繰り返されることとなるが、それ自体、秩序維持の観点から相当とはいえず、Y社の企業秩序の維持のためにもXを企業外に排除すべき必要性は否定し難いこと、より軽微な懲戒処分が先行する等の段階は踏まれていないものの、業務命令が繰り返され、労働者において是正再考する機会が十分に与えられていること等も総合すれば、本件の懲戒解雇が客観的合理的理由を欠くとか、社会通念上の相当性を欠くとまではいえない。

2 本件居室の使用は、使用貸借契約にあたると解されるところ、Xは、従業員宿舎使用誓約書を差し入れたから、従業員宿舎使用規則等が使用貸借契約の内容となったものと認められ、また、Xは、○階×号室の使用に関して従業員宿舎使用誓約書を差し入れ、本件居室に転居し、Y社もそれに異を唱えた様子はないから、当該使用貸借契約の目的物は本件居室に変更されたと認められ、そして、従業員宿舎使用規則は、解雇された従業員は、ただちに宿舎をY社に明け渡さなければならない旨を定めており、従業員の身分を失ったことを使用貸借契約の終了事由と定めているといえるところ、本件で解雇が有効であるから、Xは解雇によって従業員の身分を失い、本件居室に関する使用貸借契約は終了したものと認められるから、Xは、本件居室の明渡義務を負う

被解雇者が解雇後も従業員寮を使用している場合、仮に解雇が有効と判断されると賃料相当損害金を支払わなければなりません。

そのあたりのリスクを十分に念頭に置いて訴訟をすべきです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介742 心がスーッとなる禅の言葉(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
心がスーッとなる禅の言葉 (成美文庫)

タイトル通り、禅の言葉が紹介されています。

いずれも行き詰ったときに助けになる言葉ばかりです。

特に行き詰っていませんがとりあえず読んでみました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『牛に騎って牛を求む』(騎牛求牛)
『探している牛には、すでに乗っている。なのに、牛を探して心はふらふらと落ち着かない。青い鳥探しもほどほどにしなさい。すべてはすでに持っているではないか』という教えである。」(129頁)

私がよく言う言葉として、「天職を探して転職しているうちは天職は見つからない」があります。

同様に、「幸せを探しているうちは幸せにはなれない」というものがあります。

天職は探すものではなく感じるものだからです。

幸せも探すものではなく感じるものだからです。

天職も幸せも客観的なものではなく、いずれも主観的なものであることを忘れてはいけません。

そう思うかどうか、だけの話です。

探したって見つかるわけがありません。

心の中にあるんだから。

解雇250 非違行為と退職手当返還請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、元教諭のわいせつ行為に基づく退職手当返還処分取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

鹿児島県・鹿児島県教育委員会事件(鹿児島地裁平成29年5月31日・労判ジャーナル67号26頁)

【事案の概要】

本件は、鹿児島県教育委員会が、鹿児島県公立中学校教員として在職していた元教諭Xに対し、XがA中学校校長として勤務中に、教え子である同中学校在学の女性生徒に対しわいせつ行為をしたことが、鹿児島県職員退職手当支給条例14条1項3号「在職期間中に懲戒免職等処分を受けるべき行為」に該当することを理由に、Xに対し支給済みの退職手当2778万8006円のうち失業者退職手当額を除く2677万1456円全額を返納するよう命じたことから、Xが、本件処分は、真実はXがわいせつ行為をしていないにもかかわらずされたものであることなどから違法であると主張して、本件処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件ドライブの際、本件生徒に対して、本件自動車を運転しながら、左手で本件生徒の右手を握り、また、右太ももを触り、そして、本件路上に停車した本件自動車内において、覆い被さるように本件生徒を抱き寄せ、本件生徒の左頬と唇に口付けをするというわいせつ行為をしたものと認められる。

2 Xは、①本件わいせつ行為が1回限りのものであること、②本件わいせつ行為の態様が軽微であること、③本件わいせつ行為によって本件生徒が受けた衝撃は小さいと考えられることから、本件わいせつ行為は「懲戒免職等処分を受けるべき行為」には当たらない旨主張するが、鹿児島県においては、これまでも、生徒に対してわいせつ行為を行った職員については、免職処分としたことが認められ、そして、本件生徒が、本件わいせつ行為によって精神的苦痛を被り、長期間にわたる入通院を余儀なくされたこと、Xの職責と非違行為との関係、Xの行為が社会に与える影響なども考慮すれば、本件わいせつ行為が1回限りのものであることや、その態様を考慮しても、本件わいせつ行為に対して本件指針における標準量定よりも下位の量定とすべき事情があるということはできないから、Xの本件わいせつ行為は「懲戒免職等処分を受けるべき行為」に当たると認められる。

3 Xが行った行為は重大な非違行為に当たるというべきであるから、同行為は、その永年勤続の功を抹消して余りあるものと評価せざるを得ず、Xに対し退職処分等のほぼ全額の返納を命じる本件処分が、裁量権の範囲を逸脱し又は濫用するものとは認められない

前回の事案とは異なり、本事案では、退職金のほぼ全額の返還が認められています。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介741 合理的なのに愚かな戦略(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
合理的なのに愚かな戦略

タイトルを見るとわかるとおり、理屈や論理からするとうまくいくはずなのに、現実はそううまくはいかないよ、という内容が書かれています。

例えば、第1章のタイトルは「『顧客志向』と『売上』との相関関係は低い」です(笑)

読んでいてとてもおもしろい本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

選択には必ず犠牲をともなう。人生での選択でも、とらなかった選択によってもたらされたかもしれないチャンスを逃がすという大きな犠牲をともなう。だが、人間はそれを後悔していては幸せにはなれない。犠牲を含めていまの人生を肯定的に考えなければ幸せは得られない。だが、実際には、犠牲が怖くて選択することさえやめてしまう人が多い。あるいは、選ばなかった選択肢のほうがよかったかもしれないと後悔して残りの人生を過ごす。」(235頁)

そんなこと言ってたら何にもできないよ、という話です(笑)

日々、決断の連続です。

即断即決でどんどん決断していかないと時間がいくらあっても足りません。

ここで大切なのは、「どうでもいいことに時間をかけない」という意識を持つことです。

「んなもん、どっちでもいいわ」ということは1秒でどちらかに決める。

だって、どっちでもいいんだから。

さらに言えば、日常生活の中で決断するものの99%は「んなもん、どっちでもいいわ」という選択です。

どうでもいいことにこだわらず、どんどん決める。

これこそが限りある時間を有効に使うコツです。

解雇249 懲戒解雇が有効な場合の退職金の減免の程度(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、有罪判決等に基づく懲戒解雇無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

西日本鉄道事件(福岡地裁平成29年3月29日・労判ジャーナル65号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していた元従業員Xが、Y社に対し、主位的、Y社がXに対してした懲戒解雇は懲戒事由がない上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められるものではないため無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに本件懲戒解雇後の各賃金等の支払を求め、予備的に、仮に本件懲戒解雇が有効であるとすれば、Xは上記労働契約に基づく退職金請求権を有すると主張して、退職金720万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

退職金支払請求については一部認容

【判例のポイント】

1 Y社の就業規則60条12号にいう「有罪の確定判決を言い渡され」たときには、略式命令を受け、それが確定した場合も当然含まれると解されるから、本件懲戒解雇事由1は、この場合に該当し、Xの「その後の就業が不適当と認められたとき」に当たるというべきであるから、本件懲戒解雇事由1は、就業規則上の懲戒事由に該当し、そして、本件事故やその後のXの行動は、Y社の企業秩序に直接関連し、また、Y社に対する社会的評価の低下毀損につながるおそれが客観的に認められるものといえ、その意味で、社員の品位を乱し、会社の名誉を汚すような行為であって、その情状が重いものに当たるといえるから、本件懲戒解雇事由2も、就業規則上の懲戒事由に該当するところ、本件懲戒解雇について、Y社の社内において異論がなく、労働組合からも異論が出されなかったこと、本件懲戒解雇の手続が適正でなかったことをうかがわせる事情はないこと等から、本件懲戒解雇は、社会通念上相当なものであると認められ、懲戒権を濫用したものとはいえず、無効となるものではない。

2 ・・・今後の企業秩序の維持の観点から、本件不支給規定により、Xが退職金請求権の大半を失うことはやむを得ないといえるが、他方、上記行為は業務外のものであること、Xが本件懲戒解雇以前に懲戒処分を受けたことがないこと、上記飲酒運転撲滅の取組が始まってから本件懲戒解雇までの期間は約9年間であることを考慮すると、これらのXの行為は、21年間という長年の勤続の功労を全て抹消してしまうほど信義に反する行為であったとまではいい難いこと等から、Xは、本件不支給規定にもかかわらず、退職金請求権の一部を失わないというべきである。

懲戒解雇の場合、どの程度、退職金を減額するかについては判断が非常に難しいです。

過去の裁判例は参考にはなりますが、全く同じ事案ではないことからあくまでも「参考」になるだけです。

いずれにせよ顧問弁護士と相談の上で判断すべき内容です。

本の紹介740 勝ち続ける理由(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
勝ち続ける理由(祥伝社新書)

ご存じ青学陸上競技部の原監督の本です。

勝ち続けるチームを作る上で大切なことは何かが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ただ『文句を言わずやれ』『黙ってやれ』では、やらされ感が拭えない。だから、指導者は、いくらでも違うやり方があるなかで『何のためにこれをやるのか』『どういう理由でやるのか』『なぜこれが必要なのか』などを理論的に説明し、選手たちに納得してもらわなければならない。
というのも、どういうやり方があるかについては、インターネットで検索すれば情報が山ほど出てくる。つまり、物事の答えは、ネットの扉を開けば、いくらでも出てくるのだ。だから、それらのやり方のうち、どれを選ぶべきか、なぜその選択をするのかを教えるのが指導者の役割である。」(81頁)

人が動くには、自分が納得できる「理由」が必要です。

この本でも書かれているとおり、納得できる「理由」がないと続かないのです。

「なんでこんなことやる必要があるんだよ。時間の無駄だろ」となってしまうのです。

これはスポーツだけでなく、仕事でも同じことが言えます。

特に仕事を始めて間もない場合、一見すると何のためにやっているのかわからない仕事をさせられることがあると思います。

例えば、掃除です。

掃除を丁寧にすることと仕事がどう関係あるんだと。

多いに関係ありますから。

でも、自分で掃除を丁寧にすべき「理由」が見いだせないと単なる作業に終わります。

「おれは掃除をするためにこの会社に入ったんじゃねー」なんてこと言い出すんでしょうね(笑)

できる人、できない人の差って、こういうところで生まれるのではないでしょうか。

みなさんは、どちらですか?

解雇248 普通解雇の予備的主張とバックペイ(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、隠蔽工作等に基づく解雇無効地位確認等請求に関する事案を見てみましょう。

ミツモリ事件(大阪地裁平成29年3月28日・労判ジャーナル66号60頁)

【事案の概要】

本件は、第1事件において、Y社の元従業員Xが、解雇が無効であるとして、雇用契約上の地位確認を求めるとともに、解雇後の賃金の支払を求め、第2事件において、Y社が、Xが赤字受注及び隠蔽工作を行ったことで損害を被った、XとZ社に勤務していたAが共同して架空請求取引を行ったとして、X及びAに対する不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

第1事件:懲戒解雇は無効、普通解雇は有効

第2事件:損害賠償請求を一部認容

【判例のポイント】

1 使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則あるいは雇用契約において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要し、そして、就業規則は、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知しなければならず(労働基準法106条1項)、周知性が欠ける場合には、拘束力が生じないところ、Y社は、就業規則を作成し、Xが勤務していたB営業所には就業規則を備え付けていなかったことを自認しており、そして、XとY社との間の雇用契約において、懲戒解雇に関する条件等が定められていたことを認めるに足りる証拠もないから、X営業所に勤務していたXとの関係において、Y社の就業規則の周知性は欠けていた

2 B営業所には就業規則が備え付けられていなかったため、懲戒権を欠くことになるから、懲戒解雇を行うことはできないが、懲戒解雇を相当とする懲戒事由があれば、そのことを理由として普通解雇を行うことは可能であるところ、・・・本件普通解雇が解雇権の濫用に当たるということはできない。

3 本件懲戒解雇は懲戒権を欠くものとして無効であるところ、Y社は、平成28年1月20日に陳述した準備書面において、予備的に平成26年7月28日付けでの解雇予告による解雇ないし同日付けでの解雇の意思表示をしているが、解雇の意思表示は、当該意思表示がなされた時点において効力を生じるものであり、日付を遡及して解雇することはできないから、本件普通解雇は上記準備書面が陳述された平成28年1月20日付けの普通解雇となり、Xは、平成28年2月19日までは、Y社の労働者としての地位を有していたことになるから、Y社は、Xに対し、同日までの賃金の支払義務を負うことになる。

上記判例のポイント3は理解しておきましょう。

訴訟の中で懲戒解雇の有効性があやしくなってくると、予備的に普通解雇の意思表示をすることはよくあります。

その場合には、仮に普通解雇が有効と判断された場合でも、無効と判断された懲戒解雇日から普通解雇の意思表示をした日までは雇用契約は継続していたことになりますので、その間の賃金は発生していることになるので注意しましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介739 経済は「予想外のつながり」で動く(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ

サブタイトルは「『ネットワーク理論』で読みとく予測不可能な世界のしくみ」です。

結局、経済は予想外だということがよくわかりました(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

柔軟性と頑健性に欠けているという特徴は、そういう切り口で社会や経済の運営に臨んだ場合の典型的な症状だ。体制、規則、規制、インセンティブを積み上げ、これで思い通りの結果になる、この政策で危機を予測できる、危機は防げると信じて疑わない。2007年以降の金融危機がいやというほどはっきり示しているように、予期せぬショックが起きたときには柔軟性を示し、また回復には頑健性が見られる、そんなシステムを作ろうというとき、そんな役人まがいの世界観を持っていてはうまくいかない。私たちは、予測と管理に頼った政策を捨てないといけない。予測できないものを予測するなんて決してできはしない。」(349頁)

ですって(笑)

とはいえ、これから先もずっと経済は予測可能であるという前提に立ち、さまざまな政策が出されるのでしょうね。

いつの世も歴史は繰り返されるわけです。

経験に学んでいるはずなのに、形を変えて同じ過ちを繰り返してしまう。

それが人間の特性なのかもしれません。

賃金140 直行直帰の場合の移動時間は労働時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、固定残業代無効等に基づく未払時間外割増賃金等支払請求事件について見てみましょう。

日本保証・クレディア事件(大阪地裁平成29年4月27日・労判ジャーナル66号45頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結していたXが、時間外労働をしたのにそれに対する賃金が支払われていないとして、割増賃金の請求とそれに対する付加金の支払を命ずるよう求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、北海道小樽市に居住しており、本件当時、Y社が債権を有する顧客宅を訪問し、複数の顧客宅を回る業務に従事し、最初の訪問顧客先には自宅から直行し、最後の訪問顧客先からは自宅に直帰していた本件のXの業務は、北海道内の顧客宅を訪問して、顧客と協議するなどして債権回収を図ることにあると認められるところ、自宅と顧客宅との間の移動は、業務の前提であって業務そのものとはいえないし、その始点又は終点は自宅であり、純然たる私生活の範疇に属する区域であり、また、この移動について、移動の具体的な道筋が定められているとか、移動開始時間と移動終了時間が指定されていることを窺わせる証拠はないから、自宅と顧客宅の間の移動については、Y社の指揮命令下にあったと認めることはできず、これを労働時間と評価することはできないから、Xの自宅等と顧客宅の間の移動時間を労働時間と認めることはできない。

2 特定の名目で支払われている金銭がいわゆる固定残業代であるというためには、①当該金銭が時間外労働に対する対価として支払われていること、②当該金銭が他の部分と明確に区分されていることが必要と解されるところ、本件についてみると、Y社は、その表現こそ異なるものの、給与規程において、月30時間分の残業代相当額が賃金に含まれ、あるいは固定残業代として支払う旨を明記し、かつ給与支給明細書においては、その具体的な金額まで明記されているのであるから、賃金のうち、固定残業代として支払われている金額は、その他の賃金と金額面で明確に区分されており、上記の①及び②の要件のいずれも満たすと認めるのが相当である。

上記判例のポイント1は、直行直帰の場合の労働時間に関する考え方として参考になります。

判例のポイント2については、固定残業代が認められていますね。

ちゃんと最高裁が示した要件を前提として運用していれば裁判所も認めてくれます。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介738 継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88

千田さんの少し古い本です。

書かれている内容の方向性は今の本と変わりありません。

とても参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

商談中に時計のチラ見をしてしまうドンマイ・セールスパーソンがよくいます。・・・こういったことは誰かに指摘されなかったり、自分で気づいたりしなければ永遠に治ることはありません。ずっと冴えない人生だったな、と原因がわからないままに、死ぬ間際に後悔しても遅いのです。時計のチラ見というのはほんの一秒のことですが、こうしたわずか一秒の致命的なミスが人生を左右しているのです。」(160頁)

わかりやすい例ですね。

ほんの1秒のことですが、神は細部に宿るのです。

時計をチラ見する行為は、その人の「早く終わりたい」という本音が出てしまっているのです。

見ている人はちゃんとそういう些細な行為を見ているものです。

商談中に「早く終わりたい」と思っている人とビジネスをする気になるでしょうか。

クライアントはあなたの一挙手一投足を見ているということを忘れてはいけません。