Author Archives: 栗田 勇

配転・出向・転籍59 配転命令の拒否による解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、配転命令の拒否による解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

スターフェスティバル事件(東京地裁令和7年1月31日・労経速2588号19頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、本件部署への配置転換命令が無効であると主張し、本件部署において勤務すべき労働(雇用)契約上の義務のないことの確認を求めるほか、本件部署において勤務しないことを理由とする解雇が無効であると主張し、労働(雇用)契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、毎月末日限り39万4835円の賃金等及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 Xの訴えのうち、XがY社のKitchenSuccess 部バイヤーグループにおいて勤務すべき労働契約上の義務のないことの確認を求める訴えを却下する。
2  Xのその余の訴えに係る請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 本件配転命令に至った経緯についてみると、本件部署の人員配置の状況および担当業務の状況を踏まえると、新たにアルバイト従業員を雇用するのではなく、社内にいる人員を異動させたほうが経済的に合理的であると判断し、本件配転命令を行ったことがまったく不合理ということもできない。そして、本件部署は、Y社に設けられた部門の1つであって、特段に転居等を要せず、本件配転命令によってXの賃金が減額されることもないのであって、その不利益も著しいものとはいえない。一方、Xは、システム開発にあたってコミュニケーション力を要するY社のWEB 統括部・プロダクト開発部における業務に十分に適応しておらず、人事評価も下位にとどまっていたのであって、本件部署の人員補充の対象として選定したことに不合理な点は見当たらない

2 本件配転命令は有効であるから、Xは、本件配転命令に従って本件部署において勤務し、業務に従事すべき養務を負うものというべきである。
しかしながら、Xは、本件部署に出勤せず、Y社の業務に従事しなかったものであり、Y社から令和5年1月31日付けで和4年12月27日以降の正当な理由のない欠勤について厳重に注意するとともに、本件部署の指示に従って業務に従事するよう求める「厳重注意書」を送付されたにもかかわらず、その後も本件部署に出勤せず、業務に従事しなかったものと認めることができる。
以上の経緯に照らすと、本件解雇は、客観的に合理的な理由に欠けるところはなく、社会通念上も不相当であるということはできないから、無効であるということはできない。

配転命令に応じなかった際に会社がとるべき対処法がわかりますね。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介2211 逆転思考#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「他の人とは逆を行かねばならない」と書かれています。

大昔から言われていることです。

それではなお、みんなと同じでないと不安という方は、もうそれでいいと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

短期的には成功と失敗、安心と危機に状況が分かれたようにみえても、時間がたつにつれ立場が逆転してしまう。成功や安心が、失敗や危機を招き寄せるという逆説です。」(68頁)

成功と失敗、安心と不安、安定と不安定は、常に紙一重の隣り合わせです。

短期的にうまくいくとしても、長期的にみれば、徐々に信用を失うようなビジネスをしないことです。

一発逆転ホームランを狙うのではなく、毎日コツコツ小さな努力の積み重ねことが大切です。

多くの人はできませんが。

労働時間118 残業代請求と管理されていない労働時間(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、残業代請求と管理されていない労働時間に関する裁判例を見ていきましょう。

大栄青果事件(福岡地裁小倉支部令和5年6月21日・労判1323号86頁)

【事案の概要】

本件は、〈1〉X組合を除くXら(以下「原告個人ら」という。)が、Y社との間で、それぞれ期間の定めのない雇用契約を締結して稼働していたところ、時間外労働・深夜労働により割増賃金が発生したにもかかわらず、Y社においてこれを支払わない旨を主張して、Y社に対し、本件各雇用契約に基づき、各未払割増賃金の各元本額+遅延損害金の支払、並びに、労基法114条に基づき、付加金+遅延損害金の支払を求め、また、〈2〉X3及びX4が、Y社の就業規則所定の退職金が発生したにもかかわらず、Y社においてこれを支払わない旨を主張して、被告に対し、各退職金+遅延損害金の支払を求め、さらに、〈3〉X組合が、Y社による団体交渉拒否は、X組合に対する不法行為を構成する旨を主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として10万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、X2に対し、660万1721円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、X2に対し、付加金472万4440円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、X3に対し、592万4328円+遅延損害金を支払え。
4 Y社は、X3に対し、付加金423万7944円+遅延損害金を支払え。
5 Y社は、X4に対し、569万5327円+遅延損害金を支払え。
6 Y社は、X4に対し、付加金407万6478円+遅延損害金を支払え。
7 Y社は、X5に対し、608万5853円+遅延損害金を支払え。
8 Y社は、X5に対し、付加金435万0307円+遅延損害金を支払え。
9 Y社は、X6に対し、197万8108円+遅延損害金を支払え。
10 Y社は、X6に対し、付加金141万6350円+遅延損害金を支払え。
11 Y社は、X7に対し、248万8884円+遅延損害金を支払え。
12 Y社は、X7に対し、付加金178万2560円+遅延損害金を支払え。
13 Y社は、X8に対し、630万1597円+遅延損害金を支払え。
14 Y社は、X8に対し、付加金448万6192円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 X個人らの主張する始業時刻及び終業時刻については、基本的には、おおよその記憶に基づく概括的な主張となっているところ、Y社において始業時間及び終業時間の管理を目的とするタイムカード等が全く採用されていなかったことにも鑑みれば、客観的な証拠に反し、または明らかに不合理な内容を含むといった場合には格別、そうでない限りは、上記のように概括的な主張に沿って認定することも許容され得るとするのが相当である。
これを本件について見るに、X個人らの業務は、午前7時に開始されるセリに向けての準備から始まり、セリを経て、商品を販売先に配達する準備や在庫管理を行い、販売先への配達業務を行うという流れになっているところ、これら業務の流れからすれば、X個人らの主張する始業時刻及び終業時刻は明らかに不合理な内容を含んでいるとは認められず、また、請求期間全体としてみた場合において、客観的な証拠に反するとまでは認められない
そうすると、始業時刻及び終業時刻については、X個人らの主張どおり認めるのが相当である。

2 Y社は、従業員が労働時間の大半を事業場外で従事すること、定まった始業時刻、終業時刻がなく従業員の判断で業務を進められることから、「労働時間を算定し難いとき」(労基法38条の2第1項本文)に該当し、Y社には事業場外労働のみなし労働制が適用される旨を主張する。
しかしながら、労働時間を算定し難いか否かの判断に際しては、勤務の状況を具体的に把握することが困難であったか否かが重要となるところ、本件において、X個人らの業務は、各労働日ごとに被告の事務所を出発し、必ずY社の事務所に戻ってくるというものであり、直行直帰が常態化していた等の事情も認められないことからすれば、客観的にみて勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難い。

労働時間の管理は、労務管理の基本中の基本です。

全ての会社は、上記判例のポイント1を十分に理解しておく必要があります。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2210 ナポレオン・ヒル 自己実現#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

人生を幸福なものにするのも、不幸にするのも、自分の心掛けひとつだということがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

心構えこそ自分でコントロールできる唯一のものであるという事実だ。人間に許された、完全でゆるぎない唯一の特権である。私たちは、他人の考えや行動をコントロールすることはできない。また、自分の誕生や死をコントロールすることもできない。けれども、生まれたときから人生の最期まで、自分の心から発するあらゆる考えをコントロールするという無上の特権は、たしかに私たちのものである。」(32頁)

大袈裟に感じるかもしれませんが、真実です。

どこにいても、誰といても、何をしても、不満ばかりを口にし、批判ばかりをする人もいれば、そうでない人もいます。

その思考・解釈の習慣は、1度身につくと、良くも悪くも、簡単には取り除くことはできません。

率直に言って、この思考・解釈の習慣の差が、すなわち、その人の幸福度に直結しているのではないかと思います。

従業員に対する損害賠償請求19 職場での無断撮影行為に対する損害賠償請求と使用者責任(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、職場での無断撮影行為に対する損害賠償請求と使用者責任に関する裁判例を見ていきましょう。

ガソリンスタンドA社ほか(盗撮)事件(鳥取地裁倉吉支部令和7年1月21日・労判1333号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、①勤務中にAから盗撮されたことにより経済的損害及び精神的損害を被ったと主張して、Aに対しては不法行為に基づく賠償として、Y社に対しては使用者責任に基づく損害賠償として、376万7208円+遅延損害金の連帯支払を求め、②Y社は、職場での盗撮行為を防止するための体制を構築しておらず、また、Aによる盗撮行為があった後も適切な対策を取らず、これにより精神的損害を被ったと主張して、債務不履行に基づく損害賠償として、55万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

被告らは、Xに対し、連帯して69万1199円(慰謝料40万円+休業損害34万4162円+弁護士費用6万2836円-損益相殺14万1359円)+遅延損害金を支払え

Y社は、Xに対し、44万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 人は、みだりに自己の容ほう等を撮影されないことについて法律上保護されるべき人格的利益を有するところ、ある者の容ほう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上達法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである(最高裁平成15年(受)第281号同17年11月10日第一小法廷判決)。
これを本件についてみると、Xは、Y社に勤務する一般人であり、同僚から無断で勤務中の姿を撮影されることなど、通常は想定も許容もしないのであって、Aにおいても、撮影をしたいのであれば、Xに一言断ってから撮影することが常識的であるのに、Xの感情に十分配慮することなく、確認できるだけでも6日間にわたって、Xの姿を近い距離から繰り返し無断で撮影している。Xが帽子、マスク、長袖及び長ズボンを着用していたことを踏まえても、Aによる撮影行為は、その態様において著しく不相当であるといえ、また、撮影の必要性も認められない。以上の事情を総合考慮すると、Aによる撮影行為は、社会生活上受忍すべき限度を超えて、Xの人格的利益を侵害するものであり、不法行為法上違法である。

2 職場における盗撮行為は、Y社の事業の執行に当たって特異な出来事であるといえ。盗撮行為をした職員が在職しなくなった場合、一般的には事発の危険性が高いとはいえないし、業務上必要のないスマートフォン等のデジタル機器の使用は、特別に周知するまでもなく通常は許容されない行為であると従業員において理解すべきといえるから、過去に盗撮行為があったとしても、ハラスメント行為は許されない旨の告知やハラスメント行為があった場合の相談窓口を周知することを超えて、盗撮行為を防止するため、改めて勤務中に業務上必要のないスマートフォン等のデジタル機器の使用を禁止ないし制限する措置を告知したりする義務までは負わないと解することが相当である。

3 Y社は、遅くとも令和4年9月末頃の時点において、Aから盗撮被害を受けたとのXの訴えが虚偽や勘違いといったものではなく、Xに深刻な精神的苦痛が生じている可能性が極めて高い状況を認識したのだから、労働契約上の付随義務として、Y社が従業員に対してかねてから周知していた方針に従い、速やかに関係者から事情を聞くなどして事実関係を確認し、事実関係を終えた後には、Xが更なる精神的苦痛を被らないよう、配置換えを行ってXがAに接触しないで済む体制を整えるなど、Xに対する適切な配慮をしていく義務(Xが主張する安全配慮義務ないし職場環境調整義務と内容は同趣旨である。)があったというべきである。

上記判例のポイント3は、会社としてはしっかりと理解しておく必要があります。

速やかに、かつ、適切に事後対応を行うように心がけましょう。

社内で事件・事故が起こったら、速やかに顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

本の紹介2209 金持ちになる男、貧乏になる男#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

成功する人とそうでない人の違いがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

経済的余裕のある人間は境遇をコントロールできるが、経済的余裕のない人間は境遇にコントロールされ、多くの場合、判断力を行使する機会すら得られない。 ハービー・ファイアストン(アメリカの実業家、ファイアストンタイヤの創業者)」(41頁)

「境遇をコントロール」というのはあまり聞き慣れない表現ですが、つまるところ、選択肢の幅が広いということだと思います。

もっとも、選択肢の幅は、経済力だけで決まるわけではありません。

どれだけ経済力があっても、精神的に不自由な生活を強いられることも実際にあります。

もっとも、多くの場合、自らの選択の結果ですので、やむを得ないでしょう。

勢い余って、向こう見ずな選択をしそうなときは、その選択によって、以後、どれほど経済的・精神的自由が制限されるかを考えるといいかと思います。

特に「始めるのは簡単、終わるのは大変」系にご注意を(笑)

解雇429 機密情報へのアクセス等を理由とした解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、機密情報へのアクセス等を理由とした解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

Velocity Global Japan事件(東京地裁令和6年9月25日・労判1330号69頁)

【事案の概要】

(1)Xは、解雇が無効であると主張し、Y社に対し、Y社との間の雇用契約に基づき、次の各請求をしている。
ア 雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
イ 令和5年1月支払分の賃金及びこれに対する支払期日の翌日以降の法定利率による遅延損害金の支払
ウ 令和5年2月から判決確定日まで各月支払分の賃金及びこれらに対する各支払期日の翌日以降の法定利率による遅延損害金の支払
(2)Xは、Y社による解雇が不法行為に当たると主張し、Y社に対し、不法行為に基づき、損害賠償金及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降の法定利率による遅延損害金の支払を請求している。

【裁判所の判断】

1 解雇無効

2 Y社は、Xに対し、75万2349円+遅延損害金を支払え

3 Y社は、Xに対し、令和5年2月から本判決確定の日まで、毎月末日限り50万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社は、本件解雇の事由として、XがY社の顧客であるA社のサーバー内の資料にアクセスし、当該資料に記録された情報を業務以外の目的で使用しようとしたとして、このXの行為は就業規則49条12号及び13号に該当する懲戒事由であると主張する。
しかし、Xがアクセスした資料に記録された情報を業務以外の目的で使用しようとしたと認めるに足りる証拠はない

2 Y社は、Xがその業務との関係でアクセスを許されているのは原則として日本市場における治験業務関連の資料のみであり、それ以外の資料については業務との関連が薄いと主張する。
しかし、Xは、A社の日本における既存顧客及び新規顧客に対する営業活動を担っていたのであって、将来の顧客の要望に備えてA社の業務に関する幅広い知識を得ることは業務の一環といえる。実際に、顧客の要望に応じて説明や資料提供をする対象事項は治験部門に限られていなかったと認められる。そうすると、Xがアクセスした資料については、治験部門以外のものを含めて、Xの業務との関連が薄いとは認められない

社内規程等でアクセス権限が明確化されていない場合、業務目的か否かは解釈になってしまいます。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

本の紹介2208 一流の頭脳の磨き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

帯には、「世界一、時間にシビアなエリートたちが、あえて貴重な時間を割いて学んでいる。」と書かれています。

私の周りのエリートのみなさんも、みんな寸暇を惜しんで学んでいます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

以前、ファイナンス系の仕事をしている私の友人が『自分の立場では、とにかく勝ち続けなければいけない。そうでなければすぐにでもクビが飛ぶ。でも、勝ち続けるには勘や経験則だけでは足りない。』とはっきり言っていたことを思い出す。」(33頁)

こういうシビアな世界で戦っている人に、甘えは一切ありません。

成長・向上し続けることが絶対条件です。

そして、それを楽しめることが、おそらく最も必要な素質ではないでしょうか。

年がら年中、働いていても、それをストレスだと感じず、常に涼しい顔をしている人こそが勝ち抜く世界です。

知力のみならず、体力も精神力も持ち合わせていなければ、途中で息切れしてしまうのです。

労働時間117 航空機客室乗務員の休憩時間(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、航空機客室乗務員の休憩時間に関する裁判例を見ていきましょう。

ジェットスター・ジャパン事件(東京地裁令和7年4月22日・労判ジャーナル159号8頁)

【事案の概要】

本件は、航空運送事業を営むY社との間で労働契約を締結し、客室乗務員として勤務していたXらが、Y社から労基法34条1項の定める休憩時間が付与されない勤務を命じられ、これに従事したことにより精神的苦痛を受けたと主張して、Y社に対し、選択的に債務不履行(安全配慮義務違反)又は不法行為に基づく損害賠償金(慰謝料及び弁護士費用)として、X各自につき55万円+遅延損害金の支払を求めるとともに、現在客室乗務員としてY社に勤務しているXらが、将来にわたって継続的に、Y社から労基法34条1項の定める休憩時間が付与されない勤務を命じられるおそれがあると主張して、人格権に基づき、上記勤務を命ずることの差止めを求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xら各自に対し、各11万円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xらに対し、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を付与しない勤務(ただし、労働基準法施行規則32条2項所定の時間の合計が上記休憩時間に相当する場合を除く。)を命じてはならない。

【判例のポイント】

1 客室乗務員は、機長の指揮監督下で客室の安全の確保に関する業務を行うことがその責務の一つとされており、急病人の発生等の事態が生じた場合、必要に応じて、クルーレストを中断して業務を行う必要があったほか、客室乗務員は、クルーレスト中であったとしても、インターホンが鳴れば、これに応答していたというのである。そして、客室乗務員にクルーレストが付与された事実は機長に伝達されないため、機長は各客室乗務員のクルーレストの有無、時期、時間等を把握しておらず、機長からの指揮監督の密度等について、客室乗務員がクルーレスト中か否かによって、有意的な変化があるとはいい難い。
以上によれば、クルーレストは、停車時間、折返しによる待合せ時間のように実際に乗務しない時間と同程度に精神的肉体的に緊張度が低いと認められる時間に該当するとはいえないため、労基規則32条2項所定の「その他の時間」には該当し得ない

2 労基法34条は、ある程度労働時間が継続した場合に蓄積される労働者の心身の疲労を回復させ、その健康を維持するため、労働時間の途中に休憩時間を与えるべきことを規定したものと解されるところ、Y社がXらに対して同条に違反する勤務を命じたことは、労働者の健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)に違反するというべきであるから、Y社は、これによりXらに生じた損害について賠償する責任を負う。

2 Xらに命じられていた勤務は、発着陸回数や勤務時間等の点において、Xごとに特に偏りがあったわけではなく、別紙4「勤務状況一覧表」に記載の勤務以外にも、本件各勤務パターンと1日の発着陸回数が同じで、勤務時間がより長く、便間時間が同じか、より短い勤務を命じられたことがあったのは前記認定のとおりである上、その後、勤務パターンが、労基法34条1項の休憩時間又は労基規則32条2項所定の時間が確保されていると認められるものに変更されたといった事情も見当たらず、かえって、令和6年11月以降も、各便間時間から便間業務時間である35分を差し引くと、業務外便間時間の合計時間が労基法34条1項所定の休憩時間数に達しておらず、休憩時間及び労基規則32条2項所定の時間が確保されていない勤務が行われていることが認められることに照らすと、将来にわたって、Y社が、現職Xらに対し、同様の勤務を命ずることで、現職Xらの人格権を侵害する行為が継続する蓋然性も認められる。そうすると、当該行為を差し止める必要性が認められる。

これまで当たり前のように提供を受けていたサービスは、今後、受けられなくなりますね。

なお、労基則32Ⅱは、以下のとおりです。

「第三十二条 使用者は、法別表第一第四号に掲げる事業又は郵便若しくは信書便の事業に使用される労働者のうち列車、気動車、電車、自動車、船舶又は航空機に乗務する機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員及び電源乗務員(以下単に「乗務員」という。)で長距離にわたり継続して乗務するもの並びに同表第十一号に掲げる事業に使用される労働者で屋内勤務者三十人未満の日本郵便株式会社の営業所(簡易郵便局法(昭和二十四年法律第二百十三号)第二条に規定する郵便窓口業務を行うものに限る。)において郵便の業務に従事するものについては、法第三十四条の規定にかかわらず、休憩時間を与えないことができる
② 使用者は、乗務員で前項の規定に該当しないものについては、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が法第三十四条第一項に規定する休憩時間に相当するときは、同条の規定にかかわらず、休憩時間を与えないことができる。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2207 借金2000万円を抱えた僕にドSの宇宙さんが教えてくれた超うまくいく口ぐせ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

日頃の「口ぐせ」がいかに大切であるかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

口ぐせで、そいつが何を心から信じているのか、一発でわかる。」(34頁)

典型例は、「どうせ無理」か「どうせできる」の違いです。

負け癖がついていて、すぐにあきらめてしまうのが前者。

勝ち癖がついていて、すぐにはあきらめないのが後者。

類は友を呼びますから、両者が交わることは、通常、ありません。