Author Archives: 栗田 勇

解雇439 部下への不適切な指導や発言を理由とする消防職員に対する懲戒免職処分の適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、部下への不適切な指導や発言を理由とする消防職員に対する懲戒免職処分の適法性に関する判例を見ていきましょう。

糸島市・市消防本部消防長(懲戒免職処分取消等、懲戒処分取消請求)事件(最高裁令和7年9月2日・ジュリ1616号4頁)

【事案の概要】

本件は、普通地方公共団体であるY市の消防職員であったXが、任命権者である糸島市消防長から、部下に対する言動等を理由とする懲戒免職処分を受けたため、Y市を相手に、その取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求める事案である。

原審は、上記事実関係等の下において、要旨次のとおり判断し、本件処分の取消請求及び損害賠償請求の一部を認容すべきものとした。
Xがした各指導は、訓練やトレーニングとして通常行われる範囲を逸脱したものではあるけれども、逸脱の程度が特段大きいとまではいい難い。各発言についても、これにより精神的に苦痛を受けた者が相当数に上るものの、言い過ぎの面や、表現が適切でなく、口の悪さが現れたにすぎないところもある。被害を受けた職員に重大な負傷も生じていないことを踏まえると、Y市がした非違行為による他の職員及び社会に対する影響が特に大きいとまではいえない上、Xが、本件処分以前に懲戒処分を受けたことがなく、訓練やトレーニングの際の指導等につき個別に注意等を受けたとの事情も見当たらないこと、Xが一定の反省の態度を示していること等をも考慮すると、懲戒の中で最も重い免職を選択した本件処分は、重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものである。

【裁判所の判断】

1 原判決中Y市敗訴部分を破棄する。
 第1審判決中Y市敗訴部分を取り消す。
3 前項の取消部分につきXの請求をいずれも棄却する。
 第1項の破棄部分に関するXの附帯控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 本件各行為のうち各指導は、いずれも、Xが職場内における優位性を背景として、採用後間もない部下に対し、鉄棒に掛けたロープで身体を縛って懸垂をさせた上で力尽きた後もそのロープを保持して数分間宙づりにして更に懸垂するよう指示したり、熱中症の症状を呈するまで訓練を繰り返させたり、体力の限界のため倒れ込んだことに対するペナルティと称して更に過酷なトレーニングをさせるなどしたものであり、部下に傷害を負わせるものであるか否かにかかわりなく、訓練やトレーニングに係る指示や指導としての範ちゅうを大きく逸脱するものというほかない。
また、各発言には、部下に恐怖感や屈辱感を与えたり、その人格を否定したりするもののみならず、その家族をも侮辱したりするものも含まれている。このように、本件各行為は、部下に対する言動として極めて不適切なものであり、長期間、多数回にわたり繰り返されたものであることにも照らせば、その非違の程度は極めて重いというべきである。
また、消防職員については、火災等の現場において住民の生命や身体の安全確保のための活動等を行うという職務の性質上、厳しい訓練が必要となる場合があるとしても、指示や指導としての範ちゅうを大きく逸脱する各指導が許容される余地はないのであって、各指導を含む本件各行為が、部下に対する悪感情等の赴くままに行われた部分が大きかったことからしても、Xが本件各行為に及んだ経緯に酌むべき事情があるとはいえない。
さらに、本件各行為は、小隊長等として消防職員を指導すべき立場にあるXが、少なくとも10人もの部下に対し、十数年もの長期間、多数回にわたり、上記のような不適切な指導や発言を執拗に繰り返したというものであり、甚だしく職場環境を害し、Y市の消防組織の秩序や規律を著しく乱すものというべきである。消防組織においては、職員間で緊密な意思疎通を図ることが職務の遂行上重要であることにも鑑みれば、本件各行為が及ぼす上記のような悪影響は看過することができないものである。消防本部においてXらによるいじめやしごき等により若手の職員の退職が相次いでいるなどの記載がある文書の提出を受けたY市長の指示により調査が行われ、多数の職員がXの職場復帰に反対する旨の書面を提出したことは、以上の現れということができる。

2 以上説示したところに照らせば、Xには本件処分以外に懲戒処分歴がないこと等の事情があり、免職処分が公務員の地位の喪失という重大な結果を生じさせるものであることを踏まえても、Xに対する処分として免職を選択した消防長の判断が、社会観念上著しく妥当を欠くものであるとはいえず、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。

ご覧のとおり、判断する裁判官によって、同じ事案でも180度異なる判決が書けてしまいます。

どの事情に光を当てるかによって、こうも違う判決になります。

あきらめたらそこで終わり。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。

本の紹介2251 外資系金融ママがわが子へ伝えたい人生とお金の本質(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

サブタイトルは、「自由にあきらめずに生きる」です。

人生を通じて精神的・経済的自由を獲得・維持することがいかに大切であるかがわかります。

兎に角、自分に力をつけて、自立することです。

依存は楽ですが不自由です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お金の『使い方』とは、『その人の人生の価値観を反映するもの』です。人生の価値観を確かめずに、ただ働き、ただ貯める。それは一体誰のため、何のためのお金なのでしょう?」(81頁)

『お金をどう使うか』をひたすら考えてみると、自分の価値観や人生観が浮き彫りになってきたのです。そのとき、私は気がつきました。『モノは飽きる』と。」(105頁)

自分の価値観・人生観が明確になっていないと、ただなんとなく時間やお金を消費してしまいます。

みんながそうしているから、嫌われたくないから、ほかにやりたいことがないから・・・

でも、これでは一向に幸せ度は上がりません。

世間一般のいわゆる「常識」「当たり前」「普通はそうする」に縛られ、自分の価値観・人生観に基づいた選択をしていないからです。

他人は他人。自分は自分です。

労働時間123 事業場外みなし労働時間制の適用が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、事業場外みなし労働時間制の適用が否定された事案について見ていきましょう。

西原商会事件(福岡高裁宮崎支部令和7年8月27日・労判ジャーナル165頁22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員Xが、Y社に対し、未払割増賞金及び労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求めたところ、原審が、1年単位の変形労働時間制は無効であること等からXの未払割増賃金及び付加金等支払請求を一部認容したため、Y社及びXが原判決中敗訴部分の取消しを求めて控訴、附帯控訴をそれぞれ提起した事実である。

【事案の概要】

一部認容(認容額減額)

【裁判所の判断】

1 Xの休日出勤の予定については、人事部採用チームの業務内容及びスケジュール管理等をするための勤務カレンダーにおいて共有されていたこと、同カレンダーには、会場への移動時間や手段、同イベントの開始時間及び終了時間、開催場所などが記載されており、出張先の業務については、上記イベントの内容、時間帯や場所により、業務内容、開始時間及び終了時間等があらかじめ具体的に確定されていたということができ、これに加え、就活生向けイベントは、これを行うことや参加すること自体はY社が決定するものであり、イベントの参加者も会社が決定した式次第に従って参加し、行動したと考えられること、Y社がXに対し、社用携帯を支給しており、業務について指示をしたり、上記カレンダーで予定されていた業務内容や業務時間が実際の業務内容や時間と異なるかどうかについて確認したりすることも可能であったことを考慮すると、Xの休日出勤時の出張につき、事業場外みなし労働時間制の適用があると解することは困難というべきである。

本件に限らず、ここ最近の裁判例を見る限り、もはや事業場外みなし労働時間制は適用場面がほぼないと考えるのが妥当ではないでしょうか。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

 

本の紹介2250 これも修行のうち。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは「実践!あらゆる悩みに『反応しない』生活」です。

いろんなことにすぐに反応して落ち込んでしまう方向けの本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今あらためて思うのは、人間は何も知らない小さな生き物で、しかも与えられた時間は限られているということ。だからこそ、つまらないこだわりはいさぎよく捨てて、できなかったことができるようになる喜びを大事にしようではないか、ということです。」(216頁)

これも解釈の問題ですね。

half fullと考えるか、half emptyと考えるか。

みんな解釈という眼鏡を通して、人生のあらゆること・ものを見聞きしています。

ものごとそれ自体には意味はありません。

自分で意味付けをしているだけです。

解雇438 酒気帯び運転を理由とする解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、酒気帯び運転を理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

静岡鐵工所事件(大阪地裁令和7年9月26日・労判ジャーナル165頁16頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社による解雇は無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求並びに労働契約に基づく未払賃金等の支払及び不法行為に基づく慰謝料等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件酒気帯び運転は、本件就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するところ、本件酒気帯び運転は、長時間にわたり相当量の飲酒をした後に行われたものであり、Xの血中アルコール濃度が本件酒気帯び運転から約8時間経過した時点でも高濃度であったこと、運転中の異常な運転態様及び警察官から職務質問を受けた際の異常な対応に照らせば、運転中のアルコールによる影響は非常に強いものであったというべきであり、交通事故を起こす可能性の高い非常に危険なものであったと評価するのが相当であり、本件酒気帯び運転は、Y社の業務終了後に行われたものであるものの、社用車を運転するものであり、その運転中に交通事故を起こした場合、Y社に自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任等による民事上の損害賠償責任が発生し得るものであったといえるから、単なる私生活上の行為にとどまるものであったとはいえず、加えて、警察官に対し、怒鳴りつけたり、暴言を吐いたりしたものであるから、近隣住民に与えた不安及び迷惑並びに警察官の職務を遅滞させたことは軽視できず、本件酒気帯び運転後の事情も悪質であるから、本件解雇は、懲戒権を濫用したものとは認められない。

この事案だけを見れば、結論に疑問を持つ方は多くはないと思いますが、裁判例の中には、類似の事案でも、解雇を無効と判断する例があるため、現場の判断を悩ませます。

これに退職金請求が加わるとさらに悩ませることになります。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

本の紹介2249 ユダヤ人に学ぶ速学術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

帯には「人生勝敗のカギは、こまぎれ時間にある。」と書かれています。

まさにチリツモです。

時間もお金も消費ではなく、投資しなければ、未来は暗いです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

つまり僕の言いたいことは、勉強の妨げとなるのは、自分の記憶力の悪さや理解力の鈍さではないと思うのです。家庭内のいざこざとか、人間関係の根深い葛藤とか経済的な不安なのです。」(225頁)

勉強どころではない、といった感じでしょうか。

一度底なし沼にはまってしまうと、なかなか抜け出せないのが現実です。

人間関係の根深い葛藤や経済的な不安に陥らないためにも、日々、勉強することが大切です。

社会に対する愚痴や不満を言い合って、傷のなめ合いをしても、状況は何も変わりません。

そんな時間があるなら勉強しよう。

メンタルヘルス18 休職期間満了を理由とする退職扱いの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、休職期間満了を理由とする退職扱いの有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

B WORLD PATENT&TRADEMARK事件(大阪地裁令和7年9月18日・労判ジャーナル165号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結して勤務し、その後精神疾患を発症して休職していた元従業員Xが、休職期間満了を理由とする退職扱いは無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、並びに未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

退職扱い無効

【判例のポイント】

1 休職期間の終期に関する問い合わせを受けた使用者は、休職中の労働者に対し、雇用契約に付随する義務として、その終期を教示すべき義務を負うというべきであるところ、Y社が、休職期間の終期を教示すべき義務を怠ったことは明白であり、ひいては、同義務に違反したことにより、Xの復職の機会を不当に制限し、あるいは事実上失わせたというべきであるから、本件において、Y社が、休職期間の終期までに復職可能である旨の診断書の提出がなかったこと等を理由に、Xを退職扱いとすることは、信義則違反あるいは権利の濫用として許されないというべきである。

2 Y社は、Xは就労の意思を喪失したと主張するところ、確かにXが、令和5年5月15日、G看護師に対し、会社に戻るつもりはないと述べたこと、その後ハローワークを通じて就職活動を行うなどしていたことが認められるが、G看護師に対する上記発言は、D病院を受診した際のものであり、Xの確定的な意思を示すものとは直ちに認め難く、加えて、Xは、組合を通じてY社に対し、同年6月13日付け「要求」をもって、休職期間満了による退職扱いを撤回するよう求め、その後も復職を前提とする協議を求め続けていたことなどからすれば、Y社が指摘する各事情を考慮しても、Xは、現時点でも、Y社において就労する意思を有していると認めるのが相当である。

上記判例のポイント1は、あまり見かけない内容ですが、当然のこととして、終期を教示しましょう。

使用者としていかに対応すべきかについては、顧問弁護士の助言の下に判断するのが賢明です。

本の紹介2248 教養としての投資(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

投機ではなく投資を通じて、世界を知ることができます。

日々、株が上がった、下がったということではなく、より長期的に見て、世界の動きを観察することを目的としています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

情報との付き合い方は、大量の情報をインプットすることよりも、考えることの方がよほど大事です。ところが、情報の量が増えれば増えるほど、人間は考えなくなります。考えることの総量は、流れている情報の総量に反比例するのです。」(194頁)

資格試験を考えるとよくわかりますね。

情報量で勝負をしようとしてもそれだけでは対応できないことは、多くの人が経験していることかと思います。

情報のインプットとともに、いかにその情報を使いこなすかが求められています。

AIの進化に伴い、人間の考える力は退化する一方です。

セクハラ・パワハラ98 減給の懲戒処分について、労基法93条の限度を超える金額は無効であることの確認が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、減給の懲戒処分について、労基法93条の限度を超える金額は無効であることの確認が認められた事案について見ていきましょう。

一般財団法人NHK財団事件(東京地裁令和7年5月29日・労判ジャーナル165号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されているXが、Y社に対し、Y社がXに対して令和6年4月17日付でした減給の懲戒処分は懲戒権を濫用するものであるから無効であると主張して、①本件減給処分が無効であることの確認を求めるとともに、②雇用契約に基づき、本件減給処分に係る減給相当額9290円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社が、令和6年4月17日付で、Xに対してした減給の懲戒処分のうち、減給の額が6143円を超える部分が無効であることを確認する。
 Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 B職員は、令和2年2月から3月にかけて、Xから、職場から一緒に帰る、あるいは週末にハイキングに出かけるといった職務外のプライベートな付き合いに誘われたところ、「個人的なお誘いは遠慮させてください。」と明確にこれを断り、令和5年10月以降も、Xのランチやサイクリングの誘いに応じることなく拒否的に対応しており、Xも、B職員の上記対応から、同人が、Xに対し、私的な領域に踏み込まれたくないとの意向を有していることは、十分に認識していたと認められる。それにもかかわらず、Xは、B職員の上記意向を顧みることなく本件言動に及んだものであり、B職員が被った不安感、不快感は、到底軽視することはできない。
また、①Xは、Y社に提出した顛末書において、B職員が、偽名のLINEアカウントを利用してXにプライベートで接触しようとした、あるいは仮病を用いて勤務時間の短縮や在宅勤務をしたなどと、根拠に乏しい事実を挙げてB職員を非難し、自己の行為を反省する態度を示さなかったこと、②減給処分は、Y社の懲戒処分の中で下から2番目に軽いものであることからすれば、本件減給処分が「社会通念上相当であると認められない場合」(労契法15条)に当たるとはいえない。

2 原告の給与は毎月末日締め、当月20日払いであるところ、本件減給処分がされた令和6年4月17日(労基法12条「算定すべき事由の発生した日」)以前の3か月において原告に支払われた賃金は、令和6年1月分(同月末締め、同月19日支給)として32万5289円、同年2月分(同月末締め、同月20日支給)として36万0429円、同年3月分(同月末締め、同月19日支給)として46万8027円であり、このうち、同年3月分の賃金(46万8027円)には、6か月分の通勤交通費7万1100円が含まれていたと認められる。そうすると、「これを算定すべき事由が発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額」(労基法12条1項)に含まれるのは、7万1100円のうち、その3か月分に相当する3万5550円にとどまるというべきであり、上記賃金の総額は111万8195円となる。
また、上記期間の総日数は91日である。
そうすると、平均賃金は1万2287円となり(111万8195円÷91日=1万2287.85円、争いなし)、労基法91条の定める減給の上限額は6143円となる。
これに対し、Y社は、本件減給処分において、労基法12条所定の平均賃金の算出に当たって、①6か月分の通勤交通費である7万1100円をそのまま賃金総額に加えたこと、②Xの賃金は当月末日が締切日であり、「算定すべき事由の発生した日以前三箇月にその労働者に対し支払われた賃金」は令和6年1月分から3月分の賃金であるのに、同年2月分から4月分の賃金としたこと、③原告の賃金は月給制であり、「賃金が、労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められた場合」(労基法12条1項1号)に該当しないにもかかわらず、これに該当するとして、同法12条1項ただし書を適用し、同項1号によって算出した額(1万8579.02円)を平均賃金として採用したことにより、労基法91条の定める上記上限額(6143円)を超える金額(9290円)を減給したと認められる。
したがって、本件減給処分は、労基法91条に違反する。

3 労基法91条が減給額につき上限を設けた趣旨は、減給額が多額になって労働者の生活を脅かす事態を回避する点にあることからすれば、労基法91条の制限を超える減給処分がされたとしても、必ずしも減給処分全体が違法・無効となるものではなく、労基法91条の制限を超える部分が違法・無効となるにとどまると解すべきである。

減給処分が労基法91条に違反するとされた珍しい裁判例です。

平均賃金に関する単純な計算間違いですが。

労務管理に関する抜本的な改善については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

【労基法91条】就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

【労基法12条】この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額

本の紹介2247 FIRE最強の早期リタイア術#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは、「最速でお金から自由になれる究極メソッド」です。

FIREのうち、「RE」はさておき、「FI」は必要だと思います。

必ずしも早期リタイアが幸せであるとは限りません。人によります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

より多くのモノを所有するほど、人はより不幸になり、よりストレスを抱えるということです。逆に、より少ないモノを所有し、旅行や新たなスキルの習得など経験によりお金を使うほど、人はより幸福になり、より人生に満足するのです。」(86頁)

ミニマリスト的な発想ですが、このあたりも個々人の価値観が如実に表れるところだと思います。

古い議論で言えば、「持ち家vs賃貸」論争にも通じるところがあります。

いずれにせよ好きにすればいいのですが、周りを見渡すと、あまり深く考えず、「みんながそうしているから」という理由で、モノを所有して、後々、所有リスクが顕在化し、精神的・経済的負担に押しつぶされそうになっている方を見かけます。

特に長期にわたる借入れを伴う場合、あらゆるボラティリティを許容する覚悟を持つ必要があります。

ジュウタクローンコワイ

所有したら最後、手放すに手放せない、手放すのに相当なコストを要するモノは、極力持たない、というのが持論でございます。