Author Archives: 栗田 勇

本の紹介2237 レバレッジ・リーディング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

著者は、「多読」を薦めています。

私も同じ意見です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

本当は本を読めば読むほど、時間が生まれます。本を読まないから、時間がないのです。なぜなら本を読まない人は、他人の経験や知恵から学ばないからです。何もかも独力でゼロから始めるので、時間がかかって仕方ないのです。」(46頁)

木こりのジレンマの話と同じです。

時間がないから本を読まないのではなく、本を読まないから時間がないのです。

物事の道理を知らないことが遠因となり、時間やお金を無駄にしている例は枚挙に暇がありません。

日々の時間の使い方が何年にもわたり積み重なり、その結果が人生を形成します。

解雇436 賃金額等を記した雇用契約書などの書面作成に応じなかった会社が、従業員に自宅待機命令後の出社命令違反などがあったとして行った解雇が無効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、賃金額等を記した雇用契約書などの書面作成に応じなかった会社が、従業員に自宅待機命令後の出社命令違反などがあったとして行った解雇が無効と判断された事案について見ていきましょう。

Y社事件(東京地裁令和7年4月30日・労経速2596号32頁)

【事案の概要】

本件は、令和3年10月にY社と労働契約を締結し、理容師として稼働していたXが、Y社に対し、上記労働契約における月毎の賃金額は35万円であり、同年10月分につき9460円、同年11月分につき2万円が未払となっていると主張して、労働契約に基づき、同年10月分の未払賃金として9460円及び同年11月分の未払賃金として1万8280円+遅延損害金、Y社による自宅待機命令により労務を提供することができなかったと主張して、民法536条2項に基づき、上記自宅待機命令期間中の未払賃金として11万7894円+遅延損害金、上記労働契約では交通費を支払う旨の合意がされていたと主張して、労働契約に基づき、交通費として2万8160円+遅延損害金の支払を求めるとともに、Y社による令和4年3月23日付けの解雇が不法行為を構成し、逸失利益として210万円、慰謝料として50万円の合計260万円の各損害を被ったと主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、260万円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、154万5634円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件自宅待機命令は、令和3年12月23日にXの施術内容について客が苦情を述べたことを契機として発せられたものであるが、同日以前にXが客から苦情を受けたとはうかがわれない。そして、Xに限らず、Y社の従業員において客から施術内容について苦情を受けることはあり、これまでX以外に無期限の自宅待機を命ぜられた者はいないことを踏まえれば、単発の上記出来事を契機に、本件自宅待機命令を発し、期限を定めずにXを就労させないこととする合理的な理由及び必要性があったと認めることはできない
そうであるとすれば、本件自宅待機命令はY社の業務上の都合により発せられたものというべきであり、Xは、これによって労務を提供することができなかったのであるから、民法536条2項により、これに対応する期間である令和3年12月23日から令和4年2月6日までの期間につき賃金請求権を有することとなる。

2 確かに、〈1〉Xは、令和4年2月に発せられた本件出勤命令に応ぜず、それ以後、労務の提供をしていない。そこで検討するに、本件雇用契約における賃金額については、原告が令和3年10月に被告で就労を開始した当初の頃から当事者間に認識の相違があり、Xは、本件雇用契約に係る労働条件を書面にするよう求め続け、このことは、Y社においても本件雇用契約に関するトラブルとして認識されていた。そうであるからこそ、Xは、同年12月にされた本件自宅待機命令が解除され、改めて本件出勤命令に応ずるに当たっても、本件雇用契約に係る労働条件を書面により明示するよう求めていたのであるが、Y社は、これに応じなかった。
使用者は、法令上、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金等の労働条件を書面等により明示しなければならず(労基法15条・同施行規則5条)、その趣旨は、労働条件をめぐる紛争を回避することを含むものと解されるところ、上記のとおり、Xの就労中に労働条件である賃金額をめぐって既に紛争が生じていた。そうであるとすれば、Xが本件出勤命令に応じ、改めて被告での就労を開始するに当たって、労働条件を明示した書面の交付を求めたことは、上記法令の趣旨に沿うものであり、正当な要求であるといわざるを得ない。他方で、本件記録を精査しても、Y社が上記書面を実際に何らか準備したともうかがわれず、Xが本件出勤命令の前から継続して上記要求をしていたことを踏まえると、Y社がこれに応じなかったことに合理的な理由はうかがわれない

3 本件解雇は無効であり、使用者は、法令上、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金等の労働条件を書面等により明示しなければならないとされているところ、Y社は、Xから労働条件を明示した書面の作成を繰り返し求められ、この点について令和4年3月16日頃には労基署より是正勧告を受けるに至っているにもかかわらず、これに対応しないままだったのであるから、漫然と本件解雇に及んだといわざるを得ない。したがって、本件解雇は不法行為を構成するというべきである。
そして、Xは、本件解雇により、Y社において就労する機会を喪失しているところ、本件解雇後にX自身がそれにより被った損害を回復するために行った各種手続の利用状況、就職活動の状況や現に再就職に至った時期等に照らし、本件解雇によって生じた逸失利益としては、140万円(=35万円/月×4か月)と認めるのが相当である。

Y社が頑なに労働条件に関する書面の作成を拒否した結果、上記のような結論となりました。

賃金の支払いをせず、無期限の自宅待機命令が有効とされることはありません。

仮に賃金を支払っていたとしても、違法と判断されることもありますのでご注意ください。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2236 MRI分析でわかった 東大脳になる勉強習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

帯には、「東大脳の特徴→言葉の記憶に関係する左脳の超側頭野が発達」と書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お子さんをおふたりとも東大に入れたご両親に話をおうかがいすると、どんなに家計が苦しくても、本だけは無条件に買ってあげていたそうです。・・・お子さんたちの向学心がどんどんと旺盛になっていくと、次第に家計を圧迫していきます。そういう中でも、『たとえ衣食を切り詰めても、本だけは与えようと思った』とおっしゃいます。」(237頁)

今の時代、読書をする子どもがどれほどいるでしょうか。

周りを見渡しても、読書ではなく、スマホ等でゲームをやらせている親が大半ではないでしょうか。

無理もありません。

本を読み進めるというのは、根気が必要ですし、決して簡単でわかりやすいものではありません。

幼少期からの習慣の積み重ねの差が、10年後、20年後に目に見える形で明らかになります。

残酷ですが真実です。

配転・出向・転籍61 内部通報の調査過程で判明した事実を理由とする配置転換の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、内部通報の調査過程で判明した事実を理由とする配置転換の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

日本政策金融公庫事件(東京地裁令和7年4月15日・労経速2597号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、Y社の国民生活事業本部南関東地区債権業務室Y分室において定年後の再雇用職員として勤務していたXが、XをY分室からY社の国民生活事業本部Zセンターへ配転する旨のY社の命令は、配転命令権の濫用ないし公益通報者保護法が禁止する不利益取扱いに当たり無効であると主張して、Y社に対し、XがZセンターにおいて勤務する雇用契約上の義務がないことの確認を求めるとともに、①令和5年3月23日の人事上の注意処分としての訓告は、Xの正当な権利行使を阻もうとする不当な意図に基づくものであって不法行為に当たると主張して、不法行為の損害賠償請求権に基づき、慰謝料等として110万円+遅延損害金、②本件配転命令は違法であり不法行為に当たると主張して、不法行為の損害賠償請求権に基づき、慰謝料等として110万円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの言動は、その内容の適否の問題にかかわりなく、態様として不適切なものであり、職場の規律や秩序を乱すものであったというべきである。また、月1面接等でのXの言動は、上司であるA分室長を長時間拘束し、その間、A分室長は、決裁や検印等の管理職業務を行うことができず、代わりにD副室長がその一部を代行せざるを得ない状況に陥らせていたものであり、業務への支障も生じさせていた。さらに、Xの言動により、A分室長は体調不良となり、令和5年3月25日付でY分室から異動することになった。このような事情を踏まえれば、Y分室の職場環境の改善のためには、Xを他の職場に異動させる必要があったものと認められる。

2 Xは、①本件訓告の理由において、Xが公益通報を示唆したことを不当な行為として評価していたこと、②Y社は、本件配転命令を決定する前に本件公益通報がなされたことを明確に認識していたこと、③Y社における定期異動の時期である3月末とは異なる異例の時期に本件配転命令が発令されていることを理由に不当な動機・目的をもってなされたものであると主張する。
しかし、①について言えば、すでに解決した事柄について、あえて繰り返し、脅すかのように「マスコミや個人情報保護委員会に言う」との発言をしたことを問題としているのであって、個人情報保護委員会に通報すること自体を問題視したものとはいえないし、②について言えば、Y社は、本件配転命令を決定する前に本件公益通報がなされたことを明確に認識していたとは認められず、③について言えば、Y社が本件配転命令を発令することを決定した時点において、本件公益通報がなされたことを明確に認識していたとは認められない以上、異例の時期に本件配転命令が発令されているとしても、本件公益通報に対する報復であることを推認させる事情とはいえない。

3 Xは、本件配転命令を受けたことにより、周囲の従業員からの奇異の目にさらされる精神的苦痛の他、通勤が片道30分、往復合計1時間増加したことにより、Xの両親の介護や娘の自立支援という家庭生活に多大な影響を被った旨主張する。
しかし、Xが「周囲の従業員からの奇異の目にさらされる」と感じる点があったとしても、それは本件配転命令に起因するものというよりも、Xの職場内での言動に起因するものというべきである。次に、通勤時間が長くなったことについてみるに、元々、通勤時間が片道1時間30分程度のところが2時間程度になったというものであることや、Xには転居を伴う異動が命じられる余地もあったこと等を考慮すれば、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとはいえない。次に、家庭生活についてみるに、Xの両親の介護を主に担っているのはXの妹であるほか、Xの娘は配転後の就業地から遠くない場所に居住しており、本件配転命令により多大な影響を受けるものとはいえない。
以上の事情を踏まえれば、本件配転命令は、原告に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとはいえない。

公益通報と配置転換が時期的に近接していると、本件のような紛争に発展することが多いです。

配転命令の有効性に関する3要件について、具体的に主張立証をし、公益通報との因果関係を否定することが求められます。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介2235 1日15分勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。

最小の時間で最大の成果を得る」ことを目的とした本です。

ただで忙しい日常生活の中でいかに勉強時間を確保し、効率よくインプットを行うかは、現代社会における社会人の必須のスキルです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

語彙力に関しては、『語彙が豊富であればあるほど成功しやすくなる』と肝に銘じて、意識して語彙力を強化することが肝要です。アメリカでは、語彙力と経済力の相関関係が調査されており、その両者には強い相関関係があることが判明しています。」(133頁)

調査結果を見るまでもなく、語彙力と経済力との間に相関関係があることは容易に想像がつきます。

人は、認識している語彙によってしか物事を考えることができません。

換言すれば、語彙力の有無・程度によって、同じ社会で暮らしていても、見え方や感じ方が人によって異なるわけです。

この結果の差が年を重ねる毎に開いていき、両者の相関関係として表れるわけです。

配転・出向・転籍60 転籍合意と「自由な意思」の要否に関する裁判例(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、転籍合意と「自由な意思」の要否に関する裁判例を見ていきましょう。

富士通ほか事件(東京地裁令和7年3月21日・労経速2594号13頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのある労働契約を締結したXが、Y社らに対し、以下の請求をする事案である。なお、Xは、以下の(1)及び(2)の各請求について、同時審判の申出(民訴法41条)をした。
(1)Y社に対する請求
XがY社に労契法18条の無期転換申込権を行使し、かつ、XとY社との間の上記労働契約の使用者の地位をA社に移転(転籍)する旨のX、Y社及びA社との間の合意が無効又は取り消されるなどしており、Y社との間で期間の定めのない労働契約があるなどと主張して、Y社に対し、以下のアないしウの請求
ア 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
イ 労働契約に基づき、令和5年3月から毎月10日限り、同年2月分以降の賃金54万2500円+遅延損害金の支払
ウ 令和2年9月26日から令和5年1月末日までの分の未払賃金(割増賃金を含む。)896万4171円+遅延損害金の支払
(2)A社に対する請求
仮に上記合意が有効に成立したとしても、A社との間で期間の定めのない労働契約があり、A社の解雇は無効であるなどと主張して、A社に対し、上記(1)アないしウと同じ内容の請求
(3)Y社らに対する請求
Y社らが共謀してY社の従業員が虚偽の説明及び強迫をして、Xに上記合意をさせた行為が不法行為であると主張して、不法行為(民法719条1項)に基づく損害賠償として、Y社らに対し、330万円+遅延損害金の連帯支払

【裁判所の判断】

1 本件訴えのうち、XがY社らに対し、本判決確定の日の翌日から、毎月10日限り54万2500円+遅延損害金の支払を求める部分をいずれも却下する。
2 A社は、Xに対し、7万1899円+遅延損害金を支払え。
 XのY社に対するその余の請求及びA社に対するその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは、本件合意が自由な意思に基づくものではない旨主張する。
この点に関連し、最高裁判決の中には、労働者の同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することを要するとするものがある(最高裁判所昭和48年1月19日第二小法廷判決・民集27巻1号27頁、最高裁判所平成28年2月19日第二小法廷判決・民集70巻2号123頁)。
しかし、これらの最高裁判決は、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無について、労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、自らの意思決定の基盤となる情報を収集する能力にも限界があることに照らし、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から判断されるべきものと解するのが相当であるとしたものであるのに対し、本件のように転籍の意思表示の有無が問題となる場面では、労働者は、転籍により従前の使用者の指揮命令下から離脱することになり、転籍に伴う不利益の内容を認識し得るといえ、本件は、上記の最高裁判決とは事案を異にするといえる。
もっとも、労働者の個別の転籍同意の有無については、慎重に判断すべきであるといえる。しかし、上記の事情からすれば、Xは、転籍の意味を相当程度理解した上で、Y社からA社に転籍する意図をもってY社及びA社との間で本件合意をしたものと認められる。また、Xは、F人事部長らから事実に反する説明や強迫をされたなどと主張するが、この点は、本件合意の有効性(錯誤無効や詐欺取消し等の成否)に影響し得るとしても、本件合意の成立の有無(転籍の同意の有無)に影響を及ぼすものとまではいえない。

転籍同意の有無については、慎重に判断すべきであるものの、「自由な意思」論をそのまま適用することは否定しています。

転籍を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介2234 仕事頭がよくなるアウトプット勉強法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から13年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトルは「勉強法」とされていますが、本の内容としては、単なる勉強法にとどまらず、社会人としての心構えが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

つまるところこちらが質問しているのは、『結論として売り上げはいくら?』ということ。このことを理解し、まず『結論ファースト』で話せるかどうかは、その人のロジカル度を見るポイントです。・・・『理由なんてものは、聞かれたら答えればいい』というのが私の考え。理由が知りたければ、向こうから効いてくるはずなのです。」(188頁)

これ、実際のところ、指導されたとしても、なかなか直りませんよね(笑)

人の話し方(答え方)や聞き方は、長年の癖なので、そう簡単には直らないのです。

質問されていることにストレートに回答できなかったり、聞いているときに「はい、はい、はい、はい」という相槌を連呼したり、途中で自分の話を始めたり(笑)

その人の話し方や聞き方を見れば、その人の人となりや知性を垣間見ることができるように思います。

継続雇用制度37 58歳で退職させたうえで7年間継続雇用する制度が適法とされ、当該継続雇用制度における待遇も「高年法の趣旨」に反しないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、58歳で退職させたうえで7年間継続雇用する制度が適法とされ、当該継続雇用制度における待遇も「高年法の趣旨」に反しないとされた事案を見ていきましょう。

成田国際空港事件(東京地裁令和7年3月27日・労経速2594号36頁)

【事案の概要】

Y社は、定年を60歳とした上で高年法9条1項2号の継続雇用制度として65歳まで雇用する制度を定めているが、本件再雇用制度では、本件再雇用制度の利用を希望する労働者は定年前の58歳で退職することが必要であるとされており、本件再雇用制度を利用しないまま60歳に達した者は定年退職することとなる。
本件は、60歳でY社を定年退職とされたXが、本件再雇用制度が高年法又は労働契約法に反するなどと主張して、(1)主位的に、定年退職後に本件再雇用制度による労働契約が成立するとして、同労働契約に基づき、〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、〈2〉令和5年2月以降の各月支払分の賃金(本件再雇用制度により雇用継続がされた場合に得られるべき賃金20万7750円)+遅延損害金の支払、〈3〉令和5年2月以降の毎年6月及び12月支払分の賞与(本件再雇用制度により雇用継続がされた場合に得られるべき賞与17万6588円)+遅延損害金の支払を求め、(2)予備的に、高年法の規定又は趣旨に反する本件再雇用制度を定めたことが65歳まで賃金を得る権利又は65歳まで雇用を継続できるという法的保護に値する期待を侵害する不法行為に該当するとして、不法行為に基づき、損害賠償金1309万2405円(本件再雇用制度により雇用継続された場合に得られるべき賃金と賞与の合計額又は慰謝料)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 高年法における「定年」とは、労働者が所定の年齢に達したことを理由として自動的に又は解雇の意思表示によってその地位を失わせる制度であると解されるところ、Y社の従業員は本件再雇用制度を利用せずに60歳で定年退職することを選択することもできるから、本件再雇用制度を利用する場合に58歳で退職する必要があることをもって、Y社が定年を58歳と定めたとはいえない

2 高年法8条が、事業主が定年の定めをする場合には、当該定年は「60歳を下回ることができない。」として同条の予定する定年制の内容を一義的に規定しているのに対し、高年法9条1項2号の継続雇用制度については、条文の文言上、制度の内容を一義的に規定せず、多様な制度を含み得るものとなっている。また、高年法9条の改正の基礎となった労働政策審議会の建議においても、年金支給開始年齢までの雇用の確保を進める一方で、経済社会の構造変化等が進む中で厳しい状況が続く企業の経営環境等を考慮すれば65歳までの雇用確保の方法については個々の企業の実情に応じた対応が取れるようにするべきである旨が指摘されている。
これらのことからすれば、高年法9条1項は、同項2号の継続雇用制度の具体的な内容については、65歳までの安定した雇用の確保という同項の目的(同項柱書)に反しない限り、各事業主がその実情等に応じて定めるところに委ねる趣旨であると解される。そして、定年退職後に引き続いて雇用される制度としなければ65歳までの安定した雇用の確保という同項の目的に反するということはできない。
そうすると、同項2号の継続雇用制度が、現に定年まで雇用されている労働者が希望するときはその定年退職後に引き続き雇用される制度であることを要するということはできない
以上によれば、本件再雇用制度を利用する場合に58歳で退職する必要があることをもって、実質的に58歳を定年と定めたものとはいえず、高年法8条及び9条に反するということはできない。

3 この点につき、Xは、高年法9条1項2号が、継続雇用制度を「その定年後も引き続いて雇用する制度」としていることから、継続雇用制度は、定年で退職した労働者を引き続き雇用する制度であることを要する旨主張する。しかしながら、上記規定内容は、「定年と定められた年齢に達した後も引き続いて雇用する制度」と解することもできるのであり、既に説示した同項の趣旨からするとそのように解することが合理的である。

非常にユニークな制度設計ですが、上記判例のポイント1、2からしますと許容される制度であると考えられますね。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介2233 成功する起業家の「非・常識」勉強法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

ビジネスパーソンが日々、どのような着眼点でインプット、アウトプットすべきかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

実は、『他業界の成功法則』を工夫して自社の業界用にアレンジして持ち込むのが、最も手っ取り早く成功を手にすることになるのです。しかし、多くの経営者は『自社の業界用にアレンジする』という頭を使う部分が面倒で、それをやろうとせず、『うちの業界には当てはまらない』という免罪符を使っているだけなのです。」(59頁)

自分の業界の模倣ばかりだと、どこも似たり寄ったりになってしまいます。

全くの異業種のサービスを形を変えて取り入れるほうがいいですね。

同じものを見ても、感じ方は人それぞれです。

常にアレンジの材料を探す意識を持っていることが大切なのだと思います。

継続雇用制度36 65歳以降の雇用について雇止め法理の適用を否定した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、65歳以降の雇用について雇止め法理の適用を否定した事案を見ていきましょう。

大成ロテック事件(東京地裁令和7年3月11日・労経速2594号3頁)

【事案の概要】

本件は、道路工事等の設計、施工、管理及びコンサルティング等を目的とする株式会社であるY社を定年退職した後に、期間の定めのある労働契約をY社と締結し、複数回更新してきたが、その後、Y社から契約更新を拒絶されたXが、Y社に対し、前記有期労働契約は労契法19条1号又は2号により更新された旨主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、令和5年7月から本件判決確定の日まで、毎月25日限り、20万円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 有期労働契約締結の際には、いずれも、Y社の人事担当者が原告と面談をしてXの契約締結の意向を確認した上で、XとY社との間で雇用契約書が作成されており、本件労働契約は、その更新手続が形がい化していたとはいえないから、更新の回数等を考慮しても、労契法19条1号に該当するものとはいえない。

2 満65歳までの雇用区分を再雇用社員とする有期労働契約とそれ以降の雇用区分を契約社員とする有期労働契約では、労働契約更新の期待の程度には大きな差異があり、後者についてXを含むY社の従業員が労働契約更新の期待をもつことが合理的であるということは困難というべきである。このような事情に加えて、最終的に雇用区分を再雇用社員とする有期労働契約が終了した後の、XとY社との間の雇用区分を契約社員とする有期労働契約は、1回しか更新されていない上、その更新の際、Y社からXに対し、それ以降の更新はない旨伝えられていること、Y社は、Xに対して、令和5年7月以降も雇用が継続されることを期待させるような言動は行っていないこと、令和5年度における契約社員の契約更新状況をみても、70歳未満で契約更新を希望した34人の内、Xを含む6人が契約更新されず雇用契約が終了となっており、65歳以降も原則として契約更新がなされる取扱いであったとまでは評価できないこと等の事情も併せ考慮すれば、本件労働契約の契約期間の満了時に満66歳に達するXにおいて、本件労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるとは認められない。

65歳以降の継続雇用は、現在のところ、努力義務であり、上記判例のポイント2の各要素を踏まえれば、裁判所の判断は妥当であると思います。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。