Author Archives: 栗田 勇

本の紹介598 限界の正体(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
限界の正体 自分の見えない檻から抜け出す法

為末さんの本です。

為末さん、同級生なんですね。

為末さんが考える「限界の正体」とその克服法について書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今いる世界で限界を感じるのなら、横を向いてみる。そこには、さらに上に続く階段があるかもしれません。限界とは、今いる世界での限界なのです。自分は、どの世界の、どんなルールだったら戦えるのかに気づいた人ほど、限界の檻から脱出できると思います。」(135頁)

・・・ただし、方向転換にも注意が必要です。僕がハードルではなく、砲丸投げに転向していたら、メダルは取れなかったでしょう。路線転換をするときは、ゼロからまったく新しいことをはじめるよりも、今の自分が持っている本質的な要素を60~70%引き継ぐほうが、限界から抜け出すのに役立つのだと思います。」(137頁)

まずは、限界を感じるところまで圧倒的な努力を積み重ねることです。

多くの場合、私たちが感じる「限界」は、為末さんが言うところの「限界」よりもかなり低いところにある「限界」です。

「今いる世界で限界を感じる」というのは、言うほど簡単ではないのではないでしょうか。

自分の力のなさを感じながらも、日々、もがきながら進んでいくしかないようにも思います。

才能がない以上、自分ができるのは、唯一、人よりも多く努力をし続けることだけです。

解雇211(あじあ行政書士法人事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、解雇無効に基づく逸失利益についての損害賠償請求が一部認められた裁判例を見てみましょう。

あじあ行政書士法人事件(東京地裁平成28年4月20日・労判ジャーナル53号35頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員が、Y社から不当に解雇されたとして、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、上記解雇が不法行為に当たるとして、500万円の損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認等請求は棄却

損害賠償請求は一部認容

【判例のポイント】

1 本件雇用契約には6か月間の試用期間の定めがあり、解約権留保付労働契約とみるべきであるから、試用期間中にした本件解雇は、かかる留保解約権を行使した趣旨と認められるところ、本件解雇は、元従業員の入社後わずか2週間ほどでされたものであり、その解雇理由として挙げる元従業員の営業活動の実態といった点に対しても十分な事実確認、注意指導等を与えた経過が認められず、その他の解雇理由も、およそこのような時期に解雇(留保解約権の行使)を即断するに足りるような事情には当たらないのであって、これら本件解雇の時期、理由、経緯等に照らせば、本件解雇は、元従業員の労働者としての権利を不当に侵害する態様でされた違法なものというべきであり、かつ、Y社においてその点に故意・過失があるものというべきであるから、Y社は、本件解雇について不法行為責任を負い、元従業員に対し、本件解雇により生じた損害を賠償すべき責任を負うものと解するのが相当である。

2 Xは、ハローワークお求人票に月収が14万6000円から60万円と幅のある記載がされていたことから、入社後に自分の仕事ぶりや成果を踏まえて交渉し、50万円ほどの月収を得られるものと期待して入社したこと、仮に6か月間の試用期間中、変わらず月額20万円程度の賃金しか支払われないのであれば、試用期間経過後には自己の売上額の4分の1程度まで月収が上がる仕組みだったとしても、そのような条件でY社の下で働き続ける意思はなく、いずれにしても早期に退職する意向であったことが認められるのであって、そうだとすれば、Xに真にY社の下で就労する意思があるものとは認められないから、Xの上記地位確認請求は理由がないものといわざるを得ない

3 Xは、試用期間中の賃金が月額20万円程度にしかならないのであれば早期に退職する意向であったものであるから、仮に本件解雇がされなかったとしても、元従業員は2か月ほど勤務を続けた時点(最初の賃金を支給される頃)でY社を退職していた蓋然性が高いというべきであるところ、Xは、Y社から、在職中の賃金として10万7500円の支払いを受けていることが認められるから、逸失利益を算出するに当たっては上記受領済みの額を控除すべきであるから、本件解雇と相当因果関係のある元従業員の逸失利益の額は、・・・29万2500円と認められる。

解雇自体は違法だとしつつも、XにY社で継続的に就労する意思がないと認定し、わずかな金額だけを損害として認定した事案です。

解雇事案において、労働者の就労の意思が争点となることは珍しくありませんので、是非参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介597 男が人生で捨てていいもの いけないもの(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
男が人生で捨てていいもの いけないもの (だいわ文庫)

さまざまな著名人の名言を引用しながら、「男はかくあるべし」という男道を説いています。

私は非常に共感する人種ですが、草食系のみなさんには違和感がある内容かもしれません。

とてもいい本です。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・たしかに、現実に出世願望を口にすると、とたんに周囲の風当たりは強くなる。『あいつは、出世しか頭にないんだから』ビジネスの世界でさえ『そんなにがっつくなよ』という、悪しき馴れ合いがまだ幅をきかせている。上昇志向を持つことで顰蹙を買うならどんどん買ったらいいと私は思っているのだが、最近のビジネスマンは妙にお行儀がよすぎて、顰蹙を買う手前で尻込みしている。ビジネスマンが出世競争を自粛してどうするのだといいたい。」(132~133頁)

最後の「ビジネスマンが出世競争を自粛してどうするのだといいたい」はいいですね。

私も同感です。

営業マンが営業成績トップを目指さないでどうするのか、と思います。

これは営業マンに限りません。

日本は今後ますます残業時間の規制が厳しくなり、ワークライフバランス重視になってきます。

限られた時間で成果を出すことがより一層求められていることを意識する必要があります。

私たち弁護士のように、やりたいだけ仕事ができる職種にはあまり関係のない話ですが、労働基準法等が適用される方にとっては、これまで以上に成果を出す「工夫」が求められるでしょう。

つまりは、戦い方を変えていかなければ勝ち残れない日がくるわけです。

不当労働行為154(伊藤興業ほか1社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、実質的に一体性をもった経営主体を構成する会社が労組法上の使用者にあたるかが争われた事案について見てみましょう。

伊藤興業ほか1社事件(兵庫県労委平成28年4月7日・労判1137号91頁)

【事案の概要】

本件は、申立外A社と実質的に一体性をもった経営主体を構成するB社およびC社はA社従業員が加入する労働組合の組合員との関係において労組法7条のの使用者にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

労組法7条の使用者に当たる

【命令のポイント】

1 B社とC社は、両社の創業者であるA及び両社の株主又は役員であるその親族が鉄関連業務を中心とする各種の事業経営を遂行するための手段として設立し、又は経営する会社であり、実質的にA一族の下で一体性を持つ経営体を構成していたのであって、その中でA社は、鉄関連業務を行うB社の運輸部門として機能していたものと認められる。
・・・以上のとおり、B社は、分会の組合員らに対する関係において、労組法第7条の使用者であると認めるのが相当である。

2 C社は、A社の解散時において存在しなかったものの、その設立後においては、A一族の下でA社と一体性を持った経営体を構成しており、A社から鉄関連業務を実質的に引き継いでいると認められ、このことからすると、C社もB社と同様に、分会の組合員らに対する関係において、労組法第7条の使用者であると認めるのが相当である。

別法人にもかかわらず、実質的には一体性を持つ経営体であると認定され、労組法上の使用者性が認められたものです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介596 大切なことだけやりなさい(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
大切なことだけやりなさい

ブライアン・トレーシーさんの本です。

原書は「Focal Point」です。

本当に大切なことに「焦点」を合わせることの重要性を説いています。

いかに効率よく今以上の成果を上げるべきかということを日頃から考えるくせが身につきますね。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

個人も企業も、ビジネスで成功をおさめる出発点は『価値観の明確化』にある。幸せで満ち足りた瞬間とは、心の奥にある信念や価値観と、現実の生活とが一致したときにあなたに訪れる。高い成果をあげる人は、自分が信じることや意図することを自覚していて、これらの価値あるものから目をそらすことはない。・・・自分の価値観を自分自身の行動で説明しよう。口に出して言うのではなく、本当に信じているものは何なのか、自分自身や周囲の人に行動で示すのだ。」(155~156頁)

自分の心の奥にある信念や価値観を行動によって示す。

自分が本当に信じていること、成し遂げたいことを口に出すだけではなく、日々の行動で表現する。

この日々の行動に共感し、感動するからこそ、その個人や企業を信頼するのだと思います。

自分がこうありたい、こうなりたいと思うことと反する時間の使い方はできるだけしないことです。

日々の過ごし方を変えることからしか、結果を変えることはできないと確信しています。

配転・出向・転籍33(大王製紙事件)

おはようございます。

今日は、降格処分は有効であるが出向命令は無効とされた裁判例を見てみましょう。

大王製紙事件(東京地裁平成28年1月14日・労経速2283号13頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、Y社に対し、Y社による配置転換命令、降格処分、出向命令、懲戒解雇はいずれも無効であると主張して、Xが労働契約上の権利を有し、降格処分前の地位にあること、配置転換先及び出向先に勤務すべき労働契約上の義務がないことの確認を求めるとともに、労働契約に基づき、平成25年2月分の未払賃金、解雇後である同年4月以降の月例賃金及び賞与+遅延損害金の各支払を求め、また、Y社がXの内部告発に関するプレスリリースを発出したことによりXの名誉を毀損し、懲戒委員会を開催してXを難詰し、全く合理性のない配置転換命令等を乱発し、無効な降格処分及び懲戒解雇をするなどした一連の行為が、Y社のXに対する不法行為を構成すると主張して、民法709条、715条に基づき、損害賠償金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 XがY社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

2 XとY社との間で、Xがダイオーロジスティクス株式会社赤平営業所に勤務すべき労働契約上の義務がないことを確認する。

3 Y社はXに対し、36万0841円+遅延損害金を支払え

4 Y社Xに対し、平成25年5月から月例賃金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社において、Xを重要な機密情報を取り扱わない部署に再配置する必要があったことは認められるものの、赤平営業所所長という役職は、業務内容の観点からみてXの配置転換先としての合理性を欠くといわざるを得ないものであった。・・・加えて、赤平営業所署長という役職は、実質的には赤平製紙業務課の物流業務の一担当社にすぎず、関係会社の取締役総務部長を歴任したXの配置転換先として余りに不相応なものであった。これらの事情に、赤平出向命令が、本件降格処分を告知した直後にその場で発せられたものであり、Y社において、懲戒処分の検討と平行してXの配置転換先の検討が進められたと考えられることをも併せ考慮すれば、Y社は、懲戒事由に該当する非行をしたXの処遇として、本件降格処分と赤平出向命令とを併せて決定したものであり、実質的にXを懲戒する趣旨で赤平出向命令を発したとの評価を免れないというべきである
そうすると、赤平出向命令は、その動機・目的が不当なものであるといわざるを得ないことになるから、出向命令権を濫用したものとして、無効であるというべきである(最判昭和61年7月14日)。

2 出向命令権や懲戒権の行使が無効であることから直ちに不法行為が成立するものではなく、別途、不法行為に成立要件を充足するか否かを検討すべきであるところ、赤平出向命令は、実質的に懲戒の趣旨で配置転換先を決定したと評価される点において不当というべきものであったが、他方において、その当時、Xを暫定的な配置先であった総務人事本部人事部付から配置転換する必要があったことまで否定されるものではなく、その際、XがY社の秘密に属する情報を漏らしていたことに照らし、重要な機密情報を取り扱わない部署に配置する必要があると判断したことにも合理が認められること、Xは懲戒事由に該当する程度の思い非行をしていたのであり、懲戒事由がない者に対して懲戒の趣旨で配置転換をした場合とは異なること、Xは赤平出向命令に従っておらず、出向に伴う事実上の不利益を実際に受けたわけではないことに鑑みれば、Y社が赤平出向命令を発出し、これに従わなかったことを理由として本件懲戒解雇をしたことが、社会的相当性を逸脱し、不法行為法上違法であるとまでいうことはできないというべきである。

懲戒的意味合いで出向命令を行う場合、上記判例のポイント1のような判断につながってしまいます。

配転・出向後の役職や仕事の内容が大幅に下がる場合、当該業務命令の有効性は、合理的な理由を説明ができるかどうかにかかってきます。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介595 ニャンコと学ぶマーケティング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ニャンコと学ぶマーケティング

著者は、パナソニックの社員研修所でマーケティングを中心とした研修を担当する方です。

パナソニックに受け継がれるマーケティングのDNAについては参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

マーケティング戦略を立てるときには、『昨日の成功は、今日の失敗のもと』『昨日見つけた新発見は、今日はもう誰もが知っている』を肝に銘じていました。マーケティングは日々進化しています。競争相手も進化しています。市場だって日々変化しています。」(177頁)

そうですね。

どうしても、過去の成功体験に引きずられてしまいがちです。

この前、このやり方でうまくいったのだから、今回も同じようにやればきっとうまくいくと思ってしまうのは無理のないことです。

しかし、進化のスピードが速い分野でそれをやってしまうと、「何年前のやり方しているの・・・(失笑)」ということになってしまいます。

ついこの前まで斬新だったやり方も、あっという間に陳腐化してしまうわけで。

変化することに体と頭を慣れさせておかないと、流れの速さについていけなくなってしまいますね。

賃金116 競業他社に転職した場合の退職加算金の返還合意の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、競業他社に転職した場合の退職加算金の返還合意の有効性が認められた裁判例を見てみましょう。

野村證券事件(東京地裁平成28年3月31日・労経速2283号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、元従業員のXに対し、XがY社を退職する際、同業他社に転職した場合は返還する旨の合意をして退職加算金を支給したが、Xが退職後に同業他社に転職したと主張して、上記返還合意に基づき、退職加算金相当額+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

XはY社に対し、1008万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件返還合意は、本件制度に基づく本件退職加算金の支給に伴うものであるところ、本件制度は、従業員が申請し、Y社が承認した場合に、通常の退職慰労金に加えて退職加算金を支給するという制度であり、これを利用するか否かは、従業員の自由な判断に委ねられているものと解される。したがって、Y社を退職しようとする従業員において、Y社との間で将来同業他社に転職した場合に退職加算金を返還する旨の合意(本件返還合意)をすることを望まないのであれば、本件制度を利用しなければよいのである。本件においても、Xは、自ら本件制度の利用を申請したものであり、Xが本件制度の利用をY社に強制されたと解すべき事情は認められない

2 また、本件返還合意は、従業員に対して同業他社に転職しない旨の義務を負わせるものではなく、従業員が同業他社に転職した場合の返還義務を定めるにとどまるものである。したがって、Y社を退職しようとする従業員としては、将来同業他社に就職することが確定しているのでない限り、ひとまず本件返還合意をして退職加算金を受け取っておき、将来同業他社に就職する機会が生じたときに退職加算金を返還して就職するか否かを考えることで何ら問題ないということができるのであり、本件制度を利用して退職することが、これを利用せずに退職する場合よりも従業員に不利になる事態を想定することはできない。かえって、本件制度においては、通常の自己都合退職の場合に行われる退職慰労金の減額が行われないのであるから、退職加算金の支給を考慮しなくても、通常の退職より従業員に有利であるということができる

3 以上のとおり、本件制度は、退職加算金の受給に伴って本件返還合意をしなければならないことを考慮しても、Y社を退職しようとする従業員にとって通常の退職よりも有利な選択肢であるということができるから、本件制度のうち本件退職合意だけを取り上げて、これが退職後の職業選択の自由を制約する競業禁止の合意であると評価することはできないというべきである。

裁判所の判断に賛成です。

このような制度であれば、退職後の転職を不当に制約すると評価されることはないと思われます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介594 本音で生きる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方 (SB新書)

本音で生きることが難しい時代だからこそ堀江さんのこの本が売れているのだと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

飛びついた結果がどうなるかなどわからないが、確実にいえることがある。ノリのよい奴には、あちこちから声がかかるようになり、加速度的にいろんな経験ができるようになっていくのだ。」(98頁)

たしかにそうかもしれませんね。

周りを見わたしてみても、ノリがいい人にはお誘いがかかります。

ノリが悪くて、かわいげがない人を積極的に誘う人はあまりいませんよね(笑)

声がかかるということは、それだけいろんな経験ができるということですし、いろんな人に会えるということです。

どれだけ仕事ができても、お呼びがかからなければしかたがないわけです。

ノリのよさやかわいげというのは、思っている以上に大切な要素なのだと思います。

不当労働行為153(学校法人九州電機工業学園事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、定年退職予定の組合員2名に対して雇用期間1年、週10時間の勤務形態、基本賃金月額8万4600円等の短時間嘱託とする継続雇用条件を提示したことが不当労働行為にあたらないとした事案を見てみましょう。

学校法人九州電機工業学園事件(福岡県労委平成28年4月15日・労判1137号90頁)

【事案の概要】

本件は、定年退職予定の組合員2名に対して雇用期間1年、週10時間の勤務形態、基本賃金月額8万4600円等の短時間嘱託とする継続雇用条件を提示したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 本件のように、業務量、本人の能力や法人の経営状況等を考慮して継続雇用の労働条件を個別的に決定する制度の下においては、労働者の多様な希望への対応が可能であるところ、労働者が従前どおりの勤務を希望する場合において、労働者に提示された労働条件が、従前と比較して月額賃金の21パーセント程度、収入ベースでみると17パーセント程度となる月額84600円という著しく低いものであるときは、合理的な理由が認められない限り、同法(高年法)の趣旨に抵触するというべきである。

2 Y社は、定年退職者の継続雇用の条件については、就業規則等に定める継続雇用制度の範囲内でその都度、業務量、本人の能力及び法人の経営状況等に応じて定めていたということができ、特に、教員については、授業及び校務の実施体制上の必要性に応じて、「常勤嘱託」とするか「非常勤又は短時間嘱託」とするかを決定するとともに、授業のみを担当させる後者については、定年退職する教員が担当できる授業科目の年度ごとの実施体制等を考慮して、担当する授業時間数を決定していたとみることができる
・・・したがって、Y社が、A2らに対して本件継続雇用条件を提示したことについては、カリキュラム編成等の学校運営における合理的な理由に基づくものであったと認められる

3 Y社が、A2らに対して本件継続雇用条件を提示したことは、前記のとおり、ほかの継続雇用された教職員の雇用条件と比べて、経済的に不利益な取扱いであることは否定できない。
しかしながら、Y社が本件継続雇用条件を提示したことには、学校の運営上合理的な理由が認められ、また、非組合員にも本件継続雇用条件と同一の条件で雇用された事例があり、・・・Y社が本件継続雇用条件を提示したことが組合嫌悪の意思によることを示すとは認められない

継続雇用の際、合理的な理由なく労働条件を大幅に下げると本件のようなトラブルになります。

合理的な理由を説明できるかどうかが鍵となります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。