Author Archives: 栗田 勇

本の紹介588 出世する人、しない人の1ミリの差(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。
出世する人、しない人の1ミリの差

帯には「頭角を現し、大差をつける人に共通する微差とは?」と書かれています。

ほんの些細な差の積み重ねが、結果の違いとして現れるわけです。

とても勉強になる本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

パナソニック創業者の松下幸之助さんの有名な言葉に、『うまくやっている人は、なぜうまくやれているか?それは、うまくやれるようにやっているからだ。ダメになる人は、なぜダメになっているのか?それは、ダメになるようにやっているからだ』というものがあります。・・・つまり。成功する人やうまくやれる人は、成功し、うまくいくような原理原則に則って行動しているということで、原理原則というのは、『時間に厳しい』、『約束は必ず守る』、『感謝の言葉を忘れない』、など、一般的によく言われていることです。」(50~51頁)

「微差」を意識し、それを続けることこそが大差をつける唯一の方法であると確信しています。

王道と呼ばれる原理原則を守り、当たり前のことを大切にする。

トリッキーは方法は、ぱっと見はとても見栄えはいいかもしれませんが、やはり原理原則ではないのです。

多くの成功者が大切にしている核・基本というのは、一見すると「なーんだ、そんなことか」と思うものですが、それが真理です。

今も昔も「基本」というのはそんなに変わるものではありません。

年齢や地位が上がるにつれ、当たり前とされる「基本」を疎かにしてしまいがちですが、どこまでいっても大切なのは原理原則です。

このことを忘れずに日々努力をしていこうと思います。

配転・出向・転籍32(社会福祉法人奉優会事件)

おはようございます。

今日は、出向命令が有効とされた裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人奉優会事件(東京地裁平成28年3月9日労経速2281号25頁)

【事案の概要】

本件は、主位的に、Y社のXに対する違法な出向命令により、Xの出向後の給与及び賞与が出向前よりも減額したとして、その差額について、不法行為に基づく損害賠償を求め、予備的に、出向命令が有効であるとして、上記差額について、出向規程に基づく補償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件限定合意がある以上、Xの同意のない本件出向命令は違法・無効であると主張する。確かに、労働条件通知書には、「就業の場所」として、「特別老人ホーム白金の森」と記載されているが、当該記載は、採用時の労働条件の明示事項(労働基準法15条1項)である勤務の場所を記載したものであり、採用直後の勤務場所を記載したものにすぎないと認められる。また、Xは、募集要領に「法人内異動:有」と記載されているところ、Xの就業場所としてY社が経営する施設以外への出向等がないかについて、就職時、特に確認していたと主張する。しかし、Y社は本件限定合意の成立を否認しており、Y社職員のうちXだけ出向規程の適用を排除すべき特段の事情があったと認められないこと、他に上記合意の成立を認めるに足りる的確な証拠がないことからすれば、本件限定合意が成立していたと認めることはできない

2 Y社は、ケアマネージャーとして勤務したいというXの希望を踏まえた上で、本件出向命令に至っているのであって、出向を命ずる業務上の必要性はあったと認められ、他に本件出向命令について、不当性をうかがわせるような事情はない。また、本件出向命令によってXの労務提供先は変わるものの、その従事する業務内容(SPM)について、事前に説明会が実施されており、Xは自分が担当するSPMの業務内容について十分理解していたこと、出向規程において、出向中の職員の地位、賃金、退職金その他処遇等に関する規定等、特に本件補償規程を設けて、経済的不利益が大きくならないように配慮していることを勘案すれば、Xが労働条件等において著しい不利益を受けるものとはいえない。そして、本件出向命令に至る経緯及び本件出向命令後、Xは何ら異議を述べることなく出向先での勤務を開始していることからすれば、Y社において、Xが出向に同意したものと認識し、出向同意書の返送を催促せず、その結果、出向同意書が未提出のままになっていたことも理解できるものであり、当該事実が、本件出向命令の不当性をうかがわせるような事情であるとはいえない
これらの事情にかんがみれば、本件出向命令が権利の濫用に当たるということはできない。

X側とすれば、限定合意の存在を強く主張しましたが、この点について裁判所が否定したためにかなり厳しい戦いとなりました。

出向命令自体、特に不当な目的のためになされたものでもなく、かつ、経済的不利益を減らすための措置を講じていることからこのような判断となりました。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介587 1杯の水と卵1個で変わる史上最強のコンディショニング術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
1杯の水と卵1個で変わる史上最強のコンディショニング術

著者は高校教師でパワートレーニング顧問の方です。

ブログもやっており、とても参考になります。

体の作り方にとどまらず、習慣化に重きを置く教育法は、とても共感できます。

体を鍛えている人で後向きな人に会ったことがありません。

みんなプラス思考ですし、日々の習慣とタンパク質がどれほど大切かを身をもって知っているのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『習慣化したこと』が、実際に習慣化されてしまうと、そのあとは楽。というのも、習慣化されたことによって、それは単なる『ルーティン』となり、いちいち意識せずにやりとげることができるからです。・・・何か行動に移す前に、ふんぎりがつかなかったり、いちいち『あれをやらなきゃ、これもやらなきゃ』などと思うこともありません。この『思い悩むことなく、体まかせの状態になってしまう』ことこそ、ルーティンの最大の効能です。」(183頁)

最近では、この「ルーティン」という言葉が日常用語として登場しますね。

私は、やはり「習慣」という言葉のほうがわかりやすいような気がします。

体作りも仕事もこの「習慣」が本当に大切です。

どのようなことを習慣化しているのかがそのまま結果に表れます。

どんなことを日常生活に取り入れるのか。

ここが運命の分かれ道です。

労働時間42(阪急バス事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、バス助役の仮眠時間につき労基法上の労働時間に当たらないとされた裁判例を見てみましょう。

阪急バス事件(大阪地裁平成27年8月10日・労経速2281号9頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、バス助役として勤務しているXが、時間外労働を行ったが割増賃金が支払われていないとして、平成23年1月から同年11月までについてはY社の違法な労務管理によって損害を被ったとして不法行為に基づき、同年12月から平成25年9月までについては雇用契約に基づき、その支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、62万1341円+遅延損害金を支払え

Y社は、Xに対し、付加金として62万1341円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 確かに、助役は、最終バスの点呼を行い、門の施錠や構内の点検を終了した後から始発バスの準備までの間、伏尾台営業所の事務室内にある仮眠室で仮眠することとされていたのであるから、滞在場所については場所的な拘束がなされていたといえる。
また、確かに、助役が仮眠室に泊まり込むことで、何らかの緊急事態等が発生した場合には、迅速な対応をとることが可能となることからすれば、仮眠時間中においても、労務提供の可能性が皆無であったとまではいうことができない
しかし、助役は、門の施錠や構内の点検終了後から、始発バスの準備までの間に、日常の業務として何らかの業務に従事することを求められていたわけではなく、実際のXら従業員の状況をも併せ考慮すると、門の施錠や構内の点検終了後から、始発バスの準備までの時間において、労働契約上の役務の提供が義務付けられていたと評価することは困難であり、仮眠時間中に、仮眠室においてすごしていた不活動仮眠時間については、原則として、労働からの解放が保障されており、労働契約上の役務の提供が義務付けられていなかったと評価することができる(なお、仮眠時間が労働時間に当たらないとしても、例外的に作業が必要となり、実際に作業に従事した時間については時間外労働として賃金の支払が必要となることは当然である。)。
したがって、本件における仮眠時間について、労基法上の労働時間に当たると認めることはできない。

2 Xが主張する損害は未払賃金相当額であるところ、Y社がXの労働時間を適正に把握しておらず、その結果、Xの割増賃金について一部が未払となっていたとしても、Xとしては、正しい労働時間を前提とした割増賃金を計算し、未払となっている割増賃金の不払を請求することができるのであるから、割増賃金の一部が未払であることをもって、Y社が労基法上の罰則を受けたり、Xとの関係で債務不履行責任を負うことはともかく、Xとの関係で直ちに不法行為を構成すると解することはできない。

約461万円の請求に対して約62万円という結論です(付加金も同額認められています)。 

大星ビル管理事件最高裁判決の考え方を踏襲しています。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介586 人に必要とされる会社をつくる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
人に必要とされる会社をつくる

著者は、三重県の万協製薬株式会社の社長です。

阪神・淡路大震災の絶望を乗り越えて学んだ『本当に強い経営』」と書かれています。

逆境を乗り越えた方は、本当に強いです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生の経験の大半は人との交わりの積み重ねである。そして、人生の質は、素晴らしい、尊敬できると思える人と、どれだけ出会えるかで決まると言っても過言ではない。だから、こういう人たちに数多く出会えるような生き方をすべきだ。それは感性を研ぎ澄ましてアンテナの感度を良くすることであり、また、そういう人たちと会うにふさわしい人間か、常に自分自身を謙虚に見つめるということでもある。中国の古典に『弟子に準備ができたとき、師は自然に現れる』という言葉もあるように、素晴らしい人との出逢いというのは、自分がその人に会うのにふさわしい人間になったときに生まれるのだ。」(214頁)

素晴らしい人との出逢いというのは、自分がその人に会うのにふさわしい人間になったときに生まれるのだ」という言葉、素晴らしい言葉ですね。

出逢いを追うのではなく、自分が出逢いにふさわしい人間になるように準備をするという発想です。

出逢いがないことを嘆くのではなく、それはまだ自分の準備が整っていないと考える。

準備が整えば、あちらからお声がかかるということです。

焦らず、こつこつ準備をする。

人とのつながりを広げるための王道です。

不当労働行為150(アドバンストコミュニケーションテクノロジー事件)

おはようございます。

今日は、取引先会社における派遣業務が終了した組合員に対し、自宅待機を命じ、給与を減額支給したことの不当労働行為該当性に関する命令を見てみましょう。

アドバンストコミュニケーションテクノロジー事件(中労委平成28年6月1日・労判1136号168頁)

【事案の概要】

本件は、取引先会社における派遣業務が終了した組合員に対し、教育訓練を受講させずに自宅待機を命じ、給与を減額支給したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Xに対する自宅待機命令当時の賃金規程第20条によれば、Y社は、派遣業務を終了して未稼働状態となった社員に対し、教育訓練又は休業(自宅待機)を命じることがあり(基本的には教育訓練を行うとされている。)、教育訓練を受講した場合に支給される基準内賃金は、1か月目が90%、2か月目以降は80%と定められているのに対し、自宅待機の場合に支給される基準内賃金は60%と定められている
Xは、自宅待機を命じられ、上記規定に基づき、自宅待機中の給与について、基準内賃金を60%に減額され、同時に、教育訓練を受講し、技術者としての自らのスキルを向上させる機会を失うなどしたのであるから、教育訓練を受講した場合に比べて経済上及び職業上の不利益を被ったことは明らかである。

2 Y社は、Xに対し、合理的な理由もなく教育訓練を行わずに自宅待機を命じており、このような扱いを受けたのはXのみであったこと、Y社は、Xへの自宅待機命令当時、労組の協力に基づき結成された準備会を問題視し、Y社に対する批判や要求を疎ましく思っていたと認められることからすれば、Xに対する自宅待機命令は、準備会の結成メンバーとしてY社を批判し、労働条件や職場環境の改善等を要求していることを理由に、同人を社外に排除するために行われたものというべきであるから、同自宅待機命令及びその機関中に教育訓練を受けた場合と比較して給与を減額支給したことは、労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当すると認めるのが相当である
また、Xに対する上記不利益取扱いは、組合活動を萎縮させ、また、社員に対する組合への加入を思い留まらせる効果等を有すると認められるから、同時に同条第3号にも該当する。

教育訓練を行わずに自宅待機を命じたことについて合理的な理由を説明できればよいのですが、できないとなると不当労働行為になってしまいますね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介585 ブランド人になれ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ! (トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦 (1))

「エクセレント・カンパニー」で有名なトム・ピーターズさんの本です。

自分というブランドを売るという意識を持つことの大切さを説いています。

自分は何を売ってお金を得ているのかを考えさせられます。

向上心の高い人にはおすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

生活の糧を得るというのは、自分を売ることだ。頭ではわかっていたが、骨身に沁みてそれがわかったのは、安定した収入を断たれ、職を求めては不採用通知をもらう苦しみを味わってからだった。自分を未完成の商品のように考え、自分の一番の強みが何であるかを考え、それを市場で売ることは、人間としてまっとうなことだ。つまるところ、問題は、自分が望むものを手にするために、やらなければならないことをやる意思があるかどうかだけである。」(241頁)

タイトルにもなっている「ブランド人」という言葉は、つまるところ、「自分を売る」という意識を持つことなのだと思います。

自分を売ることで生活の糧(給料・報酬)を得ているという感覚を持てるかどうか。

給料が低いと嘆くのではなく、高額の給料を得るために、自分という商品の価値を高める努力をするのです。

単に所定の就業時間中、与えられた仕事をこなすだけの人と仕事を通じていかに自分の価値を高めるかを考えている人とでは、1年後の結果は雲泥の差でしょう。

解雇210(野村證券事件)

おはようございます。

今日は、名誉等の毀損、顧客情報漏えいを理由とする懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

野村證券事件(東京地裁平成28年2月26日・労判1136号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社に対し、Y社による平成24年6月29日付け懲戒解雇は無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、労働契約に基づき、平成24年7月1日から同月31日までの間の月例賃金の残金(116万7000円から解雇予告手当として支給された98万9500円を控除した17万7500円。)、同年8月1日以降の月例賃金及び平成25年以降の賞与+遅延損害金の各支払を求め、また、上記懲戒解雇がXに対する不法行為を構成すると主張して、民法709条に基づき、慰謝料1000万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

 Xが、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 Y社は、Xに対し、17万7500円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、平成24年8月以降、本判決確定の日まで、毎月10日限り116万7000円+遅延損害金を支払え。
4 Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 以上のとおり、Y社の主張する懲戒事由のうち、第1懲戒事由については、Y社が援用する就業規則42条11号及び20号所定の懲戒事由に該当するものとは認められないが、第2懲戒事由については、その一部(本件会話)が就業規則42条14号及び20号所定の懲戒事由に該当するものと認められる。
そこで、上記懲戒事由に基づいて懲戒解雇をすることが相当であると認められるか否かについて検討すると、次の事情を指摘することができる。
証拠によって認められる本件会話及びその前後の会話内容によれば、本件会話のうち、別紙(通話記録)のものは、XがBに対し、Y社の顧客に対して特定の銘柄の株式の購入を勧誘すべきか否かを相談する文脈でされたものであり、その余の会話は、XがBとの間で市場動向等について議論する文脈でされたものであると認められ、XとBが顧客情報の伝達それ自体を主たる目的として会話をしていたとは認められず、Xが情報提供の見返りに金銭その他の経済的利益を得ようとするなどの背信的な意図を有していたとも認められない
証拠によれば、本件会話のうち、別紙(通話記録)記載5ないし9の会話は、XがY社の情報端末を見ながら表示される顧客情報を次々に開示するというものであり、開示された顧客情報の内容も、取引金額を含む具体的なものと認められ、その態様及び内容に照らして軽視することのできない違反行為というべきであるが、これらの会話は1回の通話の機会に連続してされたものであり、このような態様及び内容の会話が複数の日に反復継続して行われたとまで認めるに足りる的確な証拠はない
・・・Y社がXに対し、本件懲戒解雇より前に顧客情報の漏えいについて注意、指導をし、あるいは訓戒、譴責等を含む懲戒処分をした旨の主張立証はない(Y社の就業規則には、懲戒解雇よりも軽い懲戒処分として、訓戒、譴責、減給、出勤停止、降格及び諭旨解雇が定められていることが認められる。)。
そして、Xは上記認定に係る顧客情報の漏えいをその所属する機関投資家営業二部の執務室において行っていたところ、同室の配席状況に照らすと、上記顧客情報の漏えいに係るXの発言は同室の上司及び同僚にも聞こえていたと考えられるのであり、それにもかかわらず、Xは、顧客情報の漏えいに当たる会話をしたとして注意や指導を受ける機会がないまま、突如として、懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇処分を受けたものであった
Y社がXに対し、本件懲戒解雇に先立って、第2懲戒事由の具体的内容を開示してXの弁解を聴取する機会を設けた旨の主張立証はない。すなわち、Xは、第2懲戒事由との関係では、何ら弁解の機会を付与されることなく懲戒解雇処分を受けたものであった。
以上の事実関係の下において、本件会話を懲戒事由として、懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇処分を行うことは、重きに失することが明らかというべきであり、また、本件懲戒解雇は、懲戒事由に該当すると認められる事実について弁解の機会を全く与えることなく行ったという点において、手続的にも妥当を欠くものであったといわざるを得ない。
したがって、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることができず、懲戒権を濫用したものとして、無効であるというべきである。

2 本件懲戒解雇は無効であるが、懲戒解雇が無効であることから直ちに不法行為が成立するものではなく、別途、不法行為の成立要件を充足するか否かを検討すべきである。
ここで、Xには、第1懲戒事由に関連して、証券会社の営業に携わる者として著しく不適切な行為があったものといわざるを得ず、当該行為は、いかなる懲戒処分をもって相当とするかは別として、それ自体が懲戒事由に該当する可能性を否定できないものである。また、第2懲戒事由の一部(本件会話)については、複数の機会になされ、その中には複数の顧客の具体的な取引内容を次々に明らかにするものも含まれているのであって、懲戒事由に該当し、その情状も決して軽視することのできない違反行為というべきものである
・・・以上によれば、本件懲戒解雇が、社会的相当性を逸脱し、不法行為法上違法の評価を受けるものとまでは認めるに足りないというべきであるし、また、不法行為の成立要件である違法な権利侵害についての故意、過失のいずれについても認めるに足りないともいうべきである。したがって、原告の被告に対する損害賠償請求は、理由がないということになる。

相当性の要件で助けられています。

懲戒解雇はハードルが高いですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介584 人生で起こることすべて良きこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。
人生で起こること すべて良きこと

サブタイトルには「逆境を超える『こころの技法』」と書かれています。

逆境もすべて何らかの気付きを与えてくれるものだと解釈するわけですね。

逆境の受け入れ方を学ぶことができるとてもいい本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

起こった出来事の『意味』を考える。その習慣を身につけることです。
日々の仕事や人生において起こる出来事の、『意味』を考えるという習慣を身につけていくと、特に、苦労や困難、失敗や敗北、挫折や喪失といった『逆境』と思える出来事に遭遇したときには、その『意味』を深く考えることができます。
逆に言えば、日頃から、出来事の『意味』を考えるという習慣を持たないと、いざ、大きな逆境が与えられたとき、ただ心が混乱するだけで、冷静に『解釈力』を発揮して、その出来事の『意味』を考えることができません。」(61頁)

前段は、よく言われることですね。

ポイントは、「逆に言えば」から始まる後段の部分です。

日頃から訓練をしておかないと、いざというときにいきなりやれと言われてもできるわけがありません。

自分の目の前で起こる出来事、出会い、現象はすべて最初からそうなることが決まっていて、それは自分になんらかの「気付き」を与えるために起こるのだとして、それに気付けるか、自分にプラスになる意味を解釈できるかが大切なのだと思っています。

日々の習慣により人生の解釈が変わり、その結果、幸福度が上がると考えています。

幸せは探すものではなく、感じるものです。

解雇209(医療法人社団Y事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、看護師らに対する不適切な言動等を理由とする医師に対する解雇が有効とされた裁判例を見てみましょう。

医療法人社団Y事件(東京高裁平成27年10月7日・判時2287号118頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、Y社が運営する病院に医師として勤務していたXが、①Y社に解雇されたが、当該解雇は解雇権の濫用で無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②解雇後本判決確定の日まで毎月の未払給与の支払、③平成24年12月支給分の賞与+遅延損害金、④時間外割増賃金+遅延損害金、⑤付加金+遅延損害金、⑥Y社による解雇によって精神的苦痛を被ったなどと主張して、不法行為に基づき、損害賠償+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、Y社に対し、時間外割増賃金56万3380円+遅延損害金並びに付加金11万2334円+遅延損害金の各支払を命じ、その余の請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xは、自らの看護師に対する指示が曖昧ないし不適切なものであったにもかかわらず、これに従った看護師を叱責したり、申請書の記載に不備があってその訂正を求められていたにもかかわらず、申請どおりに処理しなかった担当社を厳しく責めるなど、自己の責任を顧みることなく、他人を責めたりしたこと、看護師や研修医を指導する立場にありながら、その指導において相手の人格を否定するような発言をしたり、有形力を行使するなど、指導の方法が不適切であったこと、また、看護学生や患者がいる場所で、看護師を怒鳴ったり、看護師と言い合うなど、看護学生や患者をいたずらに不安にさせ、Y社病院の信用を低下させるおそれのある行為をしたこと、そのため、看護師においてXに報告や指示内容の確認をするのをためらうといった状況を生み、良質な医療の提供の前提となる看護師との連携を著しく困難にさせ、業務遂行に大きな支障を生じさせたことが認められるのであり、このようなXの言動は、医療の提供というY社病院の中枢の業務の遂行を困難ならしめるものであり、就業規則に定める勧告退職事由である「職務上やむを得ない都合による場合」に該当するところ、Xは、退職届の提出を拒んだのであるから、就業規則に定める解雇事由である「退職届の提出を拒んだ場合」に該当すること、そして、本件解雇が客観的に合理性を欠き社会通念上相当性を欠くものということはできず、解雇権の濫用には当たらないことは、いずれも前記判断のとおりである。

2 本件雇用契約及び本件時間外規程に基づき、XとY社が、本件時間外規程に基づき支払われる時間外労働賃金及び当直手当以外の通常の時間外労働賃金については、年俸に含まれる旨を合意したものであり、上記合意に係る本件雇用契約及び本件時間外規程は有効と認めるのが相当である。

上記判例のポイント2は珍しい判断ですね。

固定残業制度に関するこれまでの判例の一般的な流れからは外れる判断のように見えます。

Xの職業や給与額が関係しているようですが、あくまで例外的な判断と位置付けるほうがよさそうです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。