Author Archives: 栗田 勇

不当労働行為83(育良精機大阪工場ほか1社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、労組法上の使用者性に関する命令を見てみましょう。

育良精機大阪工場ほか1社事件(中労委平成25年9月4日・労判1079号172頁)

【事案の概要】

Y1社は、茨城県つくば市に本社を、大阪府東大阪市内に工場を置き、高速道路用防音壁等にかかわる金属のプレス加工や板金加工等を行う会社である。

Y2社は、茨城県筑西市に本社を置き、金属製品製造業等を営む会社である。

Y1社は、従業員に対して、平成22年4月2日に特別一時金を、同年7月29日及び12月28日に夏季および年末一時金を支給した。Eを除くプレス板金担当の正社員7名に対する支給額をみると、特別一時金は、2万円がAほか1名で、他の5名は3万円であり、夏季一時金は、Aが27万円で、他は30万円台が2名、40万円台が4名であり、年末一時金は、Aが30万円で、他は30万円台が3名、40万円台が3名であった。

平成23年4月1日、組合は、Aに対する本件一時金の差別支給が不当労働行為であるとして本件救済を申し立てた。

【労働委員会の判断】

1 Y2社はAに対する関係で使用者の地位にない

2 Y1社が、Aの一時金をプレス板金担当正社員の中で最低額としたことは不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 Y1社とY2社との間には、業務運営に関し一定の関係がうかがえる事実が認められるものの、両社には資本関係がなく、また、兼務役員はいるものの、丙社長やD専務はY1社の役員でもなく、同人らの行為をもってY2社がY1社の経営に支配力を有していたことの証左とまではいえないことからすると、本件工場が、Y2社の建材事業部の大阪工場という位置付けにあるということはいえない。また、本件工場の本件一時金の支給額の決定過程を踏まえると、Y2社がY1社の従業員の基本的な労働条件について、具体的かつ直接的な影響力ないし支配力を有していたとみることはできない
したがって、Y1社は、Y2社の正社員であるA組合員に対する関係において、使用者の地位にあったということはできないから、労組法7条の使用者には当たらない

2 Y1社は、一時金の査定に当たってあらかじめ定められた一貫性のある合理的な査定方法を採っているとは認められず、むしろその運用においても粗雑な査定を行っていたといえるものであり、また、A組合員の業務の専門性が低いことや時間外労働時間数が少ないことをもって、A組合員の査定を低く評価していることに合理性はなく、他に、査定が適正に行われたと認めるに足る証拠はないことからすれば、A組合員の本件一時金の額がEを除くプレス板金担当の正社員の中で最低額であることに合理性を認めることはできない。・・・以上によれば、労組法7条1号に該当する不当労働行為に該当する。

判例のポイント1の労組法上の使用者性については、ときどき争点になりますね。

規範がありますので、参考にしてください。

判例のポイント2で示されている一時金の金額の問題ですが、他の従業員との金額の差について客観的に合理的な説明ができない場合には、本件のように不当労働行為性を肯定されてしまう可能性がありますので、ご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介285 ルールを変える思考法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。土、日も終日、打合せが入っています。がんばります!!
__

←先日、「キャトル プレジール」に行ってきました。

写真は、「いろいろお豆のトマトカレー」です。

めちゃうまです。 すばらしい!

今日は、午前中は、裁判員裁判の公判前手続と債権回収の裁判が1件入っています。

午後は、島田の裁判所で離婚調停が1件、夕方から顧問先会社でのセミナーが入っています。

セミナーのテーマは、「第3回 契約書作成に必要なリーガルマインド習得講座」です。

夜は、顧問先会社の新年会に出席します。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 ルールを変える思考法 (角川EPUB選書)

著者は、「ニコニコ動画」で有名な株式会社ドワンゴの代表取締役会長です。

YouTubeに勝つためにどのようなことを考えているのかが書かれており、参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

とにかく、簡単に理解できるものであればライバルが増えすぎるし、あまりにも先に行きすぎてしまうと、ついてくる人がいなくなる。そんなギリギリの境界線上に立つためには、『偶然』や『運』も求められてくるはずですが、それら偶然や運までを含めて、個人の『才能』と考えるべきなのでしょう。逆にいえば、才能は、運にも左右されるものなのです。」(87頁)

著者は、「勘違いと先見の明は紙一重である」と言っています。

わかりやすすぎてもダメですし、とんがりすぎてもダメですよね。 

なんでもそうですが、このバランスをとることが大切なのだと思います。

ビジネスも人間関係も、すべては「バランス力」だと思っています。

また、著者は、「才能は、運にも左右されるもの」と言っています。 同感です。

もっとも、失敗したときに、運のせいにするのは論外ですが。

成功したときには、「運がよかった」。 失敗したときには「力が足りなかった」と思うべきです。

労働災害69(園田競馬場事件)

おはようございます。

__

←先日、常磐町にある「ピッツェリア レジーナ」に行ってきました。

写真は、「カルツォーネ」です。

生地を二つ折りにして焼いてあるピザです。

中にはソーセージ等が入っています。

これはこれでおいしいです。

お店が街中にあるので、行きやすくていいですね。 

今日は、午前中は、新規相談が1件と離婚調停が1件入っています。

午後は、新規相談、裁判の打合せ、ラジオの打合せが入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、同一職場の警備員によるマークレディ殺害と業務起因性に関する裁判例を見てみましょう。

園田競馬場事件(大阪高裁平成24年12月25日・労判1079号98頁)

【事案の概要】

本件は、兵庫県競馬組合園田競馬場において、マークレディ(園田競馬場において勝馬投票券購入のためのマークシートの記入方法等を案内する担当係員の通称)として稼働していたXが、園田競馬場で警備員として勤務していたCに殺害されたことにつき、Xの遺族が、本件災害がXの業務に起因するものであると主張して、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金と遺族補償年金前払一時金及び葬祭料とをそれぞれ不支給とした尼崎労働基準監督署長の各処分の取消しを求めた事案である。

原審は、原告の請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

原判決を取り消す。

遺族保障年金等不支給処分を取り消す。

【判例のポイント】

1 ・・・このような観点からすると、労働者(被災者)が業務遂行中に、同僚あるいは部下からの暴行という災害により死傷した場合には、当該暴行が職場での業務遂行中に生じたものである限り、当該暴行は労働者(被災者)の業務に内在または随伴する危険が現実化したものと評価できるのが通常であるから、当該暴行が、労働者(被災者)との私的怨恨または労働者(被災者)による職務上の限度を超えた挑発的行為もしくは侮辱的行為によって生じたものであるなど、もはや労働者(被災者)の業務とは関連しない事由によって発生したものであると認められる場合を除いては、当該暴行は業務に内在または随伴する危険が現実化したものであるとして、業務遂行性を認めるが相当である
そして、その判断に当たっては、暴行が発生した経緯、労働者(被災者)と加害者との間の私的怨恨の有無、労働者(被災者)の職務の内容や性質(他人の反発や恨みを買いやすいものであるか否か。)、暴行の原因となった業務上の事実と暴行との時間的・場所的関係などが考慮されるべきである

2 ・・・男性警備員が、来場者や警備員を含めて圧倒的に男性が多い園田競馬場において、近隣で1対1の関係にもなり得る数少ない魅力的な女性であるマークレディに対して、恋愛感情を抱くことも決してないとはいえず、その結果、男性警備員が良識を失い、ストーカー的行動を引き起こすことも、全く予想できないわけではない
そして、これは、前記のそれぞれの採用条件や配置状況等に照らすと、単なる同僚労働者間の恋愛のもつれとは質的に異なっており、いわばマークレディとしての職務に内在する危険性に基づくものであると評価するのが相当である。
現に、本件組合も、マークレディと来場者との間のセクハラ行為を巡るトラブルやマークレディと警備員との間のセクハラ発言を巡るトラブルの存在を把握している(なお、判明している件数は少ないものの、このようなトラブルは性質上表沙汰にならないものも少なくないものと考えられる。)。

園田競馬場とマークレディに対する裁判所の評価のしかたが印象的です。

労災であるか否かを判断する以上、今回の結論を導くためには、このような評価が必要になってきます。

本の紹介284 選ばれる理由(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
__←先日、税理士や社労士の先生方と両替町の「武市」に行ってきました。

写真は、「えび芋のカニあんかけ煮」です。

このお店は、魚もおいしいのに加えて、和食がとてもおいしいです。 

こういう料理を食べると、落ち着きます。

おすすめですよ。

今日は、午前中は、新規相談が2件、交通事故の裁判が1件入っています。

午後は、新規相談が1件、外部の法律相談が1件と弁護団会議が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 選ばれる理由:どうしても売上と利益が増えてしまう心理マーケティング

久しぶりのマーケティング本です。

サブタイトルに「どうしても売上と利益が増えてしまう心理マーケティング」と書かれているとおり、顧客の心理を理解した上で、効果的なマーケティングを考えるというものです。

こういうことに興味がある人にとっては、とてもおもしろい本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『人は経済合理性に基づき、最も安いものしか選ばない生き物』ではないのです。だからこそ、ぜひこのように考えてみて下さい。 
お客様はあなたの会社の商品やサービスを買いたい。だから、それを買う理由を用意して差し上げる。
これこそが、『ウリ』をお伝えすることなのです。・・・私たち人間は、『絶対的な基準で決定することはほとんどない』と言えます。商品やサービスの絶対的な価値を計る尺度など、生まれながらに備わっていないのです。あくまで何かと相対的に比較して、価値を判断するのが人間です。だからこそ、あなたの会社の商品やサービスを買っていただきたいのであれば、『比較する本能』を知り、それを利用して『選ばれる理由』『買われる理由』を用意していきましょう。」(48~49頁)

勉強になります。

人間は、絶対的な基準で決定することはほとんどないと。

確かに、言われてみるとそうですよね。

飲食店の評価でも、確かに、相対的な評価なしに、純粋に「おいしい」と思うことももちろんあります。

でも、同じ種類の料理を食べたときには、「あ、あの店よりおいしい」、「あのお店のほうがおいしい」と相対的な評価をしています。

顧客が、他との比較により、買う・買わないを判断するのであれば、その判断をしやすくお手伝いをすればよいことになりますね。

そう考えると、いろいろと工夫することが頭に浮かんできます。

あとは、実行にうつして、試行錯誤を繰り返すのです。

賃金71(広島経済技術協同組合ほか(外国人研修生)事件)

おはようございます。

さて、今日は、中国人研修・技能実習生らによる未払賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

広島経済技術協同組合ほか(外国人研修生)事件(東京高裁平成25年4月25日・労判1079号79頁)

【事案の概要】

本件は、いずれも中華人民共和国の国籍を有し、出入国管理及び難民認定法における外国人研修・技能実習制度の下、第一次受入れ機関を原審Y1社、第二次受入れ機関をY2社として、本邦に入国し在留したXらが、Y2社の「相談役」の肩書きを有するY3に対し、Y3はY2社の名義を利用していたもので、研修期間及び技能実習期間を通じて、XらはY3と雇用関係にあったと主張して、未払賃金、労働基準法114条所定の付加金等の支払を求めるとともに、Xら及び同様の立場にあったX2が、Y1社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。

原審は、Y3とXら及びX2との間に雇用関係があったと認め、XらのY3に対する請求並びにY1社ら及びX2のY1社に対する請求を、いずれも一部認容し、一部棄却した。

これに対し、Y3のみが控訴した。したがって、Xら及びX2のY1社に対する請求については、原判決が確定している。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】(以下、原審の判断)

1 労働契約法2条2項は、同法における「使用者」について、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいうと定義し、最低賃金法2条2号が準用する労働基準法10条は、同法における「使用者」について、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいうと定義する。これらの定義からすれば、前記各法における「使用者」とは、実質的に指揮命令をして労務の提供を受け、賃金を支払っていた又は支払うべき者をいうと解するべきであり、その前提として、会社の場合においては、これらの主体となり得る実態を有していることが必要である

2 ・・・以上からすれば、外国人研修・技能実習制度における研修生が、労働契約法及び最低賃金法上の労働者に当たるか否かについては、受入れ機関側における研修体制の構築の有無、実際に実施された研修内容・時間、特に非実務研修の実施の有無、その内容・時間のほか、研修生が研修手当を受領していた場合にはその手当についての認識等を総合考慮した上で、研修生が行った作業であっても、労務の提供として賃金の支払を受けるにふさわしいものであった場合には、前記労働者に当たるというべきである

3 外国人研修・技能実習制度の団体監理型における第一次受入れ機関は、研修を受けようとする者に対して、第二次受入れ機関が研修を適正に実施する体制を整えず、体制を備えることが全く期待できない場合にあっては、そもそもそのような機関に研修生を受け入れさせてはならない義務を負い、また、研修生に対して、自ら第一次受入れ機関として適正な研修を実施し、第二次受入れ機関による研修が研修計画どおり実施されているか、実質的な労働となっていないか等について監査し、これを指導し、管轄の地方入国管理局長に報告する義務を負うというべきである。

4 研修における第一次受入れ機関は、実態のない会社と雇用契約を締結しようとしていることを管轄する地方入国管理局長に報告しないなど、実習実施機関における不法就労を殊更助長しているといえる場合に限って不法行為責任を負うというべきである
Xらの研修における形式上の第二次受入れ機関であるY2社は、Y3が、研修生及び技能実習生の受入れ等の名義として用いたに過ぎない実態のない会社であって、Xらに研修を実施する体制は何ら構築されておらず、適正な研修体制が構築されることは到底期待することができない状況であったといえる。また、Xらが研修期間中に実際に行った作業は、技術、技能又は知識を修得させることを目的とするものではなく、実態として労働であったものである。これらの事情によれば、Y3がY2社を形式上の第二次受入れ機関としてXら研修生を受け入れた目的は、労働基準法及び最低賃金法の規定を潜脱し、同法所定の最低賃金を大きく下回る研修生1人当たり月額7万円程度の研修手当を支払うのみで労働力を得ることにあったことは明白であったといえ、Y1社は、Y2社がその組合員であること、Y1社担当者がXらの受入れに当たってY3と交渉していたことからすれば、上記のとおりXらを受け入れるにあたってのY3の目的を当然に認識していたことが認められる。

法の予定していない、研修制度の悪用であるという評価です。

妥当な判断だと思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介283 「成功の型」を知る 起業の技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

__

←毎週末は、海までの早朝ジョグからはじまります。

風がなく、本当に気持ちがいいです。

2時間程度、何も考えずにジョギングをすると、本当にリフレッシュできます。 おすすめですよ。

今日は、午前中は、顧問先会社の社長との打合せ、債権者集会が1件入っています。

午後は、島田の裁判所で医療事件の民事調停が1件、顧問先の社労士の先生との打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

  「成功の型」を知る 起業の技術

帯には、以下のように書かれています。

どのような分野でも『成功の型』のようなものがあります。天才と言われる人でさえ、そういった基本を土台にして活躍しているのです。しかし、ほとんどの起業家は、その『型』を知りません。だから、失敗するのは当然です。

「型」という言葉、いいですね。

あらゆることには「型」があるので、まずはそれをしっかり学ぶところから始めることが大切です。

極めて実践的な内容となっています。 参考書としてはとても良い本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ブランドには『徹底力』が大切です。ブランド会社になるための『最初で最後の手段』は『誰でもできることを、誰もやらないくらいやる』ことです。誰でもできるけど、多くの人がやらないことは『自分が生きる分野を決めて集中し、そこで、誰でもできることを誰もやらないくらいやる』ことです。小さなことを積み重ねていきましょう。ブランドは『微差の集積』で築かれていくのです。」(140頁)

とても参考になります。

大切なことをこれだけコンパクトにまとめて伝えられる著者がすごいです。

「自分が生きる分野を決めて集中し、そこで、誰でもできることを誰もやらないくらいやる」

おそらく、成功している人は、みんなこの視点を持って、実際に実行しているのではないでしょうか。

よく「他との差別化」ということを言いますが、決して、突拍子もないことをやる必要はなく、自分の得意分野で、だれにもできないくらいの努力をすることこそが、結果として、「他との差別化」になるのではないでしょうか。

不当労働行為82(X工業事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、組合が会社や役員宅へ街宣活動等をすることの差止請求が認められた裁判例を見てみましょう。

X工業事件(東京地裁平成25年5月23日・労経速2192号13頁)

【事案の概要】

 Xらは、Y社によるGの解雇を有効とする判決(「解雇事件判決)が確定した後、本件解雇の撤回等を求めて街頭宣伝活動(「街宣活動」)等をしていたところ、Y社の本社、支店、営業所、工場等の施設を中心として半径150メートルの範囲内の土地における街宣活動等の差止めを認める第一審裁判所(東京地裁)の判決(「前訴差止事件判決」)が確定した後も、引き続きY社の施設周辺等やY社役員等の住所地周辺において本件解雇の撤回等を要求する街宣活動等をしているところである。
本件は、(1)Y社が、Xらに対し、①Y社の本社、支店営業所、工場等の施設を中心として半径150メートルから1キロメートルの範囲内の土地における街宣活動等の差止め、②幕張メッセ、霞ヶ関ビルディング、東京ビッグサイト及び茨城県桜川市役所大和庁舎前広場を中心として半径1キロメートルの範囲内の土地における街宣活動等の差止め及び③Y社の役員等であるB、C、D、A及びEが、①それぞれの自宅を中心として半径1キロメートルの範囲内の土地における街宣活動等の差止め及び②過去の街宣活動等に係る損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

差止請求については、一部認容。

Y社に対する損害賠償として200万円、役員に対する損害賠償として合計90万円の支払を命じた。

【判例のポイント】

1 法人は、その名誉、信用が毀損され、平穏に営業活動を営む権利が侵害され、今後も当該侵害行為が継続する蓋然性が高い場合には、当該侵害行為を差し止める権利を有するものと解するのが相当である。

2 Xらは、GがY社に対して解雇の撤回ないし再雇用の要求をすること及びこれを組合がY社に要求し、そのための団体交渉を申し入れることは、解雇を有効とする判決の確定にかかわらず、憲法上、労働組合に補償された団体交渉権及び団体行動権に属する正当な行為であると主張する。
確かに、労働組合の団体交渉権及び団体行動権は憲法上保障された権利であるが、憲法は、これが財産権等の他の基本的人権に対して絶対的優位にあることを認めているものとは解されず、労働者の権利実現のために労働組合が行う団体交渉権及び団体行動権の行使であっても、それが無制限に許されるものでないことは明らかである。本件においては、法治国家における権利実現方法として基本的な手段というべき民事訴訟において、解雇事件判決の確定により、Y社のGに対する解雇が有効であり、Y社とGとの間には雇用契約関係が存在しないことが公権的に確定しているところであり、Xらが、なおY社に対して、解雇の撤回や再雇用について再考を求めること自体が許容され得るとしても、そのための活動の範囲・内容は、解雇事件判決の確定によって、当然に影響を受けるものといわざるを得ない。そして、解雇事件判決の確定に加え、前訴差止事件判決が確定し、平成21年仮処分事件、平成23年仮処分事件における決定がされ、Y社による任意の解雇撤回等が期待し難い状況にあることなどからすれば、Xらが、なお本件解雇の撤回等をY社に求めるために前記のような街宣活動等を繰り返し行うことは、自らの要求を容れさせるべく、Y社に対して殊更に不当な圧力をかけようとするものといわざるを得ず、憲法上、労働組合に保障された団体交渉権及び団体行動権に属する正当な行為ということはできないというべきである

3 不法行為の被侵害利益としての名誉とは人又は法人の品性、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価のことをいい、信用とは、経済的側面における社会的評価のことをいう。したがって、名誉、信用の毀損とは、これら人又は法人の客観的な社会的評価を低下させる行為のことをいう。
これらを本件についてみると、・・・不法行為を構成するというべきである。
・・・Y社が名誉・信用の毀損によって被った損害額は200万円と認めることが相当である。

4 Bら3名は、不法行為に基づき損害賠償を請求することができる。
・・・慰謝料としては、B、C及びDについて、それぞれ30万円の限度で許容することが相当である。 

大変興味深い裁判例です。

会社側としては、この裁判例を是非、参考にして、組合活動に対して適切に対応してください。

労働者側としては、解雇等について確定判決が出た場合には、組合活動に一定の影響が及ぶことを理解した上で、適切に組合活動をしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介282 君に友だちはいらない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

__

←先日、お気に入りのピザ屋さん「かまど家ピュアカリ」に行ってきました。

写真は、「タコバジル」です。

夜にしか食べられないメニューです。

レモンを少し搾って食べるのがポイントです。

いつもおいしゅうございます。

今日は、午前中は、事務所で書類作成です。

午後は、債権回収の裁判が1件、新規相談が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 君に友だちはいらない

著者は、京大客員准教授の方です。

以前、このブログで紹介をしました「武器としての決断思考」、「武器としての交渉思考」の著者です。

今回は、タイトルがキャッチーですね。 著者の意図は、読めばすぐにわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

社交に過度な時間と労力を注ぐことは、時間の無駄となるどころか、ときにはマイナスにもなる。強力な磁石が、鋼鉄もくず鉄も区別せずに引き寄せてしまうように、人脈の多さを自慢する人は、つきあって有意義な人だけでなく、自分の足を引っ張ったり、迷惑をもたらす人や、さらには反社会的な勢力とまでもつながってしまうことがあるのだ。・・・仲間の数を増やすのではなく、少数の仲間の質を追求することが、肝要となるのだ。」(117~118頁)

多くの薄いつながりよりも、少ない深いつながりを大切にするという発想です。

量より質ともいえるのかもしれません。

どれだけ多くの名刺を持っていても、そんなものは人脈でもなんでもありません。

ビックリマンのシールを集めているようなものです(古い?)。

広く深く付き合うことができたら、それが一番いいのかもしれませんが、時間が限られているため、実際にはそうもいかないわけです。

お互いインスパイアされる仲間とだけお付き合いをしていけたら、最高ですね。

労働災害68(なか卯事件)

おはようございます。__

←先日、久しぶりに「エアーフラッシュ」に行ってきました。

写真は、絶品の「牡蠣カレー」です。

リンゴの角切りがカレーに入っているため、牡蠣の生臭さは全くありません。

お見事の一言に尽きます。 おいしゅうございました。

今日は、午前中は、新規相談が1件、裁判の打合せが1件入っています。

午後は、建物明渡しの裁判が1件、その後、清水の会社様での打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は会社の業務と店舗内での脳幹出血死に相当因果関係がないとされた裁判例を見てみましょう。

なか卯事件(名古屋地裁半田支部平成25年9月10日・労経速2192号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXがY社の店舗内において脳幹出血により死亡したことについて、Xの父母ないし兄である原告らが、Y社が亡Xに対する安全配慮義務を怠ったため、亡Xが過重な労働により脳幹出血を発症して死亡したなどと主張して、Y社に対し、債務不履行ないし不法行為に基づき、損害賠償金約8450万円等を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却
→因果関係を否定

【判例のポイント】

1 使用者が従業員に対して勤務時間帯を一定にすることや複数人による勤務体制をとるべき義務については、その法的根拠が明らかでない上、本件においてY社がそのような義務を負うべき特段の事情を認めるに足りる証拠もないから、Y社がXに対して上記各義務を負っていたとは認められない

2 業務による過重な負荷としては、脳血管疾患の発症に近接した時期における異常な出来事や短期間の過重負荷のほか、長期間(発症前おおむね6か月間)にわたる疲労の蓄積による負荷が挙げられ、発症前6か月間における就労態様について、労働時間、勤務の不規則性、拘束時間の長さ、出張の多さ、交替制勤務や深夜勤務の有無・程度、作業環境、精神的緊張を伴う業務か否かなどの諸要素を考慮して、特に過重な身体的・精神的負荷が認められるかという観点から総合的に評価することが相当であるとされている

3 ・・・このような時間外労働時間の程度及び勤務ごとの時間的間隔に照らすと、平成22年3月までに、XがY社の業務のために適切な休養を取得することができず、疲労が蓄積するような状況であったということは困難である。なお、Xに対しては、日をまたぐ勤務の特殊性から法定休日が適切に付与されていないものの、業務の過重性を考慮するに当たって重視すべきであるのは、労働者の疲労等が過度に蓄積するような勤務状況であるか、すなわち、労働者に対して休暇に必要な時間が付与されているかであって、上記のとおり、Xの脳幹出血発症前6か月ないし発症前4か月の各時間外労働時間が短時間であり、勤務時間ごとの間隔も相当程度付与されていたことからすれば、法定休日が適切に付与されていないこと等をもって、Xの勤務状況が疲労等の蓄積を招くようなものということはできない。このことは、医学的知見上、発送前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合には、業務と脳血管疾患の発症との関連性が弱いとされることに照らして、明らかである。

時間外労働時間の「量」だけではなく、勤務時間中の労働の「質」についても検討の対象としています。

極端に時間外労働時間が多いとまで言えない事案では、上記判例のポイント1に記載したような要素を総合的に評価することになります。

本の紹介281 憚りながら(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!
__

←休日の早朝は、海までジョギングすることから1日が始まります。 

継続は力なり。 やると言ったからには絶対やりきります。

今日は、午前中は、離婚調停が1件、労働事件の裁判が1件入っています。

午後は、富士の裁判所で、労働事件が2件、会社関係の裁判が1件、不動産関係の裁判が1件入っています。

夜は、そのまま沼津へ移動し、「こども未来大学」で1時間授業を行います。

子どもたちに弁護士の仕事についてお話をしてきます。 

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 憚りながら (宝島社文庫)

元後藤組組長の本です。

これまでの生き様がまとめられています。完全に裏社会です。

著者が「BOX 袴田事件 命とは」を私費を投じて制作したことも紹介されています。

右も左もなく、表も裏もなく、あらゆることから学ぶことが大切だと思っています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間生きてりゃ、絶対に腰を引いちゃいかん瞬間が何回かあるんだ。ヤクザの世界じゃしょっちゅうだが、サラリーマンでもあるだろ?絶対に腰を引いちゃいかん時というのが。会社を背負った商談とか、交渉事とか。そういう時に相手と正面から対峙して、『それじゃあ、お互い分かった』と引き分けるのならいいが、腰を引いてしまったら、『スミマセン』と言ってしまったら終わりだ。そういう時は絶対にバックしちゃいかん。」(73~74頁)

僕は、このようなとき、「大和魂」という言葉を思い浮かべます。

交渉でも裁判でも、「絶対に腰を引いちゃいかん瞬間」があります。

この引いてはいけないと思う度合いは、守るべきものの重さに比例するのだと思います。

自分が大切にしているものを守る気持ちが強ければ強いほど、絶対に腰を引いてはいけないのでしょう。

「ま、いいか」とあきらめてしまう癖がついてしまうと、いつの間にか、困難な状況でふんばりがきかなくなってしまうのです。

すべては、習慣。 人間は、習慣によって形づくられています。

日々、小さな習慣を積み重ねることでしか、大きな成果を生むことはできないと確信しています。