Author Archives: 栗田 勇

解雇114(全国建設厚生年金基金事件)

おはようございます。

さて、今日は、通勤手当の不正受給を理由とする諭旨退職処分に関する裁判例を見てみましょう。

全国建設厚生年金基金事件(東京地裁平成25年1月25日・労判1070号72頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、①平成24年2月9日付け諭旨退職処分が無効であるとして、Y社に対し、(1)地位確認、(2)平成24年2月分の未払賃金、(3)平成24年以降の賞与などを請求した事案である。

【裁判所の判断】

諭旨退職処分は無効

【判例のポイント】

1 Xによる本件不正受給は、「就業上必要な届出事項について、基金を偽ったとき」(職員就業規則56条(4))として懲戒事由該当行為であると認められるが、他方において、①Y社は、Xの自宅からY社事務所までの通勤方法として平成8年申告経路に記載された通勤方法及びこれに基づく所要額(定期代)を合理的なものと認定した上で同額の通勤手当を支給していたものであり、本件不正受給によりXが受給してきた通勤手当額は、その範囲内に収まっていること、②Y社においては、通勤手当が認定された後は、基本的にその支給継続に当たって特段の審査がされることがなく、本件不正受給のように、認定された通勤手当に係る定期券等を実際には購入していなくても通勤手当を受給し続けることができる状況にあったことや、職員が習い事のために迂回する経路であってもY社の裁量によって通勤手当の支給経路として認定されることがあることが認められ、このことからすれば、Y社内においては、本件不正受給当時、通勤のために真に合理的かつ必要な限度でのみ通勤手当を認めた上で、その支給の合理性の維持につきこれを厳守するという企業秩序が十分に形成されていたとは言い難いこと、③Y社において、①のとおり平成8年申告経路に記載された通勤方法及びこれに基づく所要額(定期代)を合理的なものと認定していたことのほか・・・本件不正受給によって、Y社が通常合理的な金額として認めない程の高額の通勤手当の支給を余儀なくされたという関係には立たない上、Y社らの主張を前提としても、本件不正受給による差額は、6か月当たり2万5330円、定期券購入時期につき平成21年4月から平成23年10月までととらえると合計15万1980円に過ぎないこと、以上からすれば、本件不正受給に対し、職員としての身分を剥奪する程の重大な懲戒処分をもって臨むことは、Y社における企業秩序維持の制裁として重きに過ぎるといわざるを得ない。

2 これに対し、Y社は、平成24年2月2日以降のXの態度について、退職願を提出した同月9日を除き、通勤手当の不正受給に関して虚偽の説明を繰り返して自己を正当化するばかりで反省の態度を示していなかったとして、そのことを本件処分の相当性を基礎付ける事情の一つとして主張する。
この点、確かに、・・・Xにおいて、本件不正受給の問題点と真摯に向き合った上で、反省する態度を示していたとは認められないというべきである。
しかしながら、他方において、・・・Y社のXに対する追及態度は、本件不正受給の具体的内容が明らかになっていない同月2日の段階から、厳しい処分になることを覚悟するようにとの趣旨を告げた上、同月8日の面談においても、当初の段階すなわち本件釈明書面等の提出前の段階では諭旨退職相当と考えたが、本件釈明書面等の提出を踏まえると懲戒解雇にせざるを得ない旨伝える等、発覚当初から本件不正受給が職員の身分剥奪を伴う懲戒処分相当事案であることを前面に出してXに接していたことが認められるのであって、これに対してXが、諭旨退職又は懲戒解雇処分を回避するために不自然、不合理な内容及び態度での弁解を一定程度継続したとしても、そのことをもって本件処分の相当性を基礎付ける事情として重視すべきではないと解される。加えて、Y社は、同月9日にXがそれまでの言動について反省の態度を示した上で自主退職の申出をした後に本件処分を断行しているのであって、このことからも、同月8日までのXの反省の態度の乏しさをもって本件処分の相当性を基礎付ける事情として重視すべきではない。

3 以上より、本件処分は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当性を欠くものとして、無効というべきである。

相当性の要件でなんとかギリギリセーフという感じです。

会社側とすると、上記判例のポイント2の下線部については、参考になりますね。

このような評価がありうるということを知っておくことが大切です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介235 「経営」が見える魔法のメガネ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

__

←先日、建設業の会社の社長と「つむらや」に言ってきました。

写真は、「鴨せいろ」です。

暑い日に鴨せいろ、最高です。

ここも、いつ行っても混んでますね。さすがです。

今日は、午前中は、債権者集会が1件入っています。

午後は、事務所で書面作成です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 「経営」が見える魔法のメガネ ― あらゆる課題が解決する究極の「見える化」教えます。 (日経ビジネス経営教室)

著者は、コマツの元社長、現相談役の方です。

この本を読むと、単に守っているだけでは、衰退していく、攻め続けなければ、会社を継続することはできないということがわかります。

生易しいものではありません。経営者の覚悟がよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

顧客にとってなくてはならない会社になるという目標に向けて何をすべきか。それを示すのがトップの役割になります。明確なゴールを設定して、分かりやすく示す。そして、社内が同じ方向を向いて知恵を絞り、汗を流す仕組みを作ります。『着眼大局、着手小局』と言っていますが、トップは大きな方向性を示しつつ、何をすべきかを小さなレベルで具体的に示さなければ、社内に伝わりません。」(49頁)

「着眼大局、着手小局」。 勉強になります。

決して、「着手消極」になってはいけませんね(うまいこと言った!)。

仕事にしても受験勉強にしても、まずは、明確な目標(ゴール)を設定することが大切です。

ここで抽象的な目標設定をしてしまうと、なかなかうまくいかなくなるのです。

「英語が話せるようになりたい」「民法を理解したい」「簿記ができるようになりたい」など。

こんな感じの目標設定では、達成感をいつまでたっても感じることはできません。

だって、目標を達成したかどうか判断できないですよね。

だから、目標設定は、客観的に達成したかどうかわかるものにしなければ意味がないのです。

例えば・・・

「TOEICで900点をとるぞ!」「宅建の試験に合格するぞ!」「簿記3級に合格するぞ!」

のように。

最終的な目標を設定したら、あとは、より小さな目標を設定していけばいいだけですよね。

いかに小さな成功体験を積み重ねていくか。 

このことを勉強や仕事が得意な人は、意識的もしくは無意識のうちに日々、実践しているのだと思います。

解雇113(ボッシュ事件)

おはようございます。 

さて、今日は、執拗に内部通報メールを繰り返したこと等を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ボッシュ事件(東京地裁平成25年3月26日・労判2179号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約関係にあったXが、Y社からの業務命令に反したことを理由に懲戒処分としての出勤停止処分を受け、その後解雇されたところ、同出勤停止処分及び解雇は、Xが内部告発(公益通報)を行ったことに対する報復であり、公益通報者保護法に違反するもので、いずれも無効ないし違法であるなどと主張して、Y社に対し、同出勤停止処分の無効確認請求、および出勤停止期間中の賃金の支払請求、雇用契約上の地位確認請求および解雇後の賃金、賞与請求、並びに不法行為に基づく損害賠償(慰謝料等)の請求をしたものである。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、平成23年初めころには、本件デジタルイラスト問題に関し、担当者に民事・刑事責任を問うことができないものであるという認識を有していたにもかかわらず、自らの法務室への異動希望を実現させるという個人的な目的のために、これを蒸し返し、同年7月22日には本件警告書による警告を受けたにもかかわらず、これに従うことなく、同月25日に、E社長に対し再度これを告発したと評価せざるを得ない。このように、Xは、自らの内部告発に理由がないことを知りつつ、かつ個人的目的実現のために通報を行ったものであって、Xが主張するように、社内のコンプライアンス維持のためにやむを得ない行為であったなどということはできないものであって、実質的に懲戒事由該当性がないということはできないし、かつ、公益通報者保護法2条にいう不正の目的に出た通報行為であると認めざるを得ない

2 確かに、同法の趣旨からして、事業者のコンプライアンスの増進という動機以外の動機が存すること自体をもって、その適用を否定するのは相当ではなく、かつ、再度の公益通報であること自体をもって、その適用を否定することは慎重であるべきである。
しかしながら、他方で、このような公益通報については、たとえ事業者内部における再度の通報であったとしても、多かれ少なかれ、その通報内容を理解、吟味し、ある程度の調査が必要になる場合もあるなど、相応の対応を要求されるものであって、業務の支障となる側面があることは否定できず、時に組織としての明確な意思決定を迫られることもあることからすれば、これが無制限に許されると解するのは相当ではない。したがって、少なくとも、本件のように、いったん是正勧告、関係者らに対する厳重注意という形で決着をみた通報内容について、長期間を経過した後に、専ら他の目的を実現するために再度通報するような場合において、これを「不正の目的」に出たものと認めることには、何ら問題がないというべきである

公益通報が絡む解雇や降格事案は、ときどきありますね。

公益通報者保護法では、「公益通報」を以下のとおり定義しています(2条1項)。

「公益通報」とは、労働者(労働基準法9条に規定する労働者をいう。)が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、その労務提供先又は当該労務提供先の事業に従事する場合におけるその役員、従業員、代理人その他の者について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該労務提供先若しくは当該労務提供先があらかじめ定めた者、当該通報対象事実について処分(命令、取消しその他公権力の行使に当たる行為をいう。)若しくは勧告等をする権限を有する行政機関又はその者に対し当該通報対象事実を通用することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(当該通報対象事実により被害を受け又は受けるおそれがある者を含み、当該労務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者を除く。)に通報することをいう。

この他、公益通報の通報対象事実を巡り、争いになることもあります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介234 秋元康の仕事学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 明__日は、事務所の夏休みです。私は普通に仕事をしますが(笑)

←先日、お世話になっている社長と、ホテルセンチュリー内の「花凛」に行ってきました。

写真は、「鮎の釜めし」です。

こんな食べ方、始めてです。 これをかき混ぜて食べるのですが、絶品です! 素晴らしい。

今日は、午前中は、新規相談が1件入っています。

午後は、事務所で書面作成です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

秋元康の仕事学 ( )

NHK教育テレビ「仕事学のすすめ」に出演された際の秋元さんとのやりとりをまとめた本です。

次から次へとアイデアを出せる人が、普段、どんなことを考えながら生活しているのかがわかります。

真逆の考え方をする勝間さんとの対談は、とてもおもしろいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間は、予定調和のことをされても響かないんですね。・・・結局、予定調和を壊すということは、新しいことに挑戦するということなのです。もちろん、そういったことをするには、最初は、みんなから誤解されることもあるでしょう。けれど、そういったものを超えない限りは、新しいものは生まれないんですよ。ほとんどの場合が、楽なほう、楽なほうへ流れようとしているわけですから。」(75~76頁)

秋元さんは、プレゼンをする際、まずは、他の人が選びそうなキーワードを全てはずすそうです。

とにかくみんなとは違う選択をするようです。

「予定調和を壊す」、いい言葉ですね。

安定とか無難とか当たり前という言葉からどれだけ離れられるか、だと思います。

強い動機と覚悟が必要です。

派遣労働15(マツダ防府工場事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣労働者と派遣先との黙示の労働契約の成否と損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

マツダ防府工場事件(山口地裁平成25年3月13日・労判1070号6頁)

【事案の概要】

本件は、派遣労働者として自動車製造業を営むY社の防府工場の各職場に派遣されて自動車製造業務に従事していたXらが、労働者派遣法が定める派遣可能期間を超えてY社が労働者派遣の役務の提供を受けていたことやXらの就業実態等の事情によれば、Xらが派遣元事業主との間で締結した派遣労働契約は無効というべきであり、かつ、Xらの就業実態等によれば、XらとY社との間には黙示の労働契約が成立しているなどと主張して、Y社に対し、XらがY社正社員としての労働契約上の地位を有することの確認、賃金の支払い、不法行為(Y社の違法行為に基づくXらの雇用継続に対する期待権侵害)に基づく損害賠償を請求する事案である。

【裁判所の判断】

Xら(15名中13名)とY社との間で期間の定めのない労働契約が黙示的に成立した。

【判例のポイント】

1 Y社は、サポート社員制度の運用実態において労働者派遣法の規定に違反したというにとどまらず、ランク制度やパフォーマンス評価制度の導入と併せ、常用雇用の代替防止という労働者派遣法の根幹を否定する施策を実施していたものと認められ、この状態においては、すでにこれら制度全体としても労働者派遣法に違反するものとさえ評価することができる。また、派遣元においても、コンサルティング業務の委託料やパフォーマンス評価制度による派遣料金の増額分という金銭的対価を得てそれに全面的に協力していたことが認められる。このような法違反の実態にかんがみれば、形式的には労働者派遣の体裁を整えているが、実質はもはや労働者派遣と評価することはできないものと考える。

2 改正前の労働者派遣法の立法趣旨が専ら恒常的労働の代替防止にあったとしても、同法が派遣労働者の保護にも配慮する労働法としての側面を併有していたことは否定できないというべきであり、そうすると、同じく労働者派遣法違反であっても、偽装請負のようにそれ自体からは直接雇用の契機が出現しない場合とは異なり、いったんは直接雇用というサポート社員を経験した派遣労働者については、その前後の業務内容、勤務実態、使用従属関係の有無等を併せ考慮することにより、派遣労働期間中についても直接雇用を認め得る契機は高いものと考えられる。その上、本件派遣について労働者派遣法の適用を否定しても一般取引に及ぼす影響はなく、Y社及び派遣元がサポート社員制度の運用並びに同制度にランク制度やパフォーマンス評価制度を組み合わせることにより制度全体として労働者派遣法に違反し、協同して違法派遣を行っていたとみられることからすれば、Y社及び派遣元の取引関係に及ぼす影響はもとより考慮すべきでないこと、労働者派遣法に基づき厚生労働大臣には同法に基づく指導・助言、改善命令、公表等の監督行政権限が与えられているものの、労働者派遣法40条の2には罰則規定の適用がなく、これらの罰則規定の適用や厚生労働大臣による監督行政権限の行使によっては現実にサポート社員を経験した派遣労働者を保護することができないこと、このように、労働者派遣法の枠内では自らの組織的かつ大々的な違法状態の創出に積極的に関与しいたY社の責任を事実上不問に付すことになることなどに照らせば、現実にサポート社員を経験して上記諸制度の適用を受けた派遣労働者については、黙示の労働契約の成立を認めることができる諸事実が存することも加味すると、それら派遣労働者と派遣元との間の派遣労働契約を無効であると解すべき特段の事情があると認められる

かなり特殊な事案ですので、この裁判例が出されたからといって、他の事件に及ぼす影響はそれほど大きくないと思います。

もっとも、この裁判例から学ぶべきことは多いですね。 是非、参考にしてください。

高裁がどのような判断を下すか楽しみです。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介233 人生勝たなきゃ意味が無い(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。__

←先日、「Cauda」に行ってきました。

いつ行っても混んでます。さすがです。

写真は、「ひらめのアクアパッツァ」です。

白ワインによく合います。おいしゅうございました。

今日は、午前中は、富士の会社に訪問します。

午後は、事務所で新規相談が1件入っています。

今日も一日がんばります!! 

 

 

さて、今日は本の紹介です。

人生勝たなきゃ意味が無い (星海社新書)

タイトルが、挑発的でいいですね(笑)

著者は、若手NO.1の雀士の方だそうです。

勝利の大切さはすべて麻雀が教えてくれた」そうです。

私の中で、雀士といえば、桜井章一さんですが、今回は、佐々木さんから学ばせていただきました。

まず、佐々木さんのストイックさ、「麻雀=仕事」に対する誠実さ、成功に対する貪欲さに心から共感できます。

このくらいやれば、間違いなく成功しますよ。

なお、本の中に、いっぱい配牌の絵が出てきますが、麻雀をやらない私には、なんのことだかさっぱりわかりません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・勝負の世界では、後者が絶対に強い。前者はトップを目指すという目標に向かって打ってきたのに、最後の最後でトップを守るという現状維持の方向へ意識が変わっている。この現状維持という気持ちでいったんゴールを意識してしまうと、さらなる先へ進むためのモチベーションを保つことは、ものすごく難しい。・・・今はよくても、いつ状況が変わって窮地に追い込まれるかは、誰にも予測できない。だから私は、5万点オーバーでトップに位置していても、決して攻撃の手を緩めない。攻めて攻めて攻めまくる。・・・大きな目標を掲げれば、一時的な状況に満足している余裕はないのである。」(93~94頁)

攻めから守りに転じた時点で、「現状維持」が目標になります。

「現状維持」を目標とするときに、高い位置でのモチベーションを保つのはとても大変だと思います。

今は、挑戦者の立場ですから、意識などしなくても、守りに入ることなどありません。

生きている間にどこまで行けるか。 

立ち止まって、後ろを向いて、今の地位を維持しようなんて思ったら、引退しようと思います。

解雇112(ニューロング事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!!

さて、今日は、退職届提出後の懲戒解雇の効力と退職金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ニューロング事件(東京地裁平成24年10月11日・労判1067号63頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、平成17年12月5日に、同月19日をもって退職する旨の退職届を提出したにもかかわらず、Y社から同月9日付けで懲戒解雇されたことから、これが無効であり、退職届に基づく退職が有効であると主張して、退職金等を請求した事案である。

本件懲戒解雇理由は、Y社が海外(アラブ首長国連合ドバイ)に設置した関連会社のDirector職に兼務していた海外事業部部長であるXに対する横領等の背信行為、無許可で禁止されている競合会社と取引を行ったこと、競業準備行為等である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効

Y社に対し退職金及び役付給付金1466万1483円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 一般に、使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を科するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないが、懲戒当時に使用者が認識していた非違行為については、それが、たとえ懲戒解雇の際に告知されなかったとしても、告知された非違行為と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属すると認められるもの又は密接な関連性を有するものである場合には、それをもって当該懲戒の有効性を根拠付けることができると解するのが相当である
しかし、「無断で個人の会社をニューロング・ドバイ店内に設立したこと」という告知内容は、自らの会社の設立を非違行為の核心とするものであるところ、いかにこれを実質的に解釈したとしても、それが「Y社の了解を取らずにC社の業務を行い、資金を流用したこと」という事由と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属すると認められるもの又は密接な関連性を有するものと解することはできない。

2 ・・・以上によれば、Xには、本件取引中止宣言後もY社に隠れてB社と取引を行ったという点が、一応、懲戒解雇事由として存在するということができる。
・・・本件取引中止宣言後に、Y社の方針に反して、個別にY社代表者の承認を得ることなくB社と取引していたことが、本件取引中止宣言に反する行為であり、Y社の企業秩序維持との関係で問題のある行動であったことは事実であるものの、他方で、顧客に対する信用維持やニューロング・ドバイの経営維持のため、Y社代表者の意に反することになるというリスクを冒してもなお、あえてB社との間で取引を継続せざるを得なかったという側面があったこともまた事実であるということができる
以上の認定に加え、本件懲戒解雇は、Xによる退職の意思表示がY社に到達した後、それが効力を生じる前に、急遽なされたものであること、本件懲戒解雇事由について、Xに弁明の機会が与えられていなかったことを併せ考えると、本件取引中止宣言後もY社に隠れてB社と取引を行ったという懲戒解雇事由が、34年8か月というXの多年の継続の功を抹消してしまう程度に重大なものということまではできないし、Xを懲戒解雇として退職金を不支給とすることが、Y社の規律維持上やむを得ない場合にあたるということもできない。

3 Xは、この他に功労加給金及び特別加給金の請求権を主張しているが、功労加給金については、Y社代表者が、直属所属長の申告に基づき、その裁量によって、特に功労ありと認めた従業員に対して支給するものであるから、Xにその請求権はないというほかはない。

まず、懲戒解雇事由の追加主張に関する規範は参考にしてください。

次に、退職金の不支給に関する争いの場合は、労働者側からすれば、どれだけ酌むべき事情を挙げられるかにかかっています。 丁寧に事実を主張・立証していくことが大切です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介232 死ぬ気で働いたあとの世界を君は見たくないか!?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間、お疲れさまでした。

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←先日、社労士の先生方と「トラットリア イル パラディーノ」に行ってきました。

写真は、「三種のお肉の炭火焼」です。

チキン、ポーク、マトンです。炭火でじっくり焼くので、おいしさが逃げていません。 秀逸!

今日は、午前中は、沼津の裁判所で家事審判が入っています。

午後は、事務所に戻り、打合せが2件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

死ぬ気で働いたあとの世界を君は見たくないか!?

著者は、元外資系生保会社のトップセールスマンであった方です。

フルコミッションなので、私たち経営者と同じような気合いの入れ方で仕事をしていますね。

今、職場で従業員に対して「死ぬ気で働け」というと、完全にブラック企業の烙印を押されてしまいます(笑)

一方、私たち経営者は、死ぬ気で働いたって、誰からも何も文句を言われませんので、毎日、いつ死んでもいい覚悟で働いています。

自分が納得できるまで、法定労働時間も法定休日も関係なく、好きなだけ仕事ができるのは、経営者の特権かもしれませんね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたの人間レベルのステージが上がっていくとき、価値観の異なる友達は舞台から降りていき、共に成長している友達だけが舞台に残る。逆に考えると、友達のレベルを上げていけばいくほど、あなたの人間レベルはどんどん上がっていくことになる。あなたは友達の人間レベルを超える自分にはなれない。常に友達が自分の鏡となる。あなたの人間レベルを成長させるときには、共に成長していける友達を選ぶことだ。」(200頁)

なるほど。そういう見方もあるのですね。

まあ、でも、そうかもしれませんね。

普段、よくお付き合いをしている知人、友人は、みんな同じような価値観を共有している人たちです。

みんな前向きで、利他の気持ちを持っている人が多いです。

このような人たちと友達になるためには、自分も同じような価値観を共有できなければ、長いお付き合いはできないでしょう。

これもまた、いわゆる「引き寄せの法則」「類は友を呼ぶ」ということなんですかね。

配転・出向・転籍18(新和産業事件)

おはようございます。

さて、今日は、違法な配転命令に対する無効確認と賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

新和産業事件(大阪地裁平成24年11月29日・労判1067号90頁)

【事案の概要】

Y社は、①Xが営業職としての適性を欠いていたことと②Xが総務や経理の経験がなかったことを理由として、配転命令をした。

Xは、本件配転命令につき、業務上の必要性がなく、他の不当な動機・目的で行われたもので、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるから、権利の濫用として無効であるであると主張し争った。

なお、Xは、本訴訟以前に、賃金仮払仮処分を申し立て、裁判所は、これを認めている。

【裁判所の判断】

配転命令は無効

降格命令も無効

Yに対し慰謝料として40万円の支払いを命じた

Xの賞与請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xが主として担当していた新規開拓営業が既存顧客に対する営業より難しいことは容易に推測できるところであって、Y社において、Xは入社以来、新規開拓営業を担当しながらさしたる成果も挙げず、Y社において度々注意・指導をしてきたが、入社後10年間ほぼ変わらなかったと主張しており、Y社の営業本部長であるAもXの勤務態度や営業成績が採用時以降、向上したともいい難いと証言しているにもかかわらず、Xを入社4年後に課長に昇格させた上、本件業務命令までXに対し課長からの降格を検討したことはなく、営業成績を理由にXの賃金を減額したこともなかったし、さらには、Xより高い新規開拓の営業能力を有する従業員を採用したり、他の営業部員にその営業を担当させたりしていないことが認められる
以上の事実を総合考慮すれば、Y社においても、少なくともXに対して本件退職勧奨を行うまでは、Xの上記採用の経緯や新規開拓営業の困難性を考慮して、Xの営業成績を厳しく問題にしたことはなかったことが推認できるのであるから、仮に、Xが本件業務命令を受けるまでに挙げた営業成績がY社が主張するように微々たるものであったとしても、それをもって、直ちにXの新規開拓に関する営業能力が著しく低いと断定することはできない。
ましてや、Y社においても、本件業務命令前3年度のXの営業成績について、既存の営業を維持するだけで十分達成可能であると主張するに止まり、Xを他の営業部員と同様に主として既存顧客に対する営業を担当させたりしていないのであるから、Xが他の営業部員と同様の営業成績を挙げることができないとは認めるに足りず、Xが営業職としての適性を欠くと断定することはできないというべきである

2 本件降格命令の効力如何は、本件配転命令の効力如何にかかってくるところ、Xが営業職としての適性を明らかに欠くとはいえないにもかかわらず、本件退職勧奨を拒否したことにより、Y社がXに対し、退職に追い込むために、必要性の薄い大阪倉庫に配転した上、給与も半額以下となる本件減給という効果を伴う本件配転命令及び本件降格命令を一体として行ったことが認められるから、本件配転命令が権利の濫用として無効である以上、それと一体としてされた本件降格命令も権利の濫用として無効というべきである

3 Y社は、Y社が仮処分命令に従ってXに支給している部分について弁済の抗弁を主張しているが、仮処分債務者の仮払金支払義務は、当該仮処分手続内における訴訟法上のものとして仮に形成されるにとどまり、その執行によって実体法上の賃金請求権が直ちに消滅するものでもないから(最高裁昭和63年3月15日判決)、主張自体失当である

4 Y社は、仮執行宣言を付する必要性・相当性がなく、付する場合にも仮執行免脱宣言を求めているが、仮処分命令が出されていることが直ちに仮執行宣言の必要性を消滅させるとはいえないし、本件業務命令が無効であることは明らかであるから、仮執行免脱宣言を付するのは相当でない

事実認定の勉強になりますね。

また、判例のポイント3、4も一応参考までに。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。

本の紹介231 偏差値29の私が東大に合格した超独学勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

__

←先日、清水のホテルクエストで行われた「第3回JOBコン」に参加しました。

参加は前回に続き2回目です。

参加された学生は、みんな意識が高いため、いろんなことを考え、悩んでいます。

12、13人の学生としかお話ができませんでしたが、「幸せは探すものではなく、感じるものである」ということを伝えました。 お坊さんか!

今日は、午前中は、新規相談が2件入っています。

午後は、裁判が1件、夕方からクラブメンターの定例会です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
偏差値29の私が東大に合格した超独学勉強法    角川SSC新書

受験生のみなさんは、読んでみると、何かしらのヒントはもらえると思います。

私は、たまにこのような勉強法の本を読みますが、別に何かの資格試験を目指しているわけではありません。

事務所のスタッフ等に勉強法を伝えるにあたり、もっといい伝え方はないかな、と思いながら読んでいるのです。

何を伝えるかということももちろん大切ですが、それをどのように伝えるかも大切なのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

時間が限られているときは、最優先して行うべきことをきちんと選択・決断していかないと、全てにおいて結果が出せず、中途半端に終わってしまう最悪の事態になりかねません。・・・人は時間の無駄使いだと思う行為は簡単に削れても、有意義だと思うものは削るのが難しい。もし最優先で達成したい分野で結果を出したいなら、良いと思う行為を削れるかどうかが鍵となる

いいこと言いますね。

確かにそのとおりです。

最優先事項を達成するために、何をやるべきかということももちろん大切ですが、何をやらないかということを明確にしておくことが大切です。

例えば、本試験までに残された時間が限られている場合、いろんな予備校の模試を解くことはきっと有意義でしょう。

でも、最優先にすべきなのは、過去問です。

仕事も同じです。限られた時間の中で成果を出さなければいけない以上、何を最優先にやるべきかを常に考える。そうでないといくら時間があっても足りません。

「あと少しだけ時間があれば・・・」なんて恥ずかしいことを言わないように常に考えながら準備をすることが大切なんだと思います。