Author Archives: 栗田 勇

本の紹介2157 思うは招く#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には、「『どうせ無理』に負けないで。夢を、自分を、あきらめないで。」と書かれています。

とにかくやりたいようにやってみればいいのですよ。

他人がとやかく口出しする必要などありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

個性を求めない社会では、ショッカーの戦闘員で十分役に立ってしまうのです。だから僕は、『ショッカーにされないように頑張ってね』と子どもたちに話します。」(170頁)

ショッカーでは高い報酬を得ることはできません。

他にも多くの代替要員がいるからです。

みんなと同じでいいというマインドは、まさにショッカー要員と親和性があります。

高度経済成長期であれば、それでよかったのかもしれませんが、今は昔です。

先行きが明るくないこの時代において、みんなと同じであることのメリットはほとんどありません。

目立たないように、角が立たないように、批判されないように、嫌われないように、目を付けられないように・・・(笑)

これではいつまでたってもショッカー要員から抜け出せませんし、こんなことを気にしているうちに人生は終わってしまいます。

YOLO

解雇416 機密情報の私的領域への複製等を理由とした退職予定者の懲戒解雇が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、機密情報の私的領域への複製等を理由とした退職予定者の懲戒解雇が有効とされた事案を見ていきましょう。

伊藤忠商事事件(東京地裁令和5年11月27日・労経速2554号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社を退職予定であったXが、令和2年7月3日付け懲戒解雇の無効を主張して、Y社に対し、①本件懲戒解雇が無効であることの確認を求めるとともに、②不法行為に基づく損害賠償として本件懲戒解雇の翌日から退職予定日までの給与等に相当する逸失利益及び慰謝料の合計1323万2143円+遅延損害金並びに③退職金として70万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 本件訴えのうち、Y社がXに対して行った令和2年7月3日付け懲戒解雇の無効確認を求める部分を却下する。
 Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社の就業規則には、職務上知り得た会社及び取引関係先の機密情報を不正に第三者に開示又は目的外に利用すること、その他情報管理規程に違反した場合を機密保持違反として懲戒事由に該当すると定められている(就業規則66条5号)。そして、Y社は情報管理規程及びその下位規則において、機密情報の保持の厳守を定め、機密情報を管理責任者の許可なく複写(複製)することを禁止し、電子化情報の保管・保存には被告が一元管理する会社標準のオンラインファイルストレージ基盤を利用すべきこと等の規律を設け、イントラネットで周知を図ると共に、社内通達で注意喚起するなどして、機密情報の流出・漏洩防止を図っていたものであり、そのことを従業員も認識可能であったということができる。
また、Y社では、Y社Box環境を採用し、所属部署ごとのアクセス制限を行い、本件データファイル1については、プラント・プロジェクト部に所属する従業員にアクセス権限を設定しており(Xには異動後の暫定措置としてアクセス権限付与)、Y社Box環境へのアクセスについても、貸与PCか、Boxのアプリケーションがインストールされた私物スマートフォンやタブレットから、IDとパスワードの入力や、ワンタイムパスワードの入力を要求するなどのアクセス制限措置がとられていた。
2 他方で、証拠によれば、プラント・プロジェクト部内においては、部員が自らの所属課以外の課の案件に関する情報が保存されているフォルダにアクセスすることは可能であったことが認められる。この点、C室長は、各課の共有フォルダにアクセスする場合には、当該フォルダを管理する課の課長などから許可を得るという運用であった旨証言しているが、そのような運用を定めた文書や申請書式は用意されておらず、自身が課長職にあった2年間で一度も申請されたことがないとも証言していることからすれば、共有フォルダに保存されている情報の閲覧範囲は、部内においては事実上制限されていなかったことがうかがわれる。つまり、本件データファイル1が保存されていたY社Box環境は、プラント・プロジェクト部に所属する従業員約50名が、自身の担当案件とは関係なくアクセスできる状況であり、閲覧する情報の範囲についても事実上制限はされていなかったことになる。そして、本件データファイル1が保存されていたフォルダには、極めて多数・多量のデータファイルが保存されており、その中には、同一の用途に用いる作成途上の様々なバージョンのファイルや、過去に利用したレストランの一覧のフォルダなど、およそ機密情報に当たらないものも含まれるなど、ファイルごとの機密性の程度に相当な幅があったこともうかがわれる。
加えて、情報管理規程における機密情報の定義は抽象的で、従業員において、その対象となる機密情報か否かが一見して明らかなものとはいえない状況であった。さらに、個々のファイル等に機密情報であること(例えば、極秘やConfidentialといった記載)が明示されていたとか、情報を取り扱う担当者内でのパスワードによる秘密管理措置が施されていた等の事情も、これを認めるに足りる証拠はない
3 このような就業規則並びに情報管理規程及びその下位規則の定めやY社Box環境における情報の管理・保管状況をも踏まえると、機密情報に接した者が、これが秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理されていたとはいえず、本件データファイル1について秘密管理性を肯定することは困難というべきである。
以上によれば、本件データファイル1について「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)に該当すると認めることはできない。

秘密管理性要件の厳しさがよくわかります。実際、営業秘密として保護するのであれば、実務上の利便性はかなりの部分捨てなければなりません。このトレードオフを甘受できるかどうかだと思います。

なお、懲戒解雇自体は別の懲戒事由の規定により有効と判断されています。

解雇を有効にするためには、日頃の労務管理が非常に重要です。日頃から顧問弁護士に相談できる体制を整えましょう。

本の紹介2156 限界の正体#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは、「自分の見えない檻から抜け出す方法」です。

また、帯には「自分の役割を演じるのをやめて心のブレーキを外す。」と書かれています。

結局、限界なんてものは、都合よく自分で作っているものであって、純主観的なものです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いかなるときも、自分の可能性を信じられる人になること。考えすぎて、動けなくなる『限界の檻』から脱し、自分の限界を、自分で引き上げて、チャレンジし続けられる人、すぐに行動に移せる人。それこそが変化の激しい時代に生き残っていける人だと、僕は信じています。」(28頁)

まさにこれが、限られた時間の中で成果を出している人の特徴です。

考えることと動くことは、同時進行的に行われているのです。

じっくり計画を立てて・・・なんて悠長なことをしている間に、状況が変わってしまいます。

のんびりするのはおじいちゃんになってからで十分です。

刻一刻と砂時計の砂は落ち続けています。

何かにチャレンジしているその瞬間こそが、生きていることを実感できる瞬間なのです。

有期労働契約129 定年後再雇用者への労働契約法19条2号による更新期待がないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、定年後再雇用者への労働契約法19条2号による更新期待がないとされた事案を見ていきましょう。

東光高岳事件(東京地裁令和6年4月25日・労経速2554号3頁)

【事案の概要】

本件は、A社との間で期間1年の有期労働契約(本件契約1)を締結していたXが、Aを吸収合併したY社に対し、本件契約1の期間満了時、Xには更新の合理的期待があり、本件契約1と同一の労働条件によるXの更新申込みをY社が拒絶したことは客観的合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないため、本件契約1の内容と同一の労働条件で有期労働契約(本件契約2)が成立した、また、同様の理由で、本件契約2の期間満了時、本件契約2の内容と同一の労働条件で有期労働契約(本件契約3)が成立した、本件契約3の期間満了時、本件契約3の内容と同一の労働条件で有期労働契約(本件契約4)が成立したと主張して、Y社に対し、以下の請求をした事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労契法19条2号の「更新」とは、従前の労働契約、すなわち直近に締結された労働契約と同一の労働条件で契約を締結することをいうと解される。
なぜならば、労契法19条2号は、期間満了により終了するのが原則である有期労働契約において、雇止めに客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で労働契約を成立させるという法的効果を生じさせるものであるから(同条柱書)、その要件としての「更新」の合理的期待は、法的効果に見合う内容であることを要すると解されるからである。
また、労契法19条2号は、最高裁判所昭和61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁(以下「日立メディコ最高裁判決」という。)の判例法理を実定法としたものであるところ、同判決は、雇用関係の継続が期待されていた場合には、雇止めに解雇権濫用法理が類推され、解雇無効となるような事実関係の下に雇止めがされたときは、「期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となる。」としており、これが条文化されたものであるから、ここでいう「更新」は、従前の契約の労働条件と同一の契約を締結することをいうと解しているものと理解できる
さらに、更新は、民法の概念としては、契約当事者間において従前の契約と同一の条件で新たな契約を締結することをいうと解されるところ(雇用契約につき民法629条1項、賃貸借契約につき同法603条、604条、619条1項、ただし、期間については従前の契約と同一ではないと解されている。)、労働契約(労契法6条)と雇用契約(民法623条)とは同義のものと解されるから、労働契約において民法の概念と異なる解釈をとる理由はない
日立メディコ最高裁判決が、更新の期待の合理的な理由を肯定するに当たり、有期労働契約が従前の契約に至るまで継続して締結されてきたことを考慮要素とする一方、これが同一の労働条件によるものであったかは重視していないこと、有期労働契約が継続して締結される場合の実態として、労働条件について順次の微修正が行われることは通常の事態であって、これが期待の合理性に大きな影響を与えるものとは解されないことから、過去の契約関係において賃金などの労働条件に若干の変動がある場合であっても従前(直近)の労働契約と同一の労働条件で更新されると期待することに合理的な理由があるといえる場合があると考えられる。そして、ここで検討している労契法19条2号の「更新」とは何かという問題は、期待の合理的理由の考慮要素としての過去の労働条件変動を伴う契約締結が「更新」に当たるかという問題ではなく、雇止めに解雇権濫用法理を類推適用し、雇止めに客観的合理的な理由がなく社会通念上相当性がない場合には従前と同一の労働条件で契約の成立を認めるという法的効果を生じさせるための要件として、どのような労働条件の契約締結について合理的期待を要求するかという問題である。したがって、日立メディコ最高裁判決が、「更新」の期待の合理的な理由を肯定するに当たり過去の有期労働契約が同一の労働条件によるものであったことを重視しておらず、有期労働契約が継続して締結される場合の実態として、労働条件について順次の微修正が行われることは通常の事態であって、これが期待の合理性に大きな影響を与えるものとは解されないからといって、労働者が解雇権濫用法理を類推適用されるための要件としての期待の合理性の対象となる「更新」について、従前の(直近の)労働契約と同一の労働条件ではなくてよいという帰結に直ちになるものではない。
そして、仮に、労契法19条2号の「更新」を同一の当事者間の労働契約の締結と解し、労働条件を問わず同一の当事者間において労働契約が締結されると期待することについて合理的理由があれば解雇権濫用法理の類推適用がされるとした場合、使用者が、従前(直近)と同一の労働条件による労働契約の締結を拒否し、従前の労働契約より不利な労働条件での労働契約を提案し、労働者がこれを承知しなかった場合には、使用者の労働条件変更の提案に合理性があったとしても、雇止めの客観的合理的な理由、社会通念上相当性があるといえない限り、従前(直近)の労働契約と同じ労働条件による労働契約が成立する結果となり、有期労働契約の期間満了の都度、就業の実態に応じて均衡を考慮して労働条件について交渉すること(労契法3条1項、2項)は困難となるから、労働契約における契約自由の原則(労契法1条、3条1項、2項)に反する帰結となる。そして、このような場合において、原告主張のように、労契法19条柱書の雇止めの客観的合理的な理由、社会通念上相当性の審査において、使用者の労働条件の変更提案の合理性が斟酌され、使用者の労働条件の変更提案の合理性が肯定されるときには雇止めに客観的合理的な理由、社会通念上相当性があることが肯定され、雇止めが有効となるといった解釈をとる場合、雇止めについての解雇権濫用法理の類推適用を法制化した労契法19条柱書の適用において、その由来及び文言とは異なって、使用者による労働条件の変更提案の合理性といった考慮要素を新たに取り入れる結果となるが、そうすべき根拠は必ずしも明らかではない。無期労働契約においては、使用者が労働者に対し労働条件の変更提案を行い労働者がこれを拒否した場合に解雇するという変更解約告知について、解雇権濫用法理(労契法16条)の下、使用者による労働条件の変更提案に合理性があれば解雇を有効とするという解釈は未だ定着しておらず、使用者による労働条件の変更提案の合理性審査基準が確立していない今日において、有期労働契約において使用者による労働条件の変更提案に合理性があれば雇止めを有効とするという解釈を採用することは、有期労働契約における当事者の予測可能性を著しく害する結果となる。
以上から、労契法19条2号にいう「更新」は、従前の労働契約と同一の労働条件で有期労働契約が締結されることをいうと解するのが相当である。

この裁判例によれば、労契法19条2号の「更新」を直近に締結された労働契約と同一の労働条件で契約を締結することを解釈になりますが、はたして本当にそうでしょうか・・・?

労働条件を変更した有期雇用契約の再締結が更新に当たらないとなると、5年ルールはいとも簡単に潜脱できてしまう気がしますが。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

本の紹介2155 営業の魔法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

営業の心構えがまとめられている本です。

とはいえ、書かれている内容は、決して営業職に限ったものではなく、すべての対人サービス業に従事している人にとって意味のある本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生は、早いもの、強いもの、に分があるわけじゃありません。目標から目をそらさずコツコツ積み重ねるのです。そしてひとつひとつの目標をクリアし目的を達成するのです」(134頁)

「継続は力なり」

ただそれだけです。

継続することさえできれば、ほとんどのことは達成することができます。

まあ、そんなことはみんなわかっているのです。

でも、できないのですよ。

人生は、いつだって弱い弱い自分との闘いですから。

賃金287 教習指導員資格取得後、3年以内に退職した従業員への立替費用の返還請求が労働基準法16条に違反しないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、教習指導員資格取得後、3年以内に退職した従業員への立替費用の返還請求が労働基準法16条に違反しないとされた事案を見ていきましょう。

勝英自動車学校事件(東京地裁令和5年10月26日・労経速2554号31頁)

【事案の概要】

本件は、自動車教習事業を営む株式会社であるY社が、従業員であったXに対し、在職中に教習指導員資格を取得するための費用に関する準消費貸借契約に基づき、貸金62万4700円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xは、Y社に対し、47万9700円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 教習指導員資格は国家資格であること、法令上、教習指導員資格があれば指定自動車教習所において教習指導員業務及び検定業務に従事することができること、教習指導員資格を得るためにはA研修所において研修を受講する方法と公安委員会の審査を受ける方法があること、Y社において教習指導員資格を有する教習指導員として勤務すれば毎月3万円の教習検定手当が得られること、Y社はA研修所において研修を受講している期間もXから賃金の支払を受けていたことが認められる。
教習指導員資格は、それを取得することによって指定自動車教習所において教習指導員業務及び検定業務に従事することができる国家資格でありX個人に帰属するものであるから、本来であれば資格取得者であるX本人が費用を負担すべきものといえる。
当該国家資格を取得すれば、Y社において教習指導員として勤務できることに加え、自動車教習所といった限られた業界内ではあるものの転職活動等で有利になるのは当然であり、Xは、当該資格の取得によって利益を得たといえる。
また、本件準消費貸借契約における契約内容をみても、貸金額は47万9700円であり、教習指導員資格を得てY社において教習指導員として稼働すれば毎月3万円の手当が得られるから、投下した資本について比較的早期に回収することができるといえる。A研修所における研修は、Xが約1か月で修了していることに鑑みれば短期集中型の研修といえ、公安委員会の審査を受ける方法(被告の主張によれば半年から1年程度の期間を要するのが一般的とのことである。)よりも、短期間でより確実に教習指導員資格を取得できる方法であるといえ、Xの早期の収入増加につながるといったXに有利な面もある。
さらに、Xは、A研修所において研修を受講している期間もY社から賃金の支払を受けており、Y社における就労を免除され賃金を得ながら一定の汎用性を有する国家資格を得ることができたといえる。
これらの事実によれば、本件準消費貸借契約の内容は、合理的な内容であるといえるから、Xが本件準消費貸借契約の締結を強制されたということもできない
上記に加え、返還免除に要する3年間という期間についても特段長期にわたるということはできないことを考慮すれば、本件準消費貸借契約は、退職の自由を不当に制限するとはいえない。したがって、本件準消費貸借契約は、労働基準法16条に反するということはできず有効である。

考慮要素は、概ね以上のとおりですので、裁判所の考え方をしっかり押さえておきましょう。

ていうか、弁護士費用考えたら会社は赤字です。もう資格のための貸付なんてやめてしまったらどうでしょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2154 ユダヤ人億万長者に学ぶ「不屈」の成功法則#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

勝ち続けるために必要なマインドと習慣が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

毎日、私はウェイトトレーニングやジョギングで体を鍛えている。耐えきれずにやめたくなっても必死でこらえる。そうやって培った強靭な精神力が、ビジネスの世界で歯を食いしばって長時間働き、拒絶されても前向きな姿勢を維持するのに役立っている。つまり、私にとって運動は、不屈の闘志を燃やすための燃料のようなものなのだ。」(178頁)

このようなルーティンを毎日こなしている人たちからすれば、特に驚くようなことではありません。まさに、当たり前にやっていることです。

あえて自分を追い込むことによって、強い精神と肉体を維持しているのです。

もうこんな生活を長年続けている人たちからしたら、そうでない人たちに負ける理由がないのですよ。

考え方、起きる時間、休日の過ごし方、食べるもの等、なにからなにまで、日々のあらゆる選択が違うわけですから。

残酷ですが、自明の理です。

賃金286 公務員の飲酒運転による物損事故と退職手当の全部支給制限処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、公務員の飲酒運転による物損事故と退職手当の全部支給制限処分に関する裁判例を見ていきましょう。

大津市(懲戒免職処分)事件(最高裁令和6年6月27日・労経速2558号3頁)

【事案の概要】

本件は、普通地方公共団体であるY市の職員であったXが、飲酒運転等を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、退職手当管理機関であるY市長から、Y市職員退職手当支給条例11条1項1号の規定により一般の退職手当の全部を支給しないこととする処分を受けたため、Y市を相手に、上記各処分の取消しを求める事案である。

原審は、本件懲戒免職処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとした上で、本件全部支給制限処分の取消請求を認容すべきものとした。

【裁判所の判断】

1 原判決中、Y市敗訴部分を破棄し、同部分につき第1審判決を取り消す。
2 前項の部分に関するXの請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは、長時間にわたり相当量の飲酒をした直後、帰宅するために本件自動車を運転したものであって、2回の事故を起こしていることからも、上記の運転は、重大な危険を伴うものであったということができる。そして、Xは、本件自動車の運転を開始した直後に本件駐車場内で第1事故を起こしたにもかかわらず、何らの措置を講ずることもなく運転を続け、さらに、第2事故を起こしながら、そのまま本件自動車を運転して帰宅したというのであるから、本件非違行為の態様は悪質であって、物的損害が生ずるにとどまったことを考慮しても、非違の程度は重いといわざるを得ない。
また、Xは、本件非違行為の翌朝、臨場した警察官に対し、当初、第1事故の発生日時について虚偽の説明をしていたものであり、このような非違後の言動も、不誠実なものというべきである。
さらに、Xは、本件非違行為の当時、管理職である課長の職にあったものであり、本件非違行為は、職務上行われたものではないとしても、Y市の公務の遂行に相応の支障を及ぼすとともに、Y市の公務に対する住民の信頼を大きく損なうものであることが明らかである。
これらの事情に照らせば、本件各事故につき被害弁償が行われていることや、Xが27年余りにわたり懲戒処分歴なく勤続し、上告人の施策に貢献してきたこと等をしんしゃくしても、本件全部支給制限処分に係る市長の判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。

こういう事案は、どちらの結論の判決も書けてしまいます。

どの事実を重視し、どう評価するかの問題ですので。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2153 出世する人、しない人の1ミリの差#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「頭角を現し、大差をつける人に共通する微差とは?」と書かれています。

ほんの些細な習慣の積み重ねの差が、大きな結果の違いとして表れるのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『メメント・モリ(死を想え)』というラテン語は、自分がいつか必ず死ぬ運命にあることを思い起こさせるための警句です。ネガティブなものではなく、大局的な見地から日々を顧みてもいいという意味合いが強く、むしろ一日一日を楽しみ、有意義なものにすべき、というポジティブな思いが込められてた言葉です。死を考えることは、生を考えることでもあります。」(161頁)

若い頃は、時間が無限に存在するような錯覚を抱いていましたが、年齢を重ねるごとに、1歩ずつ死に向かって歩いていることが理解できます。

「時は金なり」と言いますが、正しくは「時は命なり」です。

無駄なこと、嫌なことに1秒たりとも貴重な時間を使いたくありません。

世間体や他人の評価を気にしているうちに、人生は終わってしまいます。

老後、人生を振り返ったときに、「あー自分の人生、なんだったんだろう」なんて思いたくないのです。

自分に力をつけ、人や組織に依存せず、何事にも固執せず、好きなように生きるのが、私の人生のモットーです。

賃金285 高額な固定残業代の定めであるにもかかわらず、実際の時間外労働時間とは直ちに結び付かないとして、有効性を認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、高額な固定残業代の定めであるにもかかわらず、実際の時間外労働時間とは直ちに結び付かないとして、有効性を認めた事案を見ていきましょう。

ゆうしん事件(東京地裁令和5年10月6日・労経速2558号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、令和2年3月1日から令和4年2月28日までの間、法定の労働時間を超過して時間計算書のとおり時間外労働をしたと主張して、①割増賃金278万4589円及びこれに対する遅延損害金、②労働基準法(以下「労基法」という。)114条に基づく付加金278万4589円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xが入社した平成30年8月1日の時点では給与規程が制定、周知されていたと認められる。そして、給与規程に定められた役割給、役職手当及び資格手当は、いずれもその名称からは直ちに割増賃金の支払と解することはできないものの、給与規程の本文には、それぞれ本人の役割、役職者の役割及び資格に応じて、いずれも業務が多くなることを見込んで、割増賃金見合分として支給する旨が明記されていること(11条2項、12条、13条)からすれば、これらの手当はいずれも、その全額が割増賃金に対する対価として支払われたものと認めるのが相当である。そして、これらは給与規程の定めについても同様である。
これに対しXは、D社労士の説明資料からは、役割給、役職手当及び資格手当の少なくとも一部は、会社内における役割が重要になることに伴って基本給が加算されるという趣旨を含むものと解すべきと主張するが、同資料には会社が期待する役割に応じて賃金や役職を決定する旨の記載があるものの、前記の給与規程の本文の定めと併せて検討すれば、役割給、役職手当及び資格手当に基本給としての性質が含まれるものと理解することはできない。
Xは、役割給、役職手当及び資格手当の合計は13万円と高額であり、このような固定残業代の定めは、労基法36条4項の規制である45時間を上回る時間外労働を想定しており、時間外労働を恒常的に行わせることを前提とした規程であると主張する。しかしながら、固定残業代の額と従業員が実際に行う時間外労働の時間とは直ちに結び付くものではなく、時間外労働を恒常的に行わせることを前提とした規程であるとのXの主張は採用することができない

2 労基法37条5項は、割増賃金の算定基礎賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない旨定めるところ、その趣旨は、労働者の個人的事情に基づいて支給される賃金を割増賃金の算定基礎賃金から除外するものと解される。このような趣旨に鑑みれば、労基法施行規則21条において算定基礎賃金から除外される住宅手当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうものと解するべきである。
そこで検討するに、給与規程16条は、住宅手当として、住宅ローン又は家賃支払額に応じて1万円、1万5000円又は2万円を支給する旨定め、令和2年7月に制定された給与規程は、家賃手当の上限を1万円と定めているところ、Xは、こうした給与規程の定めがある中、入社時から月額2万円の家賃手当の支給を受け続けている。またY社は、Xが入社時に実家に住んでいたことをもって、Xが不正に家賃手当を受給していたと主張するが、Y社が上記の各給与規程に基づきXの家賃手当の支給要件及び金額をどのように判断したのかは明らかにしていない
そしてXは、訴外Aから被告に入社する際、訴外Aから家賃手当として支給を受けていた2万円を引き続き支給されることでY社と合意した旨供述するところ、Xが勤務場所を変更しないままY社と雇用契約を締結したことからすれば、Xの供述は合理性を有するというべきである。
以上によれば、Y社は、Xとの合意に基づき、実際の住宅費とは無関係に家賃手当2万円を支給していた可能性が高く、そうすると本件の家賃手当は、住宅に要する費用に応じて算定された住宅手当であるとは認めるに足りないから、労基法37条5項に基づいて割増賃金の算定の基礎となる賃金から除外されると認めることはできない

固定残業制度の有効要件については、ほぼ固まったといえるので、数年前のような下級審レベルでのゆらぎはほとんどなくなりました。

また、上記判例のポイント2のような除外賃金をめぐる解釈についても、しっかりポイントを押さえれば難しくはありませんので、凡ミスをしないようにしましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。