Author Archives: 栗田 勇

労働時間28(阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第2)事件)

おはようございます。

今日は、海外旅行派遣添乗員の事業場外みなし時間制適用の可否に関する控訴審判決を見てみましょう。

阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第2)事件(東京高裁平成24年3月7日・労判1048号6頁)

【事案の概要】

Y社は、募集型企画旅行において、主催旅行会社A社から添乗員の派遣依頼を受けて、登録型派遣添乗員に労働契約の申込みを行い、同契約を締結し、労働者を派遣するなどの業務を行う会社である。

Y社は、フランス等への募集型企画旅行の登録型派遣添乗員として、Xを雇用した。日当は1万6000円であり、就業条件明示書には、労働時間を原則として午前8時から午後8時とする定めがあった。

Y社では、従業員代表との間で事業場外みなし労働時間制に関する協定書が作成されており、そこでは、派遣添乗員が事業場外において労働時間の算定が困難な添乗業務に従事した日については、休憩時間を除き、1日11時間労働したものとみなす旨の記載があった。

Xは、Y社に対し、未払時間外割増賃金、付加金等を求めた。

【裁判所の判断】

事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合にあたらない。

【判例のポイント】

1 この制度は、労働者が事業場外で行う労働で、使用者の具体的な指揮監督が及ばないため、使用者による労働時間の把握が困難であり、実労働時間の算定が困難な場合に対処するために、実際の労働時間にできるだけ近づけた便宜的な労働時間の算定方法を定めるものであり、その限りで使用者に課されている労働時間の把握・算定義務を免除するものと解される。
そして、使用者は、雇用契約上、労働者を自らの指揮命令の下に就労させることができ、かつ、労基法上、時間外労働に対する割増賃金支払義務を負う地位にあるのであるから、就労場所が事業場外であっても、原則として、労働者の労働時間を把握する義務を免れないのであり(労基法108条、同規則54条参照)、同法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」とは、当該業務の就労実態等の具体的事情を踏まえて、社会通念に従って判断すると、使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価され、客観的にみて労働時間を把握することが困難である例外的な場合をいうと解するのが相当である。
本通達は、事業場外労働でも「労働時間を算定し難いとき」に当たらない場合についての、発出当時の社会状況を踏まえた例示であり、本件通達除外事例(1)(2)(3)に該当しない場合であっても、当該業務の就労実態等の具体的事情を踏まえ、社会通念に従って判断すれば、使用者の具体的な指揮監督が及びものと評価され、客観的にみて労働時間を把握・算定することが可能であると認められる場合には、事業場外労働時間のみなし制の適用はないというべきである

2 ・・・そうすると、本件添乗業務においては、指示書等により旅行主催会社である阪急交通社から添乗員であるXに対し旅程管理に関する具体的な業務指示がなされ、Xは、これに基づいて業務を遂行する義務を負い、携帯電話を所持して常時電源を入れておくよう求められて、旅程管理上重要な問題が発生したときには、阪急交通社に報告し、個別の指示を受ける仕組みが整えられており、実際に遂行した業務内容について、添乗日報に、出発地、運送機関の発着地、観光地や観光施設、到着地についての出発時刻、到着時刻等を正確かつ詳細に記載して提出し報告することが義務付けられているものと認められ、このようなXの本件添乗業務の就労実態等の具体的事情を踏まえて、社会通念に従って判断すると、Xの本件添乗業務には阪急交通社の具体的な指揮監督が及んでいると認めるのが相当である

3 労基法32条の労働時間とは、労働者が使用者(本件では派遣先の阪急交通社。)の指揮命令下に置かれている時間をいい(最高裁平成12年3月9日判決)、労働者が実作業に従事していない時間であっても、労働契約上の役務の提供を義務付けられていると評価される場合には、使用者の指揮命令下に置かれているものであって、当該時間に労働者が労働から離れることを保証されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができると解するのが相当である(最高裁平成14年2月28日判決)。
本件添乗業務の内容によれば、添乗員は、実際にツアー参加者に対する説明、案内等の実作業に従事している時間はもちろん、実作業に従事していない時間であっても、ツアー参加者から質問、要望等のあることが予想される状況下にある時間については、ツアー参加者からの質問、要望等に対応できるようにしていることが労働契約上求められているのであるから、そのような時間については、労働契約上の役務の提供を義務付けられているものであって、労働からの解放が保障されておらず、労基法上の労働時間に含まれると解するのが相当である

なかなか厳しい判断ですが、裁判所の判断傾向からすれば驚く話ではありません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介117 ゲーテのコトバ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます また一週間が始まりましたね。 もう8月も今週で終わりです。
写真 12-08-25 12 35 56
←先日、SEの方と、事務所の近くの「つむら屋」に行ってきました。

いつも鴨せいろを注文してしまいます。

今日は、午前中は、労務管理に関する新規相談が入っています。

午後は、証人尋問の打合せと離婚調停が入っています。

夕方から、月一恒例のラジオです。

今日も一日がんばります!!

blogram投票ボタン にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ←ぽち。

さて、今日は本の紹介です。
ゲーテのコトバ (ゲーテビジネス新書)
ゲーテのコトバ (ゲーテビジネス新書)

「ゲーテとの対話」「イタリア紀行」「ゲーテ格言集」から、ゲーテの言葉を抜粋し、その言葉について、著者が思うところを書いている本です。

「ゲーテビジネス新書」で「ゲーテのコトバ」というタイトル。 ゲーテづくし。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

探求と誤ちは結構なことだ。探求と誤ちを通して人は学ぶのだからね。」(73頁)

負けること。落ちること。あやまること。自らの領域を耕していく上で、こうしたことほど大事な体験はないと私は思う。なぜならば、領域を立体化し、豊かにしていくためには、転がり落ちた場所からの視線も必要だからだ。」(75頁)

これは、私の人生観、仕事観にとても近いです。

失敗をいかに次につなげるか、ということばかり考えています。

どれだけ準備をしても、100%完璧ということは、まずありません。

人生や仕事は、失敗との向き合い方で成長のしかたが全く変わってくると確信しています。

すべては、次のステージへ上がるために必要だからこそ起こっていると考えています。

死ぬまで向上していきたいです。

向上心がなくなったら、この仕事、やめますよ。

労働時間27(阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第1)事件)

おはようございます。

さて、今日から、3回連続で、派遣添乗員の労働時間算定に関する高裁判決を見ていきます。

今日は、国内旅行派遣添乗員の事業場外みなし時間制適用の可否に関する控訴審判決を見てみましょう。

阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第1)事件(東京高裁平成23年9月14日・労判1036号14頁)

【事案の概要】

Y社は、旅行その他旅行関連事業を行うことを等を業とする会社である。

Xは、Y社の派遣添乗員として、阪急交通社に派遣され、同社の国内旅行添乗業務に従事している。

Y社では、派遣添乗員につき、事業場外みなし労働時間制が採用されている。

Xは、Y社に対し、未払時間外割増賃金、付加金等を求めた。

【裁判所の判断】

事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合にはあたらない。

【判例のポイント】

1 事業場外みなし労働時間制は、使用者の指揮監督の及ばない事業場外労働については使用者の労働時間の把握が困難であり、実労働時間の算定に支障が生ずるという問題に対処し、労基法の労働時間規制における実績原則の下で、実際の労働時間にできるだけ近づけた現実的な算定方法を定めるものであり、その限りで労基法上使用者に課されている労働時間の把握・算定義務を免除するものということができる
そして、使用者は、雇用契約上従業員を自らの指揮命令の下に就労させることができ、かつ、労基法上時間外労働に対する割増賃金支払義務を負う地位にあるのであるから、就労場所が事業場外であっても、原則として、従業員の労働時間を把握する義務があるのであり、労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」とは、就労実態等の具体的事情を踏まえ、社会通念に従い、客観的にみて労働時間を把握することが困難であり、使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価される場合をいうものと解すべきこと及び旧労働省の通知が発出当時の社会状況を踏まえた「労働時間を算定し難いとき」の例示であることは、原判決の判示するとおりである

2 確かに、使用者の指揮監督が及んでいなくとも、従業員の自己申告に依拠した労働時間の算定が可能な限りは「労働時間を算定し難いとき」に当たらないというのであれば、「労働時間を算定し難いとき」はほとんど想定することができず、事業場外みなし労働時間制が定められた趣旨に反するというべきである。しかし、本件で問題となっているのは、自己申告に全面的に依拠した労働時間の算定ではなく、社会通念上、事業場外の業務遂行に使用者の指揮監督が及んでいると解される場合に、補充的に従業員の自己申告を利用して労働時間が算定されるときであっても、従業員の自己申告が考慮される限り、「労働時間を算定し難いとき」に当たると解すべきかということであり、事業場外みなし労働時間制の趣旨に照らすと、使用者の指揮監督が及んでいるのであれば、労働時間を算定するために補充的に自己申告を利用する必要があったとしてもそれだけで直ちに「労働時間を算定し難いとき」に当たると解することはできず、当該自己申告の態様も含めて考慮し、「労働時間を算定し難いとき」に当たるか否かが判断されなければならない

3 添乗員による行程管理が指示書の記載に捕らわれず、その場の事情に応じた臨機応変なものであることを要求されるという意味では、添乗員の行程管理がその裁量に任されている部分があるといえるとしても、添乗員の裁量はその限りのものであって、そのような裁量があることを理由に添乗員が添乗業務に関する阪急交通社の指揮監督を離脱しているということはできない。また、添乗日報は、添乗員が指示書により指示された行程を実際に管理した際の状況を記載して報告した文書であり、一部に記載漏れや他の記載との若干の齟齬はみとめられるものの、その記載は詳細であって、事実と異なる記載がされ、あるいは事実に基づかないいい加減な記載がされているというような事実は認められない。なお、指示書の記載と異なる点が多くある理由は前記のとおりであって、指示書の記載と異なる点が多いからといって、添乗日報の記載の信用性は減殺されない。
・・・添乗員の行程管理については多くの現認者が存在しており、添乗日報の到着時刻や出発時刻について虚偽の記載をすればそれが発覚するリスクは大きく、その点も添乗日報の記載の信用性を高める状況の一つということができる。そして、現に、Xが作成した本件各ツアーに係る添乗日報の信用性を疑うべき事情は何ら認められない。

4 ・・・社会通念上、添乗業務は指示書による阪急交通社の指揮監督の下で行われるもので、Y社は、阪急交通社の指示による行程を記録した添乗日報の記載を補充的に利用して、添乗員の労働時間を算定することが可能であると認められ、添乗業務は、その労働時間を算定し難い業務には当たらないと解するのが相当である

上記判例のポイント1、2の規範はしっかり押さえておきましょう。

かなり適用範囲は狭いので注意が必要です。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介116 日本人の美徳を育てた「修身」の教科書(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 今日もいい天気ですね!
写真 12-08-20 21 57 36
←先日、事務所の近くの「小だるま亭」に行きました。炙りしめさば。

うまかったです。

今日は、午前中は、裁判が3件入っています。

お昼は、ラジオの打合せです。

午後は、刑事裁判が入っています。その後は、裁判の打合せが入っています。

めいっぱい予定が入っています。

今日も一日がんばります!!

blogram投票ボタン にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ←ぽち。

さて、今日は、本の紹介です。
日本人の美徳を育てた「修身」の教科書 (PHP新書)
日本人の美徳を育てた「修身」の教科書 (PHP新書)

この本は、戦前の尋常小学修身書4~6年生のテキストを、現代語訳したものです。

とてもいい本です。ぜひ、子どもがいる方は、子どもと一緒に読んでみてください。

おすすめの一冊です!

これ、小学校の教科書にすればいいのに。

1つ1つが完結したストーリーとなっており、とても読みやすい本です。

是非、みなさん、読んでみてください。

賃金47(NEXX事件)

おはようございます。

さて、今日は、賃金減額、欠勤控除、普通解雇に関する裁判例を見てみましょう。

NEXX事件(東京地裁平成24年2月27日・労判1048号72頁)

【事案の概要】

Y社は、電子機器、システム開発及び販売等を業とする会社である。

Xは、当初、Y社のアルバイトとして稼動していたが、平成17年1月以降は正社員として、給与は月60万3500円とする契約を締結した。

Y社は、当初、Xに対し、月額60万円を基準として支給していたが、平成18年6月分の給与につき、これまでの額面から20%分(12万円)減額した48万円として、以後、同額を基準として給与を支払うようになった。

Xは、平成21年6月、Y社に対し、要求書により、従前の契約どおり月額60万円の給与の支払いを求めるまで、約3年間にわたって減額後の給与を受領し続けていた。

Y社は、業務命令の無視、反抗の継続、職務遂行能力の欠如等を理由に、平成21年7月、Xを普通解雇した。

【裁判所の判断】

賃金減額は無効
→減額分約324万円の支払を命じた

解雇は有効

【判例のポイント】

1 労働契約の内容である労働条件の変更については、労使間の合意によって行うことができるところ(労働契約法8条)、一般に、この場合の合意は、明示であると黙示であるとを問わないものとされている。しかし、労働契約において、賃金は最も基本的な要素であるから、賃金額引下げという契約要素の変更申入れに対し、労使間で黙示の合意が成立したということができるためには、使用者が提示した賃金額引下げの申入れに対して、ただ労働者が異議を述べなかったというだけでは十分ではなく、このような不利益変更を真意に基づき受け入れたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要であるというべきであり、この意味で、Y社側の一方的な意思表示により賃金を改訂することができるものとする本件改訂条項は、労働契約法8条に反し無効というべきである。

2 (1)本件給与減額については、その適用対象者が社長の妻である管理部長以外の正社員2名(X及びA)のみであり、反対の声を上げることが困難な状況にあったこと、(2)減額幅が20%減と非常に大幅なものであるにもかかわらず、激変緩和措置や代替的な労働条件の改善策は盛り込まれていないこと、(3)平成18年4月に実施した本件説明会において、Y社が、売上げ・粗利益ともに振るわない現状にあることから、業績変動時の給与支給水準を設けたい旨を抽象的に説明したことは認められるものの財務諸表等の客観的な資料を示すなどして、Xら適用対象者に対し、このような大幅減給に対する理解を求めるための具体的な説明を行ったわけではないことが認められる。以上によれば、たとえ、約3年間にわたって本件給与減額後の給与をY社から受領し続けていたとしても、Xが、本件給与減額による不利益変更を、その真意に基づき受け入れたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するということはできない。よって、本件給与減額につき、Xとの間で黙示の合意が成立していたということはできない。

賃金減額における同意についてはよく問題となりますが、裁判所は同意の認定に非常に慎重です。

労働者の同意の取り方については、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介115 先が見えない時代の「10年後の自分」を考える技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
「10年後の自分」を考える技術 (星海社新書)
「10年後の自分」を考える技術 (星海社新書)

「10年後の自分」を考える技術・・・? なんじゃそりゃという感じですが、内容はおもしろく、とてもいい本です。

シナリオプランニングの考え方を応用した「自分が望む人生を自分の力で手に入れるための手法」を解説してくれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・ここで重要になってくるのは、『行動しつつ修正する』という考え方だ。どうして読み間違えたのか、何が足りなかったのか、どうすれば目的地にたどりつけるようになるのか・・・・・・そういったことを考えながら、自分のつくったシナリオを修正していく。イメージとしては、『走りながら考えていく』感じだろう。
完璧な未来予測を求めると、不確実なことが多すぎて、一歩も動けなくなってしまう。リスクを過剰に考えてしまうこともある。そうではなく、『部分的無知の状態』でもいいから、現状の考えられる範囲でシナリオを考え、実際の行動に移す。・・・『決断』とは、覚悟を決めて崖から『えいやっ』と飛び下りることのようなイメージがあるが、けっしてそんな単純なものではない。もっと地道な思考や努力のうえに成り立つものなのだ。
」(268頁)

これは、「修正を前提に決断する『一歩踏み出す行動力』」という章に書かれている文章です。

目的地へ最短ルートで行こうと思うと、事前の準備を入念にしなければ、一歩を踏み出すことはできません。

だって、途中で失敗したら、最短ルートではなくなってしまうから。

でも、実は、一歩を踏み出す前の事前準備から、すでにスタートしているんですよね。

最終ゴールまで、完璧な計画を立てたところで、どうせ途中でいろんなことが起こるんです。

途中でいくつかの失敗を経験することは当然の前提としてスタートすることが最も最短ルートだと思っています。

不当労働行為46(平成タクシー事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合員によるビラ配布を理由とする乗務停止処分等と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

平成タクシー事件(広島県労委平成24年4月3日・労判1048号173頁)

【事案の概要】

平成22年9月及び10月、組合の組合員は、Y社が車両を待機させる場所において、Y社の労働条件などを記載したビラを通行人に配布した。また、組合は、10月の半月、ストを実施した。

同年11月、Y社は、組合員13名に対し、ビラ配布により業務を妨害したとして3日~11日間の無線配車停止または乗務停止の懲戒処分に付した。

同年12月、Y社社長Aは、副分会長Bに対し、無線室に連絡せずに個人受け(客から直接依頼を受けてタクシーでの送迎をすること)をしたことおよびタクシーを私的に使用したことについて始末書の提出を求め、Bは始末書を提出した。同月、Y社は、Bに対し、始末書の内容を理由に5乗務の乗務停止処分に付した。

【労働委員会の判断】

ビラ配布を理由とする乗務停止処分または無線配車停止処分は不当労働行為にあたる

会社タクシーの私的使用などを理由とする乗務停止処分は不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 ビラ配布行為は、会社における労働条件の問題及び会社が不当労働行為を行っていることへの社会的関心を喚起することを目的とした行為であり、目的の観点から、組合活動としての正当性が認められる

2 組合としては、前記の目的を最も効果的に果たし得るような場所をビラ配布の場所として選択することは当然のことであり、本件ビラ配布行為の場所の選択が、会社に一定程度の業務上の不利益を与えるものであったとしても、そのことをもって直ちに本件ビラ配布行為の正当性が損なわれるということはない

3 また、本件ビラ配布行為を行うに当たって、組合員が一時的にアクロス等の敷地内に立ち入ったことを否定することはできないが、組合が敷地内への侵入について注意を払っていたことや、注意されて場所を移動したことなどに照らせば、本件ビラ配布行為の組合活動としての正当性を失わせる程に違法な行為があったとまでは認められない

4 本件ビラ配布行為は正当な組合活動であると認められるところ、本件懲戒処分は、正当な組合活動に対して行われたものであり、また、本件ビラ配布行為のみならず、その後に行われたストライキに対する報復的意図も認められることから、反組合的な意図をもって行われた不利益な取扱いであると解するのが相当であり、労働組合法7条1号の不利益取扱いに該当する不当労働行為である。

5 個人受けについては、従前から禁止されており、実際に他にも個人受け禁止違反で懲戒処分を受けた乗務員がいたといった事情に照らせば、Bも、当然そのことを承知していたと推認され、これを覆す証拠はない。さらに、個人受け禁止に抵触した過去の同様の事例では、4乗務の無線廃車停止の懲戒処分があり、それとの均衡を考慮すれば、本件処分の程度が相当性を欠くものとまでは認められない
以上のとおりであるから、本件処分に関し、会社がBに対して合理的な理由なく処分を行ったものとは認められず、本件処分は不当労働行為意思に基づいて行われたものとはいえない。

ビラ配布行為は、組合活動の基本ですが、会社側からすれば、営業場所でやられると困惑してしまうと思います。

しかし、正当な組合活動は、憲法上保障された権利ですので、正当な組合活動を行ったことを理由にその組合員たる従業員を処分すると、不当労働行為となります。

経営者としては、いかなる範囲の組合活動が正当とされているかについて知っておく必要があると思います。

感情的に処分をすると、あとで大変です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介114 名言力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

名言力 人生を変えるためのすごい言葉 (ソフトバンク新書)
名言力 人生を変えるためのすごい言葉 (ソフトバンク新書)

よくある類の本です。

いろんな人の「名言」が載っています。

中には、なるほど、と頷けるものが含まれています。

宝探しみたいなものですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

不安とは、おそれの対象がなにか、よくわからないときに起きる感情だ。ひとつひとつ不安の原因をとりのぞいていけば、あれもこれも、自分で解決できることだとわかる。」(151頁)

「おひとりさまの老後」の著者である上野千鶴子さんのことばです。

「どうしよう。どうしよう。」と不安に陥ってしまうときって、ありますよね。

私もときどきあります。

でもそんなときには、一度、冷静になって、不安の元を分析します。

具体的に、何を恐れているんだろう、ということを分析します。

その後で、おそれの対象が対応可能なものか否かについて考えます。

たいてい、対応可能だということがわかります。

このようなことを繰り返していると、だんだん「抽象的な不安」というものに囚われなくなってきます。

抽象的な不安にかられたときは、とにかくその対象を具体的に突きとめ、対策を考えることに尽きます。

あとは、実践あるのみだと思います。

解雇79(日本通信事件)

おはようございます。

さて、今日は、データ通信サービス会社社員3名に対する整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日本通信事件(東京地裁平成24年2月29日・労判1048号45頁)

【事案の概要】

Y社は、データ通信サービス、テレコムサービス事業を行う、従業員数約100名(整理解雇前)の会社である。

Y社は、業績の悪化から、法人営業の拠点であった西日本支社を閉鎖するとともに、直ちに利益を生まないプロダクトマーケティング部と指定事業者準備プロジェクトを廃止することを決定し、廃止される部門の人員を主たる対象として、連結ベースで約50名、単体で32名に対して退職勧奨を行ったが、Xらはこれに応じなかった。

そこで、Y社は、Xらを整理解雇した。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 そもそも企業が、その特定の事業部門の閉鎖・廃止を決定することは、本来当該企業の専権に属する企業経営上の事項であって、これを自由に行い得るものというべきであるが、これを自由に行い得るものというべきであるが、ただ、このことは、上記決定の実施に伴い企業が使用者として当該部門の従業員に対して自由に解雇を行い得ることを当然に意味するものではない。わが国の労働関係が、いわゆる終身雇用制を原則的な形態として形成されたものであることは紛れもない事実ではあるが、そうした終身雇用制を前提とするか否かにかかわらず、労働者は、雇用関係が将来にわたって安定的に継続するものであることを前提として、自らの生活のあり方を決定するのが通例であるところ、整理解雇は、労働者に何ら落ち度がないにもかかわらず、使用者側の経済的な理由により、一方的に労働者の生活手段を奪い、あるいは従来より不利な労働条件による他企業への転職を余儀なくさせるものであって、これを無制限に認めたのでは著しく信義に反する結果を招きかねないばかりか、労働者の生活に与える影響は深刻である

2 ・・・このように考えるならば、本件整理解雇の効力を判断するに当たっては、同解雇が、労使間の包括的な利益衡量により、就業規則64条3号にいう「事業の縮小その他会社の都合によりやむを得ない事由がある場合」に該当するか否かを判定する必要があるところ、整理解雇は、その特性等からみて、使用者は他の解雇にもまして労働者の雇用の維持をに努め、可能な限り、その不利益を防止すべき義務を負っているものというべきであり、そうだとすると上記判断には、いわゆる比例原則が妥当し、整理解雇(余剰人員の削減)という手段とその目的との間の「適合性」(整理解雇が期待された会社経営上の成果の実現を促進するか。適合性の原則)、「必要性」(整理解雇が目的を達成する上で最終的な手段か。必要性の原則)及び「適切性」(整理解雇が目的との関係で適切な均衡を保っているか。適切性の原則)の各観点からの検討が不可欠である。

3 そうだとすると、上記就業規則64条3号にいう「事業の縮小その他会社の都合によりやむを得ない事由がある」ものといい得るためには、上記適合性の原則に基づくものとして(1)当該整理解雇(人員整理)が経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づくか、ないしはやむを得ない措置と認められるか否か(要素(1)=整理解雇の必要性)、上記必要性及び適切性の原則に基づくものとして(2)使用者は人員の整理という目的を達成するため整理解雇を行う以前に解雇よりも不利益性の少なく、かつ客観的に期待可能な措置を行っているか(要素(2)=解雇回避努力義務の履行)及び(3)被解雇者の選定が相当かつ合理的な方法により行われているか(要素(3)=被解雇者選定の合理性)という3要素を総合考慮の上、解雇に至るのもやむを得ない客観的かつ合理的な理由があるか否かという観点からこれを決すべきものと解するのが相当である。

4 なお、整理解雇につき労働協約又は就業規則上いわゆる人事同意約款又は協議約款が存在するにもかかわらず労働組合の同意を得ず又はこれと協議を尽くさなかったときはもとより、そのような約款等が存在しない場合であっても、当該整理解雇がその手続上信義に反するような方法等により実行され、労契法16条の「社会通念上相当であると認められない場合」に該当するときは解雇権を濫用したものとして、当該整理解雇の効力は否定されるものと解されるが、これらは整理解雇の効力の発生を妨げる事由(再抗弁)であって、その事由の有無は、上記就業規則64条3号所定の解雇事由が認められた上で検討されるべきものであり、上記就業規則所定の解雇事由=「客観的に合理的な事由」(抗弁)の有無の判断に当たり考慮すべき要素とはなり得ないものというべきである

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介113 一生食べられる働き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

一生食べられる働き方 (PHP新書)
一生食べられる働き方 (PHP新書)

元グーグル米国本社副社長兼日本法人社長の村上さんの本です。

本の中にも、グーグルの話がたくさん出てきます。

村上さんのこれまでの経験をもとに、若い世代にアドバイスをしています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・こうした迷いのなかで出合ったのが、経済学者フリードリヒ・ハイエクの思想でした。自分の利益、自分の家族の利益、自分の会社、自分の地域社会の利益・・・と、自分の同心円上で、私利私欲で行動すればいいというのです。私欲から出た行動は、決して本人だけを利するわけではありません。市場を経由することで社会全体の利益につながるからです。ということは、自分のためにお金を稼ぐことが、最終的には最貧といわれる10億人の生活水準を少しでもよくしていくことでもある。だから罪悪感を持たなくていいと。ハイエクは私欲を擁護するのです。」(88頁)

私利私欲で行動することが、市場を経由することで社会全体の利益につながるという発想です。

経済的にはそうなのかもしれませんが・・・すぐには受け入れにくい考え方です。

私利私欲で行動することは否定しませんが、それに加えて、ほんの少しでも、奉仕の気持ちでみんなが行動することで社会全体が変わっていくのだと思っています。