おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。
今日は、中古自動車販売買取店の店長の管理監督者性が肯定された事案を見ていきましょう。
自動車販売事業A社事件(岐阜地裁令和6年8月8日・労経速2565号27頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に雇用され店長として稼働していたXが、Y社に対し、未払時間外労働賃金及び付加金等の支払を求めるとともに、上司から指導の域をはるかに逸脱した暴言を受けるなどしたと主張し、不法行為(民法715条)に基づく損害賠償請求として慰謝料及び弁護士費用の合計220万円等の支払を求める事案である。Xが令和4年9月24日に死亡したため、Xの父母が本件訴訟手続を承継した。
【裁判所の判断】
Y社は、Xの父母各自に対し、27万5000円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 買取店の店長は、買取店における中心的な業務である買取業務に関し、一切の権限、すなわち、営業方法を決め、これに応じて店舗の従業員に対し指揮命令を行う権限、買取りを行うか否か及び適正な買取金額を決定する権限、顧客への代金の振込みを承認する権限並びに買い取った車の販売方法を決定する権限を有しており、勤務態様については、遅刻や早退による減給等の不利益はなく、状況に応じて自らの判断で直帰するなど労働時間に関する裁量を有し、また、人事の関係では、正社員の採用権限及び部下従業員の人事考課に関与する権限を有している。そうすると、買取店の店長は、自身が店長を務める買取店という一店舗単位でみれば、当該店舗の実質的な経営者であると評価することができ、利益を生み出す主体である買取店の、被告における重要性に鑑みれば、買取店の店長は、被告の経営者と一体的な立場にあるとも評価することができる。なお、買取店の店長は労働時間に関する裁量が実際には相当程度制限される場合もあるが、店長の職責や職務内容に照らしやむを得ないと考えられるのであって、これをもって上記評価が直ちに左右されるものではない。
以上に加え、買取店の店長が労働時間、休憩、休日に関する労働基準法の規定を適用しないこととしても保護に欠けることにはならないと評価し得る程度の待遇が設けられていると認められることも踏まえれば、買取店の店長は、労働基準法41条2号の掲げる管理監督者に該当すると認めるのが相当であり、この点に関する原告らの主張はいずれも採用できない。
したがって、買取店の店長は、管理監督者に該当し、労働基準法37条等の規定の適用はないから、争点(1)について検討するまでもなく、XのY社に対する未払時間外労働賃金支払請求権が存するとは認められない。
珍しく管理監督者性が肯定されています。
一店舗単位でみれば、経営者と同等の裁量が与えられていたことが決め手となっています。
店長であれば、当然に管理監督者に該当するわけではないので、ご注意ください。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。