Category Archives: 解雇

解雇190(ホンダエンジニアリング事件)

おはようございます。

今日は、賞罰委員会に諮ってなされた懲戒解雇は弁明の機会を付与しなくても手続的に違法はないとされた裁判例を見てみましょう。

ホンダエンジニアリング事件(宇都宮地裁平成27年6月24日・労経速2256号3頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の従業員であったところ、Y社から懲戒解雇にされたものであるが、Xには懲戒解雇事由がなく、また、懲戒解雇手続が違法であることや懲戒解雇が処分として重すぎることからすると、懲戒解雇の相当性を欠くため無効であり、Xは自らの意思で辞職したものであるとして、退職一時金82万8255円の支払いを求め、在職中にY社の職員から受けたとして、慰謝料150万円の支払及びこれらの合計232万8255円に対する労働審判申立書が到達した日の翌日からの遅延損害金の支払を求めている。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成25年5月28日から8月1日までの間、上司からの業務命令に従わず、指示された業務に従事しなかったものであるから、故意に業務を放棄したものであり、このような行為は、就業規則・・・との懲戒事由に該当するものと認められる。また、Xは、平成25年6月12日から8月1日までの36日間、無断欠勤を続けたものであり、このような行為は、就業規則・・・に該当するものと認められる

2 Xは、上司からの度重なる業務命令に従わず、36日間無届欠勤を継続したものであるから、懲戒事由の程度は重大であって、懲戒解雇が相当性を欠くものということはできない

3 Xは、Y社がXに弁明の機会を与えないで懲戒解雇を言い渡したとして、適正手続保障の観点から、懲戒解雇の相当性の要件を欠くと主張する。しかし、Y社の就業規則において弁明の機会を与える旨の規定は置かれておらず、懲戒をするに当たっては、労使の代表者で構成する賞罰委員会の意見を聞くこととされているところ、このような場合、弁明の機会を付与しないことをもって直ちに懲戒手続が違法ということはできない。そして、本件においては、賞罰委員会に諮って本件懲戒解雇がなされているものであるから、手続に違法な点があるということはできない

4 そうすると、本件懲戒解雇は有効なものと認められるから、労働協約80条2項により、Xは退職金請求権を有しないものと認められる。

懲戒解雇の場合、必ずといっていいほど適正手続が問題となります。

上記判例のポイント3は是非、実務において参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇189(弁護士法人レアール法律事務所事件)

おはようございます。

今日は、能力不足等を理由とする解雇の有効性と地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

弁護士法人レアール法律事務所事件(東京地裁平成27年1月13日・労判1119号84頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたところ解雇されたXが、Y社に対し、次のとおりの請求をする事案である。
①解雇が無効であると主張して地位の確認。
②上記①と同じ主張に基づき解雇後の賃金の支払。
③上記①と同じ主張に基づき解雇後の賞与の支払。
④違法解雇に基づく慰謝料及び弁護士費用の支払。
⑤割増賃金及び付加金の支払。
⑥上司からパワーハラスメントを受けたとして慰謝料及び弁護士費用の支払。

【裁判所の判断】

1 XのY社に対する賃金請求及び賞与請求に係る訴えのうち、本判決確定日の翌日以降の支払を求める部分を却下する。

2 Y社は、Xに対し、40万6500円及び遅延損害金を支払え。

 Y社は、Xに対し、平成25年9月から平成26年9月まで、毎月25日限り各27万1000円及び遅延損害金を支払え。

 Y社は、Xに対し、8万1300円及び遅延損害金を支払え。

 Y社は、Xに対し、54万2000円及び遅延損害金を支払え。

 Y社は、Xに対し、69万5846円及び遅延損害金を支払え。

7 Y社は、Xに対し、付加金69万5846円及び遅延損害金を支払え。

 Y社は、Xに対し、22万円及び遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社と業者が和解書を取り交わす際に、担当弁護士の決裁を経ることが定められていないY社の事務処理体制が不適切であったというべきであり、適切な事務処理体制を定めずにXに和解の処理を任せていたY社がXを責めることはできない
・・・Xは、当該依頼者についての他の業者の過払金779円については、依頼者から了解をとった上で債権債務なしの和解をしており、通常は依頼者の意思を確認していたと認められるし、過払金が293円に過ぎないならば放棄するのが依頼者の合理的意思であり、依頼者からのクレームがあったわけでもなく、Xが当該案件で依頼者の意思を確認していなかったことをもって、能力不足を基礎付ける事情ということはできない。
・・・問題とされている案件において、履歴開示がされた平成24年5月には、同年9月24日に消滅時効の期間が経過することが判明していたのであって、担当弁護士が時効を管理する体制が整えられていなかったことが問題というべきである。当該案件を同年8月頃に引き継いだXに、時効期間が経過したことについて、大きな責任は認められない

2 以上のとおり、Y社の主張する解雇事由は、ミスといえないものか、重大とはいえないミスであって、Xは就業規則48条2号の「従業員の就業状況または職務能力が著しく不良で、就業に適さないと認められる場合」にも同条4号の「前号のほか、やむを得ない事由がある場合」にも当たらない。したがって、本件解雇は無効である。

3 Bが、弁護士費用の一部を精算していなかったXに対し、他の職員の前で「これこそ横領だよ」と言ったとするX供述は、Xが当日交際相手に送ったメールの記載に裏付けられており、信用できる。Xを犯罪者呼ばわりしたことは、不法行為に当たる
Bが、Xの接客態度について、「気持ち悪い接客をしているからこういう気持ち悪いお客さんにつきまとわれるんだよ。Xさんはこういう気持ち悪い男が好きなのか」と言ったとするX供述は、Xが当日交際相手に送ったメールの記載に裏付けられており、信用できる。Bのこの言動は、原告に対する侮辱であって、不法行為に当たる
上記のとおり認定したBのXに対する不法行為の態様からすれば、Xに対する慰謝料は20万円、弁護士費用は2万円を相当額と認める。

事務所の事務処理体制の不適切さを数点指摘されています。

能力不足を理由とする解雇は、その裏付けとなる資料をどれだけ揃えられるかにかかっています。

拙速な解雇は避けた方が無難ですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇188(I社事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、脳梗塞の後遺症残存の有無と休職命令・解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

I社事件(静岡地裁沼津支部平成27年3月13日・労判1119号24頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の従業員であるが、平成24年8月15日に脳梗塞を発症して病院に入院したものの、同年9月26日には退院して仕事に復帰できる状態であったにもかかわらず休職命令を発せられて不当に就業を拒否され、その後、就業規則に定める「身体または精神の障害により業務に耐えられないと認められたとき」に該当するとして不当に解雇されたと主張して、①休職命令の無効確認を求めるとともに、②解雇権の濫用で無効な解雇であるとして労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、さらに、③無効な休職命令により就業できなかったことによる平成24年9月28日から平成25年1月分までの未払賃金合計102万7863円及び遅延損害金等、④解雇により就業できなかったことによる同年4月26日から本判決確定の日まで毎月10日限り、24万8400円の割合による金員及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

XがY社に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

Y社はXに対し、平成25年4月12日から判決確定の日まで、毎月24万8400円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 休職とは、ある従業員について労務に従事させることが困難又は不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約関係そのものは維持させながら労務への従事を免除または禁止することであるところ、休職期間中に休職事由が解消して就労可能となれば、休職は終了すると解されている。
・・・本件休職命令は、XからY社に対し、脳梗塞の項御胃障害が復職可能な程度まで治癒または軽減した旨の医師の診断書が提出されるまでの間休職とする期限の定めなき休職処分であり、就業規則第29条6号の「特別の事情があって休職させることが必要と認められるとき」に該当すると認めるのが相当である。

2 ・・・以上によると、Xには、同日ころまでは、脳梗塞の後遺症が残存していたといわざるを得ず、Y社に対して復職可能なほど身体機能が回復していた旨の医師の診断書もなかったと解するのが相当である。

3 しかし、Xは、平成25年4月11日、E病院で身体機能検査を受けたところ、通常歩行、応用歩行ともいずれもふらつきがなく、減点項目がなくて満点であったことからすると、そのことには身体の機能が復職可能な程度に回復していたと推認するのが相当である。

4 Xは、同月11日にE病院で行われた検査の結果、身体機能が回復していて就労可能であったと認められ、また、その後に行われた鑑定によっても、Xの後遺障害が極めて軽微であって、Xを作業に復帰させることが相当でないという積極的な根拠を見いだせないとの結果であったことなどを考慮すると、Xは、同月11日ころには就労可能なほどに身体機能が回復していたと認められるから、本件解雇がなされた同年4月25日には就業規則で規定する「身体または精神の障害により業務に耐えられないと認められたとき。」に該当する事由はなかったというべきである
そうすると、Xには、Y社から復職するためには医師の診断書の提出が必要である旨要請されていたものの不合理な理由をつけて提出しなかったり、復職を図るため、平成24年10月5日付けD1医師作成の診断書の「軽作業は」の部分を削除しねつ造したり、取引先に対してXの勤務を認めないとY社に加担したことになる旨の脅迫的文書を送信するなど、Y社との雇用契約における信頼関係を揺るがすような行為が認められるものの、これらを考慮しても、なお本件解雇は合理的な理由に基づくものとは認められず、社会的相当性を欠くものとして無効であると言わざるを得ない。

上記判例のポイント4のような事情があっても、裁判所は解雇無効であると判断しています。

復職させていいものかどうか、会社にとっては本当に難しい判断です。

今後も同様の事件が起こり続けることが容易に想像できます。

だからこそ、会社としては日頃から研修を重ね、いざというときに適切に対応できる準備をしておくべきなのです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇187(日本ヒューレット・パッカード事件)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、最高裁判決確定後の休職命令、休職期間満了による退職が認められた裁判例を見てみましょう。

日本ヒューレット・パッカード事件(東京地裁平成27年5月28日・労経速2254号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、職場で嫌がらせを受けた等と主張して欠勤を重ねたため、Y社がXを諭旨退職処分にしたが、当該諭旨退職処分が無効であることが平成24年4月27日の最高裁判所の判決により確定したため、Xが復職を求めたところ、Y社が、Xの心身の不調を理由にXの就労申出を拒絶し、Xに対し、平成25年1月11日付けで休職を命じ、さらに、平成26年11月14日、休職期間が満了することとなる同月30日付けでXの退職の手続をとる旨通知したことから、Xが、Y社に対し、①上記休職を命ずる命令の無効確認、②労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、③Y社がXの就労を拒絶している期間中労働契約に基づきY社がXに対し支払うべき賃金及び賞与並びに遅延損害金の各支払、④平成27年2月分以降の賃金及び遅延損害金の支払、⑤平成27年6月以降の賞与及び遅延損害金の支払、⑥不当な就労申出の拒絶及び違法な本件休職命令に係る不法行為に基づく慰謝料及び遅延損害金の支払を各求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xの訴えのうち、Y社がXに対し平成25年1月11日に命じた休職命令が無効であることの確認を求める請求に係る部分を却下する。

Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは、平成24年4月に本件最高裁判決が出された後、Y社に対し、復職を求めていたのであるから、本件休職命令が発せられた平成25年1月11日の時点において、Xには就労の意思があり、本件労働契約に基づき就労する旨の申出をしていたことが明らかである。したがって、同日の時点において、Xが本件労働契約の債務の本旨に従った履行をすることができる状態にあったのであれば、Y社が本件休職命令を発し、その履行を拒絶したことは、Y社による受領拒絶となり、かつ、その履行に必要な被告の協力が得られない結果、Xの債務が履行不能になったということもできるから、Xは、賃金請求権を失わない。そして、本件休職命令は本件就業規則所定の要件を欠くことになるから、その休職期間が満了したことを前提とするXの自然退職も認められない

2 本件において、そもそもY社が主張するようなXの精神的な不調の存在が認められないのであれば、特段の事情がない限り、Xは復職を申し出ることにより、債務の本旨に従った履行の提供をしたものと認めることができる。また、仮に精神的な不調の存在によりXが従前の職場において労務の提供を十分にすることができない状況にあると認められる場合であっても、本件労働契約において職種や業務内容が特定されていたことを認めるに足りる証拠はないから、Xの能力、経験、地位、Y社の企業規模、Y社における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らしてXが配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができるときは、なお、債務の本旨に従った履行の提供があったものと認められる余地がある(最高裁平成10年4月9日判決)。

3 ・・・これらの事実にかんがみると、本件休職命令が出された平成25年1月当時において、Xには、妄想性障害の疑いがあり、休職して治療することを必要とするような精神的な不調が認められる状況にあったことを推認することができる

4 Xの請求のうち、本件休職命令が無効であることの確認を求める請求は、過去の事実の確認を求めるものであって、本件休職命令が無効であることを前提とする現在の権利関係の確認や、当該現在の権利関係に基づく給付請求によるべきであるから(現にXは、本件において、これらの確認及び給付請求をしている。)、確認の訴えの利益を欠くものである。

復職の可否が問題となる場合、労働者の主治医の判断と産業医の判断が異なることがあるわけです。

その場合、どちらの判断が適切かを巡り労使双方から主張立証がなされることになります。

過去の裁判例を読んでいると、裁判所がどのような点を重視しているのかがわかってきます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇186(日本ボクシングコミッション事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、3次にわたる懲戒解雇の有効性と反訴損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本ボクシングコミッション事件(東京地裁平成27年1月23日・労判1117号50頁)

【事案の概要】

本訴請求事件は、Y社の従業員として稼働していたXが、Y社から3次にわたり懲戒解雇の意思表示を受けたところ、これら解雇はいずれも無効であると主張して、Y社との間で雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、雇用契約に基づき、月例賃金35万5000円+毎年6月30日及び12月31日限り、賞与70万円+遅延損害金を求めた事案である。

反訴請求事件は、Y社が、Xの下記義務違反等により損害を被ったなどと主張して、Xに対し、債務不履行又は不法行為に基づき、下記損害額+遅延損害金の支払を求めた事案である。

(1)原告の競業避止義務違反行為、秘密保持義務違反行為、職務専念義務違反行為、労働義務違反行為の債務不履行による賃金相当損害 364万円
(2)原告の被告内部秩序壊乱行為(労働義務違反を内容とする債務不履行及び不法行為)による対応損害 600万円
(3)原告の文科省への不当告発における名誉毀損損害 200万円
(4)原告のb協会長宛の書面による名誉毀損損害 200万円
(5)原告による報道を契機とした名誉毀損損害 200万円

【裁判所の判断】

解雇は無効

反訴請求は棄却

【判例のポイント】

1 就業規則55条が懲戒処分として最も重い懲戒解雇事由を定めていることからすると、同条2号所定の事由があるというためには単に職務の遂行が遅れたというだけでは足りず、その職務の遂行の積極的な懈怠があり、その懈怠が顕著な場合であることを要するというべきである。

2 Y社の就業規則52条2項は、懲戒処分につき、よくその事実を調査し、関係協議の上、処分を決定する旨定めている。したがって、懲戒解雇に当たっては、同条に定める手続を践む必要があるというべきである。また、懲戒解雇を含む懲戒処分は、企業秩序違反行為に対して認められる制裁罰であって、その手続は適正に行われることを要するというべきであり、殊に懲戒解雇は懲戒処分のうち最も過酷な処分であることにも照らすと、その処分を行うに当たっては、特段の支障がない限り、事前に弁解の機会を与えることが必要というべきであり、かかる支障も認められないのに、事前の弁解の機会を経ないまま懲戒解雇を行うことは懲戒手続における手続的正義に反するものとして社会的相当性を欠き、懲戒権の濫用となるものと認めるのが相当である。
しかるところ、本件第2次解雇は、本件仮処分手続においてなされているところ、Xに対して弁明の機会を与えないまま、かかる懲戒解雇の意思表示が行われている。

3 Y社は、Xが、平成23年8月17日から平成24年3月18日までの間、就業時間中、おびただしい回数の職務に関係ないメールの交信を行い、これに要する時間に相当する執務を解怠したとし、就業規則55条2号に該当する旨主張する。
しかし、その主張によっても、かかるメールの送信数が著しく多いものとは認められず、中には、業務との関連の窺われるものもあり、Xが、従前、同種の問題によりY社から注意又は指導を受けたこともなかったことにも照らすと、他の懲戒処分を検討することはともかく、直ちに懲戒解雇をもって臨むべき事由になるなどと認めることはできない

4 労使間の合意や就業規則等に定めがあるなど賞与の支給条件が具体的に定められている場合には、労働者は使用者に対し具体的な賞与請求権を有するものと認めるべきところ、賞与に関する被告の賃金規定14条は、「業績、職員の勤務成績等を勘案して支給する。」、「業績の低下その他やむを得ない事由がある場合には、支給日を変更し、又は支給しないことがある。」と定め、支給条件が具体的に規定するものではなく、他に、法的拘束力を有する労働慣行が確立していたとまでみるべき的確な証拠もない
そうしてみると、本件賞与請求を肯認することはできない。
Xは、Y社は非営利団体であることや、毎年2回基本給2か月分の賞与が支給されていた旨も主張するが、勤務を続けていた場合における具体的な勤務成績等も明らかであるとはいえず、かかる点から上記判断が左右されるとはいえない。

懲戒解雇の難しさがよくわかります。

懲戒解雇をする場合には、事前に顧問弁護士や顧問社労士に必ず相談しましょう。

解雇185(学校法人早稲田大学(解雇)事件)

おはようございます。

今日は、教授に対する適格性欠如を理由とする解雇の有効性と反訴損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人早稲田大学(解雇)事件(東京地裁平成26年12月24日・労判1116号86頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の設置するA大学の教授であったところ、茨城県つくば市が行った風力発電機設置事業に関与したが、当該事業において莫大な損害が発生し、Y社がその一部を負担することとなった。

被告は、XがA大学教授としての適格性を欠くとして、Xを解雇した。

本件本訴は、Xが、本件解雇が無効であると主張して、地位確認と解雇後の賃金の支払を求めるとともに、本件解雇や本件解雇まで命じられた長期間の自宅待機が違法であると主張して、慰謝料の支払を求める事案である。

本件反訴は、Y社が、Xには、Y社がつくば市に対して支払った賠償額の8割について責任があると主張して、Xに対し、損害賠償の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

原告の本訴請求は棄却する。

XはY社に対し、2239万5712円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、上記の義務を履行しなかったのであり、本件風力発電機が稼働しなかったことについての責任が認められる。
Xは、Y社が本件契約において、免責条項を入れるなり、保険を掛けるなりしていれば、Y社に損害が生じなかったと主張する。契約条項については、後述のとおり、Y社の管理の甘さにも問題がある。しかしながら、Xは、学外提携リスクマネジメント委員会の委員長として、本件契約について契約研究時審査に掛けるかどうかを検討していたところ、同委員会の委員には弁護士も含まれていたにもかかわらず、弁護士以外の委員のみの意見を聞いて、問題がないと判断し、委員長としては委員会の開催申請を行わなかったのであり、本件契約において被告が負担すべき損害の範囲が限定されるように対処されなかったことについて、原告にも責任の一端はある。
また、本件契約のような契約によって生じた損害をカバーする保険があるかどうか明らかではないし、例えあったとしても、巨額の税金が無駄となったことについて、Y社が社会的に非難されていたことに変わりはないのであって、Y社に損害が生じなければよいという問題ではない
本件風力発電機が稼働しないことで、Y社が多額の賠償責任を負ったということは広く報道され、A大学の研究機関としての信用が大きく毀損されたことは明らかである。
Xは、自己の義務を履行しなかったことによって、Y社に多額の損害を与え、Y社の信用を毀損したのであり、しかも、そのことについて、何ら反省の態度を見せていないことからすれば、XにA大学の教員としての適格性が欠けているとの教授会、理事会の判断は相当なものと認められる。

2 Xは、本件契約におけるY社の履行補助者であって、Y社に損害賠償金の負担が生じないように本件契約における義務を履行すべき義務を負っていたのであるが、上記のとおり、本件契約において要求されていた義務を履行せず、本件損害賠償金の支払を生じさせたのであるから、Y社との関係でも、履行補助者としての義務に違反したと認められ、Xは、本件損害賠償金の支払によってY社に生じた損害につき、責任が認められる

3 そこで、本件損害賠償金の支払によってY社に生じた損害についてのXとY社との間の負担割合について検討する。
本件契約の締結を承認した理事会においては、本件契約によって生じるリスクの有無についても、申請者から独立した者によるリスクのチェックや法的観点からのリスクのチェックがされたのかについても審議されていない。この当時、Y社内においては、そのようなチェックをする体制は構築されておらず、実際に行われたのは、申請当事者であるXがリスクマネジメント委員会の委員長として、研究契約時審査に掛ける必要がないと判断したことのみであった
このように、外部の者から業務を請け負う際に生じるリスクに対する管理体制が構築されていなかったことが、本件契約の業務委託料が1750万円であるにもかかわらず、Y社がつくば市に対して、1億円を超える損害賠償金の支払を余儀なくされた大きな原因であるというべきである。
そうすると、本件契約から生じるリスクに対する管理体制を構築していなかったY社に損害の多くの部分を負担させるのが相当である。
したがって、本件損害賠償金のうちXに負担させるべき額は、本件損害金の元本の4分の1である2239万5712円をもって相当額と認める。

会社から従業員に対して損害賠償請求をする場合、この裁判例のような議論をすることになります。

訴えられた従業員としては、支払うべき損害額を抑えるために、会社に損害拡大を防止する体制の不十分さ等を主張することになります。

参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇184(海空運健康保険組合事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、従業員としての資質、能力を欠く等を理由とする解雇を有効と判断した裁判例を見てみましょう。

海空運健康保険組合事件(東京高裁平成27年4月16日・労経速2250号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社が平成24年3月30日に同年4月30日付けでした解雇は、労働契約法16条に照らし無効であるなどと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づき、平成24年5月から毎月20日限り、月例賃金等相当額(割増賃金を含む。)として44万1718円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、XがY社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、Xの賃金請求について、平成24年5月から判決確定の日まで、毎月20日限り38万4100円(割増賃金を除く金額)及び遅延損害金の支払を認容した。

そこで、これを不服としてY社が控訴し、Xが附帯控訴した。

【裁判所の判断】

Y社の控訴に基づき、原判決中Y社敗訴部分を取り消す。

上記取消部分に係るXの請求を棄却する。

Xの附帯控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 ・・・以上の事実経過によれば、Xは、上司の度重なる指導にもかかわらずその勤務姿勢は改善されず、かえって、Xの起こした過誤、事務遅滞のため、上司や他の職員のサポートが必要となり、Y社全体の事務に相当の支障を及ぼす結果となっていたことは否定できないところである
そして、Y社は、本件解雇に至るまで、Xに繰り返し必要な指導をし、また、配置換えを行うなど、Xの解雇を継続させるための努力も尽くしたものとみることができ、Y社が15名ほどの職員しか有しない小規模事業所であり、そのなかで公法人として期待された役割を果たす必要があることに照らすと、Y社がXに対して本件解雇通知書を交付した平成24年3月30日の時点において、Xは、Y社の従業員として必要な資質・能力を欠く状態であり、その改善の見込みも極めて乏しく、Y社が引き続きXを雇用することが困難な状況に至っていたといわざるを得ないから、Xについては、Y社の就業規則25条7号所定の「その他やむを得ない事由があるとき」に該当する事由があると認められる。
そうすると、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるから、有効であるというべきである。

2 Xは、本件解雇に至るまでY社から懲戒処分を受けたことはなく、このことは、XにはY社の主張するような重大な過誤や事務遅滞はなかったことを示すものであると主張する。
しかし、XがY社から度重なる指導を受けていたことは前記認定のとおりであり、しかも、Xは2回にわたって降格・降級を受けているのであるから、本件解雇に至るまでにY社がXに対して懲戒処分をしたことがないからといって、Xに重大な過誤や事務遅滞がなかったということはできず、Xの上記主張は採用することができない

一審判決も読んでみましたが、もはや現実的には解雇を有効にすることができないのではないかと思ってしまうほどのハードルの高さです。

一般的には、能力不足を理由とする解雇は難しいわけですが、さすがにハードルが高すぎるのでは、と思ってしまいます。

一方、高裁の判断は、一審判決に比べると会社における支障を十分に判断してくれており、納得できるものです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇183(ヒューマンコンサルティングほか事件)

おはようございます。

今日は、業務命令違反等を理由とする解雇の有効性と法人格否認の法理に関する裁判例を見てみましょう。

ヒューマンコンサルティングほか事件(横浜地裁平成26年8月27日・労判1114号143頁)

【事案の概要】

本件は、A社に勤務していたXが、A社から解雇されたことに対し、解雇が無効であり、A社とY社とは一体であるから(法人格否認の法理、あるいは会社法22条1項の類推適用)、Y社に対し、Xが新たに就職することができた平成24年9月1日より前の平成24年8月31日までの賃金及び遅延損害金の請求をし、民事訴訟方41条1項の同時審判の申出を行い予備的に、A社に対して、Y社に対する主位的請求と同様の請求を行い、さらに予備的請求として、A社とY社の間で行われた事業譲渡契約を詐害行為取消権に基づいて取消請求を行うとともに、本件訴訟は、訴訟に先立ち当庁で地位保全等仮処分申立事件が係属していたが、その仮処分事件の審尋期日におけるA社の代表者清算人であったBの言動がXに対する不法行為に該当するとして、Bに対し、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)及び遅延損害金の請求をした事案である。

【裁判所の判断】

A社に対する訴えを却下する。

Y社はXに対し580万円+遅延損害金を支払え。

その余の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 A社、Y社のそれぞれの法人格としての使い分けは全くなされておらず、すべて一体の組織として、対客との関係でも、対従業員との関係でも活動していたと評価せざるを得ない

2 平成22年春から夏にかけて、A社としては、仮に、Xに対する解雇が正当であり、未払賃金がない、未払時間外手当がないと考えていたとしても、平成22年10月の時点での組合からの要求額が335万円以上であること、(Bは、残業代と保険料の請求で合計100万円位と思っていたと供述しているが、上記書面に照らし信用できない。)組合を通じての交渉、神奈川県労働委員会でのあっせん等と紛争が拡大していく中で、さらなる金員の要求や場合によっては何らかの金銭債務を負担させられるということをY社側が危惧したことは当然予想されることであって、そのような債務の支払を免れるための手段をとることは十分に考えられる

3 Bがこれらの会社を思うままに動かしていたと評価することができ、これらの会社の支配者であるBが、会社を自己の意のままに道具として用いることができる支配的地位にいることを利用したこと、Y社らの主張する会社設立の目的、経緯は信用できず、かえって債務負担の認識からすると、BがY社を設立させた目的は法人格を利用して債務負担等を免れるためであったといえるから、これは法人格の濫用ということができる。

4 ・・・以上からすると、Y社が設立されたのは、A社がXが加入した組合から解雇無効の主張を前提に、バックペイや残業代等の支払を求められ、これらの債務の支払を免れるために法人格を濫用したと評価できるのであるから、法人格否認の法理を適用し、解雇無効によりA社に生じる債務については、Y社が負担すべきである

元従業員からの賃金請求に対し、事業譲渡等の方法により会社自体を消滅させようと考える経営者は少なからずいます。

今回は、珍しく法人格の濫用であると認定してもらえましたが、多くの事案では、裁判所はなかなか法人格否認の法理を採用してくれません。

どのような状況の下に法人格の濫用を認定しているのか正確に事案の把握をすることが大切です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇182(アールインベストメントアンドデザイン事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、解雇制限に関連する裁判例を見てみましょう。

アールインベストメントアンドデザイン事件(東京高裁平成22年9月16日・判タ1347号153頁)

【事案の概要】

甲事件は、Y社の従業員であるXが、Y社による解雇が無効であると主張し、Y社に対し、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と②平成20年6月から毎月末日限り賃金30万円の支払を求めた事案である。

乙事件は、Y社の代表取締役であるAが、Xらによる街宣活動の際、プライバシーと肖像権を侵害されたと主張し、Xらに対 し、不法行為に基づく損害賠償請求権として、連帯して、慰謝料300万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、甲事件について、Xの請求のうち、本判決確定日の翌日以 降の賃金の支払を求める部分の請求にかかる訴えを却下し、その余の請求をいずれも棄却し、乙事件について、Aの請求を、Xらに対し、 連帯して、慰謝料70万円及び遅延損害金の支払を求める限度で認 容し、その余の請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

Xらは、Aに対し、連帯して30万円及び遅延損害金を支払え。

XのY社に対する控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 労働基準法18条の2(現労働契約法16条)は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」と規定し、他方、同法19 条1項は、「労働者が業務上の疾病の場合の療養を安心してなし得るよ うに解雇制限を行ない、但書で例外として、使用者が、同法81条の規定による打切補償を支払う場合にこの限りではない」と規定している。 これらの規定によれば、労働基準法19条1項が業務上の疾病によって療養している者の解雇を制限している趣旨は、労務提供の対価としてその報酬を支払うという労働契約の性質上、一般に労働者の労務提供の 不能や労働能力の喪失が認められる場合には、解雇に合理的な理由が認められ、特段の事情がない限り社会通念上も相当と認められるというべきところ、業務上の疾病による労務不提供は自己の責めに帰すべき事由による債務不履行とはいえないことから、労働者が労働災害補償としての療養のための休業を安心して行えるよう配慮して、例外として解雇を制限したところにあるというべきである。
そして、同項但書は、さらにその例外として、労働基準法81条に定める打切補償を支払う場合(労働者が療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合において、使用者が平均賃金の1200日分の打ち切り補償を行った場合)には、労働基準法19条1項本文の解雇制限に服することなく労働者を解雇することができると定めているものである。
この打切補償とは、業務上の負傷または疾病に対する事業主の補償義務を永久的なものとせず、 療養開始後3年を経過したときに相当額の補償を行うことにより、その後の事業主の補償責任を免責させようとするものであり、上記のような労働基準法各条の解釈に照らすと、打切補償の要件を満たした場合には、雇用者側が労働者を打切補償により解雇することを意図し、業務上の疾病の回復のための配慮を全く欠いていたというような、打切補償制度の濫用ともいうべき特段の事情が認められない限りは、解雇は合理的理由があり社会通念上も相当と認められることになるというべきである

2  確かに、証拠及び弁論の全趣旨によれば、Xが本件打切補償による解雇の理由とされた業務上の疾病に罹患するに至った原因は、Xが、Y社の親会社である株式会社Cにおいて過重な労働を行っていたことに あると認められるが、その労働の実態は、他の社員とともに会社の当面の業務課題について、プロジェクトチームを作って集中的に仕事を行うというもので、株式会社Cが意図的にXに対して過重な労働を強要したとまで認めることはできない。
そして、株式会社C及びY社は、Xが自宅療養に入って以降、平成17年1月まで1年7か月余りにわたって、Xの自宅での療養を静観し、休業補償として給料の6割を支給していたものであり、この時点までの経緯をみる限りでは、Y社において、Xを打切補償により解雇することを意図していたようなことは窺えないし、また、 業務上の疾病の回復のための配慮を欠いていたというような事情も認められないものである

解雇制限と打切補償の争点については、先日、学校法人専修大学事件で最高裁判決が出ました。

今回のこの裁判例のうち、「打切補償の要件を満たした場合には、雇用者側が労働者を打切補償により解雇することを意図し、業務上の疾病の回復のための配慮を全く欠いていたというような、打切補償制度の濫用ともいうべき特段の事情が認められない限りは、解雇は合理的理由があり社会通念上も相当と認められることになるというべきである」との規範は、非常に重要ですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇181(X高等学校事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、諭旨解雇は無効だが普通解雇は有効とされた裁判例を見てみましょう。

X高等学校事件(東京地裁平成27年2月18日・労経速2245号15頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結して労務を提供していたXが、Y社がした諭旨解雇及び普通解雇がいずれも無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、雇用契約に基づく賃金請求権に基づく、諭旨解雇後の未払賃金及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、246万3809円+244万3930円に対する遅延損害金を支払え

Xのその余の請求を棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件非違行為には、都条例18条の6違反の犯罪が成立する旨主張する。しかし、本件非違行為は、本件被疑事実とは、日時・場所及び態様を異にする行為であり、本件諭旨解雇事由における都条例18条の6に違反する行為であると認めることはできない。

2 Y社就業規則72条1項ただし書は、出勤停止以上の懲戒に該当すると判断されるときは、査問のため調査委員会を設ける旨を定める。この点、懲戒が、Y社の懲戒権の発動として行われる不利益な処分であり、これが正当化されるためには、当該懲戒を受ける者に対し、特段の支障なき限り、弁明の機会が与えられる必要があるというべきであり、そのような観点からすれば、Y社就業規則が定める調査委員会の査問は、特段の支障なき限り、Xに対して直接なされることを要求しているものと解するのが自然かつ妥当であると解される
これを本件についてみると、調査委員会は、本件諭旨解雇に当たり、Xに対する査問を行っておらず、本件諭旨解雇には、Y社就業規則72条1項ただし書が規定する手続違反があるというべきである。・・・加えて、Y社が懲戒処分通知書において、本件諭旨解雇事由における非違行為の内容を明らかにしておらず、本件訴訟で、当初、本件諭旨解雇事由として主張した本件非違行為が、本件被疑事実とは、日時、場所及び態様を異にする行為であったことからすれば、Y社(調査委員会)は、本件諭旨解雇を決定する手続において、本件被疑事実自体を把握しておらず、Xが実際に行った行為を確定しないままに、本件諭旨解雇をしたことが強く推認され、そのことからも、本件諭旨解雇の手続面における相当性を認めることはできないというべきである

3 ・・・ところで、Xが民法536条2項により、本件諭旨解雇後の賃金を請求するためには、XがY社に対する就労の能力及び意思を保持していることが必要であるところ、Xは、平成25年4月1日から、本件学校とは別の高等学校において、常勤講師として勤務し、平成26年4月からは、常勤専任講師として勤務しており、同校の社会保険にも加入していることが認められ、このことからすれば、Xは、Y社が主張するとおり、平成25年4月1日の時点で、Y社に対する就労の意思と能力を保持していたと認めることはできない

懲戒解雇につき、適正手続違反を認定した裁判例です。 参考になります。

また、上記判例のポイント3は、解雇後、別の会社に就職した場合に問題となります。

復職の意思がない判断されないように労働者側としては注意しなければなりません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。