不当労働行為241 団交途中での会社側出席者の退席と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、団交の途中で会社側出席者が退席したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

トライメディカルサービス事件(大阪府労委令和元年7月5日・労判1216号85頁)

【事案の概要】

本件は、団交の途中で会社側出席者が退席したことが不当労働行為にあたるか、及び、保管ボックスの設置要求、組合員2名の勤務シフト変更要求、施設の改善要求、賃金改定要求を議題とする団交における会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 会社が交渉開始後わずか10分で途中退席したことは、不誠実であったと言わざるを得ず、労働組合法7条2号に該当する不当労働行為である。

2 会社は、自ら提案し、検討することを約束した保管ボックスの設置を拒否するに当たって、具体的な検討内容ではなく、便宜供与の法的義務は無いといった抽象的な説明をするのみで、組合の理解を得られるような具体的な理由や検討した内容を一切示すことなく、これまでの交渉を唐突に反故にした、と言わざるを得ない。

3 会社は、組合のシフト変更要求に応じない理由として、能力給やマスク着用に係る事項を挙げるが、それはこの話には関係ないと繰り返し述べる組合に対し、なぜ変更に応じられない理由になるのかについて、具体的な根拠を示して説明したとはいえない

特に上記命令のポイント2は注意してください。

「法的義務がない」という主張に終始しているだけでは、誠実交渉義務を尽くしたとはいえないという判断です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1035 お金の話(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

ひろゆきさんのお金に対する考え方がよくわかります。

できるだけ無駄なお金を使わずに生きることを説いています。

収入を上げるより支出を抑えることの重要性が書かれていますね。

コロナを経験した世代は、これまで以上にこのような発想になるのでしょうね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分が幸せに感じるためには何が必要か?それに対するコストっていくらなの?ってところで逆算して考えると、実は『もうそんなに働かなくてもいいよね、おれ』って人は結構いると思います。・・・ただ自分の好きなことに超絶お金がかかる-『車の改造が好きです』みたいな人だと、どうしてもお金が必要になるので、一生懸命お金を稼ぎ続けないといけない。」(140頁)

改めて説明するまでもないシンプルな事実です。

このブログでもよく出てくるテーマですが、物を所有することが自分の幸福度とつながっている人は、通常、たくさんのお金が必要になります。

だから、こういう人は、がんばってお金を稼ぐ必要があります。

他方で、物を所有することに関心がない人は、日常生活に必要なお金だけを稼げば足りるので、それほどたくさんのお金は必要ありません。

どちらが正しいという問題ではありませんが、変化の激しい今のような時代においては、多額の支出を強いられる生活は極力避けたほうが生きやすいでしょう。

高額な家賃や住宅・車のローン、多数の従業員の給与など、収入の変動にかかわらず発生する固定費をできるだけ抑えておくのが今の時代にはフィットしているのではないでしょうか。

管理監督者44 退職届に清算条項が入っていた場合、残業代請求はできない?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、割増賃金請求と管理監督者該当性に関する裁判例を見てみましょう。

はなまる事件(大阪地裁令和元年12月20日・労判ジャーナル96号64頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員XがY社に対し、雇用契約に基づき、未払時間外割増賃金等の元本約1099万円等の支払とともに、労働基準法114条所定の付加金903万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払時間外割増賃金等請求は一部認容

付加金等請求は棄却

【判例のポイント】

1 本件退職届に記載されたいわゆる清算条項は、実質的に本訴請求に係る時間外割増賃金等を放棄する趣旨を含むものであり、このような賃金債権の放棄については、労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときに有効となるところ、医師作成の診断書に記載された診断内容及び無断欠勤を継続していたXの行動状況等に照らせば、Y社が指摘するごとく、Y社から書面の送付を受けた後に数日程度の時間経過があったとしても、十分な判断能力を備えた状態において検討がされたものではない可能性があり、さらには、このような賃金債権を放棄することによってXが得られるそれに見合った利益の存在等を認めることはできないのであって、上記にいう合理的な理由が客観的に存在しているとは評価し得ないから、本件退職届の記載によってXが本訴請求に係る賃金債権を放棄したとは認定できない。

2 Xが管理監督者に該当するか否かについて、Xが担当していた主な業務内容は、コンピュータシステムに関しての問合せへの対応業務、コンピュータの基幹システムの保守管理等といったもので、これらについてY社における経営上の決定に参画するような性質があるとは認められず、部下職員の候補者の採用面接に立ち会うなどしていたことはうかがわれるものの、上位者であるD部長の存在、その他課長という役職から想定される地位等に照らせば、Xは現場担当者として意見を述べる立場にはあったものの、人事上の採用権限を有していたとは認め難く、また、Y社が、Xに係る勤怠管理資料を証拠提出していることなどからすれば、Xが労働時間の拘束を受けない立場にあったとは認められず、たとえXにおいて遅刻や早退に関する所定の手続を怠ったことがあったとしても、それは、Y社が厳密に制度運用していなかったにすぎないとみる余地があるから、Xに支給された賃金額等の待遇面をはじめ、本件に現れたその他一切の事情を考慮しても、Xが管理監督者に該当するとは認められない

本件に限らず、上記判例のポイント1のような認定は十分ありえますので、退職合意書に清算条項が入っていたとしても、それだけで本件同様の紛争を回避できるとは思わないほうがいいです。

管理監督者該当性については、言うまでもなくこのレベルでは絶対に認められません。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介1034 ブレイン・プログラミング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

自動的に夢がかなっていくとか言われると、途端に胡散臭くなりますね(笑)

それはさておき、内容はとてもいい本です。

ザ・自己啓発本という感じです。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いつものやり方を続けていれば、これまでと同じものしか手に入らない。
あなたがこれまでの人生で手にした結果は、あなた自身が選び、考え、行動したことの結果である。そして、結果は嘘をつかない。太っているか、やせているか、平均体重か、そうでないか。お金持ちか、そうでないか。家族の尊敬を受けているか、受けていないか。望むものを人生で手に入れたか、入れていないか。結果は嘘をつかない。」(149頁)

もはやぐうの音も出ないくらい真実です。

環境や時代のせいにして、自分の不甲斐なさを正当化せず、現在の自分の状態はすべてこれまでの自分の選択の総体だと考えるしかありません。

結果は嘘をつかない。

これまでの選択の総体が今、「結果」として出ているだけです。

日々の小さな選択の積み重ねを続けられるかどうか。

ただそれだけのことです。

賃金188 完全歩合制でも最賃法は適用される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、最低賃金法に基づく未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

税経コンサルティング事件(大阪地裁令和元年12月27日・労判ジャーナル96号56頁)

【事案の概要】

本件は、保険代理店を営むY社において保険の営業業務等に従事していたXが、Y社に対し、主位的に(第一次的請求として)、Y社から最低賃金を下回る金額の賃金しか支払われていないとして、雇用契約に基づき、最低賃金に基づいて算出した賃金額との差額に係る未払賃金120万円等の支払を求め、仮にこれが認められない場合に予備的に(第二次的請求として)、Y社がXの賃金から根拠のない控除を行い、また、保険解約に伴い手数料としてXに義務なく金員を支払わせたとして、不当利得に基づき、上記控除に係る利得金約60万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 X及びY社は、平成27年4月1日頃、それぞれ自己の意思に基づき、本件雇用契約書にXが署名押印し、BがY社代表者として押印してこれを作成した事実が認められ、これによれば、X及びY社の間では、同日、本件雇用契約書に記載の契約が成立したものと認められ、これを覆すに足りる証拠はないから、XとY社との間では、平成27年4月1日に雇用契約が成立し、同雇用契約が継続した後、Xは平成29年5月31日にY社を退職したものと認められ、そして、雇用契約の内容(雇用条件)は、概ね本件雇用契約書に沿うものであるところ、Xの賃金に関しては、フルコミッション制(完全歩合制)であることに加え、労働時間に応じた一定額の賃金が保障されることなどが定められているにとどまり、最低賃金を下回らないことは明確にされていないものの、最低賃金に達しない賃金を定める合意部分は無効となり、同部分は最低賃金と同様の定めをしたものとみなす(最低賃金法4条2項)こととなるから、結局、Y社は、Xとの間の雇用契約に基づき、最低賃金と同様の賃金の支払義務を負う

2 Xの従事していた業務は、主に外回りによる保険契約の募集・勧誘であるところ、営業日報に記載された時間、訪問先・折衝先・面談所等及び業務内容の記載には、些か抽象的なものも見られるものの、多くは記載自体から営業活動の一環であることが相当程度理解できるものであること等から、Xの作成した営業日報は基本的に信用性が肯定できるものといえ、また、Xの作成した勤務表は、営業日報が提出されていない期間においても概ね正確に記載されたものと推認することができ、基本的にその信用性を認めることができるというべきであることからすれば、Xの労働時間数については、営業日報及び勤務表を基に算定するのが相当である。

フルコミッションで合意している場合であっても、雇用契約である以上、最賃法は強行法規なので、これに反することはできません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1033 儲かる会社は人が1割、仕組みが9割(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

タイトル通りの内容です。

ビジネスにおいては、いかに「儲かる仕組み」をつくるかが鍵となります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

社長は、会社の規模の大小にかかわらず、その存在は絶対であり、社長の持つ知力、体力、気力、決断力、感性、闘争心ーすべてが、全社員に影響を与え、その結果が会社の全体像として浮かび上がってきます。『羊が率いるライオンの群れよりも、ライオンが率いる羊の群れのほうが怖い』ーこれはナポレオン・ボナパルトの言葉といわれていますが、これと同じです。」(34~35頁)

ナポレオンの例えはわかりやすいですね。

一見すると「ほんとかなー」と思うかもしれませんが、私は真実だと思います。

群れのリーダーがグダグダだと、どれだけ優秀なメンバーがいても、チームとして機能しません。

監督が変わるだけでビリだったチームが生まれ変わって優勝してしまうという、まさにあれです。

会社もまたしかりなのです。

労働災害102 休職期間満了後の配置転換と安全配慮義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、配転させずに復職させたことを理由とする損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

京都市事件(大阪地裁令和元年11月27日・労判ジャーナル96号78頁)

【事案の概要】

本件は、Y市に採用され、Y市の管理運営する斎場で勤務する職員Xが、同斎場内での事故により適応障害を発症して休職となったにもかかわらず、Y市が、配置転換等の負担軽減措置をとることなくXを復職させ、同斎場で就労させ続けていることは、安全配慮義務に反する違法行為であると主張して、Y市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料500万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは最終的に予定されたリハビリ勤務を概ね完了し復職が実現しており、その経過の中で、主治医において、リハビリ勤務の計画を中止すべきであるとか、中央斎場への復職が不適当である等の判断をしておらず、Xが、中央斎場での火葬業務に従事する衛生業務員として採用され、その後、本件事故までの約12年間にわたり、同業務に従事してきたことを併せ考慮すると、復職時にXを中央斎場の勤務に復帰させることが不相当であったとまではいえず、また、Xは、復職後も、2年余りにわたり中央斎場での就労を続けており、その間、服薬等によっても中央斎場での就労継続が不可能ないし著しく困難となるような症状が現れたという事実は認められず、そして、主治医の診断書によっても、Xの症状が具体的にどう悪化したのか、その悪化の程度等は判然としない等から、Y市のXに対する安全配慮義務として、Y市がXを中央斎場以外の勤務場所に配置転換しなければならない法的義務を負っていたとは認められず、また、Y市において、勤務場所の配置転換以外の点で、本件疾病によるXの心身の負担に対する必要な配慮を欠いていたとも認められないから、安全配慮義務違反は認められない。

精神疾患と業務起因性の問題は、判断が悩ましいことがとても多いです。

とはいえ、裁判例から一定の判断傾向を探ることは可能なので、それらを踏まえて対応することが求められます。

労災発生時には、顧問弁護士に速やかに相談することが大切です。

本の紹介1032 1%の努力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

ひろゆきさんらしいタイトルです。

いかに無駄な努力をせずに結果を出すかという視点で書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生を振り返ると、僕なんかより面白い発想をする人がたくさんいた。けれど、結果的に僕のような人間が企画の仕事をしている。面白いことを考えつく人は、守るべきものができると、途端に面白くなくなる。恋人ができたり、家庭を持ったり、会社で出世したりすると、天才が天才でなくなってしまう。40歳を過ぎて周囲を見回すと、そうやって面白くなくなった人ばかりだ。」(219頁)

「仕事=辛いこと、つまらないこと、理不尽なことを我慢すること」という発想では、決して面白い発想など出てきません。

意識のある時間の半分くらいの時間は仕事をしているので、仕事を楽しめるかどうかは人生を楽しく生きていく上で、かなり重要な点です。

楽しい仕事があるわけではなく、いかに仕事を楽しめるか。

所詮、すべては解釈の問題なのです。

賃金187 退職金不支給が認められる場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、背信行為等を理由とする退職金不支給の成否に関する裁判例を見てみましょう。

インタアクト事件(東京地裁令和元年9月27日・労判ジャーナル95号34頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、平成28年度冬季の賞与が未払であるとして、労働契約に基づく賞与支払い請求として約49万円等の支払を求めるとともに、Y社を退職したにもかかわらず退職金が支払われないとして、退職金規程に基づき退職金約70万円等の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払賞与等支払請求は棄却

退職金等支払請求は認容

【判例のポイント】

1 XがY社を退職したのが平成28年12月9日であると認められるのに対し、平成28年度冬季賞与支給日が同月13日と設定されていることから、Xは「支給日に在籍している社員」には該当せず、また、Y社における冬季賞与支給日は、必ずしも12月9日以前とされていたわけではなく、その他に、Y社がXを支給日在籍社員として取り扱わないことが権利濫用に該当することを裏付ける事実を認めるに足りる証拠はないから、Xは、平成28年度冬季賞与を請求できる権利を有しない

2 Y社が本件背信行為として主張するものの多くは、そもそも懲戒解雇事由に該当しないものである上、仮に懲戒解雇事由に該当しうるものが存在するとしてもその内容はXが担当していた業務遂行に関する問題であってY社の組織維持に直接影響するものであるとか刑事処罰の対象になるといった性質のものではなく、これについてY社が具体的な改善指導や処分を行ったことがないばかりか、Y社においても業務フローやマニュアルの作成といった従業員の執務体制や執務環境に関する適切な対応を行っていなかったのであり、また、Y社の退職金規程の内容からすれば、Y社における退職金の基本的な性質が賃金であると解されること等から、Xについて、Y社における勤労の功を抹消してしまうほどの著しい背信行為があったとは評価できず、Y社は、Xに対して、退職金規程に従って退職金を支払う義務を負う。

判例のポイント1は、非常にベーシックな論点ですが、支給日それ自体に争いがあると、今回のケースのようになってしまいます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1031 NO LIMITS(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も2日間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

タイトルからもわかるとおり、全体を通してずっと「自分の可能性を広げる方法」みたいなことが書かれています。

内容は非常に示唆に富む内容で、何度も読み返すに値する本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生に変化を起こしたければ、無計画に時を過ごしている暇はない。いつでも『自分をどう成長させていくか計画を立て、それに則って成長していくこと』を心がけてほしい。そして、計画を立てたら、とにかく行動あるのみだ。『行動』に移すことで、初めて成長できるからだ。」(18頁)

計画を立てる暇があったら、どんどん行動したほうがいいですね。

プランもアイデアもそれ自体には価値がありません。

実現・実行してなんぼです。

計画なんて立てたって、どうせその通りになんかならないですから。

典型例が、銀行から融資を受ける際につくる事業計画です(笑)

「んなもん、わかるわけないじゃん」って内容ばかり妄想で書いているわけで。

人生は、無駄なことだらけなのです。