解雇323 就業規則が存在しない場合でも懲戒解雇できる?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、懲戒解雇と就業規則の存在に関する裁判例を見てみましょう。

JFS事件(大阪地裁令和元年10月15日・労判ジャーナル95号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社と雇用契約を締結し稼働していたところ、Y社から懲戒解雇されたが、同解雇は無効であるとして、地位確認、未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 本件契約の性質について、c専務が、Y社の規程として研修期間があるので、役員の場合は給料が45万円だがそれより5万円アップの50万円で、3か月だけは様子は見よう、それでだめなときは契約しませんよという話をXにしたこと等から、「3か月」というのは、試用期間であり、Y社代表者が、平成29年12月28日に、Y社訴訟代理人に対し、Xに対する解雇通知を出してほしいと相談し、その意を受けて、Y社訴訟代理人が、Xに対し、「誓約書(入社時)」に違反したことを理由とする懲戒解雇の意思表示として本件内容証明郵便1を送付したこと、以上の点を併せみれば、Y社代表者自身の認識及び行動に基づいてみても、XとY社との間の本件契約は、試用期間付き雇用契約であるとみるほかない

2 使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要するところ、Y社が、Xに対し、懲戒解雇の意思表示をした当時、Y社に就業規則が存在しなかったことについては当事者間に争いがないから、Y社のXに対する平成29年12月28日付け及び平成30年2月9日付けの懲戒解雇の意思表示は、いずれも懲戒権の根拠を欠き、無効というべきであるから、Xの地位確認請求は理由がある。

前記判例のポイント2は、初歩中の初歩のレベルの話です。

しっかり、顧問弁護士・顧問社労士の指導の下で労務管理をしましょう。

本の紹介1020 異端のすすめ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

帯には「短い人生、リスクを恐れている暇はない。」と書かれています。

橋下さんが言うととても説得力があります。

本の内容もとてもいいです。是非、読んでみて下さい。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今は、何となく周囲から見くびられている気がするかもしれません。でも、周囲の見る目というものは、自分の商品価値を映す鏡です。見くびられていると感じるのなら、まだ自分には、見くびられるくらいの商品価値しかないということです。」(85頁)

他人の目や評価は気にしないというのも一つの生き方ではあります。

それはそれで全く問題ありません。むしろそのほうが気が楽ですし。

一方、他人から見くびられたくないという人はどうしたらいいか。

端的に言って、自分の商品価値を上げる努力をしまくるか、環境を変えるかのどちらかでしょう。

多くの人は、そもそも自分の商品価値を上げることに関心がありませんし、仮にあったとしても、目の前の仕事や雑用で手一杯のため、自分の商品価値を上げる時間的・体力的余裕がありません。

だからこそ、毎日コツコツ努力をすれば、それだけで相対的に商品価値は嫌でも上がっていくのです。

あとはやるかやらないか。

やり続けられるか、途中で投げ出すか。

ただそれだけの話。

管理監督者43 総務人事課長の管理監督者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総務人事課長の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

エルピオ事件(東京地裁令和元年9月27日・労判ジャーナル95号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、所定労働時間を超える残業を行ったとして、労働契約に基づく割増賃金請求権に基づき、平成26年10月分から平成28年6月分までの間の割増賃金合計約375万円等の支払を求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金請求として約367万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払時間外割増賃金請求は一部認容

付加金等請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xが実質的な決定権限を有していたのは、人事関係業務の一つである採用面接のうち一次面接までで採否を決することができる応募者に関する採否権限という使用者が有する人事権の一部にすぎず、その業務内容に照らしても、労働時間規制の枠を超えた活動を要請されざるを得ない重要な職務や権限を有していたとか、その責任を負っていたとまでは評価できず、また、Xがこのような実質的な決定権限を行使するにあたって労働時間に関する裁量を有していたことを認めるに足りる適切な証拠もないから、Y社におけるXの処遇が高水準であると評価できる点を最大限斟酌するとしても、Xが労基法41条2号の管理監督者であったと認めることはできない

2 Y社が割増賃金を支払わなかったのは、Xを管理監督者と認識していたためであるところ、結果としては管理監督者とは認められないものの、Xの会社内における肩書や処遇に照らすと、Y社がXを管理監督者に該当すると認識したことには一応の理由があると解され、Y社がXに割増賃金を支払わなかったことが悪質であるとは評価できないから、本件において、Y社に付加金の支払を命ずるのは相当でない。

管理監督者に関する主張を会社側で主張するメリットとすれば、付加金の支払を免除してもらえる可能性があることくらいでしょうか。

ほぼ管理監督者性は否定されますので、賃金に関する消滅時効が2年から3年、5年と延長されることを考えれば、すべての管理職の管理監督者扱いにメスを入れることを強くお勧めします。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介1019 やってのける(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

タブタイトルは「意志力を使わずに自分を動かす」です。

意志力なるものがいかなるものかはよくわかりませんが、ともかく行動すること、継続することが苦手な人向けの本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

特別な能力や才能は不要です。目標を達成する能力を高めるには、別の人に生まれ変わる必要などないのです。必要なのは、本当に効果的なものは何かという知識と、行動への意欲を持ち、それを実行することです。・・・残るは行動だけです。行動は、いまからでも始められます。」(266頁)

行動しなければ何も変わらないという知識を持っていても、行動に移すことは、結局できないのです(笑)

できる人は簡単にできるのに、できない人は未来永劫できないという類の話です。

意志力などというよくわからない力の有無ではなく、結局は、継続する技術を持っているか。ただそれだけです。

継続できる人は、何をやってもたいてい結果が出ます。

当然です。結果が出るまで継続できるのですから。

詰まるところ、勉強も仕事も運動もすべて継続できた者勝ちという話です。

有期労働契約93 勤務内容不良で有効に雇止めをするためには?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、雇止めの有効性が争われた裁判例を見てみましょう。

シェーンコーポレーション事件(東京高裁令和元年10月9日・労判ジャーナル95号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Xとの間で、期間を平成27年3月1日から平成28年2月28日までの1年間とする有期労働契約を締結してXを雇用し、1度、契約を更新したが、その後、契約更新を拒絶したため、Xは、労働契約法19条により契約が更新されたものとみなされると主張して、Y社に対し、労働契約上の地位の確認を求めるとともに、平成29年3月分以降、判決確定の日までの賃金等の支払を求めた。

原判決は、Xの請求を棄却したため、Xが控訴した。

【裁判所の判断】

原判決取消し
→請求認容

【判例のポイント】

1 労働契約法19条2号該当性について、Y社は、従業員講師とは一律に1年間の有期労働契約を締結しているが、契約の更新を希望する講師との間では、遅刻が多かったり、授業の質が低いなどの事情がある場合を除き、通常は契約の更新をしており、Xとの間でも、平成27年3月1日に1年間の有期労働契約を締結し、その後、Xから授業観察の申出を拒否されたり、前日の午後11時29分になってから翌日のストライキを通知されたり、Xの授業を観察した上司が7項目について改善必要との講評をしたとの事情があったものの、その後の平成28年3月1日、Xと契約を更新し、このような経緯からすると、Xにおいて本件雇用契約の契約期間の満了時に同契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があったと認めるべきである。

2 Xが有給休暇として取得した休暇について、正当な理由のない欠勤であったと認めることはできず、また、Y社は、Xの勤務内容が不良であるとして、種々の主張をするが、いずれも雇止めをするかどうかの判断に際して重視することを相当とするようなものとは認められないから、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないといわざるを得ず、Y社は、本件雇用契約の内容である労働条件と同一の労働条件により契約締結の申込みを承諾したものとみなされるから、Xは、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び平成29年4月から本判決確定の日まで毎月15日限り25万7800円の賃金の支払を求めることができる。

雇止めの理由として小さいミス等をいくつ積み重ねても、結局、取るに足らない場合には合理的な理由にはなりません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1018 食べる投資(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

いかなる食生活を続ければ、日常生活におけるパフォーマンスを上げることができるのかがよくわかります。

仕事で成果を出し続けるためには、疲れにくく、病気になりにくい身体をつくることがとても重要です。

まさにタイトル通り、食べることは自身の身体に対する「投資」です。

「運動」、「栄養」、「休養」の3要素を常に意識しながら生活をしています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

チベット仏教の法王、ダライ・ラマ14世が『世間の人間を見て、最も驚くことはどんなことでしょうか』というインタビューの質問に対して答えたという言葉をご紹介したいと思います。・・・
『金を稼ぐために健康を害し、今後は病を治すために、稼いだ金を使う。将来の心配ばかりをして、現在を楽しむことをしない。その結果、人々は現在にも未来にも生きていない。あたかも人生が永遠に続くかのように生きているが、真の意味での人生を全うすることなく死んでいく』」(193頁)

仕事に限らず、日常生活におけるストレスの感じ方は人によって大きく異なります。

毎日、あわゆることにストレスを感じる人もいれば、その逆に、仕事、私生活を問わず、ほぼストレスフリーな生活をしている人もいます。

毎日毎日の積み重ねですから、その差はとてつもなく大きいです。

ストレスについて考えるとき、2つの観点から見ることができると思います。

1つは、「ストレスのかかる環境」か。

もう1つは、「ストレスを感じやすい性格」か。

前者は外的な要因で、後者は内的な要因です。

この2つの視点で言うと、できるだけストレスがかからない環境に身を置くこととともに、

小さいことにイライラしない的なことが大切なのでしょうね。

まあ、後者については、完全にその人の性格によるので、難しい人もいますね。

賃金184 横領行為と退職金不支給(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、横領行為に基づき不支給とされた未払退職金請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本郵便事件(大阪地裁令和元年10月29日・労判ジャーナル95号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結して勤務していたXが、横領行為を理由に懲戒解雇され、退職手当についても不支給とされたが、Xによる横領行為は全ての功労を抹消するほどの背信行為ではなく、少なくとも300万円の範囲では退職手当を受領する権利があるとして退職手当300万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件横領行為は、正にXが当時従事していたY社の中心業務の1つの根幹に関わる最もあってはならない不正かつ犯罪行為であり、出来心の範疇を明らかに超えたY社に対する直接かつ強度の背信行為であって、極めて強い非難に値し、被害額も多額に上り、その後の隠ぺいの態様も悪質性が高く、動機に酌むべき点も見当たらないから、XとY社との間の労働契約における退職手当は賃金の後払い的な性質をも併せ持つこと、被害については隠ぺい工作の一環によるもの及び金銭の支払いによるものにより回復されていること、Xは、旧郵政省時代から通算して約24年8か月余りの間、大過なく職務を務めており、本件横領行為を行ったc郵便局在勤中お歳暮の販売額に関するランキングで5位以上であったこと、Xが、Y社による事情聴取に応じ、最終的には非を認めて始末書や手記を提出し、本件横領行為の態様、隠ぺい工作、動機等についても明らかにしていることを十分に考慮しても、Xによる本件横領行為は、Xの従前の勤続の功を抹消するほど著しい背信行為といわざるを得ないから、Xは、退職手当規程の本件退職手当不支給条項の適用を受け、Y社に対し、退職手当の支給を求めることができない。

完全に比較衡量の問題ですので、結論としてどちらに流れるかは、担当する裁判官によって異なり得るところです。

もっとも、過去の裁判例を参考におおよその検討はつきますので、それらを参考にしながら退職金の支払いの是非、程度を判断しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1017 お金に支配されない13の真実(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

お金があればたいていのことはできますが、お金に支配された人生なんてまっぴらごめんです。

もっとも、物欲がないとそんなにたくさんお金は必要ありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

わたしたちは幸福とお金の連動性を大きく見積もりすぎる傾向があるとすれば、結果的に、目指す方向を間違っているのではないか。もっと稼ごうとする努力はやめるが勝ちかもしれない。稼いだところで大して幸せにはならないし、全然ならないこともある。」(202頁)

全く同感。

ある一定の収入までは、収入に比例して幸福度も上がりますが、それを超えると収入と幸福度に相関関係がないことはよく言われることです。

私のように物欲なし男君の場合、このことが思いっきり当てはまります。

収入が2倍になっても決して幸福度は2倍にならないことを知っているので、無理をしてもっと稼ごうとする努力はしないわけです。

家もいらない、車もいらない、時計もいらない、ブランド品もいらない・・・

物を所有しても幸福にならない人にとって、お金はたいして必要ないのです。

有期労働契約92 提訴前の記者会見と名誉毀損、信用毀損(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、育児休業取得後になされた有期労働契約への変更、雇止めが有効と判断された裁判例を見てみましょう。

ジャパン・ビジネスラボ事件(東京高裁令和元年11月28日・労経速2400号41頁)

【事案の概要】

本件乙事件は、語学スクールの運営等を目的とする株式会社であるY社が、育児休業を取得し、育児休業期間が終了するXとの間で平成26年9月1日付けで締結した契約期間を1年とする契約社員契約は、Y社が期間満了により終了する旨を通知したことによって、平成27年9月1日、終了したと主張して、Xに対し、Y社に対する労働契約上の権利を有する地位にないことの確認を求めた事案である。
本件甲事件本訴は、Xが、Y社に対し、ア(ア)一審原告が一審被告との間で平成26年9月1日付けでした労働契約に関する合意によっても、Y社との間で平成20年7月9日付けで締結した期間の定めのない労働契約(以下「本件正社員契約」という。)は解約されていない、(イ)仮に、本件合意が本件正社員契約を解約する合意であったとしても、①均等法及び育介法に違反する、②Xの自由な意思に基づく承諾がない、③錯誤に当たるなどの理由により無効であり、本件正社員契約はなお存続すると主張して、本件正社員契約に基づき、正社員としての労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成26年9月分から平成27年8月分までの未払賃金合計448万8000円+遅延損害金、イ 仮に、本件合意によって本件正社員契約が解約されたとしても、XとY社は、本件合意において、Xが希望すればその希望する労働条件の正社員に戻ることができるとの停止条件付き無期労働契約を締結したと主張して、Xの希望した所定労働時間の短縮された無期労働契約に基づき、正社員としての労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成26年10月分から平成27年8月分までの未払賃金合計337万4800円+遅延損害金の支払を求め、ウ 仮に、XのY社に対する正社員としての地位が認められないとしても、Y社がした本件契約社員契約の更新拒絶(本件雇止め)は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないと主張して、本件契約社員契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同月から弁済期である毎月20日限り賃金1か月10万6000円+遅延損害金の支払を求め,エ Y社が、Xを契約社員にした上で正社員に戻すことを拒んだことやこれに関連する一連の行為は違法であると主張して、不法行為に基づき、慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の合計330万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
 本件甲事件反訴は、Y社が、Xに対し、Xが平成27年10月に行った記者会見の席において、内容虚偽の発言をし、これによりY社の信用等が毀損されたと主張して、不法行為に基づき、慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の合計330万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Xの控訴及びXの当審における追加請求(正社員復帰合意に基づく地位確認請求、債務不履行による損害賠償請求及び信義則違反を理由とする不法行為による損害賠償請求)をいずれも棄却する。

2 Y社の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
(1) Y社は、Xに対し、5万5000円+遅延損害金を支払え。
    Xのその余の甲事件本訴各請求(当審における追加請求を除く。)をいずれも棄却する。
(2)ア Xは、Y社に対し、55万円+遅延損害金を支払え。
    Y社のその余の甲事件反訴請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 正社員と契約社員とでは、契約期間の有無、勤務日数、所定労働時間、賃金の構成(固定残業代を含むか否か、クラス担当業務とその他の業務に係る賃金が内訳として区別されているか否か。)のいずれもが相違する上、Y社における正社員と契約社員とでは、所定労働時間に係る就業規則の適用関係が異なり、また、業務内容について、正社員はコーチ業務として最低限担当するべきコマ数が定められており、各種プロジェクトにおいてリーダーの役割を担うとされているのに対し、契約社員は上記コマ数の定めがなく、上記リーダーの役割を担わないとの違いがあり、その担う業務にも相当の違いがあるから、単に一時的に労働条件の一部を変更するものとはいえない。
 そうすると、Xは、雇用形態として選択の対象とされていた中から正社員ではなく契約社員を選択し、Y社との間で本件雇用契約書を取り交わし、契約社員として期間を1年更新とする有期労働契約を締結したもの(本件合意)であるから、これにより、本件正社員契約を解約したものと認めるのが相当である。

2 このようなY社による雇用形態の説明及び本件契約社員契約締結の際の説明の内容並びにその状況、Xが育児休業終了時に置かれていた状況、Xが自ら退職の意向を表明したものの、一転して契約社員としての復職を求めたという経過等によれば、本件合意には、Xの自由な意思に基づいてしたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するものといえる
 したがって,本件合意は、均等法9条3項や育介法10条の「不利益な取扱い」には当たらないというべきである。

3 Y社代表者の命令に反し、自己がした誓約にも反して、執務室における録音を繰り返した上、職務専念義務に反し、就業時間中に、多数回にわたり、業務用のメールアドレスを使用して、私的なメールのやり取りをし、Y社をマタハラ企業であるとの印象を与えようとして、マスコミ等の外部の関係者らに対し、あえて事実とは異なる情報を提供し、Y社の名誉、信用を毀損するおそれがある行為に及び、Y社との信頼関係を破壊する行為に終始しており、かつ反省の念を示しているものでもないから、雇用の継続を期待できない十分な事由があるものと認められる
 したがって、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であるというべきである。

4 本件記者会見は、本件甲事件本訴を提起した日に、X及びX訴訟代理人弁護士らが、厚生労働省記者クラブにおいて、クラブに加盟する報道機関に対し、訴状の写し等を資料として配布し、録音データを提供するなどして、Y社の会社名を明らかにして、その内容が広く一般国民に報道されることを企図して実施されたものである。
そして、報道機関に対する記者会見は、弁論主義が適用される民事訴訟手続における主張、立証とは異なり、一方的に報道機関に情報を提供するものであり、相手方の反論の機会も保障されているわけではないから、記者会見における発言によって摘示した事実が、訴訟の相手方の社会的評価を低下させるものであった場合には、名誉毀損、信用毀損の不法行為が成立する余地がある
Xは、記者会見は、報道機関に対するものであるから、記者らにとっては、記者会見における発言は、当事者が裁判手続で立証できる範囲の主張にすぎないと受け止めるものである、訴状を閲覧した報道機関からの取材に応じることと何ら変わるものではないなどと主張する。
しかしながら、Xらは、報道機関からの取材に応じるのとは異なり、自ら積極的に広く社会に報道されることを期待して、本件記者会見を実施し、本件各発言をしており、報道に接した一般人の普通の注意と読み方を基準とすると、それが単に一方当事者の主張にとどまるものではなく、その発言には法律上、事実上の根拠があり、その発言にあるような事実が存在したものと受け止める者が相当程度あることは否定できないし、実際、Y社に対しては、マタハラ行為をしたとして苦情のメールがあったところでもある。そして、Xらは、本件記者会見において本件各発言をしたことが認められるから、その発言内容を事実として摘示したものというべきである。

非常に注目を集めている事件の控訴審判決です。

最高裁がどのような判断をするのか気になるところです。

上記判例のポイント3、4は、賛否両論あるところですが、重要な点なので、押さえておきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1016 最強のアンチエイジング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は本の紹介です。

帯には「老化は病気にすぎない。だから、治せばいいし、防ぐこともできる!」と書かれています。

40代にもなると、同年代でも若さを保っている人とかなり老けている人の差が如実に出ます。

老化のメカニズムを理解し、対策を講じる方法をこの本では解説しています。

情報格差がそのまま健康格差に結びついていますので、まずは正しい情報を知ることが第一歩です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

同じ年齢なのに『若く見える人』『老けて見える人』がいるのはなぜでしょうか。老化のしかたは人によって違います。人それぞれです。体はさまざまな『部品』でできていますから、骨から老化する人もいれば、筋肉から老化する人、あるいは神経系から老化する人もいます。それは遺伝の部分もありますが、最も大きいのは、生活習慣に影響を受けることです。」(4頁)

仮に遺伝の部分があるとしても、それは自分の力ではどうしようもないことですから考えても仕方ありません。

生活習慣については、自分の力でなんとでもできます。

年を取れば取るほど、顔つき、体つきは、その人のこれまでの生活習慣がそのまま出てしまいます。

生活習慣とは、換言すれば、生き方そのものです。

どのように生きてきたのか、生きているのかは、その人の顔つき、体つきを見ればおおよそわかります。