本の紹介983 人材業界の未来シナリオ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

タイトル通り、HR業界の未来シナリオに関する考察が書かれています。

人材不足とテクノロジーの進化によってどうなっていくのかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

売り手市場である希少性、専門性が高い価値ある人材にはいくら払っても来てほしいと思う反面、テクノロジーで代替可能な職種やスキルの人材は明らかに買い手市場となり、どんどんサービスの低価格化、無料化がすすんで行く可能性が高いと思われます。」(201~202頁)

早晩、こうなります。

多くの人がわかっていることですね。

今、何をどう準備すべきかを考えましょう。

多くの人は考えませんし、さらに多くの人は何の準備もしません。

準備をする1%になれれば、売り手市場がどれだけ進んでも、全く問題ありません。

継続雇用制度28 継続雇用は定年前の職務内容と同じ内容でないとダメ?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年前の職務内容の権利を有する地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

アルパイン事件(東京地裁令和元年5月21日・労判ジャーナル92号50頁)

【事案の概要】

本件は、音響機械器具の製造販売等を目的とするY社を定年退職した元従業員Xが、Y社に対し、XとY社との間では、定年前の雇用契約の終了後においても再雇用されたのと同じ職務を内容とする雇用契約が存続しており、仮にそうでないとしても、Y社がXに対して定年後の再雇用の条件としてXの希望する従前と同じ職務内容と異なる職務内容を提示した行為等は違法であると主張して、雇用契約に基づき、勤務部署をサウンド設計部、職務内容を音響機器の設計及び開発とする労働条件での雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、主位的に雇用契約に基づき、予備的に不法行為に基づき、平成29年9月16日から同年10月15日までの賃金又は賃金相当損害金22万円等の支払、同年11月25日から本判決確定の日まで毎月25日限り賃金又は賃金相当損害金22万円等の支払、不法行為に基づき、慰謝料300万円等の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認等請求一部棄却、一部却下

損害賠償等請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、満60歳の誕生日以後初めて迎える3月15日又は9月15日を定年としつつ、定年後の継続雇用希望者をその定年後にA社が引き続き雇用する定年再雇用希望者を導入して、本人の意向を踏まえつつ、再雇用希望者の知識、技能、ノウハウ又は組織のニーズに応じて職務及び労働条件を設定して事前に再雇用希望者に通知し、再雇用後の業務内容、処遇条件等について了承した者を定年後再雇用するものとして、高年齢者雇用安定法9条1項2号所定の継続雇用制度を設けていることが認められるところ、Y社は、Xに、定年のおよそ2か月前、上記定年再雇用制度に基づく定年再雇用の申込みをしたが、Xは、サウンド設計部で就労することに固執して、これを承諾せず拒否したものであり、Xは、Y社が同法の趣旨に沿って設けた定年再雇用制度に基づいて提示した再雇用後の業務内容、処遇条件等に納得せず、サウンド設計部で就労することができないのであれば、Y社がXに対してした定年再雇用の申込みを承諾しないこととし、自らの判断により、これを拒否して、Y社との間で定年後の雇用契約を締結せず、そのまま、平成29年9月15日をもって定年を迎えて退職となったものであるから、同月16日以降、XとY社との間に雇用契約の存在を認める余地はない

2 XとY社との間でXの定年後に雇用契約が成立しなかったのは、Y社がXに対して定年再雇用を拒んだからではなく、XがY社の申込みを承諾せずこれを拒否した結果であること、Y社がXに対して申し込んだ定年再雇用に係る勤務場所及び職務内容が客観的に見て不合理であったとは認められないことに照らせば、XとY社との間で定年再雇用契約が成立しなかったことにつき、Y社に違法な行為があったと認める余地はない。

本件事案は、一般的に起こり得る紛争類型ですので、是非、参考にしてください。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介982 「人生の勝率」の高め方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「成功を約束する『選択』のレッスン」です。

サブタイトルのとおり、人生においていかに「選択」が大切であり、何を「選択」するかによって勝負の大半が決まることが説かれています。

人生はこれまで自分が選択したことの総体ですので、当然のことです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ビジネスや人生は、ひとりで完結するゲームではありません。あくまでチーム戦であり、そのチームの総合力で勝敗が決まります。・・・だからこそ、成功したければ『成功確率の高い先頭集団と付き合う』ことが重要です。」(158頁)

先頭集団と付き合うには、自分の価値がそれに見合うものであることが必要です。

そうでないと付き合ってもらえません。

価値を上げるために最も近道なのは、「一芸に秀でる」ことです。

狭い分野で一番になること、これが先頭集団と付き合う最も効率的な方法です。

賃金178 固定残業制度が無効とされるのはどんなとき?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
96日目の栗坊トマト。もうそろそろ終了ですかね。

今日は、固定残業代としての賃金増額とその後の減額の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

メディカルマネージメントコンサルタンツ事件(大阪地裁令和元年7月16日・労判ジャーナル92号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社で勤務している従業員Xが、平成27年10月分からの基本給増額分が、平成28年10月支払分の賃金から減額されたが、同減額は無効であるなどとして、減額分の賃金(基本給及び賞与の減額分)等の支払を求め、時間外労働に対する賃金が支払われていないとして、未払時間外手当等の支払を求めるとともに、労働基準法114条本文に基づく付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

賃金減額分等支払請求認容

未払賞与等支払請求一部認容

未払割増賃金等支払請求認容

付加金等支払請求一部認容

【判例のポイント】

1 平成27年9月分までのXの給与支払明細書には、基本給が18万円である旨記載され、試用期間が経過した平成27年10月分以降のXの給与支払明細書には、基本給が20万円である旨記載されていることが認められ、そして、Y社代表者は、平成27年10月分からの基本給の増額について、Xに対し、「試用期間も終了して・・・残業していただくことになるから・・・残業代も込みで2万円増額しますという臨時昇給の旨を申し渡し」たと供述するところ、同供述によれば、当該2万円の増額は、残業代込みでの臨時昇給であると認められ、そうすると、平成27年10月分からの基本給の増額分には、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とが混在していることになるから、上記基本給の2万円の増額全部が残業代見合いのものであると認めることはできないし、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することもできないから、平成27年10月分からの基本給2万円の増額分は、残業代であるとみることはできず、給与支払明細書記載のとおり、基本給であるとみるほかないから、Xの、Y社に対する、平成28年10月分以降の基本給2万円の減額分の未払賃金の請求は、理由がある。

いつもながら固定残業制度の運用ミスです。

そんなに難しくないのですが、まだまだ単純なミスがとっても多いです。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介981 もっと幸せに働こう(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

著者はファッションバイヤー、ファッションアドバイザーの方です。

仕事術に関するいくつものヒント、アイデアが書かれており、とても参考になります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ZOZOTOWNの前澤友作社長がZOZOSUIT撤廃を検討しているという発言が2018年秋、話題となりました。あのニュースを見て「失敗しやがった」「やらなきゃよかったのに」「思いつきみたいな仕事するからだよ」と書き込んだり発言した人は、未来永劫、前澤さんの偉大さを理解できないでしょう。
彼の偉大さは”失敗を恐れない行動力”にあるのです。事業を百発百中で成功させる経営者などいません。・・・この世に”完璧”など存在しないのだから。」(59頁)

本当、人が失敗するのを見下すのが好きですよね(笑)

ざまあみろ、みたいな感じですか?

自分では何も挑戦していない人に限って必死になって批判するものです。

別に他の人のことなんてどうでもいいですよ。

もうこの時代、やった者勝ちですから。

誰に何を言われても完全無視。やりたいようにやればいいのです。

セクハラ・パワハラ57 ハラスメントと懲戒処分の程度(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

94日目の栗坊トマト。 3つのトマトが赤くなっています。そろろそ食べますかね。

今日は、ハラスメントを理由とする減給処分の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人工学院大学事件(東京地裁令和元年5月29日・労判ジャーナル42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が設置するY大学の准教授が、Y社から、減給の懲戒処分を受けたことから、同処分が無効であると主張して、その旨の確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件懲戒処分の対象としての准教授の行為は、2名の女子学生に対し、性的な嫌悪感を抱かせる表現をしたり、指導等を施す立場にあることを背景に、交友関係に過度に干渉し、あるいは二人きりでの食事を求めるなどし、さらには再試験に関して便宜を図ろうとするなどしたものであって、指導の目的という側面が皆無ではないものもあるとはいえ、総じて、不見識であったり、手法として甚だ不適切な行為であったといわざるを得ず、そして、そうした准教授の所為の結果、2名の女子学生は困惑したり、不快の念を訴えて、その就学にも支障を来したとしてハラスメント申立てに至っているところであって、その被害についても軽視できないものがあり、准教授のかかる行為は、学校法人が、人権侵害のない快適な教育・研究環境作りを推進する観点から本件防止規程や本件行動規範を制定してハラスメント防止に取り組んできた努力を損ないかねないものであったといわざるを得ず、准教授は、学校法人による弁解の手続においても、反省の情に薄いところがあったと評価せざるを得ず戒告に次ぐ懲戒処分である減給程度の懲戒処分をもって臨んだからといって、これが重すぎて相当性を欠くということはできないから、本件懲戒処分が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たるとはいえず、本件懲戒処分は有効と認められる。

ハラスメント事案では、懲戒処分の選択をする際、相当性要件に配慮して決定しなければなりません。

特に懲戒解雇を選択しようとする場合には、その後の訴訟リスクの検討が欠かせません。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介980 あなたはあなたが使っている言葉でできている(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は本の紹介です。

まさにタイトルのとおりですね。

日頃、ポジティブな言葉を発しているということはすなわちポジティブな思考をしているということです。

その逆もまたしかり。

「できる」と言えばできる。「できない」と言えばできないのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたの人生の道行きを決めているのは、そうした心の奥深くにある隠れた思考だ。脳はその道を行けとせっつくが、その道とあなたが意識的に選んだ道は必ずしも一致しない。
収入が増えそうな気がしない。体重が減りそうな気がしない。それはもしかしたら、無意識の隠れた考え方の影響かもしれない。その思考が、自分は経済的にこの階級に属すべきだ、あるいは自分の体型はこの程度だと自動的に決めつけ、その快適このうえない場所にとどまれる行動を取らせているのかもしれない。」(63~64頁)

言うまでもなく思考は行動に表れます。

例えば、時間を大切にしている人は、無駄な会議には出ません。

人によって大切にしているものが違いますので、一概には言えませんが、自分が大切にしているものを大切にすることがとても大切です。

ただなんとなく流されるままに生きていると、気が付いたら死んでいます。

人生は本当に短いです。あっという間に終わります。

だからこそ何を大切にするか、その思考こそが人生を決めるのだと確信しています。

労働時間57 勉強会への参加は労働?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
92日目の栗坊トマト。 もう食べてもいいですかね?

今日は、抄読会、学会への参加及び自主的研さんが労働時間に当たらないとされた裁判例を見てみましょう。

長崎市立病院事件(長崎地裁令和元年5月27日・労経速2389号3頁)

【事案の概要】
(1) 第1事件
 Y社が開設するY1において、心臓血管内科医として勤務していた亡H(以下「H」という。)の妻である原告A並びにHの子である原告B及び原告Cが、Hが被告病院において時間外労働をしたにもかかわらず、割増賃金が一部未払であるとして、Y社に対し、次の各金員のうち原告Aらが各法定相続分(原告Aにつき2分の1、原告B及び原告Cにつき各4分の1)により相続した金額の支払を求める事案である。
ア(ア) Hと被告の労働契約に基づく平成26年4月1日から同年12月17日までの未払割増賃金848万4715円
 (イ) 上記(ア)の金員に対する各支払期日の翌日から退職日である平成26年12月18日まで民法所定の年5分の割合による確定遅延損害金16万4331円
 (ウ) 上記(ア)の金員に対する退職日の翌日である平成26年12月19日から支払済みまで賃金の支払確保等に関する法律所定の年14.6%の割合による遅延損害金
イ 労働基準法114条に基づく付加金782万8424円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金(以下、省略)

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Hは、平日の所定労働時間外や、当直業務や拘束業務がない所定休日においても、担当の入院患者の診察や、容体急変への対応など、その時々の業務上の必要に応じて通常業務に従事していたと認められ、また、拘束業務中に来院要請を受けた場合にはこれに応じて緊急カテーテル手術を行うなどしており、このような通常業務に従事した時間は原則として労働時間に該当する。もっとも、Hは、他の心臓血管内科医が行うカテーテル治療の見学を自主的に行っていたと認められるところ、所定労働時間外に行われた5時間39分の自主的見学時間については、被告の指揮命令に基づく労働であるとはいえないから、労働時間には該当しないといえる。

2 Hは、当直業務に従事していた。Y病院は、24時間態勢で高度な循環器医療を提供することを診療方針としており、当直医は、当直室において待機して仮眠をとることもできるが、心臓疾患の救急患者が来院するなどした場合には速やかに対応を行うことが義務づけられており、現に、当直医の平均仮眠時間は3時間ないし6時間程度であると認められることに照らせば、仮眠時間も含めて当直業務中に労働から離れることが保障されていたとはいえず、当直業務は、全体として手待時間を含む労働時間に該当するというべきである。

3 看護師勉強会、救命士勉強会及び症例検討会については、心臓血管内科の主任診療部長であるIが心臓血管内科医らに対し、講義や発表の担当を行うよう打診し、あるいは割振りを行っていたと認められ、心臓血管内科の若手医師であるHにとっては、その講義の担当や、発表の担当を断ることが困難であったことからすれば、これらを担当するように上司から指示されていたものと評価することができる。そして、その内容も、看護師勉強会については新たに心臓血管内科に配属となった看護師に対する教育を内容とするものであり、救命士勉強会及び症例検討会は、心臓血管内科で扱われた症例を前提とした意見交換や知識の共有を目的とするものであるから、いずれも心臓血管内科における通常業務との関連性が認められる。そうすると、看護師勉強会の講義時間及びその準備時間、救命士勉強会及び症例検討会の発表時間や準備時間については、使用者の指揮命令下にある労務提供と評価することができ、労働時間に該当するというべきである。

4 Hは、派遣講義の講師を担当していたところ、派遣講義については、Y病院長の指示により派遣されるものであることからすれば、労働時間に該当するというべきである。もっとも、Hは、長崎市医師会看護専門学校から派遣講義に対する対価として相応の講師料を受領していたと認められるから、派遣講義の準備や生徒に対する試験の採点などの業務に要する時間は、業務起因性を判断するに当たっての労働時間には該当するが、割増賃金の清算の対象となる労働時間とはならない

5 Hは、就労期間中に、Y病院での抄読会に参加し、また学会発表を行うなどし、さらに、Y病院内で自主的な研さん活動を日常的に行っていたと認められる。
 抄読会については、通常業務が繁忙である場合には中止となることも多かったと認められ、その内容も英語の論文の要旨を発表するというもので、心臓血管内科における症例についての検討等を内容とする救命士勉強会及び症例検討会と比較すると、業務との関連性が強いとは認められず、自主的な研さんの色合いが強かったと推認されるから、抄読会の準備時間が労働時間に該当するとはいえない。また、学会への参加についても、IがHに対して学会への参加を提案し、これにHが応じたということがあったと認められるものの、Hはカテーテル治療の習熟に熱心に取り組んでおり、知識の習得に積極的であったといえることに照らせば、学会への参加は自主的研さんの範疇に入るものといえ、学会への参加やその準備に要した時間は労働時間とはいえない。その他、Hは、被告病院滞在中に、自身の担当する患者の疾患や治療方法に関する文献の調査だけでなく、自身の専門分野やこれに関係する分野に係る疾患や治療方法等に関する文献の調査を行うなどし、自己研さんを行っていたところ、自身の担当する患者の疾患や治療法に関する文献の調査は労働時間に該当するが、他方、自身の専門分野やこれに関係する分野に係る疾患や治療方法に関する文献の調査に関しては、この部分に要した時間を労働時間と認めることはできない

拘束時間の長い職業について労基法を原則通り適用するとこのような結果となってしまいます。

難しい問題です。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介979 堀江貴文のゼロをイチにするすごいプレゼン(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

堀江さんとしては珍しいハウツー系の本です。

15分で読めますので、プレゼンをやる機会がある人は一読しておきましょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

原稿をひたすら読み上げるだけ、というのは最低愛悪のプレゼンだ。これはもはや、『プレゼン』というスタイルを採用する必要がないので論外。すぐにでもプレゼンを中止して、原稿をメールで一斉送信すればいい。そもそも、時間をかけて話を聞いてくれている相手に失礼すぎる。・・・僕は基本的に原稿なんて用意しない。その場で出てくる言葉やリアル感がなければ『リアルの場』でプレゼンする必要なんてないと思っているからだ。」(63~64頁)

私もかなりセミナーをやるほうだと思いますが、スクリーンに映し出されている文字を読み上げることはほとんどありません。

画面に映っているそれは、セミナー開始前に紙媒体で受講者に渡されているので、わざわざ読み上げるまでもないからです。

むしろそこに書かれていないことをどれだけ話すかを意識しています。

そうじゃないと聞いている側は眠くなりますし、時間がもったいないです(資料だけもらって帰れば足りる)。

セミナーはどこまで行っても臨場感が命なのです。

解雇313 HIV感染不告知を理由とする採用内定取消し(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

90日目の栗坊トマト。3か月でこんな感じです。

今日は、HIV感染不告知を理由とする採用内定取消しと当該情報の目的外使用の違法性に関する裁判例を見てみましょう。

北海道社会事業協会事件(札幌地裁令和元年9月17日・ジュリ1538号4頁)

【事案の概要】

本件はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染しているXが、北海道内において病院を経営するY社の求人に応募し内定を得たものの、その後Y社から内定を取り消されたことをめぐり、①この内定取消しは違法である、②Y社が上記病院の保有していたXに関する医療情報を目的外利用したことはプライバシー侵害に当たると主張して、不法行為に基づき、330万円の損害賠償+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、165万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 HIVに感染しているという情報は、極めて秘密性が高く、その取扱いには極めて慎重な配慮が必要であるのに対し、HIV感染者の就労による他者への感染の危険性は、ほぼ皆無といってよい。そうすると、そもそも事業者が採用に当たって応募者に無断でHIV検査をすることはもちろんのこと、応募者に対しHIV感染の有無を確認することですら、HIV抗体検査陰性証明が必要な外国での勤務が予定されているなど特段の事情のない限り、許されないというべきである。
本件では、上記特段の事情は認められないのであって、Y社病院がXにHIV感染の有無を確認することは、本来許されないものであった。そうだとすると、Xが平成30年1月12日にY社病院総務課職員から持病について質問された際にHIV感染の事実を否定したとしても、それは自らの身を守るためにやむを得ず虚偽の発言に及んだものとみるべきであって、今もなおHIV感染者に対する差別や偏見が解消されていない我が国の社会状況をも併せ考慮すると、これをもってXを非難することはできない

2 確かに、本件ガイドラインにおいても、通常の勤務において業務上血液等に接触する危険性が高い医療機関においては、別途配慮が必要であるとされているところである。
しかしながら、HIV感染の事実は取扱いに極めて慎重な配慮を要する情報であるから、そのような医療機関においても、HIV感染の有無に関する無差別的な情報の取得が許容されるものではない。そして、医療機関においては、血液を介した感染の予防対策を取るべき病原体はHIVに限られないのであるから、Y社病院においてもHIVを含めた感染一般に対する対策を講じる必要があり、かつ、それで足りるというべきである。
現に、医療機関の参考のために作成された本件手引きにおいても、HIV感染について他の感染症とは異なる特別な対応をすべきことが提唱されているわけではなく、「職業感染対策」として、B型肝炎、C型肝炎等の感染症と並んでHIV感染対策に特化した記述がわずかに存するのみである。そうすると、医療機関といえども、殊更従業員のHIV感染の有無を確認する必要はないばかりか、そのような確認を行うことは、前記特段の事情のない限り、許されないというべきである。
ましてや、Xは、社会福祉士として稼働することが予定されていたのであって、医師や看護師と比較すれば血液を介して他者にHIVが感染する危険性は圧倒的に低いと考えられるし、Xが患者等から暴力を受けたとしても、Xが大量出血しその血液が周囲の者の創傷等を通じて体内に偶然に入り込むなどといった極めて例外的な場合でもない限り、これが原因で他者にHIVが感染することは想定し難いというべきである。
したがって、上記主張はいずれも失当である。そして、Y社病院に前記特段の事情があったとは認められないから、Y社病院が医療機関であることをもって、Xに対しHIV感染の有無を確認することが正当化されるものではない。

センシティブ情報に関する取扱いについて参考になる裁判例ですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。