本の紹介978 編集思考(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

NewsPicks Studios CEOの佐々木さんの本です。

異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す

モノがあふれた時代 ビジネスには、『編集』が必要だ。

だからこそ「編集思考」が大切なんだと説いています。

さて、この本で「いいね!」思ったのはこちら。

商品やサービスの開発では、とりわけ『編集』が欠かせません。あらゆる分野で価格や機能の競争は行きつくところまで行っています。現代は、『組み合わせでしか新しいものは生まれない』と言っても過言ではありません。」(45頁)

これ自体はかなり前から言われていることです。

何と何を掛け合わせるのか。

それが単なる売り手側の自己満足になっていないか。

いきなり成功することを考えず、考えられる組み合わせを実験してみる。

これらの視点を持ってあきらめずにやっていれば、そのうち、いくつか芽が出ます。

芽が出る前に水をあげなくなるので枯れてしまうのです。

不当労働行為230 取締役の不適切発言と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

87日目の栗坊トマト。完全なるトマトです!

今日は、労組の団交申入れに対し、取締役が組合員と直接面談し、労組からの脱退を勧奨し労組を誹謗中傷する発言を行ったことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

ほうびほか1社事件(神奈川県労委平成31年1月11日・労判1205号93頁)

【事案の概要】

本件は、労組の団交申入れに対し、取締役が組合員と直接面談し、労組からの脱退を勧奨し労組を誹謗中傷する発言を行ったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社の取締役であったAがXと連絡を取り、同人との間で行った面談及び同面談でのXに対するAの発言内容は、組合の運営や組合活動を阻害するおそれのあるものであるから、組合の運営に対する支配介入に当たる

2 Z社は、実質的にY社と同一であり、労使関係においてもY社の地位を承継しているとみることができ、Z社は、Xとの関係において、労組法第7条の「使用者」に当たる。
Y社の取締役であり、Z社の従業員でもあるAがY社及びZ社の両社の立場でXと接していたとみることができること、Z社が実質的にY社との一体性を有するほか、労使関係においてもY社の地位を承継していることからすると、AがXに対して直接交渉を行ったこと及び同交渉におけるYの発言内容等は、組合の運営に対する支配介入に当たる。

上記命令のポイント1は、基本中の基本ですので、使用者としては理解しておかなければなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介977 中田式ウルトラ・メンタル教本(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「好きに生きるための『やらないこと』リスト41」です。

考え方が似ていておもしろいです。

今の時代は、本当にいい時代だなあと思います。

自分でがんじがらめにしない限り、今の時代は自分の好きなように生きられますからね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

モノを持ち続けるのは生存するための本能的な行為です。ただ、現代の生き方として、所有し、蓄えることにいったいどれだけメリットがあるかは疑問です。とくにそれがその人を縛ることになりかねないからです。モノにとらわれ、失うことを恐れる。それはずいぶん不自由な環境に自分を追い込んでいるようなものです。・・・所有欲を捨てれば、現代人の悩みの大半は解消されるのではないかとすら思っています。」(92頁)

全く同感。

所有欲については、これまでも何度か書いてきましたのでもうあまり書くことがありません(笑)

所有欲がないというのは、モノを欲しいと思わないということを超えて、できるだけモノを持ちたくないという意味も含みます。

極力、所有する「モノ」を減らしたいのです。

いつも言うことですが、決して誰にもこのような思想を押し付けるつもりはありません。

人それぞれ幸せと感じる生き方をすればいいだけのことです。

幸せは人それぞれ違うというだけのことです。

不当労働行為229 フランチャイズ契約と労組法上の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

85日目の栗坊トマト。葉っぱが元気ないですが、実はどんどん大きくなっております。

今日は、会社とフランチャイズ契約を締結して公文式教室を開設し、生徒指導に当たる教室指導者の労組法上の労働者性が争われた事案を見てみましょう。

公文教育研究会事件(東京都労委令和元年5月28日・労判1207号89頁)

【事案の概要】

本件は、会社とフランチャイズ契約を締結して公文式教室を開設し、生徒指導に当たる教室指導者の労組法上の労働者性が争われた事案である。

【労働委員会の判断】

労組法上の労働者性を肯定

【命令のポイント】

1 労働組合法上の労働者に当たるか否かについては、契約の名称等の形式のみにとらわれることなく、その実態に即して客観的に判断する必要がある。確かに、一般に、フランチャイズ契約には、いわゆるライセンス契約としての側面があることは否定し難く、また、フランチャイジーが会社とは別個の事業者とされていることからすると、フランチャイジーがフランチャイザーに対して労務を供給することがその契約上当然に予定されているとはいえない。
しかし、本件契約は、教室指導者本人の労務供給が前提となっているということができるし、実態としても、教室指導者は、本人労働力を供給して生徒の指導を行っているというべきである。また、会社と本件契約を締結するのは、教室指導者個人のみであり、本件契約を締結し、法人が本件契約に基づいて公文式教室を運営する例はない。これらの事情からすると、本件において、会社と教室指導者との関係を実質的にみた場合、教室指導者自身が会社の事業のために労務を供給していると評価できる可能性がある

2 ・・・したがって、上記の点を踏まえつつ、教室指導者が労働組合法上の労働者に当たるか否かについては、労働組合法の趣旨及び性格に照らし、会社と教室指導者との間の関係において、労務供給関係と評価できる実態があるかという点も含めて検討し、ア)事業組織への組入れ、イ)契約内容の一方的・定型的決定、ウ)報酬の労務対価性、エ)業務の依頼に応ずべき関係、オ)広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束、カ)顕著な事業者性等の諸事情があるか否かを総合的に考慮して判断すべきである。これらの事情を総合的に勘案すれば、本件における教育指導者は、会社との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。

コンビニの例同様、FCでも労組法上の労働者性が肯定される場合がありますので注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介976 1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

著者の調査結果がまとめられている本です。

当然のことですが、この本を読んでも、億万長者にはなりません(笑)

行動しなければ人生は永遠に変わりません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

誰の助けも借りずに成功する人はまずいない。どれだけ才能があろうとも、個人が集まっただけではチームとは言えない。ラインマンがチャンスを切り開いてくれなかったら、ランニングバックはタッチダウンを奪うことはできないのだ。資産を形成することは、それとよく似ている。誰の力も借りずに自分の力だけで成功を収めたという富豪には、私はまだ一人としてお目にかかったことがない。」(64~65頁)

個人投資家等の例外を除いて、通常は、チームで仕事をすることになります。

ラグビーの例を出すまでもなく、チームプレーがいかに機能するかが勝敗を決します。

スタープレーヤーが1人いたとしても、多くの場合、チームとしては機能しません。

スポーツも仕事も同じことです。

個々のプレーヤーが力を発揮できる環境を整えることが監督の仕事になります。

不当労働行為228 組合員に対する退職勧奨と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

83日目の栗坊トマト。これからどれだけ実がつくのでしょうか。楽しみです。

今日は、希望退職に応じない組合員に対して退職条件を説明する等の個別面談を行い、退職を勧奨したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

新井鉄工所事件(東京都労委平成30年12月4日・労判1205号94頁)

【事案の概要】

本件は、希望退職に応じない組合員に対して退職条件を説明する等の個別面談を行い、退職を勧奨したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、組合員に個別面談を行った理由として、希望退職者には退職金規程に定められた退職金に加え、更なる優遇措置を講じていたものの、団体交渉において組合に説明しようとしても、組合がこれに応じなかったので、希望退職の条件も含め、組合員と非組合員の別なく説明及び情報提供を行うべきと考えたと主張するところ、この主張に一定の理解ができないではない。しかし、説明や情報提供が目的であったとすれば、説明会の開催に加え、組合や組合員の反対を押し切ってまで個別面談を4回も実施する必要はないはずであるし、4回目の個別面談で、Y社が出席者をそれまでの1名から2名に増やす必要もなかったといえる
また、Y社は、非組合員のみに個別面談を実施すると、組合のそれまでの対応から、後に、組合員ゆえに差別したとの指摘がなされるのではないかと懸念したことも理由として挙げているが、組合は希望退職に応ずる考えのない組合員への個別面談をしないよう求めていたのであるから、その理由に合理性を認め難い
そうすると、Y社が希望退職に応じなかった組合員に対して、4回にわたり個別面談を実施したことは、組合の頭越しに個々の組合員に対して希望退職に応ずるよう直接働き掛けるものであったといわざるを得ず、支配介入に当たる。

対応が難しいですね。

Y社の考えていることも全く不合理とはいえないと思いますが、結果としては不当労働行為に該当すると判断されています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介975 僕たちは、地味な企業で食っていく。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

地味な起業では儲かりませんが、何かの副業として行うにはいいですね。

今の仕事とは別に副業をやりたい方は読んでみるといいかもしれませんね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

実は大切なのは『何をするより、誰と働くか?』。あなたの先を行く『自分軸を持って選択できる未来を進んでいる人』と少しでも関われる量を増やしてください。」(140頁)

仕事に限らず、人生のあらゆる時間について、自分にとって良い影響を与えてもらえる人と一緒にいるべきですよね。

とはいえ、類は友を呼びますし、引き寄せの法則的に言っても、まずは自分が変わらなければ出会う人間のタイプは変わりません。

自分が目標とする人とできるだけ長く時間を共有し、波長を合わせることが近道です。

賃金177 当直時間帯の仮眠時間は労働時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

81日目の栗坊トマト。現在、実が4つできています。

今日は、当直時間帯の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

KSP・WEST事件(大阪地裁令和元年5月30日・労判ジャーナル91号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、労働契約に基づき、平成27年10月から平成28年9月まで毎月20日を締日とし、翌月5日を支払期日とする労働基準法37条1項所定の未払割増賃金合計約602万円等の支払、平成28年9月21日から同年10月20日までの未払割増賃金約17万円等の支払、労働基準法114条所定の付加金等の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 XとY社との間で交わされた雇用契約書には、基本給月額25万円、職種手当月額3万円であると記載されていることからすると、Xの賃金は、基本給月額25万円、職種手当月額3万円の合計28万円であると認められ、本件賃金規程は、職務手当について、割増賃金として支払う旨を定めているものの、職種手当については、何ら言及されていないから、Xの労働契約の内容上、職種手当が、労基法37条1項所定の割増賃金について支払われる趣旨のものであるとは認められない。

2 当直時間帯における仮眠時間について、仮眠時間中の保安警備は、仮眠中に起こされて業務に従事するよう命じられることはなかったことから、Xは、所定の仮眠時間において、労働契約上の役務の提供を義務付けられていなかったものと評価することができ、また、当直時間帯における食事休憩について、当直勤務においては、労働契約上、30分の食事休憩が予定されているから、かかる時間については、労働契約上役務の提供を義務付けられているとはいえず、そして、その他の休憩時間について、Xは、雇用契約書によると、労働契約上、午前9時から午後5時45分の時間帯において、1時間の休憩を取得することが予定されており、労働契約上、役務の提供を義務付けられているということができず、以上より、当直時間帯における仮眠時間及び食事休憩時間並びに午前9時から午後5時45分の勤務時間帯のうち1時間については、労働時間に該当しない。

上記判例のポイント1はもったいないですね。

「職種手当」と「職務手当」。似て非なる手当。固定残業代として認められるか、基礎賃金に含まれるか・・・大きな違いです。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介974 肩書き「オレ」で生きていけ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

この本でも言いたいことは、自分を商品として生きていけ、ということです。

それができれば、もっと自由に、もっと好きなように生きていくことができます。

こんなこと、多くの人が頭ではわかっているのですが、体が言うことを聞かないのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

SNSでも、職場でも、社会でも、つい『他人』のことが気になって、誰かの活動を羨んでみたり、誰かの言動に文句を言ったりしていますが、それってアホらしい話。どれだけ『他人』にエネルギーを使ってんねん!という話です。・・・他人がどう言おうと関係ないでしょう。その『いろいろ言っている誰か』というのも、結局は『他人のことにエネルギーを使ってるアホ』なんですから。」(235頁)

他人に全く関心がないため、他人のSNSを見るという習慣がない私のような人間には関係のない話ですね(笑)

物欲同様、承認欲求も嫉妬心もないため、こういう動機で生きていくことがもうできないのです。

もう他人の評価とかどうでもいいのです。

認めてくれる人はそれでいいですし、そうでない人もそれでいいのです。

解雇312 うつ病の業務起因性の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

79日目の栗坊トマト。実の数がどんどん増えてきました。

今日は、うつ病の業務起因性と解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

トヨタカローラ南海事件(大阪地裁令和元年6月4日・労判ジャーナル91号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結し、Y社の店舗に勤務していたXが、Y社から解雇されたが、同解雇は労働基準法19条に違反し無効であるなどとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、賃金及び賞与の支払等を求め、また、本件店舗の店長であったAからセクシャルハラスメント行為又はパワーハラスメント行為を受けてうつ病に罹患し、その後Y社担当者の不適切な行為によりうつ病が悪化したとして、Y社及びAに対し、連帯して、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償等の支払を、それぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ①Aが、本件店舗の店長として着任後、時期は不明であるが、Xに対し、数回、彼氏との性的行為があったのかどうかといった性的な発言を行ったこと、②AとB係長は、X以外の人物について、「病んでるらしいで」などと発言し、笑ったことが認められるが、①の発言の時期は不明であること、①は、身体への直接の接触を伴うような性的行為を受けたという性質のものではなく、またその回数も数回に止まること、Xは、休職より前に、Y社に対し、セクハラ行為の相談をしていないこと、②の行為は、X以外の人物に関する発言であることから、①については、厚生労働省労働基準局長発出の「心理的負荷による精神的障害の認定基準について」別表1の「〔6〕セクシュアルハラスメント」「セクシュアルハラスメントを受けた」の中の、「強」の例示に該当する程度のものとはいえず、強くても「中」程度のものと評価され、②については「弱」の例示に該当する程度のものと評価され、これらを総合的に評価しても、「強」程度の心理的負荷を有するものと認めることはできないから、Aの行為により、Xが、うつ病と診断され、出勤が困難になり、休職した旨のXの主張は採用できない

2 Xは、Xのうつ病が業務起因性を有するから、本件解雇は労働基準法19条1項に違反する旨主張するが、Xのうつ病の発病ないし悪化が、業務に起因したものとは認められず、また、復職後のXの勤怠状況は、週4日以上のペースで欠勤を続け、頻繁に早退を重ね、平成28年8月14日以降は一切出勤しておらず、また、Xの欠勤理由は、Xや子どもの体調不良のみならず、子どものキャンプあるいはキャンプに備えて休むといった用事、猫の葬儀等、理由としてやむを得ないものと判断しかねる理由も見受けられ、遅くとも同年7月後半以降、Xは、Y社に対し、労務を提供する意思と能力を欠く状況にあったことは明らかといえ、そして、Y社が、Xの復職に際して、主治医の診断書の内容を踏まえ、本社の保険業務課に配属し、始業時刻を午前10時とする特例措置を行っていることをも併せ鑑みれば、Xの勤怠状況は、解雇事由である就業規則所定の「精神又は身体の障害によって業務に耐えられないと認められ、かつ、他部署への配置転換が困難な著しく正常でない場合」に該当するとともに、Y社が、Xに対し、本件解雇を行うことは、労働契約法17条の「やむを得ない事由」があるといえるから、本件解雇は有効である。

ハラスメントが原因で休職した場合でも、その程度によっては本件のような判断がされることがあります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。