本の紹介973 凡人道(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

ひろゆきさんの本です。

堀江さんの本を読んでからこの本を読むととてもおもしろいです。

「凡人が鵜呑みにしてんじゃねーよ」みたいな感じです(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お金持ちをうらやむ人にそれが叶ったら何をしたいか聞くと、たいてい『タワーマンションに住みたい!』『ブランドの服やカバンが買いたい!』『豪華な海外旅行に行きたい!』などの答えが返ってきます。・・・普通の生活でこういう浪費がクセになってしまうと、生きるうえでのコストが上がっていきます。・・・僕は『お金を貯めたほうがいい』と思っている派で、こういった生活コストを上げることには賛成しません。」(138頁)

生活コストを上げるべきでないという点は同感です。

人によって何をするのが幸せで快感を覚えるのかが異なりますので、別に好きにすればいいのですが、私のように物欲0人間からすると、タワーマンションもブランドの服もカバンも全く興味がありません。

というか、こういうものを手に入れても、幸福度が上がらないのです。

海外旅行も(というか国内旅行も)移動するのが面倒くさいです(笑)

兎にも角にも、インスタでリア充をアピールするような、他人から「すごいね!」とか「いいなー!」と思われたい欲求が全くないので、タワーマンションだのブランドの服だの高級時計だので見栄を張る理由がないのです。

他人の評価など気にせず自然体で生きたいように生きればいいのです。

セクハラ・パワハラ56 不適切発言によるパワハラと慰謝料の金額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
75日目の栗坊トマト。実がどんどん大きくなってきています!

今日は、降格処分とハラスメントについて争われた裁判例を見てみましょう。

学校法人弘徳学園事件(神戸地裁豊岡支部令和元年7月12日・労判ジャーナル91号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の事務局長であったXが、Y社から受けた降格処分は理由のない無効なものであり、これにより賃金及び賞与を減額されたことに理由はないとして、雇用契約に基づく減額賃金及び賞与等の支払を求め、また、Y社に対し、上記降格処分の通知の際の亡学長のXに対する発言がハラスメントないしハラスメントに類する違法行為なのに、Y社のハラスメント防止委員会がXの苦情申立てに対応しなかったとして、職場環境保存義務違反による雇用契約の債務不履行による損害賠償として慰謝料50万円、また、Y社の准教授であるBが、Y社に対し、亡学長がBに対してした教授会での叱責等の言動がハラスメント行為なのに、Y社のハラスメント防止委員会がBの苦情申立てに対応しなかったとして慰謝料50万円を求め、Y社及び亡学長の承継人らに対し、亡学長の行為が業務指示の範囲を超えるものでかつBに専門外の講義をさせることがハラスメント行為であるとして、慰謝料50万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

降格処分は有効

ハラスメントに基づく損害賠償請求は一部認容

【判例のポイント】

1 Xは、本件降格処分を告げられた際、亡学長から「納得できなければ裁判でもすればいい。裁判すれば、ここには居られなくなる」と言われ、かかる言動がハラスメントに当たると主張するところ、亡学長の言動は、Xが本件降格処分を不服として裁判をすれば、Xが職務上の何らかの不利益を被るかもしれないという恐怖心を与えるものであり、Xが本件降格処分についての裁判を提起するという正当な権利の行使を躊躇せしめるものであり、ハラスメントに当たるといえるが、もっとも、Xは、本件訴訟を提起したことで、Y社において、特に不利益を被っていないこと、Y社も、亡学長の言動を不適切と判断して、譴責の懲戒処分をしたことが認められることから、Xの被った精神的苦痛は、大きいとまではいえないから、これを金銭的に評価すれば、10万円が相当である。

2 亡学長が、新入生歓迎会のしおりについて、教授会でBを叱責したことについてはハラスメントに該当し、Bは、精神的苦痛を受けたといえるところ、Bは、亡学長の言動について、ハラスメントとして苦情申立てをしたが、Bが申立ての方式を誤解していたとはいえ、Y社による対応が何もなされていないことから、Bの精神的苦痛は回復されていないといえるが、もっとも、Bは、亡学長の叱責をうけた直後は心理面について要診療とされるような状態であったが、診療は受けておらず、その後は、正常な状態に戻ったことが認められ、これらの事情を踏まえれば、Bの精神的苦痛は大きいとはいえず、金銭的に評価すれば、10万円が相当である。

金銭的なダメージよりもレピュテーションダメージを気にするべきです。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介972 頭で考える前に「やってみた」人が、うまくいく(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

「ジュガール」でおなじみのサチン・チョードリーさんの本です。

もはやタイトルをそのまま実践し続けることができれば、ほぼ成功すると思います。

多くの人は、本を読んで実践しないので、いつまでたっても人生は変わりません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

多くの人が見落としがちなことですが、実は私たちは相手に商品を売り込もうとするとき、同時に『自分のことも売り込んでいる』のです。そして、あなたが自分の売り込みに失敗した場合、商品の売り込みに失敗するのと同様に、相手はあなたのことを信用してくれません。」(182頁)

商品は自分自身だと考えて、日々の仕事を通じて、自身の商品価値を高めることが大切です。

顧客は、会社ではなく、人に付きます。

その人を信用して、商品を購入しているのです。

だからこそ自分の商品価値を高めるという意識で時間を使わないと、気づいたら、年齢とともに減価償却されてしまいます。

暇さえあればラインやインスタをする、まさにその時間に英単語の1つでも2つでも覚えれば人生は変わり出します。

99人はやらないし、やり続けられない。

だからこそやり続けるのです。

これが商品価値の上げ方です。

継続雇用制度27 再雇用基準の不充足を理由とした更新拒絶(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

73日目の栗坊トマト。実が増えてきましたー。まだ緑色ですけど。

今日は、再雇用基準不充足を理由とした更新拒絶の適法性等に関する裁判例を見てみましょう。

エボニック・ジャパン事件(東京地裁平成30年6月12日・労判1205号65頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元正社員であるXが、平成27年3月31日付けで60歳の定年により退職し、雇用期間を1年間とする有期雇用契約(以下「本件再雇用契約」という。)により再雇用された後、「定年退職後の再雇用制度対象者の基準に関する労使協定」(以下「本件労使協定」という。)所定の再雇用制度の対象となる者の基準(以下「本件再雇用基準」という。)を充足しないことを理由として、平成28年4月1日以降は同契約が更新されず、再雇用されなかったこと(以下「本件雇止め」という。)について、実際には同基準を充足していたことなどから、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で同契約が更新されたとみなされること、平成27年分及び平成28年分の業績賞与の査定等に誤りがあることなどを主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇止め以降の未払基本給(バックペイ)並びに前期業績賞与の未払分の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 達成度評価における評価値(点数)が3点であるということは、平成25年までは「期待どおりであった」ことを、平成26年以降は「目標は完全に達成された」ことを意味するのであり、単年度だけでみても、達成度評価の評価値(点数)が全従業員の平均点以上であるか、少なくとも3点以上であるということは、特に良いとも悪いともいえないような大半の従業員が達成し得る平凡な成績を広く含む趣旨で使用され得る「普通の水準」という用語の一般的な意味から外れるものである。まして、3年連続で全従業員の平均点以上の成績を収めることのできる従業員は、全従業員の半数を大きく下回る人数にとどまるのであり、「普通の水準」という用語の一般的な意味からは大きく逸脱する
そもそも、達成度評価の評価値(点数)が全従業員の平均点以上であることを要求する基準を設定する場合には、平均(アベレージ)という用語を使用するのが通常であると考えられるところ、本件人事考課基準において、かかる用語は使用されていない。
また、本件労使協定の交渉段階において検討された「グッドパフォーマンス」という基準ですら、達成度評価の評価値(点数)が4点以上であるなどの高い水準を意味していたとは考えがたいところ、これよりも低い「普通の水準(オーディナリーパフォーマンス)」が基準とされたものであるし、本件労使協定が締結された当時、Y社の社内において、達成度評価の評価値(点数)が全従業員の平均点以上ないし3点以上でなければ、本件人事考課基準を充足したことにはならない旨の説明がなされたことを窺わせる形跡もない。

2 以上検討したところに加え、本件労使協定に基づく再雇用制度は、高年法上の高年齢者雇用確保措置の1つである継続雇用制度として設けられたものであることを踏まえると、本件人事考課基準が、過去3年間のいずれの年においても、達成度評価の評価値(点数)が全従業員の平均点以上とか、3点以上といった趣旨であるとは解しがたい。むしろ、「普通の水準」は、大半の従業員が達成し得る平凡な成績を広く含む趣旨と解すべきであるし、「過去3年間の人事考課結果が普通の水準以上であること」というのは、過去3年間について、3年連続で「普通の水準」以上であることを要求するものではなく、過去3年間を通じて評価した場合に「普通の水準」以上であれば足りるという趣旨と理解するのが合理的である。

3 Y社は、①本件雇止めが行政取締法規である高年法に違反するとしても、その違反の効果として私法的効力が生じる余地はないこと、②定年退職者全員が有期雇用となる被告における定年後の再雇用において労働契約法19条を適用することは、法の趣旨に反すること、③特別支給年金受給開始年齢到達後の継続雇用制度と同年齢到達前の継続雇用制度とは別個のものであること、④就業規則16条2項は、平成24年改正法前後の継続雇用制度が別制度であるとの理解を反映したものであることを指摘して、平成28年4月1日以降のXの再雇用について、労働契約法19条の適用は問題とならないと主張する。
しかしながら、上記①については、高年法それ自体が私法的効力を有していないとしても、高年法の趣旨に沿って設けられた就業規則16条2項及び本件労使協定が私法的効力を有することは明らかであり、これらの解釈に当たり高年法の趣旨が参照されることに支障があるとはいえない
また、労働契約法19条は適用対象となる有期雇用契約の類型等を特に限定しておらず、他の同種の従業員全員が有期雇用であるとか、定年後の再雇用であるといった理由により、その適用自体が否定されるものではないから、同②の指摘は失当である。
そして、同③及び④の指摘については、本件再雇用契約が「更新されるものと期待することについて合理的な理由がある」か否かを検討するに当たり考慮すべき事項であるとしても、労働契約法19条の適用自体を否定する根拠とはなり得ないから、労働契約法19条の適用は問題とならないとの上記Y社の主張を採用することはできない。

久しぶりの継続雇用関係の裁判例です。

継続雇用については、同一労働同一賃金関係の訴訟とともに、本件のような入り口でのトラブルもありますので注意しましょう。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介971 好きなことしか本気になれない。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

著者は、株式会社ココナラ代表取締役社長の方です。

帯には「キャリアアップよりも大事なのは、自分のストーリーを生きること。」と書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人口動向、未来予測などエビデンスベースの精度が高い情報を得る。自分なりの未来観、社会観をアップデートする。意思決定の判断基盤をつくる…読書はその際役に立つ。だが、まとまった時間はなかなかとれない。移動中の電車やカフェでは細切れ読書になり、思考が途切れたり飽きたりして、効果がよい読み方にはなりにくい。そんなときには『一人読書合宿』を試してみよう。2泊3日モデルを紹介する。」(58頁)

日常生活で言えば、「細切れ時間を制する者は人生を制する」と思っていますが、

1つのテーマをじっくり勉強したい場合には、この本で紹介されている「一人読書合宿」はいいですね!

旅館を予約し、あるテーマの本を持ち込み、徹底的にその分野を勉強する。

気が散りそうなものは一切持っていかない。

僕も一度、試しにやってみようと思います。

解雇311 降格減給の有効性の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

68日目の栗坊トマト。前回よりも実がやや大きくなりました!

今日は、業務遂行能力不足等を理由とする降格減給及び解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

末日聖徒イエス・キリスト協会事件(東京地裁平成31年3月25日・労判ジャーナル90号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、平成28年12月21日付けで降格され、平成29年1月から賃金を減額されたことは人事権の濫用に当たり、その後更に同年6月12日付けで解雇されたことは解雇権の濫用に当たりいずれも無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件減給前の賃金との差額賃金、本件解雇後の未払賃金及び本件解雇までの一連の不法行為による慰謝料200万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、およそエリア・リアル・エステート・マネージャーとしての責務を果たしていない状態であったことが認められ、Y社の業務に支障を生じさせていることは、外部業者からも看取できるほどであったこと、Xの平成25年以降の人事評価は極めて低評価であったことが認められ、Y社は、Xに対し、自己都合退職するか降格減給を受け入れるかの選択肢を示し、Xの意向も踏まえて本件降格減給を行ったところ、減給は約1割に留めるものであって、本件降格減給は、Xの勤務成績や業務遂行能力、勤務態度の問題を理由に、業務遂行能力改善のため種々の方策を施した上で行われたものであって、Xを退職させようとする不当な目的に基づくものと認めることはできず、本件降格減給は、人事権の行使としてやむを得ず行われたものであり、人事権の濫用に当たらないから、Xの同意の有無について検討するまでもなく有効である。

2 本件降格減給、本件解雇は有効であり、Xを嫌悪したり、Y社から排除するために行われたものとは認め難く、また、本件アンケートは、Xについて、監査指摘事項の是正訓練を受けたFMやその他の関係職員を対象としたアンケートを実施し、本件異動後の評価資料を得ることを目的としたものであって、嫌がらせのためX自身にアンケートの文案を作成させたとまでは認め難く、さらに、部長がXに対して自身の市場価値を調べるため本件調査を指示したことは、その必要性に疑問が残るものの、宗教法人という特殊な団体における職員の評価に関して、当該職員において自身の客観的な市場価値を認識することを促したものと理解することができ、これが嫌がらせであるとか違法であるとまでは評価することができないこと等から、XのY社に対する慰謝料請求にも理由がない

降格減給も解雇同様、合理性が立証できるかが鍵となります。

また減給幅が大きくなりすぎないようにすることも有効に降格減給するために必要な視点となります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介970 時間革命(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

堀江さんの本です。

いかに時間を無駄にしないかがテーマです。

無駄なことが多い日常生活をいかに効率よく、合理的に生きていくかを考えるきっかけになります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

すべては『自分時間をどう増やすか』である。『相手が自分をどう思うか』なんてことを思い煩って、自分の人生をおざなりにするなど、本当にもったいない。『他人』という存在は、あなたの時間を奪う最たるものだ。『時間=人生』を本当に大切にするなら、人間関係も『自分』起点に考え直すべきなのだ。」(31~32頁)

そう。

自分のかけがえのない「時間」については、もっとわがままになっていいのです。

世の中に溢れかえる「お付き合い」という名のいやいや参加している会合や会議をやめたら、どれだけの自分時間が生まれるでしょうか。

仕事上そうもいかないという現実を受け入れて、限りある時間を削っていく・・・。

この当たり前を疑って、自分時間を生きている人は本当に幸せです。

時間は人生そのものです。

嫌なことをいやいややるほど、人生は長くありません。

競業避止義務25 退職後の競業避止に関する誓約書の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

66日目の栗坊トマト。見えます?実がついているの!

今日は、退職後の一定期間における競業事業者への就職等の禁止を定める誓約書の効力を一部無効とした裁判例を見てみましょう。

アクトプラス事件(東京地裁平成31年3月25日・労経速2388号19頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が雇用していたX1及びX2がY社の就業規則の規定又はY社とX2が取り交わした誓約書における約定に反して、A社の業務執行社員に就任するとともに、Y社の登録派遣社員を引き抜き、Y社の顧客に派遣して顧客を奪ったなどと主張して、X1及びX2に対し、債務不履行、不法行為及び会社法597条に基づき、A社に対し、X1及びX2との共同不法行為に基づき、連帯して、逸失利益1385万7186円及び弁護士費用相当損害金138万5719円の合計1524万2905円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件誓約書6条は、X2に対し、Y社退職後1年間、事前の許可なく、一都三県においてY社と競業関係にある事業者に就職等をすることを禁止しているところ、かかる制限はX2の職業選択の自由を制限するものである上、Y社との間で有期労働契約を締結し、主として登録派遣社員の募集や管理等を行っていたにすぎないX2について、制限の期間や範囲は限定的であるものの、Y社の秘密情報の開示・漏洩・利用の禁止や、従業員の引き抜き行為等の禁止をする以上の制限を課すべき具体的必要性が明らかでなく、かかる制限に対する特段の代償措置も設けられていないことなどを考慮すると、本件誓約書6条は公序良俗に反し無効である。

2 派遣社員募集にWeChatを利用することは、Y社独自のノウハウということはできない上、A1グループやA2グループに登録されたメンバーの情報についても、その全てがY社の業務上形成されたものとはいえず、Y社入社前から上記情報を形成してきたX2との間で上記情報に関する権利関係も明確でない以上、X1及びX2がA社において上記情報を利用することが直ちに違法になると解することはできない
また、X2は、Y社退職の際、後任者であるDに対してA1に対する人材派遣についての引継ぎを行っており、A1から発注があれば、Dにおいて派遣社員の募集をすることが可能であったものの、Y社はX2退職後、A1から発注を断られたことが認められるところ、X2がA1のY社への発注を妨げたと認めるに足りる証拠はない。むしろ、A1からY社への発注がなくなったのは、FのY社顧問退任とA社顧問就任による影響や、A1とX1及びX2の信頼関係によるものと推認することができ、X1及びX2がY社退任後にA社においてA1グループやA社グループを利用して人材募集をしたことが理由でA1からY社への発注がなくなったと認めることもできない。
なお、Y社のA2からの人材派遣の受注がX1及びX2のA社への入社後に減少したと認めるに足りる証拠はなく、むしろ増加しているものとうかがえる。
以上によれば、X1及びX2が違法に本件引き抜き行為等を行ったことを前提とするY社のX1及びX2に対する損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

いつもながら競業避止義務や引抜き行為に関する事案は、原告側に厳しい判断が多いですね。

上記判例のポイント1のような考慮要素は理解しておく必要があります。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

本の紹介969 感動経営(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

著者は、JR九州の会長です。

JR九州といえば、「祝!九州 九州新幹線全線開業」のCMですね!

何回見ても、最高です。

赤字300億円から黒字500億円にまでした経営者が考えていることが1冊の本にまとめられています。

とてもいい本です。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

社員は、入社直後はやる気がみなぎっている。自分で努力して、選んで入ってきた会社だから、ここで頑張ろう、認められようと燃えている。そういうときにこそ厳しく教えるのだ。そうすることによって、簡単にくじけたりしない、すぐに辞めるのどうのといい出さない社員に育っていく。反対に、何のスキルもない人間を最初にチヤホヤしてしまうことほど始末の悪いものはない。しばらく何か月だか甘やかしてしまったあとに、うまく成長しないからと慌てて厳しくしてももう手遅れ。というより、むしろ逆効果で、最悪の場合そこで辞めてしまったりする。」(293頁)

最初が肝心というのはまさにその通りですね。

もっとも、人手不足もあり、求人募集をかけてもなかなか人が集まらず、また、やっとのことで採用してもすぐに辞めてしまう。

こんな状況で「最初が肝心」といって厳しく教育したくても二の足を踏んでしまう会社もあるかもしれませんね。

しかし、最初に甘やかしてしまうとそれが当たり前になるため、途中から厳しくしてもなかなかうまくいきません。

やはり教育は学校でも会社でも「最初が肝心」なのです。

解雇310 解雇の相当性の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

64日目の栗坊トマト。写真だとわかりにくいですが、ちっちゃい実がなりましたー!

今日は、退職勧奨を拒否し、配置転換された後の人事評価が不当とされた解雇が無効等と判断された裁判例を見てみしょう。

フジクラ事件(東京地裁平成31年3月28日・労経速2388号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xを労働者とし、Y社を使用者とする期間の定めのない労働契約をY社との間で締結したXが、Y社に対し、Y社がした人事評価に基づくものとする月例賃金(加給)及び賞与の各減額が無効である旨を主張して、平成26年4月から平成28年3月までの期間に係る各減額分並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまでに生ずる商事法定利率の割合による遅延損害金の支払を求め、さらに、Y社がXに対してした同月31日付けの配転命令、同年6月1日付けの出向命令、平成29年9月22日付けの戒告及び同年12月13日付けの普通解雇がいずれも無効である旨を主張して、配転先及び出向先において勤務する労働契約上の各義務が存在しないこと、当該戒告が無効であること並びに労働契約上の権利を有する地位に在ることの各確認を求めるとともに、当該解雇の後に生ずべきバックペイとしての月例賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 回答書の受取の拒絶が問題となるところ、確かに、この行為が懲戒事由に該当する余地のない問題のない行為であるとは解し難い。もっとも、これによって重大な影響がY社ないしX2に生ずるといった事情は考え難いから、このことのみをもって直ちに解雇を基礎付けるようなものということはできない。また、この行為を含めたXの行為について本件戒告処分が行われたとしても、その後に同種の行為が繰り返されたということを認めるに足りる証拠もないから、結局、当該回答書の受取の拒絶をもってXの解雇の客観的な合理的理由とみることは困難である。

2 Y社は、障碍者の雇用義務を果たすためにX2を設立したものであり、このようなX2の業務は、障碍者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進し、もって障碍者の職業の安定を図るという障碍者雇用促進法の目的にかなう重要なものであったということができる。そして、本件出向命令が発令された旨、その設立後間もないX2では、従業員の増員や事業の拡大が予定されており、早急に取り組む必要はないとしても、社印の管理、経理・購買等の様々な分野にわたる各種の規程等を整備するなどして会社としての基盤を整備し、かつ、事業の拡大について順次検討を進めていくことが求められる状況にあったと推認することができる。そうすると、本件出向命令が発令された当時、総務・経理について相当程度の知識を有し、新規事業の立ち上げへの力の発発揮を期待することができる従業員をX2に配置する業務上の必要性があったことは否定し難いところ、XがX2について求められる知識、経験及び能力を備える者に合致した者であったと評することができる。そして、本件出向命令が発令された当時、Xがうつ病や本件通勤災害のためにその健康に大きな不安を抱えていたことから、Y社において、業務量やこれに従事する時間を調整しやすい部署にXを配置する必要性が高かったと考えられる上、Y社及びY社グループ会社の中でも、X2は、その業務量等を調整しやすい部署であったと認めることができる。したがって、本件出向命令については、業務上の必要性があり、合理的な人選が行われたということができる
また、本件出向命令が減給を必ず伴うものであったものと認めることができる証拠はなく、XがX2への勤務に伴って転居したという事実もないから、本件出向命令によってXが大きな不利益を受けたということもできない
以上によれば、本件出向命令が権利の濫用したものであるとは認めることができないから、本件出向命令は、有効であるというべきである。

解雇をする際は、行為の悪質性とともにその行為によって会社に対していかなる影響が出たのかを冷静に検討する必要があります。

また段階を踏んでいくという忍耐力を要するプロセスを十分理解しておく必要があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。