解雇307 即戦力採用の管理職に対する本採用拒否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

49日目の栗坊トマト。そろそろ花が咲きそうな感じです!

今日は、即戦力採用の管理職に対する本採用拒否の適法性について判断した裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人どろんこ会事件(東京地裁平成31年1月11日・労判1204号62頁)

【事案の概要】

本件は、Y社により発達支援事業部長として採用されたXが、Y社から平成29年1月31日限りで解雇されたところ、同解雇は無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同年3月25日以降本判決確定の日に至るまで、支払期日又は支払期日後の日である毎月25日限り、同年2月分以降の月例賃金月額83万4000円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、その履歴書における経歴から、発達支援事業部部長として、さらにはY社グループ全体の事業推進を期待されるY社の幹部職員として、Y社においては高額な賃金待遇の下、即戦力の管理職として中途採用された者であったものであり、職員管理を含め、Y社において高いマネジメント能力を発揮することが期待されていたものである。

2 ・・・これらの点からすると、Xの業務運営の手法は、少なくとも施設長らとの円滑な意思疎通が重要となるY社の発達支援事業部部長としては、高圧的・威圧的で協調性を欠き、適合的でなかったと評価せざるを得ない。

3 結局、以上の点に照らすと、上記のように高いマネジメント能力が期待されて管理職として中途採用されたXにつき、少なくとも、本件就業規則14条1項6号、29条5号、11号及び同就業規則14条1項1号に規定するように、他の職員の業務遂行に悪影響を及ぼし、協調性を欠くなどの言動のほか、履歴書に記載された点に事実に著しく反する不適切な記載があったことが認められるところであり、本件本採用拒否による契約解消は、解約権留保の趣旨、目的に照らし、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当なものと認められる。

4 以上に対し、Xは、採用に際して「経営陣との軋轢を恐れない」ことが条件とされており、大胆な意見具申と改革提案が期待されていたなどと主張する。確かに、募集要項にそのような記載はあり、外部の人材であったXに意見具申と改革提案が期待されたとはいえるが、現実に軋轢を生じては企業活動が進まないことは自明であって上記募集要項の記載もそのような気概で募集に応じてくれる者を求めた程度の趣旨にすぎない。以上のとおり、上記記載と実際に職員と軋轢を生じることとは別であり、その記載からXの所為が正当化されるものではない。

上記判例のポイント1のような事情がある場合には、通常の本採用拒否ないし解雇の場合よりも判断が緩やかになる傾向があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介963 持たない幸福論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない」です。

まあ、賛否両論あると思いますが、生きたいように生きればいいのです。

自分と価値観の違う他人を捕まえてその人の生き方を批判する必要はどこにもありません。

批判する人の多くは、自分の正義感や常識に反するか、心の底では羨ましいと思っているかのどちらかです。

批判をする必要も、批判も気にする必要もありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お金がなくても楽しく暮らすための心がけとして一番大事なのは、『他人と自分を比べない』ということじゃないかと思う。そして他人と自分を比べなくても平気になるためには、『自分の価値基準をはっきり持つ』ということが必要だ。自分と他人とを比較して、『他の人はもっといい暮らしをしてる』とか『他の人はもっといい物を持ってる』とか考えて劣等感を抱いてしまうと、人並み程度や人並み以上にお金を得たりお金をかけた生活をすることにこだわってしまう。」(135~136頁)

物欲が強いと、お金がいくらあっても足りません。

物欲がないとそんなにお金は必要ありません。

だって、欲しい物がないですし、物を所有して幸せを感じることがないのですから。

だから、欲しいものが手に入らないことへの不満やストレスも当然ありません。

「足るを知る」なんていうやせ我慢のレベルではなく、物に対する執着がないというレベルの話です。

承認欲求の低さからくるものなのかどうかはよくわかりませんが、他人にどう思われるかを基準にどうでもいいことを気にしながら生きていくのがアホらしいのですよ。

みなさん、生きたいように生きればいいのです。

どうやって生きたって、人生なんてあっという間に終わるので。

賃金176 固定残業制度が有効と判断される場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

47日目の栗坊トマト。この休日中に成長を加速させたようです!

今日は、プランナーにおける定額残業代の割増賃金該当性に関する裁判例を見てみましょう。

結婚式場運営会社A事件(東京高裁平成31年3月28日・労判1204号31頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、Y社との間の雇用契約に基づいて、未払賃金等512万1111円(残業代483万3379円、遅延損害金28万7732円)+遅延損害金+付加金の支払を求めた事案である。

原審は、法内残業代87万2095円、時間外割増賃金224万1433円+遅延損害金並びに155万1380円+遅延損害金の支払を求める限度でXの請求を認容したところ、X及びY社が、同判決を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、3万9565円+遅延損害金を支払え

2 Xのその余の請求を棄却する。

3 Xの本件控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 被用者が時間外労働等を立証した場合に時間外労働手当等が発生するかどうかと、定額残業代の約定として効力を有するかどうかとは、別の問題であって、使用者の労働時間管理の有無によって定額残業代の効力が左右されるものとはいえない

2 本件特約によれば、職能手当は、時間外・休日・深夜割増賃金として支給されるものであって、基本給と明確に区分されており、その割合賃金に適用される基礎賃金の1時間当たりの金額(残業単価)を具体的に算定することも可能であるから、明確性の要件に欠けることはないというべきである。

3 本件雇用契約書及び本件特約によれば、職能手当相当額と労働基準法所定の割増賃金との差額精算の合意は存在している上、支給が行われた場合に、その超過分について割増賃金が別途支払われることは労働基準法上当然に求められるから、差額の精算合意を定額残業代の定めの有効要件とする必要はない

4 職能手当が約87時間分の時間外労働等に相当することをもって、給与規程及び本件雇用契約書において明確に定額残業代と定められた職能手当につき、時間外労働等の対価ではなく、あるいはそれに加えて、通常の労働時間内の労務に対する対価の性質を有すると解釈する余地があるというには足りない。

5 Y社は、実際に行われた時間外労働等の時間に基づいて計算した割増賃金の額が、職能手当で定めた定額割増賃金の額に満たない月があったとして、Xに対し、その差額を請求する権利があることを前提に相殺の主張をするが、一般に、定額残業代に関する合意がされた場合についての当事者の合理的意思解釈としては、実際に行われた時間外労働等の時間に基づいて計算した割増賃金の額があらかじめ定められた定額割増賃金の額に満たない場合であっても、満額支払われると解するのが相当である。XとY社との間の本件雇用契約においても同様であって、差額を請求しない旨の合意があったと解するのが相当であるから、Y社の差額請求及びその存在を前提とする相殺の主張は認められない。

いつも言っていることですが、しっかり要件を満たしながら運用している限り、裁判所はちゃんと固定残業制度を認めてくれます。

是非、痛い目に合う前に、ちゃんと賃金制度を運用するようにしましょう。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介962 GACKTの勝ち方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

タイトルに偽りなし。

GACKTさんの勝ち方が書かれています。

この本を読んで、GACKTさんのような努力を続けることができれば成功します。

99%の人は途中で投げ出すと思いますが。

成功したい人は是非読んでください。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

何かを選択する時に、甘えはいらない。週に一度のトレーニングでも鍛えることはできるが、ポイントはそこじゃない。毎日継続するということが、精神の軸になる。『これだけやってんだから誰にも負けない』という自信になる。・・・嘘つきは信用できない。だから、自分に嘘をつかないためにも、一度決めたトレーニングは必ず毎日続ける。」(109頁)

トレーニングを継続している人なら、誰もが理解できる内容です。

途中で投げ出してしまう自分が嫌だから、どれだけ忙しくても、絶対に継続するのです。

忙しいのはみんな同じです。

忙しさを理由に途中で投げ出すような、そんな弱い自分になりたくないだけなのです。

仕事も勉強もトレーニングも、根っこはすべて同じであることを知っているのです。

途中で投げ出さず続けること。

ただそれだけです。

賃金175 賃金減額と将来請求の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

43日目の栗坊トマト。順調に大きくなっています!

今日は、賃金減額に関して、将来請求及び一定の賃金の支払いを受ける地位の確認請求が認められた裁判例を見てみましょう。

キムラフーズ事件(福岡地裁平成31年4月15日・労経速2385号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務するXが、Y社に対し、①平成29年5月支払分以降の月額賃金のうち、基本給について1万円、職務手当について5万円及び調整手当について1万円をそれぞれ減額されたことについて、上記賃金減額は労働契約法8条に違反し、また、Y社の給与決定に関する裁量権を逸脱したものであるから、無効であると主張して、(ア)月額賃金として基本給13万5000円、職務手当5万5000円及び調整手当8万0900円の支給を受ける労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、(イ)平成29年5月支払分から労働契約終了時までの間の差額賃金の支払を求め、(2)平成27年夏季賞与から平成29年年末賞与までの各賞与額を不当に減額されたことにより、本来支給されるべき賞与額との差額分の損害を受けたとして、又は精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償金の支払を求め、(3)Y社代表者及びY社従業員からのパワーハラスメントにより精神的苦痛を受けたとして、労働契約上の就業環境配慮義務違反による債務不履行責任若しくは民法709条、会社法350条及び民法715条による不法行為責任に基づく損害賠償金+遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Xが、Y社に対し、基本給として月額13万5000円、職務手当として月額5万5000円及び調整手当として月額8万0900円の支給を受ける労働契約上の地位にあることを確認する。

2 Y社は、Xに対し、平成29年5月からXとY社との間の労働契約が終了するまでの間、毎月10日限り7万円を支払え。

3 Y社は、Xに対し、20万円を支払え。

4 Y社は、Xに対し、50万円+遅延損害金を支払え。

5 Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 本件賃金減額は、Xの同意なくされたものであることが認められ、また、Y社の就業規則及び給与規程には、懲戒処分としての減給の定めがあるほかは、降格や減給についての規定はなく、本件賃金減額は懲戒処分としてなされたものではないから、本件賃金減額は、就業規則等に基づく処分や変更としてなされたものであるとも認められない。

2 本判決確定後の将来請求分については、本件賃金減額が2回目の賃金減額であり、前件訴訟における和解成立からわずか半年余り後に行われたものであることや、Y社代表者が、本件訴訟の尋問において、たとえXの給料を元に戻すという判決が出ても、また減額する旨供述していることを考慮すると、今後もこのような賃金減額を継続する蓋然性はあると認められるから、あらかじめその請求をする必要があり、適法であると認める

3 賞与の支給及び算定が使用者の査定等を含む裁量にゆだねられていても、使用者はその決定権限を公正に行使すべきであり、裁量権を濫用することは許されず、使用者が公正に決定権限を行使することに対する労働者の期待は法的に保護されるべきであるから、使用者が正当な理由なく査定その他の決定を怠り、又は裁量権を濫用して労働者に不利な査定その他の決定をしたときは、労働者の期待権を侵害するものとして不法行為が成立し、労働者は損害賠償請求ができるというべきである。

4 製造部門に異動後のXの勤務成績やY社に対する貢献度は他の従業員と比べて必ずしも芳しくなかったことが認められる。
しかし、他方で、Xが製造部門に配転されてからそれほど期間が経過していないことに加え、配転前の営業担当時期のXに特段の問題行動や失敗があったことはうかがわれず、前記認定のとおり、上記配転がY社の経営判断として行われたことを考慮すると、Xの賞与を査定するに当たって、配転先の業務における作業の速度や成果等の勤務成績を大きく考慮することは、査定における公平を失するといわざるを得ない。そして、Y社が賞与の減額要素として主張する事情のうち、Y社の業績が良くなかったという事情については、他の正社員についても共通の事情であること、Xの勤務成績についても、前記のとおり作業速度や成果の点において芳しくないとしても、XにY社やその従業員に大きな損害を与えるような事故や失敗があったことは認められないことなども考慮すると、他方で、Xの給与及び賞与等を併せた年収額が、本件賃金減額及び本件賞与減額後においてもなおY社における他の正社員の各年収額を上回っているというY社における従業員全体の賃金の実情があることを斟酌しても、本件賞与減額のうち、少なくとも、Xが平成26年以前に支給された賞与の最低額の2分の1を下回り、かつ平成27年から29年までの間の他の正社員の賞与支給率のうちの最低の支給率をも下回った平成28年夏季賞与以降の賞与の査定については、これを正当化する事由を見出しがたいというべきである。
・・・以上によれば、Y社は、平成28年夏季賞与から平成29年年末賞与までのXの賞与については、裁量権を濫用して、これを殊更に減額する不公正な査定を行ったことが認められ、これは、Y社が査定権限を公正に行使することに対するXの期待件を侵害したものとして不法行為が成立するというべきである。

上記判例のポイント2は参考になりますね。

通常、将来請求までは認められませんが、このような事情があれば、裁判所は認めてくれるようです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介961 売上を、減らそう。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

営業時間はわずか3時間半。

どんなに売れても100食限定。

だから飲食店でも残業ゼロ。

こんなお店を実現している経営者の本です。

売上至上主義からの脱却を考えるいい本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・これは、国が定めた『国民が適切に働ける条件』です。それなら、この基準内で、そもそも就業時間内に利益を出せない商品とか企画ってダメじゃないですか。基準を大幅に超えて、従業員が必死に働いて維持している商品やサービスは、たとえ多くの人に支持されて、たくさん売れたとしても、『誰かが犠牲になっている』という事実は消せません。就業時間内に利益が出せない事業なんてやめてしまえばいい、と思います。」(168頁)

これからますます労働時間を削減するように求められます。

月100時間も残業しないと成り立たないような仕事は、もはや存在を許されなくなってきます。

今なお、長時間労働によるトラブルが後を絶ちませんが、そろそろ本気で働き方を変えることが求められています。

そのためには短い時間で利益を上げるような仕事のしかたに変えていくことを考えるしか道はありません。

時間ばかりかかって、利益はほんの少し。こんな仕事からは手を引くという決断が求められます。

労働災害100 安全配慮義務違反による損害賠償請求と過失相殺(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

41日目の栗坊トマト。日に日に大きくなっています!

今日は、安全配慮義務違反による損害賠償請求について過失相殺が否定された裁判例を見てみましょう。

岐阜県厚生農業協同組合連合会事件(岐阜地裁平成31年4月19日・労経速2386号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、Y社の管理運営する病院に勤務していたXが自殺したことについて、Xの両親である原告らが、Xは、Y社の安全配慮義務違反により本件病院において過重な長時間労働を強いられたこと等によってうつ病エピソードを発病し、自殺を図って死亡したと主張して、Y社に対し、債務不履行による損害賠償請求権に基づき、それぞれ4547万6500円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は原告Aに対し、3591万9000円+遅延損害金を支払え

Y社は原告Bに対し、3591万9000円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xが勤務時間内に与えられた業務を終えることができず、慢性的に長時間の時間外労働をしていたことは、上司であるH課長が現認しており、しかも、Xにおける仕事の進め方に問題があることについても同様に認識していたのであるから、Xによる相談がなかったからといって、Y社における軽減措置を困難にしたものということはできない
また、労働者の長時間労働の解消は、第一次的には、業務の全体について把握し、管理している使用者において実現すべきものであるところ、本件において、H課長はXに対し、早く帰るように声を掛ける等したにとどまり、長時間労働を抜本的に解消するために、仕事の進め方についてDと協議をしたり、合理的な事務処理のための教示をしたりするなどした事実はうかがわれず(IやH課長において、納期の迫っているXの業務につき、協力をしたことは認められるものの、一時的なものにすぎず、長時間労働を抜本的に解消するための措置ということはできない。)あまつさえ、Xの長時間労働の時間を把握しようと努めた痕跡さえ認められない
・・・そうすると、Y社において、Xの長時間の時間外労働に対する配慮が著しく掛けている一方、Xが業務量について上司に相談等しなかったことがY社における配慮の妨げになったと認めることのできない本件においては、当事者間の公平の見地から、Xが業務量について上司に相談等しなかったことをXの過失と評価し、Y社の賠償額を減ずるのは相当ではない

2 Y社が主張するように、労働者が、自己の健康状態について最もよく認識し、健康管理を行うことのできる地位にあることは、一般論としては肯首できるものであるが、本件のように、使用者が労働者における慢性的な長時間労働を認識しながら、十分な措置を講じず、労働者の健康状態に対する配慮が何らなされていない場合には、労働者において医療機関を受診していないことをもって、直ちに自己の健康管理を怠った過失を認めるべきではなく、少なくとも、労働者において、医師から具体的な受診の必要性を指摘される等して、医療機関を受診する機会があったにもかかわらず、正当な理由なくこれを受診しなかったといえる場合に限り、過失として評価する余地があると解すべきである。
そして、本件において、Xが、医師から精神疾患に関する具体的な指摘を受けたことはなく、その他、Xにおいて医療機関を受診する機会があったといえる具体的事情が認められないことを踏まえると、Xにおいて、うつ病エピソードの発病前に、自ら精神科の病院を受診しなかったことを過失と評価すべきではない。

3 Y社において、Xが定期的な休暇を取得できるようにするための十分な配慮がなされていたとはいえない本件においては、Xが自ら休暇を取得するなどの健康管理措置をとらず、H課長らに対して積極的に業務の負担に関する相談をしなかったとしても、かかるXの対応をもって、Y社の損害賠償額を減額する理由とすることは相当ではない。

どの会社にも繁忙期があり、納期があり、にもかかわらず、人が足りません。

そろそろ本腰を入れて、働き方を変えていかなければ、このような事件はなくなりません。

労災発生時には、顧問弁護士に速やかに相談することが大切です。

本の紹介960 ぼくたちに、もうモノは必要ない。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

ミニマリストのメリットがたくさん書かれています。

私のように物欲0の人は、ミニマリストに簡単になれますね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ある水準以上に豊かになった人は『自分の価値』をモノを通して伝えようとする。だから『これは本当に自分が好きで持っているモノだろうか?』『モノを通して自分の価値を伝えたいためにも持っているモノだろうか?』と一度内省してみることはとても有効だ。他人から自分がどう見られているかは誰もが気になる。その目線のためだけに持つことで、自分が消耗してしまっているようなら手放すべきだ。」(111頁)

物欲は承認欲求を埋め合わせるために生じるのでしょうか?

どこから物欲というものが生まれるのかよくわかりません。

少なくとも私は、いい車を乗ったり、いい時計をして、他人からそれに対してすごいと言われたいという欲求が0です。

車は走ればなんでもいいですし、最近では時計はもうつけていません。

まあ、そんな感じですので、何かが「足りない」というストレスを感じることがありません。

それはモノに満たされているからではなく、モノを必要としていないからなのです。

同一労働同一賃金13 有給の病気休暇・休職制度に関する同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
37日目の栗坊トマト。成長期真っただ中です!

今日は、有給の病気休暇及び休職制度に関する相違が労働契約法20条に違反しないとされた裁判例を見ていきましょう。

日本郵便(休職)事件(東京高裁平成30年10月25日・労経速2386号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の期間雇用社員として雇用されていたXが、Y社が平成27年9月30日付けでしたXに対する雇止めが違法かつ無効であるとして、Y社に対し、雇用契約に基づき、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②平成27年10月から本判決確定の日までの賃金として毎月24日限り26万2565円+遅延損害金の支払、③平成28年から本判決確定の日までの臨時手当として毎年6月30日及び12月10日限り各9万0909円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、Xの請求をいずれも棄却し、Xが控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 病気休暇は、労働者の健康保持のため、私傷病によって勤務することができない場合に療養に専念させるための制度であり、正社員の病気休暇に関し、これを有給のものとしている趣旨は、正社員として継続して就労をしてきたことに対する評価の観点、今後も長期にわたって就労を続けることによる貢献を期待し、有為な人材の確保、定着を図るという観点、正社員の生活保障を図るという観点によるものと解することができ、一般職の職務の内容等について、前記において説示したところに照らしても、一定の合理的な理由があるものと認められる。これに対し、時給制契約社員については、期間を6か月以内と定めて雇用し、長期間継続した雇用が当然に想定されるものではなく、上記の継続して就労をしてきたことに対する評価の観点、有為な人材の確保、定着を図るという観点が直ちに当てはまるものとはいえない。また、社員の生活保障を図るという観点について、上記認定の事情から判断することは難しいものの、Y社においては、期間雇用社員の私傷病による欠務について、私傷病による欠務の届出があり、かつ診断書が提出された場合には、承認欠勤として処理されており、欠勤ではあるものの無断欠勤ではなく、問責の対象としない取扱いがされており、Xについても、これに従って手続がされている。そして、このような場合に、社会保険に加入している期間雇用社員については、一定の要件の下で傷病手当金を受給することができるため、著しい欠務状況でない限り、事実上は、ある程度の金銭的補てんのある療養が相当な期間にわたって可能な状態にあるという事情があるものと認められる。
以上によれば、Y社において、正社員について90日又は180日までの有給の病気休暇を付与し、時給制制約社員については10日の無休の病気休暇を認めるのみであることについて、その相違が、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情に照らして、不合理であると評価することができるとまではいえない

2 さらに、休職制度の有無についても、正社員に関しては、前記に説示したところと同様の理由により、有為な人材の確保、定着を図るという観点から制度を設けているものであり、合理性を有するものと解されるところ、時給制契約社員については、6か月の契約期間を定めて雇用され、長期間継続した雇用が当然に想定されるものではないのであり、休職制度を設けないことについては、不合理なこととはいえない
したがって、この点に関しても、その相違は、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情に照らして、不合理であると評価することができるとまではいえないというべきである。

病気休暇と休職制度に関する判断です。

この分野は判断が難しいので、顧問弁護士に相談しながら慎重に対応しましょう。

本の紹介959 自分のことは話すな(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

みんな自分の話を聞いてほしいですからねー 笑

まあ、聞いている側は、ほぼ興味がないのですけどね。

みんな、「へー、すごいですねー」って興味を持っているかのように演じるので必死です 笑

ビジネスの場では、いかに話すかよりもいかに聞くかのほうが100億倍大切です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・いずれの例も、『相手から一切、求められていない話』という共通点があります。『自分が話したいことだから話す』『一生懸命な自分をわかってほしい』などといった勝手な思いからくる雑談です。そんなことばかり話していると、大事な場面で選ばれる機会を失うことになります。このようなタイプの人たちは、自分の立場しか考えずに話をしているため、周囲の状況を見る余裕がない人、あるいは自己陶酔している傲慢な人と思われかねません。相手にストレスを感じさせているかもしれないといった気配りがほとんど感じられないことも非常に残念です。」(47~48頁)

話し方はその人の性格や人となりがいやでも出てしまいます。

いろんなタイプの人がいますが、中でも話が長い人は嫌われます(笑)

興味のない話を長々聞く側に対する想像力がないんだろうなと考えてしまうわけです。

仕事ができる人は、たいてい話が端的で、ポイントをおさえているため、とてもわかりやすいです。

その逆もまたしかり。

聞き手の時間を奪わないように、日ごろから端的に話をするくせをつけるといいですね。