本の紹介2103 仕事の辞め方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

放送作家鈴木おさむさんの本です。

帯には、「ワクワクしない仕事をダラダラ続けるほど、人生は長くない!」と書かれています。

同感です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

絶対に自分の中のDNAはメッセージを出してくれている。それが『思いつき』。小さなところで言うと『急に〇〇が食べたくなった』というのは、体がメッセージを出しているのです。つまり、ふとした思いつき、『〇〇って興味あるな~』『一度習ってみたいな~』なんて『思いつき』はDNAのメッセージかもしれない。だから結局『行動する人』が勝っていくんですよね。」(186頁)

もうこれは、肌感覚としても、おそらく正しいのだと思います。

いろんなことに挑戦し続けている人というのはとても魅力的です。

近くにいるだけでパワーをもらえる人というのは、だいたいこのタイプです。

世間体やら他人の評価なんて気にも留めていない、という感じです。

そんなことは自分の人生に何の影響もないことを知っているからです。

賃金278 覚醒剤所持及び使用の罪での有罪判決を理由に懲戒解雇された従業員への退職金不支給が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、覚醒剤所持及び使用の罪での有罪判決を理由に懲戒解雇された従業員への退職金不支給が有効とされた事案を見ていきましょう。

小田急電鉄事件(東京地裁令和5年12月19日・労経速2542号16頁)

【事案の概要】

本件は、令和4年7月7日付けでY社を懲戒解雇されたXが、Y社に対し、退職金及びこれに対する遅延損害金の支払を請求する事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件犯罪行為は、覚醒剤取締法41条の2第1項(所持)、同法41条の3第1項1号、同法19条(使用)により、いずれも10年以下の懲役に処すべきものとされる相当重い犯罪類型に該当する。直接の被害者は存在しないとはいえ、覚醒剤の薬理作用による心身への障害が犯罪等の異常行動を誘発すること、密売による収益が反社会的組織の活動を支えていること等の社会的害悪は、つとに知られているところである。
約5年にわたる使用歴を有するXの覚醒剤への依存性、親和性は看過し得ない水準にあったといえる。この間、Xは大野総合車両所の車両検査主任の立場にあって、管理職ではないとはいえ、首都圏の公共交通網の一翼を担うY社の安全運行を支える極めて重要な業務を現業職として直接担当していた。摂取から少なくとも数日は尿から覚醒剤が検出されるという調査結果等に照らせば、ほぼ毎週末覚醒剤を摂取していたXが、業務への具体的影響は不明であるものの、身体に覚醒剤を保有した状態で車両検査業務に従事していたことは明らかである。この事態を重く見たY社が、延べ758名に対し延べ21時間10分もの時間をかけて再発防止のための教育措置をとったことは相当であり、これを過大な措置だとするXの主張は失当である。
以上の社内的影響に加え、Y社は監督官庁に本件を報告しており、限られた範囲ではあるが外部的な影響も生じている。なお、車掌や運転士等の鉄道会社やバス会社の従業員の薬物犯罪が報道され、社会的反響を呼んだ例は珍しくないのであって、本件が報道等により社会に知られるには至っていないことは偶然の結果というほかなく、これをXに有利に斟酌すべき事情として重視することはできない。

2 以上によれば、本件犯罪行為は、Xの永年勤続の功労を抹消するほどの不信行為というほかなく、退職金の全部不支給は相当である。

私生活上の非違行為を理由とする退職金の不支給が相当であるとされた事案です。

私生活上の非違行為が争点となる事案では、いかに業務や社内秩序に悪影響があったのかを具体的に主張することが求められます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2102 わいたこら。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「しくじってもめっちゃ幸せ!」と書かれています。

楽天家の鏡です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人がチャンスをものにするときは、自分の力を超えた不思議な力が働いている気がしてならない。」(137頁)

人生は、だいたい「ガチャ」ですからね。

いくらがんばってもうまくいかないときもあるし、何もしていなくてもチャンスが舞い込んでくることもあります。

その瞬間、その出来事だけを見れば、どういう理由かわからないこともたくさんありますが、私たちにできることは、せいぜい、毎日精一杯生きるということくらいなものです。

出し惜しみせず、夜横になった瞬間に爆睡できるくらいに精一杯生きるしかありません。

有期労働契約125 女性従業員に不適切な言動を繰り返すこと等を理由とする雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、女性従業員に不適切な言動を繰り返すこと等を理由とする雇止めに関する裁判例を見ていきましょう。

ゲオストア事件(東京地裁令和5年6月14日・労判ジャーナル143号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期雇用契約を締結していたXが、Y社から上記有期雇用契約の更新の申込の拒絶(雇止め)をされたことから、Y社に対し、Xにおいて上記有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があり、当該雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとはいえず、労働契約法19条により、同一の労働条件で有期労働契約が更新されたものとみなされることを主張して、労働契約上の権利を有することの確認及び未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、令和2年11月9日、f氏がトイレ掃除をしているトイレのドアをノックし、トイレから出てきたf氏を追いかけて話しかけた上、わざわざf氏と話をするために再度来店し、f氏が会社のアシスタント社員(店長を補佐する役職)のh氏に立会を求めるなど、Xと話すことを嫌がっていることは明らかであったにもかかわらず、本店店舗から出ようとしたf氏にさらに話しかけており、上記行為は、従前からXの言動に不快感を抱いていたf氏に対し、恐怖や不快感を強く感じさせ、多大な精神的苦痛を与えるものであったといえ、その他にも、e氏やj氏などの女性従業員に対する不快感を与える行動が度々あったことや、Xとf氏及びe氏のシフトが重ならないように配慮していたにもかかわらず、Xが勤務終了後に、f氏が勤務している際に再度来店したり、Xが勤務日でない(シフトが入っていない)日にわざわざ本件店舗を訪れてf氏などに話かけていることなども併せ考慮すると、本件雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないとはいえない。

訴訟において、上記事実を立証できるように日頃から準備をしておく必要があります。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

本の紹介2101 劇場化社会#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは、「誰もが主役になれる時代で頭角を現す方法」です。

一芸に秀でることがいかに大切であるかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

タクシーが空を飛ぶ時代です。朝早く起きて、夜早く寝る毎日が正しい日常なのか-それすれもわからなくなってきました。会社を1社しか持っていない経営者が褒められる時代ではなくなってきたのです。とくに若い経営者なら、3社くらい持って当然でしょう。そのくらいの非常識な日常を送ってみませんか?そういう考え方を持っている人たちとつながってみませんか?」(194頁)

何を「正しい」と思い、何を「常識」と感じるかは人によって千差万別です。

安定した人生を望む人もいれば、エキサイティングな人生を望む人もいます。

正解などありません。

どう生きたって人生はあっという間に終わります。

セクハラ・パワハラ85 競輪選手の師匠に対するセクハラ・パワハラに基づく慰謝料等請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、競輪選手の師匠に対するセクハラ・パワハラに基づく慰謝料等請求について見ていきましょう。

損害賠償請求(セクハラ・パワハラ)事件(高松地裁令和5年9月29日・労判ジャーナル142号28頁)

【事案の概要】

本件は、競輪選手であるXが、同じく競輪選手であり、Xの師匠であるBからセクハラ又はパワハラに当たる言動を受け、これらによって、Xが精神的苦痛を受けたほか、レースの欠場や成績低下を余儀なくされた等と主張して、Bに対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料、逸失利益等合計約460万円等を請求した事案である。

【裁判所の判断】

BはXに対し、慰謝料10万円を支払え。

【判例のポイント】

1 Bの言動は、Aの成績が低迷しつつあることなどを指摘するに際し、交際相手との関係について直接的に性的表現を用いて叱責するものであり、当時20歳という若年の未婚女性であったXに対して強い不快感と性的羞恥心を与えるものである上、Xの師匠として大きい影響力を有するにもかかわらず、Xの成績に関連付けて交際相手との性交渉のあり方に干渉し、Xの性的自己決定権を害するもので、その内容は悪質であり、社会的見地から見て、不相当とされる程度に至っていたものと認めるべきであり、違法性が認められるところ、Bの言動は、直接的な性的表現を用いてXの練習への姿勢や成績低下を叱責するものであるが、一方で、反復継続してなされたものとまでは認められず、身体的接触等を伴うものではなかったことを踏まえると、これによりXが被った精神的損害に対する慰謝料は10万円と認めることが相当である。

2 違法性が認められるBの言動は上記のみであることに加え、Xが受診していた心療内科の医師においても、休職や通院の原因となったXの適応障害には複合的な要因が考えられるとの意見も述べるものであるから、Bの言動と適応障害によるXのレースの欠場や成績低下との間の相当因果関係を認めることはできない

レースの欠場や成績低下との間の相当因果関係が否定されたため、上記判例のポイント1記載の慰謝料額にとどまっています。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2100 凡人起業#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

特別な能力がなくても、日々、人よりも多くの努力を続けられれば、一定の成果を出すことはできます。

途中で投げ出さないことがなによりも大切なのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

スティーブ・ジョブズでさえも、アイデアとは降ってくるものではなく過去から生まれてくるものだとスピーチしています。『未来に先回りして点と点をつなげることはできない。きみたちにできるのは過去を振り返って点と点をつなげることだけだ。だから点と点が、いつかなんらかのかたちでつながると信じなければならない。自分の根性、運命、人生、カルマ、なんでもいいから、とにかく信じるのです。」(208頁)

一見、遠回りに見えることも、いつか過去を振り返ったときにその時の経験が「点」となり、どのように作用するかはわかりません。

自分がやりたいことだけに固執するのではなく、与えられた環境、与えられた条件の下で一生懸命に目の前のことをやってみる。

これこそがいつか来る「connecting the dots」の「dot」となるのです。

「配属ガチャ」なんて言っているうちは、この感覚、この発想にはたどり着けません。

配転・出向・転籍56 医師の配転命令先における義務不存在仮処分等の申立て(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、医師の配転命令先における義務不存在仮処分等の申立てに関する裁判例を見ていきましょう。

市立東大阪医療センター事件(大阪地裁令和5年8月31日・労判ジャーナル141号16頁)

【事案の概要】

基本事件は、Y社によって運営されているaセンターにおいて勤務していた医師であるXが、Y社によるbセンターへの本件配転命令が無効であると主張して、①bセンターにおいて勤務する労働契約上の義務がないことを仮に定めるとともに、②aセンターにおける就労請求権を前提に、aセンターにおける就労を妨害しないことを命じるよう求める旨の申立てをした事案である。
本件は、Y社が、本件申立てを認容した原決定を不服として、原決定の取消し及び本件申立ての却下を求める保全異議を申し立てた事案である。

【裁判所の判断】

債権者と債務者との間の大阪地方裁判所令和4年(ヨ)第10007号地位保全等仮処分申立事件について、同裁判所が令和4年11月10日にした仮処分決定を認可する。

【判例のポイント】

1 上記中期計画には、医療センターとして担うべき役割のうち救急医療について、「a救命救急センターとの連携を強化することで、多数の二次・三次救急患者を受け入れ、重症度、緊急度に応じた適切な医療を提供する体制の確保を図る」旨の記載があるにとどまり、救急医療に携わる医師の異動に係る記載はないし、同じ中期計画の人材の確保と育成に係る箇所や人員配置に係る箇所においても、医師の異動をうかがわせる記載は見当たらない。
以上によれば、Y社の指摘する中期計画の記載は、XとY社の間の勤務内容や勤務場所の合意に係る原決定の認定を左右するものとはいえない。

2 Y社は、複数の看護師がXによるパワーハラスメントや倫理的に不適切な発言をした旨の相談や報告をしていること自体、本件配転命令に係る業務上の必要性を基礎付ける重要な要素であり、原決定はその評価を誤った旨主張する。
しかし、上記相談及び報告に係る疎明資料は、いずれも聴取結果をまとめたメモであるところ、被聴取者等の氏名がマスキングされており、その他に信用性を補う事情も認められないことからすると、これらに依拠してXが問題のある言動をしていたとか、配転の必要性を基礎付けるに足る複数の相談等の疎明があったとはいえない

パワハラ等の事案において、報復を避ける目的で、陳述書や聴取書等で氏名をマスキングした上で証拠として提出するケースがありますが、上記判例のポイント2のように信用性を否定されてしまいますので注意しましょう。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介2099 頭のいい奴のマネをしろ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

日本マクドナルド創業者の実体験に基づく「マネ」の重要性が説かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

有力者に会いたいと思ったら、”勇気”を出して、直接たずねてみることである。アポイントメントを取らない限り、十中八、九まで玄関払いを食うかもしれないが、1パーセントでも可能性があれば、出かけてみるべきだ。・・・有力者のコネを求める方法を質問してくるぐらいなら、堂々と胸を張って直接ぶつかるだけの勇気を養ってほしいものだ。」(186頁)

私、こういうの全然平気です。

断られても、「ですよね~お忙しいですもんね~」と言えば済む話です。

最初からダメ元ですから、断られたところで落ち込むような話ではありません。

もじもじしているうちに人生は終わってしまいます。

どんどん連絡してお話を聞きに行くべし。

解雇405 普通解雇及び懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、普通解雇及び懲戒解雇の有効性が争点となった事案を見ていきましょう。

ネットスパイス事件(大阪地裁令和5年8月24日・労判ジャーナル141号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結していたXが、Y社に対し、XがY社からされた令和3年1月14日付けでの解雇が無効である旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求をするとともに、労働契約に基づき、本件解雇の翌月から毎月の賃金支払日である10日限り41万円の賃金+遅延損害金の支払請求をする事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件解雇の際に交付した労働契約終了通知書には、解雇理由として、アドテクノロジー製品開発の進捗が停滞しており、開発体制を再検討する旨が記載されているのみであり、Xの能力不足や経歴詐称を指摘する文言はないし、懲戒解雇に係る就業規則の条文の摘示もない
また、本件解雇の約2週間後に交付された解雇理由証明書には、「解雇理由は、新製品開発の停滞により会社業績が悪化し、人員削減が必要になったため」と冒頭に記載した上で、その後の箇所で具体的な理由として、令和2年9月期において赤字決算となり、翌年9月期決算では会社業績がさらに大幅に悪化することが確実な状況であること、経費の大半が人件費であることを指摘した上で、Xが人員削減の対象となった理由として、本件製品専任であったこととプログラミングの基礎の習得が十分でないことが記載されており、以上の記載内容は本件解雇が整理解雇であることを強くうかがわせるものであるといえる。
以上のとおり、本件解雇に伴ってY社からXに対して交付された文書からは、Xに対して企業秩序違反を指摘する記載が全くなく、かえって、整理解雇であることを強くうかがわせる記載があることからすると、本件解雇は普通解雇と解するほかなく、懲戒解雇の意思表示を含むものとは認められない

2 Xの行った作業からプログラマーとしての能力が欠如しているとは認められず、Xに対して業務上の注意及び指導がされていたともいえないから、本件解雇は普通解雇として客観的合理的理由があり、社会通念上相当であるとはいえない。

普通解雇と懲戒解雇は、「解雇」という点では共通していますが、法的性質が異なるため、解雇の意思表示をする際は、どちらの解雇をするのかを意識する必要があります。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。