本の紹介881 売れないものを売る方法?そんなものがほんとにあるなら教えてください!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
売れないものを売る方法? そんなものがほんとにあるなら教えてください! (SB新書)

マーケティング、ブランディングの本です。

具体例がたくさん載っているので、とてもわかりやすいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

本気になってトライすると、すぐに成功しなかったとしても、現場に何らかの『熱』が生まれていきます。現場に『熱』があるかどうかは、商品を売るとき、机上の『マーケティング戦略』よりもはるかに重要なものです。世界を変える発明も発見も、大抵はたった1人の『熱』から生まれます。・・・売り手に『熱』がなければ、人は買いたい気持ちになんてなりません。」(202~203頁)

そのとおり。

誰から買いたいかと問われれば、自分の仕事に対する情熱がある人から買いたいです。

仕事を惰性でやっている人から誰が買いたいでしょうか。

仕事を好きか嫌いかを判断する1つの目安が、「ため息」と「愚痴」の多さです。

好きなことをやっているときにため息をつく人がいるでしょうか。愚痴を言う人がいるでしょうか。

ため息ばかりついている人と誰がお付き合いしたいと思うでしょうか。

こういう人は、自分がため息の多さになかなか気づきませんし、周りの人もわざわざ指摘することもないため、自分がどうして売れないのか気づかないのです。

不景気のせいにしたくなる気持ちはわからないでもありませんが、実際は景気が原因ではありません。

原因は常に自分自身にあります。

有期労働契約86 育休後の有期雇用契約への変更、その後の雇止めは許されるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、育児休業後の有期雇用契約への変更、その後の雇止め等が無効とされた裁判例を見てみましょう。

フードシステム事件(東京地裁平成30年7月5日・労経速2362号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に期間の定めなく雇用され、事務統括という役職にあったXが、自身の妊娠、出産を契機として、Y社の取締役であるC及びY社の従業員から、意に反する降格や退職強要等を受けた上、有期雇用契約への転換を強いられ、最終的に解雇されたところ、上記降格、有期雇用契約への転換及び解雇がいずれも無効であるとして、主位的請求として、Y社に対し、事務統括としての雇用契約上の権利を有する地位にあること及び25日間の年次有給休暇請求権を有することの確認、平成28年10月から本判決確定まで、別紙1記載の金員の支払を求めるとともに、解雇後の月例賃金、事務統括手当月額1万円及び賞与として毎年7月に20万円、毎年12月に40万円の支払+遅延損害金の支払を求めるとともに、上記解雇等がXに対する雇用契約上の就労環境整備義務違反又は不法行為に当たるとして、Y社らに対し、民法415条及び民法709条等に基づき、連帯して、解雇時までの未払事務統括手当相当額合計18万5000円、未払賞与相当額合計180万円及び慰謝料300万円の合計498万5000円の支払+遅延損害金の支払を求め、さらに、期間の定めのない雇用契約であることが否定された場合の予備的請求として、有期雇用契約に基づき、Y社に対し、有期雇用契約上の権利を有する地位、年次有給休暇日数の確認、平成28年10月から本判決確定まで、別紙2記載のとおりの雇止め以降の賃金の支払+遅延損害金の支払を求めるとともに、主位的請求と同様に、上記雇止め等が債務不履行又は不法行為に当たるとして、Y社らに対し、民法415条又は709条等に基づき、連帯して、慰謝料300万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xが、Y社に対し、事務統括たる期間の定めのない雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

Y社は、Xに対し、本件解雇以降の月例賃金(月額21万2286円)及び事務統括手当(月額1万円)の支払、並びに、不法行為に基づく損害賠償としてイ社yろう50万円等を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは雇用形態または雇用契約上の地位の確認を求める訴えを提起しているものの、この点が確定されたとしても、年次有給休暇の肯否及び日数について確定するためには、Xの継続勤務年数がY社とXとの間の雇用契約に引き継がれたかという点についても判断する必要があるから、雇用契約上の地位とは別に、Xの年次有給休暇請求権の有無を確定して紛争を抜本的に解決するためには、同請求権を直接確認の対象としてその存否を既判力をもって確定することが有効かつ適切というべきである。

2 労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、当該合意は、もともと所定労働時間の短縮申出という使用者の利益とは必ずしも一致しない場面においてされる労働者と使用者の合意であり、かつ、労働者は自らの意思決定の基礎となる情報を収集するの応力にも限界があることに照らせば、当該合意の成立及び有効性についての判断は慎重にされるべきである。そうすると、上記短縮申出に際してされた労働者に不利益な内容を含む使用者と労働者の合意が有効に成立したというためには、当該合意により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者が当該合意をするに至った経緯及びその態様、当該合意に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等を総合考慮し、当該合意が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要であるというべきである。

3 Xが、Xに対し、第1子出産後の平成26年4月に復職する際、時短勤務を希望したことについて、実際には嘱託社員のままで時短勤務が可能であったものであり、育児休業法23条に従い、嘱託勤務のままで所定労働時間の短縮措置をとるべきであったにもかかわらず、パート契約でなければ時短勤務はできない旨の説明をした上で、Xの真に自由な意思に基づかないで、嘱託社員からパート社員へ雇用形態を変更する旨のパートタイム契約を締結させ、事務統括から事実上降格したことは、同法23条の2の禁止する不利益取扱いに当たり、不利益の内容や違法性の程度等に照らし、Xに対する不法行為を構成する。

4 次に、Cが、Xの第2子妊娠に際し、D課長を通じて、Xの産休、育休取得を認めない旨を伝えたことに加え、Xは引き続きY社において就労を希望しており、その希望に反することを知りながら、平成27年3月30日、多くの従業員が出席し、Xも議事録係として出席した定例会において、Xが同年5月20日をもって退職する旨発表したことはCにおいて、第1子出産後の復職の際にパートタイム契約に変更しなければ時短措置を講じることができないとの態度をとり、更に第2子についての産休、育休取得を認めない態度を示していたこと等の事情を総合すると、Xに対して退職を強要する意図をもってしたものであると認められるから、産前産後の就業禁止を定める労基法65条に違反するとともに、妊娠出産に関する事由による不利益取扱いの禁止を定める男女雇用機会均等法9条3項にも違反する違法な行為であり、不利益の内容や違法性の程度等に照らし、Xに対する不法行為を構成する

このような事件では、判決により支払を命じられた金額よりも、レピュテーションの問題の方がはるかに大きなダメージがあります。

適切に労務管理を行うことは、今後ますます重要性を増してくることは言うまでもありません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介880 自分マーケティング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
自分マーケティング―― 一点突破で「その他大勢」から抜け出す (祥伝社新書)

まずは自分が単なる「労働力」ではなく「商品」と捉えるところからマーケティングは始まります。

そして、自分の商品価値を高めるという意識を持ち、日々、努力を続ける。

それ以外に僕たち凡人が生き残る方法はありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

彼が幼い頃、父親に質問しました。『父さん、野球でヒットを打つにはどうしたらいいの?』すると父親は、こう答えます。『簡単なことだよ。人がいないところに打てばいいのさ』シンプルだけど真理を衝いた答えです。あなたが自分という商品を売り込む時も同じです。」(58頁)

わかりやすい例えですね。

仕事においては、まずは、自分の商品価値、特徴を正確に把握することが肝心です。

マーケティングも大切ですが、価値がないものを売ろうとしてもうまくいきません。

商品価値を高めることがすべてであり、王道です。

だからこそ、毎日毎日、こつこつ価値を高めるための努力を続けるのです。

もう答えは出ているのです。やることも決まっているのです。

あとはやるかやらないか。やり続けるか途中で投げ出すか。

それだけの話。

有期労働契約85 定年後再雇用について労使協定に定める基準を充足しないことを理由とする雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後再雇用について労使協定に定める基準を充足しないことを理由とした雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

エボニック・ジャパン事件(東京地裁平成30年6月12日・労経速2362号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の正社員であるXが、平成27年3月31日付けで60歳の定年により退職し、雇用期間を1年間とする有期雇用契約により再雇用された後、「定年退職後の再雇用制度対象者の基準に関する労使協定」所定の再雇用制度の対象となる物の基準を充足しないことを理由として、平成28年4月1日以降は同契約が更新されず、再雇用されなかったことについて、実際には同基準を充足していたことなどから、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で同契約が更新されたとみなされること、平成27年分及び平成28年分の業績賞与の査定等に誤りがあることなどを主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇止め以降の未払基本給(バックペイ)並びに前期業績賞与の未払分の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社においても、就業規則16条2項により、継続雇用制度としての定年退職後の再雇用制度が設けられ、平成24年改正法による改正前の高年法9条2項に沿って、継続雇用制度の対象者を限定するための本件労使協定が平成18年4月25日に締結されていた。少なくとも平成24年改正法の施行前については、Y社における60歳定年後の再雇用制度が単一のものであったことは明らかである。
そして、平成24年改正法の施行にあわせ、就業規則16条2項については、特別支給年金年齢到達前の再雇用契約について、本件再雇用基準の適用を制限する趣旨の改正がなされたものの、本件労使協定については、平成24年改正法の施行前後において変更されていないのであるから、本件労使協定は、上記改正後の就業規則16条2項の基準に達しない部分を除いて、特別支給年齢到達前の再雇用契約に対しても効力を有するものと解される(労働契約法12条、13条)。
以上によれば、Y社の正社員として勤務した後に平成27年3月31日に定年退職し、本件再雇用契約を締結したXについては、同契約が65歳まで継続すると期待することについて、就業規則16条2項及び本件労使協定の趣旨に基づく合理的な理由があるものと認められ、CGMも、本件労使協定1条について、本件再雇用基準に該当する限りにおいては必ず再雇用するという趣旨の規定であると述べている。そして、本件再雇用契約の終期である平成28年3月31日の時点において、Xは、本件人事考課基準を含む本件再雇用基準に含まれる全ての要素を充足していたから、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないものといえ、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で本件再雇用契約が更新されたものと認められる

2 高年法それ自体が私法的効力を有していないとしても、高年法の趣旨に沿って設けられた就業規則16条2項及ぶ本件労使協定が私法的効力を有することは明らかであり、これらの解釈に当たり高年法の趣旨が参照されることに支障があるとはいえない。また、労働契約法19条は適用対象となる有期雇用契約の類型等を特に限定しておらず、他の同種の従業員全員が有期雇用であるとか、定年後の再雇用であるといった理由により、その適用自体が否定されるものではないから、同②の指摘は失当である。

3 高年法9条1項は、高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保することを目的としているのであり、平成24年改正法は、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みを廃止したうえで、同法の施行の際、同法による改正前の9条2項に基づく措置を実施している事業主のみを対象として本件経過措置を設けたに過ぎない。また、本件無期雇用契約の下でのXの基本給は月額83万3000円であったところ、本件再雇用契約の下でのXの基本給(月額50万円)は、その約6割に減額されていたものであるし、上記において説示したとおり、Xは、本件人事考課基準を充足していた。さらに、年収280万円という金額は、本件労使協定が一般的に定めた定年後再雇用における賃金の最低水準に過ぎないところ、かかる最低水準を上回る労働条件が本件再雇用契約において定められていたのであるから、労働基準法19条2号の要件を充足する以上は、本件再雇用契約の内容である労働条件と同一の労働条件で同契約が更新されるという効果が生じることは否定し得ないものである。

継続雇用制度の運用については、労働人口の減少、高齢化に伴い、ますます重要度が高まってきます。

適切な運用をしていかないと、訴訟リスクが高まりますのでご注意ください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介879 余計なことはやめなさい!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
余計なことはやめなさい!: ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方 (単行本)

この本で著者が言いたいことは、まさにタイトルそのまんまです。

余計なこと、無駄なことをやめるとうまくいくよ、ということです。

そのとおりです。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『余計なことをやめる』ためには、『何が余計か』を見極める必要があります。そのためにはまず、『余計じゃないこと』を特定する必要があります。余計じゃないこと。つまり、本質であり重要なこと。要は、あなたにとって、何が本質なのかを見つける必要があるのです。」(152~153頁)

言うは易しですが、やるしかありません。

あれもこれもやっている程、人生は長くないですし、いろんなことに手を出せば出すほどすべてが薄まってしまいます。

仕事を増やすこと、広げることは意外と楽なのです。

むしろいたずらに広げないことを意識することのほうが大切です。

意識しないとすぐに広がってしまうからです。

解雇291 教員の教育的指導という名の体罰は許されるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、教員の体罰等を理由とする懲戒免職処分取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

宮崎県・宮崎県教育委員会事件(福岡高裁宮崎支部平成30年6月29日・労判ジャーナル81号44頁)

【事案の概要】

本件は、宮崎県教育委員会が、本件高校の元教員Xに対し、Xが顧問を務めていた本件柔道部の生徒に対する体罰等を理由として、地方公務員法29条1項1号、3号により、懲戒処分として免職する旨の本件処分を行ったため、Xが本件処分は裁量権を逸脱、濫用したものであるなどと主張して、県教委に対し、本件処分の取消しを求めたところ、元判決がXの請求を棄却したため、Xが原判決を不服として本件控訴を提起した事案である。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xが行った行為は、本件柔道部の複数の部員に対し、長期間にわたり、その都度、複数回、平手で叩いたり、足で蹴ったりする激しい暴行を加えたというものであり、Xのこれらの行為は、その態様や程度等に鑑みると、指導と呼べるようなものではなく、単に部員に対して恐怖心を植え付けるものであり、これらの行為が15歳から18歳までの女子に対して向けられたものであることをも併せ考えると、Xの上記体罰は、部員に対し、身体的苦痛のみならず、極めて深刻な精神的苦痛を与えるものであったといわざるを得ず、著しく悪質で、重大な結果を招くものであったというべきであり、Xは、教職員として、生徒を指導し教育する立場にありながら、その生徒に対して、長期間にわたり、繰り返し、極めて悪質で、かつ、重大な結果をもたらす行為に及んでいることなどからすると、県教委がXに対して懲戒処分のうち免職を選択して本件処分を行ったことは、社会観念上著しく妥当を欠くとはいえず、裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したものということはできない。

昔は公然と行われていたこのような「指導」は、今の時代はもはや指導とは評価されません。

自分が学生時代に受けた指導を、現在、指導者として行うことは許されません。

「自分たちのときはこのくらい当たり前だった」という認識を取り除くことが求められます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介878 メモの魔力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

SHOWROOMの前田社長の本です。

タイトルのとおり、メモをとりまくることを薦めています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生は『時間をどう使ったか』の結果でしかありません。ならば『時間をどう使うのか』というところで、自分の人生の勝算につながる選択をすべきです。すべては、これからのあなたの選択にかかっているし、その選択の前提となる人生の軸を自己分析によって得ていることは、大変な強みになります。」(194~195頁)

人生は、毎日、小さな選択の連続です。

これまでの小さな選択の集積が今の自分を作っています。

日々の選択の基準が、自分の人生の勝算につながっているかどうかがすべてです。

過去へは戻れません。

人生を変えたければ、たった今から日々の選択を変える以外に方法はありません。

セクハラ・パワハラ47 パワハラによる精神疾患発症と解雇制限の適用の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上司の暴行等に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

共立メンテナンス事件(東京地裁平成30年7月30日・労判ジャーナル81号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していた元従業員Xが、適応障害に罹患し、その後休職となり、休職期間満了により自動退職とされたところ、Xが、同適応障害は、上司等から継続的にパワーハラスメントを受け、かつ、上司からも勤務中に暴行を加えられたことによるものであり、業務上の傷病であるから労基法19条1項により同自動退職は無効であると主張して労働契約上の地位確認を求めるとともに、上司の上記暴行につき、上司、Y社に対して、連帯して200万円の損害賠償等の支払、さらに、前記の上司等による継続的なパワハラに加えて、Y社から一方的に年俸額を減額され、休職後には、Y社がXの標準報酬月額を不当に減額して届け出たことが原因で健康保険組合から受領する傷病手当金を不当に減額されたなどと主張して、Y社に対し、民法709条に基づき562万円の損害賠償等の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

上司の暴行に基づく損害賠償請求は一部認容(20万円)

その余は請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの頭部打撲、頸椎捻挫の程度は、経過観察7日間を要する程度に止まっている上、上司の行為態様としても、その暴行態様が強度なものであったとまでは言い難いことや、上司の暴行行為としては、本件事件時の1日のみに止まっていることからすると、かかる上司の暴行が、客観的にみて、それ単体で精神障害を発病するほどの強度の心理的負荷をもたらす程度のものと認めることには、躊躇を覚えざるを得ず、そして、Xが、東京臨海病院のみならず本件事件当日に受診した木場病院でも、医師に対し錯乱状態や不眠症といった症状を訴えていることからすると、Xに発病した適応障害が業務上の傷病に当たると認めることはできず、本件自動退職が労基法19条1項により効力を生じないとするXの主張は、その前提を欠くものであるから、Xは、休職期間満了によりY社を退職したと認められる。

2 Y社がXについての標準報酬月額の変更要件に関する解釈を誤ってその変更の届出を行った結果、Xの傷病手当金の支給額の減額がされたと認められるが、その後、Xからの健康保険被保険者資格確認請求手続を経て、Xの標準報酬月額は是正され、傷病手当金の追加支給がされて、その経済的損失は回復されているもので、Y社が故意に事実に反する内容の届出をしたものではないことに鑑みると、この点に関して、Xに慰謝料請求を認めるべき精神的損害が発生したと認めることはできないというべきである。

上記判例のポイント1のように、労基法19条1項の適用を巡って、精神疾患とその原因行為との間に相当因果関係が認められるかどうかが争われることがあります。

医療記録等をしっかり確認をしながら判断をする必要があります。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介877 考えたら負け(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
考えたら負け 今すぐ行動できる堀江貴文150の金言 (宝島社新書)

タイトル通り、堀江さんはいつも「行動せよ」と言い続け、自らも動きまくっています。

この本はこれまで本等の総まとめですが、とてもいい本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕には所有欲もほとんどない。・・・でも、実に多くの人が所有欲に囚われているように僕には思える。まず、いったん所有欲に縛られると、『あれがほしい』『これを手に入れたい』と所有物のために働くようになり、本当に自分がやりたいことに集中できなくなる。また、所有物が価値を判断する基準となるため、自分が持っていないものを持つ人を妬んだり、持っているものを失うことを恐れたりと、心がまったく休まることがない。それはやがて心を欲望まみれにし、パフォーマンスを確実に下げていくだろう。所有欲ほどムダなものはないのだ。」(123頁)

私も物欲、所有欲がほとんどありません。

何かを買いたいということがお金を稼ぐ動機にならないわけです。

物に対する執着がないので、こだわりというこだわりがありません。

そういうのは面倒くさいし、どうでもいいと思っているのです。

できるだけモノを持たずに身軽なまま生きていきたいです。

解雇290 教諭の未成年者との性交渉を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、元教諭の未成年者との性交渉等を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人日本体育大学事件(東京地裁平成30年6月19日・労判ジャーナル81号48頁)

【事案の概要】

本件は、平成25年4月1日、Y社が、期間1年の常勤講師として雇用し、その期間満了後の平成26年4月1日、期間の定めのない専任教諭として雇用した元教諭Xを、未成年者との性交渉をもつ行為等、Y社との間の信頼関係を破壊する事項があったとして平成27年3月31日限り、Xを解雇したため、Xが、Y社に対し、上記解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものであり、権利を濫用したものとして無効であると主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、上記解雇の翌月である平成27年4月から本判決確定の日まで弁済期である毎月20日限り賃金1か月約38万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xには、Y社から雇用されるに先立ち、現職の教員であったのに、街中でたまたま見かけた約20歳年下の未成年の女性に声を掛け、その3日後には同女性と性交渉を持つに至ったという、Y社がその教員としての適性を疑ってしかるべき行為があり、その後、そのような事実がY社の知るところとなり、本事件は、報道機関により広く報道され、インターネット上の掲示板においては、本事件に関してXの実名も掲載されており、Xは、Y社に雇用されるに当たって提出した本件志望書中において、Y社がXの採否を判断するに当たり関心を持ってしかるべきW高校の退職事由につき、解雇されたとの事実を隠したのみならず、自発的な辞職であったと積極的な偽りを故意に記載し、その後の別件訴訟の結果等について、真実に反する自己に有利な内容虚偽の説明をしたものであり、Y社はこれらの事情を踏まえてXを解雇したものであるから、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠くものとはいえず、社会通念上相当であると認められないものともいえないのであって、権利を濫用したものとして無効であると解することはできない。

特に異論のない結果ではないでしょうか。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。