本の紹介849 「3か月」の使い方で人生は変わる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
「3か月」の使い方で人生は変わる Googleで学び、シェア№1クラウド会計ソフトfreeeを生み出した「3か月ルール」

freeeの代表取締役の方の本です。

タイトル通り、「3か月」を1区切りの期間として1つの目標に向かって取り組むことを勧めています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

細部でつまずかない。探究心は大切だけれど、3か月など一定期間で成果を出すことにこだわるなら、細部に入り込みすぎないことも重要だ。・・・たとえば、数学も『1ってどういう意味?そもそも1って何?』と考え始めると大変だ。最初は『1+1=2』ということをまずは受け入れて、学ぶ。いわば、先人の力を受け入れて、利用できるものは利用する。」(178頁)

神は細部に宿るとはいうものの、それは最後の詰めの話。

最初から細部にこだわるとスピードが落ちるのは当然のことです。

要領よく力を抜くところは力を抜いて、どんどん先人の真似をすればいいのです。

1から何かをつくるなんてことは日常生活においてほとんどありません。

さささっと8割まで持っていき、そこからの2割については「神は細部に宿る」理論で詰めていく。

このようなイメージでどんどん形にしていくのがいいのではないでしょうか。

セクハラ・パワハラ43 退職勧奨のパワハラ該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パワハラによる適応障害発症と休職期間満了後の退職の可否に関する裁判例を見てみましょう。

公益財団法人周南市医療公社事件(山口地裁周南支部平成30年5月28日・労判ジャーナル78号22頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社との間で雇用契約を締結し、Y社の事務局内で勤務していたところ、Y社の代表理事であるA、Y社の理事兼事務局長であるB、Y社の経営アドバイザーであったC、Y社の事務部総務課課長補佐であったD及びY社の事務部総務課主任であるEから、平成25年3月22日から平成27年1月14日まで、パワーハラスメント行為を受けたことにより、適応障害に罹患して休職するに至り、給料、期末手当及び勤勉手当を減額されて、その後、休職期間満了により退職扱いされたとして、(1)Y社に対しては、①休職期間満了により退職扱いされたことについて、これが無効であるとして労働契約上の地位の確認、②休職後の民法536条2項に基づく給料、期末手当及び勤勉手当の合計82万2161円+遅延損害金の支払い、③退職扱い後の民法536条2項に基づく給料(月額28万5762円)、6月期末手当、勤勉手当(年額55万6337円)及び12月期末手当、勤勉手当(年額60万8090円)+遅延損害金の支払い、④Y社自身の不法行為による民法709条、Aらの不法行為による民法715条又はXとの雇用契約の債務不履行に基づき、損害賠償金1134万9023円+遅延損害金について、Aらとの連帯支払いを求めるとともに、(2)Aらに対しては、⑤Aらの共同不法行為による民法709条、719条に基づき、損害賠償金1134万9023円+遅延損害金について、Y社との連帯支払いをそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 XがY社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
 Y社は、Xに対し、82万2161円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、Xに対し、平成27年2月から本判決確定の日まで、毎月21日限り28万5762円、毎年6月30日限り55万6337円、毎年12月10日限り金60万8090円+遅延損害金を支払え。
 Y社、A及びBは、Xに対し、連帯して、574万9023円(うち300万円についてはCと連帯して、うち200万円についてはDと連帯して、うち100万円についてはEと連帯して)+遅延損害金を支払え。
 Cは、Xに対し、Y社、A及びBと連帯して、300万円+遅延損害金を支払え。
 Dは、Xに対し、Y社、A及びBと連帯して、200万円+遅延損害金を支払え。
 Eは、Xに対し、Y社、A及びBと連帯して、100万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Bは、本件退職勧奨に際し、Xに対し、「自分の生かせるところへ行ったらどうかね」「今までどおりというふうにはいかないから場所を出てもらうようになる」「会議室もないし、ここのところに場所がないから。そういうところで仕事やってもらうし」「あなたの人件費も浮くんだから」「出ていかないというからじゃね、それに見合った仕事に」「仕事をみつけなさいよちゅうて」「自分で探してこいって」「まともな場所はここしかないからじゃね、あとは部屋と呼べるようなところはないから、今度はここが出たら、もうどっか空いてるスペースに行ってもらう」「ここでお前は嫌われている。誰も一緒に仕事をしたくない。他の仕事を探せ」「エッジにおるんよ」「廊下で作るわけにはいかんじゃろうがね、パソコンやら。だからそういう仕事はできなくなる」などと発言した。
退職勧奨に際して、労働者の自発的な退職意思を形成する本来の目的実現を超えて、当該労働者に対して、不当な心理的圧力を加えたり、又は、その名誉感情を不当に害するような言辞を用いたりした場合には、違法なものとなるというべきである。
これを本件についてみると、まず、Bは、Xが退職すればXの人件費が浮く、Xは嫌われていて、誰も一緒に仕事をしたくないなどと、名誉感情を不当に害するような言辞を用いており、精神的な攻撃を加えるものである
また、Xは、そもそも、経歴、資格を見込まれた管理職候補として採用されており、これまでいわゆる現業には従事していなかったところ、Bの上記各発言は、Xに執務場所も、デスクワークの仕事も与えずに、X自ら仕事を探すことを求めるものであり、人間関係から切り離して隔離したり、過小な要求をしたりするなどして、不当な心理的圧力を加えるものである
そうすると、Bが行った本件退職勧奨は、違法、不当なパワハラ行為であると認められる。

2 本件駐車場管理命令は、本件病院の駐車場の管理、植栽、施肥、草引き(除草作業)、清掃作業、駐車料金の回収等の業務を行うことを命ずるものであるところ、①Xが経歴や資格を見込まれた管理職候補として採用されており、Xがこれまで現業に従事した経歴がなかったこと、②Y社では、平成26年2月以前から、総務課職員が、駐車場の料金の回収は行っていたものの、除草作業や清掃作業等は行っていなかったことからすれば、本件駐車場管理命令は、業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた仕事を命じるものであり、違法、不当なパワハラ行為であったといえる

3 Aらのパワハラ行為があったと認められること、証拠によれば、Xの主治医であるB医師が、Aらのパワハラ行為によって適応障害を発症した旨詳細な意見書を作成しており、その信用性を疑わせる事情がないことからすれば、Xの上記主張を認めることができる。
そうすると、Xの適応障害は、労働基準法19条の定める「業務上の疾病」にあたり、被告公社によるXの退職扱いは解雇制限を定める同条に反し、無効であるから、Xは,Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にある。

上記判例のポイント2の視点は押さえておきましょう。

従業員の資質・経歴からして、業務上の合理性のない業務命令や配置転換等をすると違法と判断される可能性がありますので注意しましょう。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介848 人生で本当に大切なこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
人生で本当に大切なこと 壁にぶつかっている君たちへ (幻冬舎新書)

王貞治さんと岡田武史さんの本です。

対談形式で話が進んでいきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『出会い』は大きなきっかけを与えてくれますが、それをどう生かすかは本人次第。謙虚な気持ちを持つとともに、なんでもかんでも頼ったり教えてもらうんじゃなく、自分で考えるんだという姿勢は、忘れてはいけないと思います。『出会い』を大切にするというのは、出会いで得たものを自分なりに消化し、発展させていくというところまで含めてのことなんです。」(115頁)

人生は出会いによって大きく変わっていきます。

誰とどのタイミングで出会うかは「運」でしょうか。

「運」ではなく「縁」だと捉えるほうが大切にできるような気がします。

会いたい人に会うためには、やはり自分の「力」をつけることが近道だと思います。

日々、努力して力をつけるとある日、チャンスがやってくるのです。

そう信じて努力するのです。

これが一番の近道です。

不当労働行為204 使用者が労働者のうち誰が組合員かを知ろうとすることは問題があるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、会社が、労組と団交をすることなくパート社員の昇給を発表したこと、組合員のみ現在の給与金額で契約更新の手続きをする旨連絡したこと、労組役員の倉庫立入要求を拒否したことがいずれも不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

PALTAC事件(広島県労委平成30年2月23日・労判1183号91頁)

【事案の概要】

本件は、会社が、労組と団交をすることなくパート社員の昇給を発表したこと、組合員のみ現在の給与金額で契約更新の手続きをする旨連絡したこと、労組役員の倉庫立入要求を拒否したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

いずれも不当労働行為に当たらない

【命令のポイント】

1 昇給発表自体は会社の自由になし得ることからすると、会社が29年昇給の発表を行ったことは、不当労働行為には当たらない。

2 使用者がその雇用する労働者のうち誰が組合員であるかを知ろうとすることは、それ自体として禁止されているものではないところ、会社が連絡文書において、会社が把握している組合員に誤りや漏れがあれば連絡するよう求めたのは、現在の給与金額で契約更新の手続きをしなければならない組合員を確認するためであったと認められる。
そうすると、会社が、・・・通知をしたことは、団体交渉の形骸化を狙ったものであるとも、組合活動の萎縮、妨害を意図するものとも認められず、不当労働行為に該当しない。

3 使用者が従業員ではない社外の第三者の会社構内への立入りを認めるかどうかは、原則として、施設管理権の行使として使用者の裁量的判断に委ねられているところ、会社の社員ではない組合本部役員の立入りを拒否したことが直ちに支配介入の不当労働行為に該当するとはいえない。

特に上記命令のポイント2は押さえておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介847 座らない!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。
座らない!: 成果を出し続ける人の健康習慣

食事・運動・睡眠の3つの観点で健康マネジメントを説いています。

どれか1つが不足しても良いパフォーマンスは生まれません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は毎年少しずつ賢くなっています。健康で長生きするためにはどのように食べて、動いて、眠るのがいいのか、より多くの知識を得ています。そして、その知識を日々の生活で実際に生かし、より良い選択を心掛けるのです。まるで日々の選択によって自分の人生が決まってしまうかのように。なぜなら、実際にその通りだからです。」(23頁)

体に良いものを食べ、適度な運動をし、しっかり睡眠を取る。

食事・運動・睡眠の3つの要素を日々、どれだけ向上させることができるか。

どうしても、日々の忙しさに流されて、3つの要素を大切する気持ちを忘れてしまいがちです。

とはいえ、いつも言うことですが、忙しいなかでも、やる人はやるわけです。

特に運動に関しては、ハードスケジュールの中にいかにして組み込むかが鍵となります。

工夫をすれば、どれだけ忙しくても、毎日15~30分のワークアウトは必ず続けられます。

解雇280 懲戒(降格)処分と相当性判断(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、懲戒(降格)処分無効と支店長の地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

大東建託事件(東京地裁平成30年4月26日・労判ジャーナル78号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員Xが、平成28年9月30日付けのA支店支店長から担当へ降格する旨の懲戒処分は無効であると主張して、Y社に対し、平成30年3月31日まで同支店長の地位にあることの確認を求め、同処分以降に係る同処分前の賃金との差額、平成28年10月分から同年12月分までの約199万円、平成29年1月分から同年6月分までの約419万円、同年7月分から同年10月分までの約304万円、同年11月分から平成30年3月分までの約521万円等の支払を求めるとともに、Y社の従業員からパワハラを受けたとして、民法715条の使用者責任に基づき、慰謝料500万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒処分(降格)は有効

損害賠償請求も棄却

【判例のポイント】

1 Y社において、本件通知が平成27年4月1日に発出されており、立地・家賃審査依頼書や家賃審査書において事故歴の有無を確認する欄が設けられたことに鑑みても、Xは、支店長として当然にその内容を把握し、支店内で同通知を周知徹底すべき立場にあったものであるから、本件事故歴が発覚した時点で、本件通知の内容に従って本社に一般申請すべきであったにもかかわらず、本社に報告等をしないで本件売買契約を締結したものであり、その結果、Y社は、本件土地の入居者募集等のやり直しなどを余儀なくされたことからすれば、Xの行為は、Y社の定める規程及び指示に違反し、Y社の信用等を損なう行為であるといえること等から、Xの上記各行為は、Y社の懲戒規程所定の懲戒事由に該当する

2 Xは、支店長という立場にありながら、部下であるB課長及びC課長に対し、本件通知に反する行為を指示したものであり、その結果、Y社は、組織としての本件火災死亡事故の報告を受けて認識していた状態にあったにもかかわらず、Xの通知違反の指示により、火災死亡事故の告知をせずに本件土地上のアパートの入居者を募集するに至ったものであり、入居者に対する告知義務違反ともなり得る重大な法令遵守(コンプライアンス)上の問題を生じさせた行為である上、Y社が大東建物管理の損害を補填するなど一定の実損害も発生していること等から、Xの上記各行為による責任は、相当に重いといわざるを得ず、本件懲戒降格処分によりXの基本給等が大幅に減額されたことなどXの不利益を考慮しても、本件懲戒降格処分が重すぎるものとして社会通念上相当性を欠くということはできないというべきである。

この事案で懲戒解雇までしてしまうと相当性が認められない可能性も出てくるところです。

降格処分により、大幅な賃金の減額が生じたとしても、事案の重大性からすれば相当であるという判断です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介846 だから、また行きたくなる。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。
だから、また行きたくなる。 伝説の外資系トップ営業が教える「選ばれるサービス」の本質

プルデンシャルの川田さんの本です。

さまざまなお店の「選ばれるサービス」を紹介してくれています。

こういうサービスをされると「また行きたくなる」と思ってしまいます。

やろうと思えば誰でもできることですが、多くの人がやらないほんの小さな気配りなのです。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

営業の仕事で大切なのは、スキルではなく、結局は『人』として魅力的かどうかです。人は『損得』ではなく『感動』で動く生き物です。どんなに営業トークがうまくても、商品説明が上手でも、それだけではお客さまの心は動かせません。だからこそ、人間的な成長が必要なのです。」(233頁)

著者は、後輩から「ずっと売れる人って、どういう人なんですか?」という問いにこう答えています。

落ちているゴミを、またいでいかない人」(233頁)

本に載っているような営業テクニックなんてすぐばれます。

他よりも多少安くても、売っている人が魅力的でなかったら、絶対に買いません。

この人から買いたい、この人にお願いしたいと思ってもらうために必要なのは、セールストークではなく、人間的な魅力そのものです。

だからこそ、落ちているごみをまたいでいく人は売れないのです。

労働災害94 新人研修における事故と安全配慮義務違反(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、新人研修における歩行訓練後の後遺症と安全配慮義務違反の有無等に関する裁判例を見てみましょう。

サニックス事件(広島地裁福山支部平成30年2月22日・労判1183号29頁)

【事案の概要】

XがY社に入社して新人研修を受けたが、研修カリキュラムの1つである24キロメートルの歩行訓練を受けた際に、右足及び左足を負傷したとして、主位的には、Y社の安全配慮義務違反が過失を構成するとして、不法行為に基づき、損害賠償と歩行訓練の日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを請求したもので、予備的には、Y社の安全配慮義務違反が債務不履行を構成するとして、損害賠償とY社に対して請求した日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、2222万4145円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 健康状態チェック表等でY社は参加者の体調を把握しようとしており、業務日報の記載からa訓練であまり無理をしないよう講師が述べていることが認められ、Y社が全く参加者の体調等に配慮していなかったわけではない。
しかし、Y社は、研修参加者の外出を禁止しており、参加者が自己の意思で医療機関を受診する機会を奪っているにもかかわらず、発熱者が出たときの対応でも明らかなように、Y社側から医療機関を受診させることに積極的ではない
a訓練は、参加者全員が完歩することを目的としており、参加者の年齢が幅広く、体力にも大きな差があるにもかかわらず、個人差や運動経験の有無等に全く配慮していない点で、無理があるプログラムである
そして、Xが歩行訓練中に転倒して右足関節を痛め、歩行訓練の中断や病院受診を求めても、これを拒絶して歩行訓練を継続し、a訓練に参加させたことが、Xの現在の症状の原因となっていること等に照らすと、Y社には、債務不履行の原因となる安全配慮義務違反が存在したと認められる。
Y社は、Y社にとって望ましい社員を選別するための手段としてa訓練を用いる意向があるかも知れないが、仮にそうであれば、その際に負傷した参加者に対しては、責任を負わなければならない。
なお、上記のとおりY社が参加者の安全について一定の配慮をしていることに照らすと、不法行為の原因となる過失があったということはできない

2 Xの足関節、膝関節には、軽度の変形性関節症が認められるが、軽度であり、Y社の研修に参加する前にはXには何も症状がなかったこと、軽度の変形性関節症がXの治療の長期化とどのように影響したか不明であること等に照らすと、素因減額を要するほどの素因に該当するとはいえない。
なお、Xは、肥満体であることが認められ、体重が重いために膝関節、足関節にかかる負荷が大きくなってXの傷害の悪化、長期化に影響したことが予想されるが、病的肥満といえる程度には達していない。
したがって、Xの肥満は病的ではないから、素因には該当せず、素因減額を検討することはできない。

3 本件は、債務不履行に基づく請求であり、弁護士費用の請求は認められない。

ニュースにもなった事案です。

認容額がかなり高額ですね。

みんながみんな体育会系ではないので、このような研修(?)はやはり避けるべきですね。

労災発生時には、顧問弁護士に速やかに相談することが大切です。

本の紹介845 「稼げる男」と「稼げない男」の健康マネジメント(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
「稼げる男」と「稼げない男」の健康マネジメント (アスカビジネス)

食事、睡眠、運動、ストレスケアの4項目についてマネジメントのしかたを説いています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

思い返してみれば、香港でさまざまな企業がグローバル会議などでホテルを予約するときは、ジムがついているホテルから埋まっていきました。上級職になるほど、朝から身体を動かす習慣があるからです。
あるデンマークに本拠地を置く企業が香港で会議を行った際は、全員で朝6時からランニングをしていました。ウイニングエッジを勝ち抜くために、普段からの「準備のレベル」が違うのです。」(39頁)

前回紹介した本とも共通する内容です。

日本でも、出勤前にジムへ行き、トレーニングをするという文化がもっと広がるといいですね。

筋トレに関して言えば、30分もやれば体がパンパンです。

わずか30分を続けられるか、ただそれだけの話です。

30分のトレーニングすら続けられないのであれば、結局、何をやっても結果は出ないことは想像に難くありません。

三日坊主からは何も生まれません。

解雇279 産業医意見の信用性が否定される場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、産業医意見の信用性が否定され休職期間満了に伴う退職扱いが無効とされた裁判例を見てみましょう。

神奈川SR経営労務センター事件(横浜地裁平成30年5月10日・労経速2352号29頁)

【事案の概要】

本件は、労働保険事務組合であるY社の従業員であったXらが、X1はうつ状態を、X2は適応障害を発症してそれぞれ休職したところ、休職期間満了日の時点で復職不可と判断され自然退職の扱いとされたことについて、主位的には、Xらは復職可能であったことから本件各退職扱いはY社の就業規則の要件を満たさず無効であるとして、予備的には、仮にXらが復職可能でなかったとしても、XらとY社との間の従前の経緯に照らし本件各退職扱いは信義則に反し無効であるとして、Y社に対し、X1は、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②給与等の支払をそれぞれ求め、X2は、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②給与等の支払をそれぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

退職扱いは無効

【判例のポイント】

1 X1が本件退職扱いAの時点で従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復していたことの証拠としては、うつ状態の病状改善により復職可能とのG医師の診断書(平成27年5月21日付け)があるところ、①X1は、本件休職命令Aの際には、不安、気分の落ち込み、眠れない、食欲不振、考えがまとまらない、死にたいと思う精神状態で、投薬も受けていたが、本件退職扱いAの当時は、睡眠がとれるようになり、食欲も出て、投薬も終わっており、気分の落ち込み、考えがまとまらない、死にたいと思う精神状態も認められなかったこと、②本件面談Aにおいても、X1は、体調がよく、復職の意欲があることを話し、何ら不自然不合理な点は認められず、精神障害が疑われる事情は何らうかがわれなかったこと、③X1は、平成26年10月17日、平成27年1月30日、同年5月11日に行われた第2訴訟の各期日に、何ら問題なく出廷できていることからすれば、上記診断書は、信用できる。
そして、X1は労働保険事務組合関係業務、庶務関係業務等、具体的には、窓口業務、電話対応、書類整理に従事していたところ、これらの業務の内容からすれば、X1は、同年6月7日の本件退職扱いAの当時、従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復していたものと認められる。

2 H医師は、Xらについて、①自分の行動分析も含めて客観的な振り返りができず、冷静に内省できているとは言い難い、②再発予防対策として必須の、組織の一員としての倫理観、周囲との融和意識に乏しい、③自分の症状発現には、組織の対応及び周囲の職員の言動が一義的原因であるとして一貫して組織及び職員を誹謗するに終始したと判断している。
しかしながら、上記判断は、一定の基準ないし価値判断、すなわちXら自身が、Y社や他の職員とのトラブルの原因であるとの見解を前提としたものと解されるところ、第1訴訟が本件和解条項を含む和解で終了していること、第2訴訟もX1の主張が認められ、請求認容判決が宣告され、これが確定していることからすれば、その見解には疑問がある上、本件面談A及び本件面談Bにおいて、XらにH医師の上記評価の根拠となり得るような発言があったとの事情も窺われないことからすれば、H医師の上記評価は、採用できない
H医師は、本件各退職扱いの時点において、X1については、人格障害、適応障害であり、統合失調症の症状も診られると指摘し、X2については、自閉症スペクトラム障害、うつ状態、不安症状、自律神経失調症状があり、依存性の性格傾向があると指摘する。
しかしながら、H医師自身も、上記精神障害の指摘は診断ではなく判断であると述べており、Xらは医学的には病気ではなかったと認めていること、さらに、精神科医であるJ医師が、X1について統合失調症、人格障害であることを否定し、同じく精神科医であるI医師も、X2について自閉症スペクトラム障害、人格障害であることを否定していること、そもそも本件面談Aは1回約40分、本件面談Bは3回で、各回約30分から約40分にとどまり、このような限られた時間での面談により、上記のような判断が可能であるかについても疑問が残ることからすれば、H医師の前記各指摘は、合理的根拠に基づくものであるとは認められず、採用できない
以上によると、Xらが本件各退職扱いの時点で復職不可の状態であったとするH医師の意見書及び証言は、到底信用できない。

休職期間満了時に、主治医意見と産業医意見が相反する場合に会社としてはどのように判断すべきかという問題は、判断がとても難しいですが、よく発生する問題です。

裁判所の考え方を踏まえて、慎重に対応しましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。