本の紹介834 いい言葉は、いい男をつくる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
いい言葉は、いい男をつくる (知的生きかた文庫)

かれこれブログで紹介をしている里中さんの本です。

今回の本では、著名な方の言葉について、里中さん独特の解釈をした上で解説をしてくれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は弱者よりも、強者を選ぶ。積極的な生き方を選ぶ。この道が実際は苦難の道なのである。(坂口安吾/『恋愛論』
・・・弱者になるのは簡単である。何もしなければいいのだ。現状維持でもいいのだ。わざと堕ちてもいいのだ。『強者になりたい』そう思わなければ、人生は本当に楽である。男たちよ。それでいいのか。それでいいのなら、もう何もいわない。多くの弱体化した日本の男たちと一緒に弱まっていくといいだろう。」(20~21頁)

今の世の中、「男たるものは強くあるべし」なんて価値観はもはや存在しないのでしょうが、

そう思っている男性が存在するのもまた事実です。

当然のことながら、みんな好きに生きればいいわけです。

だからこそ、強くありたいと思う人はそのための努力を続ければいいだけの話です。

肉体も精神も強くありたいと思う人は、まずは人よりも早起きをしてとりあえず筋トレをしましょう(笑)

日々の鍛練が足りているかどうかは、体つきを見れば一目瞭然なので。

セクハラ・パワハラ41 職場環境配慮義務違反が否定されるために求められる具体的内容(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、自死した亡従業員の会社等に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

関西ケーズデンキ事件(大津地裁平成30年5月24日・労判ジャーナル77号22頁)

【事案の概要】

本件は、亡従業員Xの遺族らが、Xが勤務していたY社運営の本件店舗の店長が、Xに対し、注意書の徴求、競合店舗の価格調査の強要等のパワハラを行ったことにより、同人が自死したとして、店長には不法行為が成立し、また、店長の使用者であるY社には使用者責任又は安全配慮義務違反を原因とする債務不履行が成立すると主張し、Xの遺族らが、店長に対しては不法行為に基づき、Y社に対しては主位的に使用者責任に基づき損害賠償金約3508万円等の連帯支払を求め、Y社に対して予備的に債務不履行に基づき、損害賠償金同額の損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

慰謝料100万円を認容

【判例のポイント】

1 店長がXに本件配置換えについての意向を打診した際に説明した価格調査業務の内容は、Y社の親会社であるA社が編成するマーケットリサーチプロジェクトチームの業務内容に匹敵する業務量であるにもかかわらず、これをフルタイムで勤務する時給制の非正規雇用労働者1人が地域で競合する1店舗のみに専従するという意味において、極めて特異な内容のものであり、たとえ、店長に、Xに対して積極的に嫌がらせをし、あるいは、本店店舗を辞めさせる意図まではなかったとしても、本件配置換えの結果、Xに対して過重な内容の業務を強いることになり、この業務に強い忌避感を示すXに強い精神的苦痛を与えることになるとの認識に欠けるところはなかったというべきであるから、店長による本件配置換え指示は、Xに対し、業務の適正な範囲を超えた過重なものであって、強い精神的苦痛を与える業務に従事することを求める行為であるという意味で、不法行為に該当すると評価するのが相当であるから、Xに対する店長の行為のうち、本件配置換え指示については、Xに対する不法行為を構成する。

2 Y社においては、店長等の管理職従業員に対してパワハラの防止についての研修を行っていることパワハラに関する相談窓口を人事部及び労働組合に設置した上でこれを周知するなど、パワハラ防止の啓蒙活動、注意喚起を行っていることが認められるし、本件においても、Xは店長からの本件配置換え指示について、パワハラに関する相談窓口となっているY社労働組合の書記長に対して相談したところ、書記長は、これを受けて部長に対して本件配置換えを実行させないように指示されたいとの連絡をしているのであって、Y社における相談窓口が実質的に機能していたことも認められるから、Y社としては、パワハラを防止するための施策を講じるとともに、パワハラ被害を救済するための従業員からの相談対応の体制も整えていたと認めるのが相当であるから、Y社の職場環境配慮義務違反を認めることはできない

たとえ、積極的に嫌がらせをする意図まではなかったとしても、不法行為に該当することは当然あり得ます。

また、ハラスメントに対する対応策については、上記判例のポイント2が参考になります。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介833 大人がマジで遊べば、それが仕事になる。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
大人がマジで遊べば、それが仕事になる。

帯には「『好き』を『仕事』にして、望み通りに『生きる』には?」と書かれています。

簡単なことです。

今の仕事を好きになればいいだけのことです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

みんなが見ているようなものをやったって、失敗するっていう話よ。これやったら当たる、なんていうのは、絶対に当たらない。自分の感覚だけを頼りに、みんなが見てない『鼻先』を狙うんだよ。これ、ヒッチハイクで乗せてくれた、サワラ漁の漁師のおじさんが教えてくれたんだけどさ。」(202頁)

やっぱり、成功は、安心とか安定とは反対のところにあるのです。

あまりよく考えないで、とりあえずみんながやっているから自分もやるという人生を歩んでいると、それが習慣となってしまい、もうその道から抜け出すことがだんだんできなくなってくるのです。

常にどうしたらもっと良くなるかを考えて、試して、失敗して、改善してっていうのを繰り返す。

言ってみればそんなたいした話ではないのですが、そういう習慣が身についていないとなかなかできないのです。

どのような習慣を身につけるかで人生が決まります。

労働者性22 元代表者の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、元代表取締役の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

ネットショップN社事件(高松地裁平成29年4月18日・労判1180号147頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社に対し、XらとY社との間の労働契約に基づき、①時間外労働等による平成25年3月から12月までの割増賃金、②労働基準法114条に基づく付加金、③平成25年の冬季賞与及び④退職金を請求し、⑤いわゆるパワーハラスメントによって精神的苦痛を受けたことを理由とする不法行為、債務不履行(安全配慮義務違反)又は会社法350条に基づく慰謝料及び弁護士費用相当額の損害賠償+遅延損害金の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 X1は平成25年9月1日以降、Y社の代表取締役として経済紙のインタビューに応じ、また、政策金融公庫に自ら出向き、現に800万円の融資を受け、その連帯保証人になるなど、代表取締役として業務を行っていたと認められる。他方で、残業手当の支給があること等X1が主張する事情は、X1とY社との間の労働契約関係の存在を推認するに足りない。

2 勤怠報告書は、Y社が労働時間管理に用いていたものではなく、Xらが平成27年5月22日に本訴を提起するに先立ち、自身の記憶に基づいて作成したというのであるから、客観的な資料とは言い難く採用できない
Xらは、Y社がY社事務所の入退室記録の開示を拒み、Xらの立証活動を妨害したというが、入退室記録から直ちにXらの個々の出退勤時刻が明らかになるわけではなく、開示を拒んだことが直ちに立証活動の妨害とは評価できない。また、Y社が従業員の労働時間を管理していたとは認められないものの、Xらの時間外労働を概括的に推認させる証拠すらない以上、Xらの主張は採用できない。

ときどき代表者の労働者性が問題となることがありますが、かなりハードルは高いですね。

また、使用者が適切に労働時間の管理をしていない場合、労働者側としては、そのことを理由に概括的な認定を要求しますが、裁判所としてもある程度判断の拠り所になる資料がないといかんともしがたいと考えるのです。

ここは難しいところで、この考えを突き詰めると、結局、ちゃんと労働時間を管理している使用者の方が不利になるように思えて、正直者がバカを見る感じになります。

和解でなんらかの解決が可能であればいいのですが、判決まで行くと今回の裁判例のような判断も十分考えられるので、注意が必要です。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介832 一流の人は小さな「ご縁」を大切にしている(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
一流の人は小さな「ご縁」を大切にしている

著者は弁護士の方です。

労務管理を専門にしている弁護士でとても有名な先生です。

タイトルのとおり、「ご縁」を大切にしましょう、と説いています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

縁を得た方に対しては常に『相手のために何ができるのか』を考え、行動することが非常に重要です。と言っても、相手に直接『何か、私にできることはありますか?』などと尋ねるのは無粋の極み。会話のなかから相手の要望を汲み取り、自分にできることを考えるのです。・・・ポイントは『想像力』。相手の身になって考えること。」(90頁)

ここでも他者への想像力のお話が出てきます。

会話を含めて、一挙手一投足から目の前の方が望んでいることを察することができるか。

できる人はできるし、できない人はできない。

どこからその差が生じるのかよくわかりませんが、その差が成果として表れることは言うまでもありません。

有期労働契約81 女児に対するセクハラに基づく懲戒処分(出勤停止)が重すぎるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、女児に対するセクハラに基づく懲戒処分に関する裁判例を見てみましょう。

セリオ事件(大阪地裁平成30年3月29日・労判ジャーナル76号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との雇用契約に基づき、大阪市が設置している大阪市立A小学校いきいき活動室の運営指導員として就労していたXが、Y社から出勤停止の懲戒処分を受け、さらに平成29年3月31日の雇用期間満了時に雇用契約が更新されなかったことについて、当該懲戒処分は無効であるとして出勤停止期間中の未払賃金の支払い、並びに、労働契約法19条によりXとY社間の労働契約は更新されたものとみなされるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及びそれを前提とした平成29年4月以降の賃金の支払いを請求した事案である。

【裁判所の判断】

懲戒処分は無効
→出勤停止期間中の未払賃金等支払請求を認容

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 Xは、いきいき活動室の活動の枠を超えて、積極的に、児童と個人的な接触を持とうとしたものであり、本件事業の公共的性格やそれによって相応の事態を引き起こしていること、Xの行為は、判断能力が不十分な児童を対象とするものであり、保護者や関係者が不安を抱くことは当然であることに照らせば、Xについて、秩序維持の観点から懲戒処分に処すること自体は不当とはいえないが、就業規則によれば、停職は免職に次いで重い処分であるうえ、本件についてみると、その期間は4か月間、効力が生じている期間だけでみても約3か月半に及び、本件雇用契約が1年の有期雇用契約であって、その残月数すべての出勤を停止するものであることも考慮すれば、本件懲戒処分は、処分として極めて重いものといえること等から、懲戒権を濫用するものとして無効というべきである。

2 XとY社間の雇用契約は、平成27年9月1日に締結された後、平成28年4月1日に1度更新されたのみであり、また、更新に際して、新たに雇用条件通知書が作成されていることから、労働契約が過去に反復して更新されたとはいえないし、更新手続が形骸化しているともいえないから、労働契約法19条1号には該当せず、また、同条2号についても、過去の更新回数が一度にすぎないこと、雇用条件通知書では、契約更新は有とされているものの、更新をするかどうかは、「業務量・業務成績・態度・能力・会社の経営状況・従事している業務の進捗状況・その他」により判断するとされているにとどまり、更新が当然の前提あるいは原則となっているとまでは認め難いことに照らせば、更新は、その可能性があるというにとどまり、更新されるものと期待することについて合理的な理由があるとまではいえないから、本件について、労働契約法19条により、労働契約が更新されたとみなすことはできない。

懲戒解雇にせず、期間満了までの約4か月間、出勤停止にすることも重すぎるという判断です。

保護者や関係者の不安を考えると、多くの事業主がそのまま復帰させるという判断はしないのではないでしょうか。

このような事案でも裁判所は上記のような判断をしますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介831 こんな男を選びなさい!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
こんな男を選びなさい! (王様文庫)

男の本当の価値はどこにあるのかについて著者の意見が書かれています。

男性の私が読んでもおもしろく読めます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

一流の世界とは、女も男も努力する世界だ。努力は、素晴らしい、あなたの宝になる。これを知らないままだと、人間は腐ってしまう。日本は先進国で、食べるものはたくさんあるし、サボっていても生きていける世界である。だから、二流、三流の人間だちは、非常に甘えている。あなたが、もし甘えているのだとしたら、早く一流の男と出会い、そして自分を律することだ。そうしないと、一生後悔するだろう。」(115~116頁)

ですって。

性別を問わず、努力を続けられるかどうかはその人のこれまでの人生の過程に依拠する部分が大きいですが、人は環境によって大きく変わることができます。

結果を出している人のそばで生活をしているだけで考え方、努力のしかたを学ぶことができるので、人生が動き出すチャンスを得られます。

怠惰で堕落した生活に慣れてしまうと、なかなかそこから抜け出すことは難しいですが、それでも本気で変わりたいという人は、結果を出している人のそばにいることです。

そして、途中で投げ出さないことです。

そこからしか人生は変わりません。

不当労働行為201 労組への加入の意向に関する質問と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パートタイマーとの雇用契約の締結および更新に当たり、労組への加入の意向を質問したり、その旨の記載のある雇用契約書を使用したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

サンプラザ事件(大阪府労委平成29年12月11日・労判1178号94号)

【事案の概要】

本件は、パートタイマーとの雇用契約の締結および更新に当たり、労組への加入の意向を質問したり、その旨の記載のある雇用契約書を使用したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 通常、雇用契約の締結において、使用者が労働者よりも優位な立場にあるのだから、各パートタイマーが本件ユニオン条項にはいと回答しなければ、契約が締結されない可能性があると感じるのも無理からぬものであって、かかる様式の変更は、実質的には、Zへの加入を勧奨又は強要するものと解され、中立保持義務に違反し、Zの組織強化を助け、もって組合の弱体化をもたらすものであることは明らかである。また、Y社は、Zの組織強化を助け、もって組合の弱体化を企図して、本件ユニオン条項を追加するなどしたものと推認される。
さらに、本件の中立保持義務違反は、雇用契約の締結という労使関係の根幹に係る局面で行われており、本件ユニオン条項は組合の活動に影響を及ぼすものと判断される。

まあ、そうでしょうね。

同様のアンケートを取ることもまた不当労働行為に該当する可能性が高いですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介830 モバイルボヘミアン(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
モバイルボヘミアン 旅するように働き、生きるには

サブタイトルは「旅するように働き、生きるには」です。

すべての職業で旅するように働くことは困難ですが、どこでもスマホやパソコンさえあれば仕事ができてしまう仕事もふつうにありますよね。

弁護士はなかなか厳しいですね・・・

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

これまでは1つのスキルを突き詰めることがいいとされてきたが、これからは組み合わせがオリジナリティを生み出す時代。なにか1つの物事を極めるよりは、自分が持っているいくつかのコンテンツを掛け合わせることで、オリジナリティが高まっていく。独自性が強くなれば、ほかの人との差別化にもなるし、『この人しかできない考えやアウトプットだよね』という市場価値につながっていく。」(111~112頁)

かけ算によってオリジナリティを増すという発想ですね。

今の時代は、自分がやりたいことがやりやすいですから、覚悟と勇気さえあればいろんなことができます。

安定を求めて、変化の乏しい平穏な生活を好む人はさておき、

チャレンジングな人生を送りたいという人にとっては、こんなに楽しい時代はないと思います。

有期労働契約80 3年の更新上限規定に基づく雇止めの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、3年の更新上限の規定に基づく雇止めが有効とされた裁判例を見てみましょう。

高知県公立大学法人事件(高知地裁平成30年3月6日・労経速2348号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で平成25年4月1日に1年間の雇用契約を締結し、その後、2回にわたり同期間の雇用契約を更新したXが、Y社が平成28年4月1日以降は契約を更新しなかったことについて,、労働契約法19条に基づき、契約が更新されたと主張して、Y社に対し、Xが雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同月分以降本判決確定日までの給与及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、その就業規則において、契約職員の雇用期間は1会計年度とし、更新による通算雇用期間の上限を3年とする明確な定めを置いている
そして、Y社は、通算雇用期間内に有期雇用契約を更新するに当たり、その都度、当該職員に対し、契約期間を明記した労働条件通知書を交付するなど、外形上、更新がなされたことを明確にする手続をとっていた
加えて、契約更新前には少なくとも管理職による意向確認が実施され、1名ではあるが、実際に雇止めになった契約職員が存した。
しかも、雇用期間満了時に雇止めをする可能性が高かった契約職員は、その前に辞職願を提出して退職しており、更新前の時点で当該契約職員の適性等が判断されて、雇用が継続されていないという事情もあった。
そうすると、通算雇用期間の上限内の更新手続についても、形式的かつ形骸化しており、1会計年度といった期間が存しないのと同様な状態にあったとはいえないというべきである。
かえって、Y社は、3年間の雇用期間の上限を墨守し、契約ミスの例と保健師という資格上の例外を認めざるを得なかった事案を除いて、必ず、3年で契約職員を一旦は雇止めにし、その後は、公募、ハローワークを通じた申込み、選考手続を行って再雇用をしてきたものであり、3年間の上限に達した契約職員に関しては単なる契約の更新とは明らかに異なる手続を踏んできていることが指摘できる。
以上説示してきたところによれば、本件雇止めが期間の定めのない労働契約を締結している労働者に対する解雇と同視できるとは認められない。
したがって、本件雇止めは労働契約法19条1号に該当しない

2 Y社は、その就業規則において、契約職員の通算雇用期間の上限を3年と明確に定めていたこと、かかる上限に達しない契約職員について有期雇用契約を更新する場合も、管理職による意向確認や契約期間を明記した労働条件通知書の交付といった手続をとっていたこと、原則として3年の期限を超えてそのまま更新した事例はなく、必ず更新とは明らかに性質の異なる公募が行われていたこと、A部長もXにその旨を告げていて、Xも理解していたこと、Xの契約の更新回数は2回にすぎず、通算雇用期間も3年にとどまっていたこと、Xの給与計算を主とする業務は、性質上、一定の恒常的なものであり、一定の専門性が必要であって、職員のプライバシーに携わるものであるとはいえるが、政策的・裁量的な判断がなされるべきものではなく、ルールに従って一定の処理を行うもので、担当者によって結果が異なりうるものではなく、また、業務自体は恒常的に存するものとはいえ、同一の担当者が継続的に従事する必要性の高い業務とはいえず、代替性が高いものと評価でき、業務内容から直ちに継続雇用の高い期待が生じるとまではいえないこと、しかも、Xが準職員採用試験を受験し、一旦は準職員として内部登用される機会が確保されていたことも踏まえれば、労働契約法19条2号の合理的な理由のある期待があったと認めることは困難である。

3 また、平成26年4月1日及び平成27年4月1日付け労働条件通知書における「契約期間 更新の有無」の欄の「1 契約更新の有無」の項には「ロ 更新する場合がありえる」に○印が付されているところ、Xは、かかる記載を根拠の一つとして、Xの雇用継続に対する期待には合理的な理由があると主張している。
しかし、上記各通知書の「1 契約更新の有無」の項には「イ 自動的に更新」という項目も設けられているのに、あくまで「ロ 更新する場合がありえる」に○印が付けられていたにすぎないことからすると、むしろ、Xは、契約職員就業規則に定められた通算雇用期間の上限に関する定めに従い、雇止めがなされる可能性があることを予見し得たと評価することも十分に可能である。
したがって、上記労働条件通知書の記載をもって、直ちにXの雇用継続に対する期待に合理的な理由があるとはいえない。

ここまで厳格にやっていれば雇止めも有効になります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。