本の紹介829 富を築く技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
富を築く技術 (フェニックスシリーズ)

帯には「誰にでも当てはまる技術」と書かれています。

はい。間違いなく誰にでも当てはまることしか書かれていません(笑)

ここに書かれていることを守ったら、誰もが富を築くことができるでしょう(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ロスチャイルド家には格言がもうひとつある。『ついてない人間や場所には関わるな』というものだ。成功していない人間というのは、どんなに誠実で賢そうに見えたとしても、あれこれ手を出して失敗しているからには、はた目には分からない欠点や弱点があるに決まっているからだ。」(96頁)

要するに成功したければ、うまくいっている人たちと付き合えということです。

当たり前の話です。

どうしてうまくいっていない人たちと時間を一緒に過ごす必要があるのでしょうか。

理由が見当たりません。

酒を飲みながら愚痴や不満を言うだけのしょうもない場には近づかないことです。

何のメリットもありません。

それだったら、ジムに行って筋トレしたほうが100倍いいです。

ジムに来ている人でネガティブな人はいませんので。

解雇275 解雇のハードルの高さがよくわかる事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、介護職員の業務命令違反等に基づく解雇に関する裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人蓬莱の会事件(東京高裁平成30年1月25日・労判ジャーナル75号44頁)

【事案の概要】

本件は、特別養護老人ホームや老人デイサービスセンターの経営等を目的とする社会福祉法人であるY社との間で労働契約を締結して、特別養護老人ホームに勤務していたXが、Y社から解雇されたことについて、①上記解雇は、客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性を欠き、解雇権を濫用した違法無効なものであると主張して、Y社との間において労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②Y社に対し、労働契約に基づき、解雇の日の後である平成27年12月1日から本判決確定の日までの賃金+遅延損害金、平成27年12月期の期末手当として47万5326円+遅延損害金並びに平成28年3月から本判決確定の日まで毎年3月末日限り11万8832円、毎年6月及び12月の各末日限り各47万5326円の期末手当の支払を求め、併せて、③上記解雇並びにこれに先立ち被控訴人法人及び社会保険労務士であるY2が共同して行った退職勧奨が不法行為(違法な退職強要)に当たると主張して、Y社らに対し、共同不法行為に基づき、損害賠償金330万円(慰謝料300万円、弁護士費用30万円の合計額)+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原判決は、Xの各請求をいずれも棄却し、Xがこれを不服として控訴をした。

【裁判所の判断】

解雇無効

賃金等支払請求は一部認容

損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 解雇は継続的契約関係を将来に向かって一方的に解消させるものであるから、仮に解雇事由が存在しても、将来これが解消する可能性があると認められるのであれば、労働契約の継続に支障はなく、解雇するまでの必要はないというべきところ、Xは、本件解雇通知を受けるに先立ち、平成27年には同僚のE看護師からB主任に関する発言について厳しく注意されたにもかかわらず、態度を改めようとはせず、同年4月、8月及び9月の3回にわたりA施設長から呼出しを受け、勤務態度や他の職員との協調性の欠如について問題点を指摘されながら、何ら顧みるところはなく、女性職員が多い職場特有の問題であるなどとして責任を転嫁し、問題の解決をはぐらかそうとする態度に終始したことなど、服務規律違反が改善される見通しがあったとは認められず、Xについて、将来、解雇事由解消の具体的な可能性があるとまでは認めることができない

2 以上のとおり、Xの債務不履行(服務規律違反)は就業規則所定の解雇事由(適格性の欠如)に該当し、将来解消される見通しがあったとはいえないところである。
しかしながら、解雇が労働者にもたらす結果の重大性に鑑み、使用者において解雇回避努力(解雇回避措置)を尽くさない限り、解雇について客観的に合理的な理由があるとはいえないと解するのが相当である。
これを本件についてみると、Xによる服務規律違反は、主として年下の女性上司であるB主任に対する反感及び認知症の進んだ重症度の高い施設利用者を介護対象とする介護課2階の労働環境に起因すると認められ、介護課2階に異動するまでの1年余はさしたる問題行動は見られなかったことにも照らせば、Xを他の部署に配置転換し、他の上司の下で稼働させることを検討すべきであったと解されるところ、A施設長は、平成27年4月ころ、Xに対してデイサービス部門への配置転換を打診したにとどまり、これを超える解雇回避の措置を検討したことを認めるに足りる証拠はなく、介護課2階のほかにXを配置できる部署がなかったと認めるに足りる証拠もない
そうすると、Y社による解雇回避努力(解雇回避措置)が十分に尽くされたとはいえず、本件解雇に先立つ弁明の機会の付与などその余の点につき判断するまでもなく、本件解雇について、客観的に合理的な理由があったと認めることはできない。

3 この点につき、Y社は、業務指導、自宅待機、退職勧奨という一連の手続を経ても、Xは業務改善の要請に応じようとせず、Xを職場に戻すことで職場の秩序が乱れ、他の職員も業務上の指示命令に応じなくなり、介護課2階の責任者であるB主任も退職してしまうなど、本件施設の業務に重大な支障が生じるため、本件解雇はやむを得なかったと主張する。
しかしながら、この主張は、Xをそのまま介護課2階に配置することを前提としたものであり、前示のとおり他の部署へ配置転換することで解雇を回避できる可能性を否定できない以上、採用することができない。

4 Xは、Y社らによるXに対する退職強要及び不当解雇が不法行為に該当すると主張し、本件解雇及びこれに先立つ退職勧奨により精神的苦痛を受けたことによる損害賠償として慰謝料及びこれに関する弁護士費用の支払を求める。
そこで判断するに、本件解雇は前記のとおり無効であるが、これによる損害は、Xが復職し、それまでの未払賃金が支払われることで回復されるものと認められ、これを超えて本件解雇により慰謝料請求権が発生するものとすべき特段の事情があると認めるに足りる証拠はない。
加えて、本件においては、解雇事由の存在を否定できず、Xによる服務規律違反の状態が改善する見通しがあったとはいえないのであるから、Y社において、本件施設の秩序維持及び業務遂行の必要から、Xに退職勧奨をし、最終的に普通解雇を選択したこと自体は理解できるところであり、その過程におけるY社らの行為に違法とすべき点はなく、解雇回避努力(解雇回避措置)を尽くさなかったことから直ちに控訴人に慰謝料請求権を認めるべき共同不法行為が行われたものともいい難い。

解雇のハードルの高さを感じずにはいられませんね。

上記判例のポイント1を読むと、会社側の苦労がよくわかります。

会社とすれば、配置転換しても解決しないと考えるでしょうね・・・。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介828 “器の大きな人”だけが持っている3つの余裕(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
“器の大きな人”だけが持っている3つの余裕 (角川フォレスタ)

一流になる人とならない人の決定的な違いは『余裕』の差!」だそうです。

確かに「器の大きさ」は「余裕」から生まれるのかもしれませんね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

余裕のある男は、時代に流されない。時代の流行はいつどんな時でも、考えない人の味方で、多くの無能な男を救ってきた。あなたは大衆の志向に迎合して、『みんなもやっているから正しい』と、何も考えずに行動していればそれは余裕があることと錯覚するかもしれない。それは余裕ではなく、安心というものだ。あなたが何かの出来事で安心しているとしたら、その時に深く物事を考えているのだろうか。考えないはずだ。」(72頁)

みんなと同じことをやって成功することなどありません。

みんなと同じように休み、同じ時間に起きて、9時から5時まで仕事をしていて、どうして成功できるでしょうか。

人と違うことを考え、違うことをやり、人が休んでいるときに努力をするからこそ、人とは違う成果を出すことができるのです。

成功は安心や安定の真逆に存在します。

賃金158 労働条件の不利益変更と労働者の同意(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃金減額不同意に基づく減額賃金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

ニチネン事件(東京地裁平成30年2月28日・労判ジャーナル75号20頁)

【事案の概要】

本件は、元従業員Xが、Y社との間で雇用契約を締結し、Y社において就労していたところ、平成27年2月末支給分の給与から賃金を減額され、同年7月20日にY社を退職したことについて、Y社に対し、XはY社から退職(解雇)か給与半減かの二者択一を迫られ、本件賃金減額に同意せざるを得なかったものであり、Xの同意はその自由な意思に基づいてされたものでなく、本件賃金減額は無効であるなどと主張して、本件雇用契約に基づき、同年2月給与から同年7月給与までの各給与における未払賃金の合計約152万円等の支払を求めるとともに、本件賃金減額及びその後Xの賃金を増額するなどしなかったY社の一連の行為は、退職強要に該当し、Xは、同退職強要がなければ、退職日後も少なくとも同年10月20日までY社において就労し、その間の給与を得ることができたなどと主張して、不法行為に基づき、上記期間の賃金相当額(逸失利益)等の約161万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払賃金150万円認容

損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 本件賃金減額によりXにもたらされる不利益の程度の著しさや、Xが本件賃金減額を受け入れる旨の行為をするまでのXとY社との間の具体的なやり取り(とりわけ、Y社において、すぐにXを解雇できるとの不正確な情報を伝え、十分な熟慮期間も与えずに退職か本件賃金減額かの二者択一を迫ったことを受けて、Xが本件賃金減額を受け入れる行為をしたこと)等からすれば、本件賃金減額を受け入れる旨のXの行為がXの自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはいえず、Y社が種々指摘する点を考慮しても、本件賃金減額について、Xの自由な意思に基づく同意があったと認めることはできないから、本件賃金減額は無効であり、Y社には、Xについて、平成27年2月給与から同年7月給与まで合計150万円(25万円×6か月)の未払賃金がある。

労働条件の不利益変更を行う際に、労働者の自由な意思に基づく同意の有無が争点となります。

上記判例のポイント1記載のとおり、会社が不正確な情報を伝え、十分な熟慮期間を与えずに同意を求めるようなケースでは、自由な意思について否定されますので注意が必要です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介827 自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと (Sanctuary books)

40代の私が読んでももう遅いでしょうか・・・。

ひとまず読んでみました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

苦手は克服しなくていい。そこそこできることは、もっと得意な人にお願いすればいい。そのかわり、たった一つでいいから、『我を忘れて没頭できる』『この話ならいくらでも語れる』という分野に時間を注ぐこと。”世界一好きなこと”を一つ決めて、そのことに時間を投資する。あとは捨てる。そう覚悟を決めた瞬間、人生はキラキラと輝き出し、誰でも自信にあふれてくる。人間とはそういう生き物なんだ。」(89頁)

あらゆることをそこそこできるということ自体、それはそれで1つの能力だと思いますが、

ビジネスの世界では、「そこそこ」で選ばれることはありません。

価値を高めるには、足し算ではなく掛け算の発想が求められます。

1つより2つの得意分野を作り、それらを掛けることによりさらなるオンリーワンが出来上がります。

何と何を掛け合わせるかがポイントになります。

そのあたりは、センスかもしれませんね。

同一労働同一賃金8 賞与の支給額の差異と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、賞与の支給額の差異について労働契約法20条違反が否定された裁判例を見てみましょう。

医療法人A会事件(新潟地裁平成30年3月15日・労経速2347号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に非正規(有期雇用契約)職員として雇用されていたXが、雇用期間中、正規(無期雇用契約)職員には冬期賞与として基本給2か月分の賞与が支給されるのと異なり、非正規職員には冬期賞与として基本給1か月分の賞与しか支給されないという相違があることが、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めた労働契約法20条に違反すると主張して、同条に基づき、冬期賞与として支給されるべき賞与と実際に支給された賞与との差額である基本給1か月分の給与相当額17万5000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審がXの請求を認容したところ、Y社が控訴した。

【裁判所の判断】

原判決を取り消す。
→請求棄却

【判例のポイント】

1 賞与には、一般に労働の対価としての意味だけでなく、功労報償的意味及び将来の労働への意欲向上策としての意味があるとされ、勤怠査定に基づいて算定されるY社における正規職員の賞与についても同様の意味合いが認められる。期間の定めがなく長期雇用を前提とし、将来にわたる勤務の継続が期待される正規職員に対し、労働に対するモチベーションや業績に対する貢献度の向上を期待してインセンティブ要素を付与することには、一定の人事施策上の合理性が認められるから、期間の定めがあり、将来にわたる勤務の継続が期待される雇用形態となっていない非正規職員との間で相違を設けること自体が不合理であるということはできない。そして、Y社においては、正規職員には、賞与を基本配分と成績配分に区分し、成績配分の額により支給総額が増減する仕組みとする一方、非正規職員には、個別労働契約によって支給額を定額化し、成績配分の額により支給総額が増減することのない仕組みとしているところ、かかる取扱いが不合理ということはできない。
また、その相違の程度についてみると、Y社において平成27年度に事務職員に対して支給された冬期賞与の額は、正規職員は平均で基本給2.1か月分、非正規職員は一律で基本給1か月分であり、その差額は基本給約1か月分にすぎず、実際に非正規職員であったXに支給された冬期賞与とY社が正規職員の常勤Iであった場合に支給される冬期賞与の差額は、17万5000円程度であり、Xによれば、Xを常勤Iで採用したと想定した場合に得られる年間収入見込額とXが現実に得た収入額の差はほぼ賞与の差によるものであるところ、その割合は約8.25パーセントというのであるから、賞与の前記目的に沿った相違として合理的に認められる限度を著しく超過しているとはいえない。したがって、Y社が、賞与について、正規職員と非正規職員との間で前記相違を設定したことが不合理であるとは認められず、労働契約法20条に違反するとはいうことはできない。

上記判例のポイント1の理由はさておき、賞与については労働契約法20条違反になりにくいことはこれまでの裁判例の流れですね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介826 「大人の人づきあい」でいちばん大切なこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
「大人の人づきあい」でいちばん大切なこと (だいわ文庫)

男性であれば一度は読んでおいても損はない本だと思います。

もっとも、20代のときにこの本に書かれていることが理解できたかというとなかなか難しかったかもしれません。

今ではよく理解できるものばかりです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事関係にしても、ケチでは役に立たない。およそ商売とは、いかに稼ぐかの前に、いかにお金を使うかが成否のカギを握る。ここ一番という場面でお金をドンと出すことができないと、せっかくのチャンスを逃してしまうのである。これは、慣れの問題でもある。ふだんからケチケチしていては、お金の使い方もわからない。たとえ遊びでも豪快に使った経験があれば、どういうリターンが得られるかという勘どころはわかる。それが仕事に生かせるのである。」(214頁)

全くその通り!

普段セコいといざというときにも日頃のセコさが出てしまうのです。

損をしたくないの一心。 そのことしか考えていないのです。

しかし、損をするかもしれないというリスクを負わなければ、リターンなどあり得ません。

また、何かに投資をする場合(最もリターンの良い投資先は自分自身です。)でもすぐにリターンを求めてはいけません。

考え方がセコい。

このように考えることができる人の共通点は、日頃からお金を使い慣れているということ、仮に損失が出たとしても、また稼げばいいやと思っていること(稼ぐ自信がある)ということでしょうか。

お金の使い方がダサい大人にはなりたくないですねー。

労働時間51 警備員の仮眠時間の労働時間性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、2人勤務体制における仮眠時間の労働時間性が肯定された裁判例を見てみましょう。

富士保安警備事件(東京地裁平成30年1月30日・労経速2345号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員であるXらが、Y社はXらの労働時間を過小計上し、東京都の最低賃金を下回る賃金しか支給されず、割増賃金もほとんどが支給されていなかったなどと主張して、Y社に対し、労働契約に基づく未払賃金(割増賃金を含む。)+遅延損害金の支払いを求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、X1に対し、338万7088円+遅延損害金、付加金283万9453円+遅延損害金を支払え。
Y社は、X2に対し、364万5521円+遅延損害金、付加金250万9350円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社が証人申請したY社従業員も、巡回終了後に休憩を取得することは特別になく、仮眠時間以外の拘束時間については対応を求められる状況にあったことを証言しているうえ、Xらは、巡回時以外には、警備ボックス又は守衛室での常駐を義務付けられており、仮眠時間以外に定められた休憩の時間帯はなく、仮眠時間帯であっても、守衛室から離れることは許されていなかった。そして、実際にも、本件センターは、150名弱の留学生が学生寮において生活を送っていたため、トラブル等が発生することも多く、近隣住民(とりわけ、パイロットマンションの住人)から直接苦情の電話が入ったり、近隣住民からの通報を受けた警察が来訪するなど、仮眠時間帯であっても、対応(実作業)を要する事態が発生することも少なくなかったものである。

2 警備員が2名体制となる午後5時から午前8時までの15時間のうち、午後5時から午後6時まで及び午前6時から午前8時までの3時間を除く12時間については、いずれかの警備員が仮眠に入っていたものであるから、警備員1名による勤務と基本的に相違がないと考えられる。そして、仮眠時間帯であっても2名での対応を要したり、仮眠を取る警備員が交代する際の引継ぎに時間を要する場合もあると考えられる。

仮眠時間の労働時間性が問題となる場合、形式面のみならず、実質面についても考慮されます。

上記判例のポイント1の「実際にも」以下がそれです。

ここで、確かに守衛室からルール上は離れることができなかったけれど、実際に何かが起こるのは年に1,2回だけとなると判断が変わり得ます。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介825 「孤独」が男を変える(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
「孤独」が男を変える:男は、嫌われてこそ、一流

サブタイトルは「男は、嫌われてこそ、一流。」です。

そういうもんですかね。よくわかりませんが。

いつもながら、著者のオリジナリティが光っています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私が、『女性向けの恋愛書はもう書かない』と言ったら、いろんな女性から、『たったひとつ、男性を選ぶ時に重要なことがあるとしたらなんですか』と訊かれるので、いつもこう答えている。『人を妬まない男にしなさい』と。嫉妬を辞書で引くと、『自分よりも優れている者を妬むこと』と書いてある。情けない感情だ。・・・問題は成功者や何かに優れている人を妬むことで、その男はどうしようもなくカッコ悪い。」(107~108頁)

男の嫉妬ほどみっともないものはありません。

成功している人の悪口を言い、それで結果を出せていない自分を安心させたいのでしょうか。

「人を妬まない男にしなさい」という著者のアドバイスは、「成功している男にしなさい」もしくは「成功を目指していない男にしない」の2つを含んでいるようにも思えます。

成功している人は、人を妬む必要がありませんので、これに該当します。

成功を目指していない人は、そもそも歩んでいる道が違うので妬むという感情が起こらないのではないでしょうか。

そうすると、女性が選んではいけない男というのは、成功したいという気持ちは人一倍持っているくせに、たいした努力もしないで成功者の悪口を言うようなやつを言うのでしょう(笑)

そんな男、選ぶ人、いる? ださっ。

労働時間50 携帯電話を保有する営業社員に事業場外みなし労働時間制の適用の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、携帯電話を保有する営業社員に事業場外みなし制の適用が認められた事案について見てみましょう。

ナック事件(東京地裁平成30年1月5日・労経速2345号3頁)

【事案の概要】

Xは、株式会社であるY社に勤務する営業担当社員であったところ、Y社は、平成25年12月19日、Xに自宅待機を命じた上、「Xが、顧客に対し、虚偽の契約条件を説明し、Y社の印鑑を悪用して作成した書面を提示するなどの不正な営業活動を行って、顧客との間で不正に契約を締結しながら、正当に契約が成立したかのように装って、Y社から契約実績に応じた成績給を詐取し、業務上の混乱及び経済的損害を与えた」旨の理由を主張して、遅くとも平成26年3月4日までにXを懲戒解雇した。

本訴事件、反訴事件は、解雇前の労働契約関係及び解雇理由とされた不正な営業活動に関連して、それぞれ賃金や不当利得、損害賠償等を請求する事案である。

【裁判所の判断】

事業場外みなし労働時間制の適用肯定

【判例のポイント】

1 労働基準法38条の2第1項によれば、事業場外労働みなし制を適用するためには、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事し」,かつ「労働時間を算定し難い」ことを要する。
この「労働時間を算定し難い」ときに当たるか否かは、業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、使用者と労働者との間で業務に関する指示及び報告がされているときは、その方法、内容やその実施の態様、状況等を総合して、使用者が労働者の勤務の状況を具体的に把握することが困難であると認めるに足りるかという観点から判断することが相当である(最判平成26年1月24日参照)。
なお、携帯電話等の情報通信機器の活用や労働者からの詳細な自己申告の方法によれば労働時間の算定が可能であっても事業場外労働みなし制の適用のためには労働時間の算定が不可能であることまでは要さないから、その方法の実施(正確性の確認を含む。)に過重な経済的負担を要する、煩瑣に過ぎるといった合理的な理由があるときは「労働時間を算定し難いとき」に当たるが、そのような合理的な理由がないときは使用者が単に労働時間の算定を怠っているに過ぎないから、「労働時間を算定し難いとき」に当たらないというべきである。

2 ①Xは、営業担当社員として事業場(支店)から外出して複数の都道府県にまたがって顧客のもとを訪問する営業活動に従事することを主要な業務としていたこと、
訪問のスケジュールは上司が具体的に決定することはなく、チームを構成する原告ら営業担当社員が内勤社員とともに決定していたこと、
③訪問のスケジュールの内容は内勤社員による把握やスケジュール管理ソフト入力である程度共有化されていたが、上司が詳細又は実際との異同を網羅的に把握したり、確認したりすることはなかったこと
④訪問の回数や時間はXら営業担当社員の裁量的な判断に任されていたこと、
⑤個々の訪問を終えた後は、携帯電話の電子メールや電話で結果が報告されていたが、書面による出張報告書の内容は簡易で、訪問状況が網羅的かつ具体的に報告されていたわけではなく、特にXに関しては、出張報告書に顧客のスタンプがあっても本当に訪問の事実があったことを客観的に保証する効果はなかったこと
⑥出張報告書の内容は、添付された交通費等の精算に関する領収書に日時の記載があれば移動の事実やそれに関連する日時は確認できるが、それ以外の内容の客観的な確認は困難であり、Y社から訪問先の顧客に毎回照会することも現実的ではないこと
⑦上司は、Xら営業担当社員に業務の予定やスケジュールの変更につき具体的に指示を出すことはあったが、Xら営業担当社員の業務全体と比較すると、その割合が大きいとはいえないこと
⑧Xら営業担当社員の訪問に上司その他の監督者が同行することはなく、チームを組む内勤社員もXの上司その他の監督者ではなかったこと
⑨Y社は、Xが訪問の際、不当営業活動を繰り返していたことを相当期間把握できないままであったことが認められる。これらの認定事実を総合すると、Xの労働時間の大部分は事業場外での労働であり、具体的な業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、使用者と労働者との間で業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等に照らして、Y社がXの勤務の状況を具体的に把握することは、かなり煩雑な事務を伴わなければ不可能な状況にあったということができるから、Y社がXの事業場外労働の状況を具体的に把握することは困難であったというべきである。

3 Y社は、カードリーダーで労働時間管理も実施し、朝礼出席も指示しているが、朝礼に出席せず、顧客訪問に直行することもあり、事業場外労働の開始及び終了の各時点をある程度把握可能であるにとどまり、事業場外労働全体の実情を困難なく把握可能であったとはいえない
前掲最判平成26年1月24日で労働時間算定の困難性が否定された事案は、スケジュールの遵守そのものが重要となる旅行日程の管理を業務内容とし、また、ツアー参加者のアンケートや関係者に対する問合せで具体的な報告内容の正確性の確認が可能であり、本件とはかなり事案を異にするものといえる。

4 以上によれば、Xは労働時間の一部について事業場外で業務に従事しており、かつ、Xの事業場外労働は労働時間を算定し難い場合に当たる。

事業場外みなし労働時間制の適用が肯定された例です。

上記判例のポイント2をよく読んでみましょう。

適用範囲はそれほど広くはありません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。