本の紹介824 行ったり来たり僕の札束(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
行ったり来たり 僕の札束: 日本一有名な整形外科医が初めて語る医者とカネ

高須院長の本です。

こういう感じのタイトルでも全く嫌味がないところがすごいです(笑)

帯には「あと数十億円使い切って死ぬ」と書かれています。

さすがです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

売り上げは、対前年比とか言って上げるのを目標にしちゃダメなんだ。内部を充実していかないと。広げていくと品質が落ちる。僕は、広げるだけ広げてそのあと縮めたから、レベルが上がった。すごくおいしいレストランでも、多店舗展開すると、必ずまずくなる。まずくなると必ず客が減っていく。次は経営が傾く。自分で限度を定めてやっているところは、安定している。」(99頁)

飲食店に限らず、すべてにおいて、広げると薄まるのです。

成功すると拡大したくなるところですが、モノには限度というものがあります。

適正な範囲で自分の力を発揮できる状況をつくることのほうがよほど大切です。

同一労働同一賃金7 家族手当、住宅手当、精勤手当の支給の相違と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、家族手当、住宅手当、精勤手当の支給の相違が労働契約法20条違反とされた裁判例を見てみましょう。

井関松山製造所事件(松山地裁平成30年4月24日・労経速2346号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある労働契約を締結して就労している従業員であるXらが、Y社と期間の定めのない労働契約を締結している従業員との間に、賞与、家族手当、住宅手当及び精勤手当の支給に関して不合理な相違が存在すると主張して、Y社に対し、①当該不合理な労働条件の定めは労働契約法20条により無効であり、Xらには無期契約労働者に関する就業規則等の規定が適用される労働契約上の地位に在ることの確認を求め、②平成25年5月から平成27年4月までに支給される本件手当等については、主位的に、同条の効力によりXらに当該就業規則等の規定が適用されることを前提とした労働条件に基づく賃金請求として、予備的に、不法行為に基づく損害賠償請求として、実際に支給された賃金との差額+遅延損害金の支払を求め、③平成27年5月から平成29年10月までに支給される本件手当等について、不法行為に基づく損害賠償請求として、実際に支給された賃金との差額+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

家族手当、住宅手当及び精勤手当については労働契約法20条に違反する。

賞与については同条に違反しない

【判例のポイント】

1 Xらと同一の製造ラインに配属された無期契約労働者との間で、その定常業務の内容に相違はなく、管理業務及び新機種関連業務は重要な業務であるものの、無期契約労働者のうち一部の者について業務が異なるにすぎず、その他の業務に大きな差異も認められないことからすると、Xらと比較対象となる無期契約労働者との業務の内容に大きな相違があるとはいえない

2 有期契約労働者については、定期的な教育訓練は実施されておらず、有期契約労働者を中途採用制度により無期契約労働者とする場合であっても、職制に就任させるためには3年程度の無期契約労働者としての勤務経験を経ることが必要である。そのため、有期契約労働者全体について、将来、組長以上の職制に就任したり、組長を補佐する立場になったりする可能性がある者として育成されるべき立場にあるとはいえない。
したがって、Xらと無期契約労働者の間には、職務の内容及び配置の変更の範囲に関して、人材活用の仕組みに基づく相違があると認められる。

3 中途採用は、ほぼ毎年実施されており、現に平成28年2月時点では、Y社において採用された無期契約労働者であって職制にある11名のうち、9名が有期契約労働者から中途採用されており、無期契約労働者と有期契約労働者の地位が必ずしも固定的でないことは、本件相違の不合理性を判断する際に考慮すべき事情といえる。

4 ・・・Xらにも夏季及び冬季に各5万円の寸志が支給されていること、中途採用制度により有期契約労働者から無期契約労働者になることが可能でその実績もあり、両者の地位は必ずしも固定的でないことを総合して勘案すると、一季30万円以上の差が生じている点を考慮しても、賞与におけるXらと無期契約労働者の相違が不合理なものであるとまでは認めれらない。

5 Y社においても、家族手当は、生活補助的な性質を有しており、労働者の職務内容等とは無関係に、扶養家族の有無、属性及び人数に着目して支給されている。上記の歴史的経緯並びにY社における家族手当の性質及び支給条件からすれば、家族手当が無期契約労働者の職務内容等に対応して設定された手当と認めることは困難である。・・・有期契約労働者に家族手当を支給しないことは不合理である。

6 Y社の住宅手当は、住宅費用の負担の度合いに応じて対象者を類型化してその者の費用負担を補助する趣旨であると認められ、住宅手当が無期契約労働者の職務内容等に対応して設定された手当と認めることは困難であり、有期契約労働者であっても、住宅費用を負担する場合があることに変わりはない。したがって、・・・不合理であると認められる。

7 精勤手当の趣旨としては、少なくとも、月給者に比べて月給日給者の方が欠勤日数の影響で基本給が変動して収入が不安定であるため、かかる状況を軽減する趣旨が含まれると認められる。・・・有期契約労働者は、時給制であり、欠勤等の時間については、1時間当たりの賃金額に欠勤等の合計時間数を乗じて額を差し引くものとされ、欠勤日数の影響で基本給が変動し収入が不安定となる点は月給日給者と変わりはない。したがって、・・・不合理であると認められる。

先日出された最高裁判決がベースになってきますが、とはいえ、やはりどこまでいっても個別の判断が求められます。

通勤手当や賞与についてはある程度固いところではありますが、それ以外の手当については個々の事情をどう評価するかによって結論が変わり得ると思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介823 髙田明と読む世阿弥(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
髙田明と読む世阿弥 昨日の自分を超えていく

生涯ビジネスマンの髙田社長の本です。

そのバイタリティゆえでしょうか、いつまでも本当にお若いです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は、『信と疑』という言葉を大切にしています。一途にやり続けるのも力が要ります。それには、自分を信じること。自分を信じきれないから途中で諦めてしまうのです。『努力をしている人は必ず神様が見てくれている。自分の思う通りの自分になれるよ』と社員に言ってきました。と同時に、自分自身を疑うことも大切です。いくつになってもできていないことを謙虚に受け止めて、自己更新を図る。」(52頁)

上記文脈を見るとわかるとおり、「信」と「疑」は矛盾するものではなく、成長するためには両方必要なことがわかります。

自分を信じられるかどうかは、過去の成功体験が大きく影響してくると思いますが、これまでにこれといった成功体験がないという方は、覚悟を決めて、初めての成功体験をつくる意気込みで臨むしかありません。

どんな場合でも、一直線にレベルアップしていくことはありません。

むしろ最初のうちは相当期間、停滞期が続くのが一般的です。

不慣れな人は、その時期に「自分は向いていない」と言って努力するのを辞めてしまいます。

あともう少しがまんすればトンネルから抜けられるのに・・・。

不当労働行為200 定年退職後再雇用の組合員の雇止めと不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年退職後再雇用してきた組合員2名を雇止めにしたことが不当労働行為とされた事例を見てみましょう。

島崎エンジニアリング(再雇用者雇止め)事件(東京都労委平成29年12月19日・労判1178号92頁)

【事案の概要】

本件は、定年退職後再雇用してきた組合員2名を雇止めにしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、Aらを本件雇止めとしたのは、Y社の雇用政策に基づき進めた人員の新陳代謝の一環であり、雇用主が高齢者の雇用に関して有する裁量権の範囲で後継者の確保状況やコスト面などを考慮しての措置であると主張する。
しかし、Y社は、Aら及び組合に対し、退職金が一部支払われていないことの補償として70歳まで雇用する旨述べていたところ、70歳までの雇用が困難となったこと等を予告したり説明したりすることなく、同人らに本件雇止めを通知しており、Y社において他の65歳以上の従業員の雇用等は継続していることからすると、本件雇止めの経緯は不自然である。

2 Aらは、Y社から後進指導を指示されていたものの、指導状況の報告を求められることもなかったことからみても、Y社がAらの後継者の確保に危惧を抱いていたとはみられない。そして、Y社は、以前に後継者が確保されたため雇止めをした例があると主張するが、それを裏付けるに足りる具体的な疎明はなく、Aらの本件雇止め後2年以上が経過した本件結審時においても、Aら以外に同様の理由で雇止めとなった者がいないことからすると、Aらのみが、後継者の確保を理由に本件雇止めとされたことは、極めて異例であるということができる。

3 そうすると、Y社は、・・・組合を嫌悪し、組合員をY社から排除するため、Aらを本件雇止めとしたものというほかない。
したがって、Aらを本件雇止めとしたことは、同人らが組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たる。

上記命令のポイント1も2も合理的な説明がなされているとはいえないため、結果として不当労働行為と判断されています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介822 人生のルールを変える男の器量(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう。

今日は本の紹介です。
人生のルールを変える男の器量 (知的生きかた文庫)

いつもながら著者の率直の意見を楽しく読んでおります。

フェミニストのみなさんは読まないほうがいいです(笑)

気分を害しますので。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

なんの経験もないのに、なぜ芸能人の恋愛スキャンダルに、上から目線で非難しようとするのか。なぜ、ツイッター上にいる有名人の大人の男にタメ口で意見をいえるのか。器の話でいうと、実績のない男の上から目線ほど器の小さなものはない。二十一世紀は、人間が羞恥心を失った時代として人類史にその汚点を残すだろう。」(130頁)

自分の実生活とは全く関係がないことについても躍起になって批判をする人っていますよね。

あまり他人の生活に関心がない私とすると、「なんでそんなに怒っているのかしら」と思ってしまいます。

芸能人と通販会社の社長がロシアにプライベートジェットに乗ってサッカーを見に行って、その時の写真をアップしようが、別に好きにすればいいじゃない。

ほんと他人のことを批判するの好きなのねー(笑)

不当労働行為199 団体交渉における使用者の誠実交渉義務の内容(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、定年退職後の労働条件に合意しなかった組合員の再雇用を拒否したことが不当労働行為とされた事例を見てみましょう。

H社事件(東京都労委平成29年12月19日・労判1178号91頁)

【事案の概要】

本件は、定年退職後の労働条件に合意しなかった組合員の再雇用を拒否したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、Aの再雇用労働条件について、組合との間で実質的な交渉を行わないままY社の提示した条件に固執し続け、再雇用契約の開始日を迎えても、暫定的に再雇用契約を締結した上で雇用条件について組合と継続協議する旨の提案も拒否したものである。
組合が、Y社の提示するAの再雇用労働条件は、正社員当時と比べて大幅に低下しており、生活に困窮する旨を再三述べていることからすれば、その根拠の提示を求めて継続協議を要求するのは当然の対応であるというべきである。
それにもかかわらず、Y社が、継続協議すら拒否したのは、結局、Aの再雇用労働条件について組合と実質的な交渉を行うことを嫌い、組合がY社の提案を無条件で受け入れなかったために、同人と再雇用契約自体を締結しないという不利益な取扱いをしたものといわざるを得ない。
そうすると、Y社がAを再雇用しなかったのは、同人が組合を通して労働条件の向上を図ろうとしたためであるというほかはなく、それは、同人が労働組合の正当な行為をしたこと故の不利益取扱いに当たるというべきである。

団体交渉では使用者に妥結義務まではありませんが、合理的な理由を説明する義務は負いますので注意しましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介821 おカネは「使い方」が9割(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
おカネは「使い方」が9割 (サンエイ新書)

いや、10割だと思いますけど(笑)

どれだけお金持っていても、けちな人は本当にけちですから。

ケチナヒト、キライネ。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・服装など目に見えるものを手がかりに、その人間を無意識に評価するのだ。だから気の利いた人間は、服装や時計など身につけるものに気を配るが、意外に気がついていないのが、飲食したあとのおカネの支払い方。これが相手のいだくイメージを大きく左右するのだ。」(59頁)

おカネは命の次に大事なものだ。だからこそ、支払い方に性格と器量があらわれる。いっしょにいる人間はそれを手がかりとして、あなたを無意識に値踏みしていることを忘れてはいけない。」(62頁)

お金の支払い方は、社会に出てからどのような教育を受けてきたかが決定的に影響します。

先輩のお金の支払い方を近くで見て、お金を支払い方を学ぶわけです。

世代間でこのあたりの感覚は異なるのかもしれませんが、いずれにせよお金の支払い方でその人の人となりが判断されることは間違いありません。

ケチナヒト、キライネー。

配転・出向・転籍36 配転命令と労働者の自由意思に基づく同意(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後再雇用社員に対する配転命令の適法性に関する裁判例を見てみましょう。

KSAインターナショナル事件(京都地裁平成30年2月28日・労判1177号19頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、違法無効な配転命令により損害を受けたと主張して、債務不履行又は不法行為に基づき426万5800円の損害賠償+遅延損害金の支払を請求している事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、214万5000円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、平成27年1月16日にA監査室長から外す旨の配転命令を発しており、同月16日にはXが一度提出した始末書を書き直させることもしており、さらにXは同月22日に労働組合に加入して本件配転命令の撤回を求めていることからすると、Xが同月16日に嘱託契約書に署名捺印したのは、本件配転命令に不服があったものの、業務命令であるのでやむなく従ったにすぎず、自由な意思に基づく同意がされたと認めることはできない
また、Y社では、同月26日に、同年2月1日付けでXを関西営業本部B事業部参事に異動させる配転命令をしたのであるから、それに基づいてXが引き継ぎをしたことについても、業務命令であるのでやむなく従ったにすぎず、自由な意思に基づく同意がされたと認めることはできない
そして、配転命令が、その本来の適法性いかんにかかわらず、労働者の同意によって有効とされるためには、配転命令が違法なものであってもその瑕疵を拭い去るほどの自由意思に基づく同意であることを要すると解するのが相当であるから、本件では、Xがこのような同意をしたとは認められない
したがって、本件配転命令がXの同意を理由に有効であるとは認められない。

2 ・・・A監査室長の地位が、Y社の業務の内部監査と社員の研修を行う立場にあることを考慮しても、この社内メールをもってXがA監査室長として不適格であると認定することは、いささか早計に過ぎるというべきである。そして、XをA監査室長から外すことにより、Xが本件特約による退職金の補てん措置の対象外に減給措置を伴うものといえ、Xに経済的な不利益を及ぼすものでもある。これらの点を考慮すると、本件配転命令は、Xに経済的な不利益を及ぼしてまで行う業務上の必要性に欠けるというべきである。

3 本件配転命令により、Xは、月額5万円の退職金の補てんを得られなくなり、これは本件配転命令の不法行為と相当因果関係のある損害と認められる。そして、平成27年2月から本件口頭弁論終結日の属する月である平成29年12月までの間の35か月間の合計額は、175万円である。Xは、それ以後の分の損害も請求するが、XとY社との労働契約に職種限定がないことからすると、Xは業務上の必要があれば配置転換を命じられるべき立場にあるから、将来分の請求については未だ損害として認めるに足りない。
また、Xは、本件配転命令により精神的苦痛を受けたと認められるところ、経済的な不利益は前記により償われること、Xにも、A監査室長の立場にありながらY社の財務状況が悪いと根拠なく社内メールで述べたことに責められるべき点があることを考慮すると、本件での慰謝料は20万円と認めるのが相当である。

上記判例のポイント1はとても大切です。

当該同意が自由意思に基づいているかという論点はさまざまな事案で登場します。

裁判所がどのような点に着目して判断しているのかを理解しておきましょう。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介820 仕事も人生も娯楽でいい(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
仕事も人生も娯楽でいい (宝島社新書)

堀江さんのこれまでの本やメルマガの寄せ集めです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『貯金がないと不安だ』と思う人は多い。なぜ不安なのか?僕の答えは一つ。自分に自信がないからだ。自信がないから将来の自分が不安になる。その不安を、貯金で穴埋めしようとする。根底にあるのは、カネさえあればどうにかなる、というお金への妄信だ。もしも自分に自信を持っていたら、手元のお金は広い意味での『投資』に回すだろう。たとえば毎月3万円を貯金する人と、毎月3万円をなんらかの自己投資に充てている人と、どちらの将来に可能性を感じるかといえば後者だ。」(101頁)

同感。

毎月3万円貯金すると1年後に36万円。10年後には360万円になります。

まあ、それはそれでいいのですが、36万円を自分のスキルアップのために投資すると、結果として、毎月10万円貯金できる収入を得られるようになるかもしれません。

毎月10万円貯金すると1年後に120万円。10年後には1200万円になります。

自分を労働力の提供者と捉えるのではなく、商品として捉える。

スキルアップを目指して努力することはすなわち、自分という商品の価値を高めることにほかなりません。

人が休んでいるときに自分の価値を高める努力をするのです。

僕ら凡人が結果を出すにはこれしかありません。

管理監督者38 管理監督者性が認められることはほとんどありません(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、経営に関する権限を相当程度有した労働者の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

エルライン事件(大阪地裁平成30年2月2日・労判ジャーナル74号54頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員Xが、Y社に対し、平成25年12月16日から平成28年6月15日までの時間外労働、法定休日労働及び深夜労働に係る割増賃金合計951万1420円等の支払並びに労働基準法114条所定の付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

管理監督者には当たらない。

【判例のポイント】

1 Xについては、担当するグループの経営に関する権限を相当程度有し、それなりに高額な賃金を支給されるなど、管理監督者性を肯定する要素も認められるものの、その権限には一定の制約があった上、業務命令により容易に覆されるものであったことも踏まえると、Xが実質的に経営者と一体的な立場にあったとまでいうことはできず、出退勤の自由や待遇の点からみても、労基法上の労働時間等に関する規制による保護が不要であるということはできないから、Xが管理監督者に該当すると認めることはできない。

2 Y社は、Xが管理監督者であると認識して時間外手当等の支給対象外としていたものと認められるところ、Y社の法令解釈は結論として誤っていたといわざるを得ないが、Xの管理監督者性を肯定する要素も一定程度認められ、また、仮にXが管理監督者に該当するとしても、Y社は深夜労働に対する割増賃金の支払義務は免れないところ、本件においては、Xに対し、深夜労働に対する割増賃金の額を超える月額3万円の固定残業手当が支給されていることから、Y社が、Xは管理監督者に該当すると認識し、Xに対する割増賃金を支払わなかったことにも相当の理由があったと認められ、Y社による不払の対応が悪質であったということはできないから、本件において、Y社に対し付加金の支払を命ずるのは相当でない

なかなか管理監督者性のハードルは高いのです。

また、上記判例のポイント2に書かれているように、管理監督者に該当する場合でも、深夜労働に対する割増賃金は支払う必要がありますのでご注意ください。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。