本の紹介2093 ぜんぶ、すてれば#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から4年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトルのとおり、余計なことやモノに固執・執着しない生き方を薦めています。

何事も執着・依存すればするほど、生きにくくなります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

過去を守ろうとすると、それは『前例』となる。すると、前例と似たことをしたくなる。前例がないと行動できなくなってしまうと、ますますよくない。前例は未来を縛るもの。激動する現代において、前例は役に立たない。いつまでも新しいアイディアを捻り出せる人間でいたいから、僕は思い出を捨てる。振り返らず、見たことのない景色を求め続けたいと思う。」(49頁)

新しいことを拒否する理由として「前例がない」という言い訳はよく耳にします。

この言い訳が通用する社会・文化においては、挑戦することよりも失敗しないことが重視されます。

加点主義ではなく減点主義の帰結です。

これだけ自由に生きている身からしますと、「前例がない」なんていう生き方・働き方はもう本当に眩暈がするほど窮屈に感じます。

昨日と同じ今日、今日と同じ明日を生きるなんて、私には退屈すぎます。

不当労働行為316 従業員の勤務中の死亡について組合からの団交申入れに対し、会社が、組合員であったことの確認を求め、組合がこれを拒否したため団交が開催されなかった事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、従業員の勤務中の死亡について組合からの団交申入れに対し、会社が、組合員であったことの確認を求め、組合がこれを拒否したため団交が開催されなかった事案を見ていきましょう。

JR東日本運輸サービス事件(群馬県労委令和5年9月27日・労判1300号87頁)

【事案の概要】

本件は、組合が、Y社の従業員であったXが勤務中に死亡したことについて、その勤務状況の説明等やY社の従業員に対する安全配慮義務等を交渉事項とする団体交渉を申し入れたところ、会社は、Xが組合員であったことの確認を組合に求め、組合がこれを拒否したため団交が開催されなかった事案である。

【労働委員会の判断】

本件申立てを棄却する。

【命令のポイント】

1 労組法7条2号において規定する「使用者が雇用する労働者の代表者」とは、「現に使用者と雇用関係にある労働者の代表者」を意味し、労働組合がそれに該当する。
しかし、本件ではXは死亡前に組合に加入したことがないことは前記認定事実のとおりであり、また、Y社の従業員の中には組合の組合員が存在しないことが認められる。
したがって、組合は、労組法7条2号に規定する「使用者が雇用する労働者の代表者」に該当するとはいえない。

あまり見かけない論点ですが、労組法7条2号の規定からすれば、上記の判断となりますね。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介2092 人生100年時代の稼ぎ方#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から4年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

まさにタイトルのとおり、いかにして豊かな生活を維持していくかということにフォーカスした本です。

このご時世、現役世代で年金をあてにしている人は皆無だと思います。

もはや「老後」なんて言葉は死語になりつつあります。

一部の例外を除き、生きているうちはずっと自分の力で稼ぎ続けるほかありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

おそらく、今思うように稼げていない人や収入を得ていない人は、自分には稼ぐ力がない、何もできないと思い込んでいることでしょう。厳しい言い方になりますが、そう思い込むことで、自分を変える努力をしないで済ませているのです。稼ぐ力がないのではなく、稼ぐ力を身に付ける努力をしていないだけなのです。」(180頁)

言うは易し。

やっている人は、こんなこと言われるまでもなく、ずっと前から当たり前のようにやっていることです。

やる人は言われなくてもやる。

やらない人はいくら言われたってやらない。

ただそれだけの話。

セクハラ・パワハラ82 妊娠した歯科医師に対するハラスメントが不法行為に該当するとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、妊娠した歯科医師に対するハラスメントが不法行為に該当するとされた事案を見ていきましょう。

医療法人社団A事件(東京高裁令和5年10月25日・労経速2537号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y法人と労働契約を締結しているXが、①Aから、「不法行為一覧表」記載の不法行為を受けたと主張して、不法行為に基づく損害賠償並びに医療法46条の6の4が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条に基づき、Y社らに対し連帯して、336万4362円+遅延損害金の支払を、②令和2年1月支給分の給料について、有給休暇取得分(1日)が反映されておらず、未払賃金があると主張して、5万3345円+遅延損害金の支払を、③令和2年10月支給分の給料について、有給休暇取得(1日)が反映されておらず、未払賃金があると主張して、6万4849円+遅延損害金の支払を、④安全配慮義務が果たされていないため、労務の提供ができないと主張して、未払賃金として、48万4877円+遅延損害金の支払を、令和4年7月から本判決確定の日まで、毎月15日限り88万4389円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y法人らは、Xに対し、連帯して、22万円+遅延損害金を支払え

Y法人は、Xに対し、別紙未払賃金一覧表の認容額欄記載の各金額+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xが依拠する証拠は、Aが院内でXの悪口を言っているのではないかとの疑いを持ったXが、その証拠を得ようとして、院内のオープンスペースである控室に秘密裏にボイスレコーダーを設置しておいたところ、偶然Aの会話内容が録音できたことから、その録音内容を反訳して書証として提出した書面であることが認められる。従業員の誰もが利用できる控室に秘密裏に録音機器を設置して他者の会話内容を録音する行為は、他の従業員のプライバシーを含め、第三者の権利・利益を侵害する可能性が大きく、職場内の秩序維持の観点からも相当な証拠収集方法であるとはいえないが、著しく反社会的な手段であるとまではいえないことから、違法収集証拠であることを理由に同証拠の排除を求めるY法人らの申立て自体は理由があるとはいえない。

2 Aは、本件歯科医院の控室において歯科衛生士2名と休憩中に同人らと雑談を交わす中で、Xのする診療内容や職場における同人の態度について言及するにとどまらず、歯科衛生士2名と一緒になって、Xの態度が懲戒に値するとか、子供を産んでも実家や義理の両親の協力は得られないのではないかとか、暇だからパソコンに向かって何かを調べているのは、マタハラを理由に訴訟を提起しようとしているからではないかとか、果ては、Xの育ちが悪い、家にお金がないなどと、Xを揶揄する会話に及んでいることが認められる。
これらの会話は、元々Xが耳にすることを前提としたものではないが、院長(理事長)としてのAの地位・立場を考慮すると、他の従業員と一緒になって前記のようなXを揶揄する会話に興じることは、客観的にみて、それ自体がXの就業環境を害する行為に当たることは否定し難い
したがって、この点について不法行為の成立を認めるのが相当である。

上記判例のポイント1を見ますと、民事訴訟においては、違法収集証拠排除法則がほぼ機能しないことがわかります。

また、上記判例のポイント2では、当該労働者に対して直接告げたわけではないにもかかわらず、当該発言・会話が違法と判断されています。職場では余計な噂話や愚痴は言わないことです。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2091 プロティアン#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から4年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

変化に対応できる柔軟性や適応能力が非常に重要であることを再認識できます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのこちら。

だからこそ、どのような投資をして、どんなキャリア資本を形成するのかを、戦略的にマネジメントすることが大切なのです。では、何からスタートすればいいのでしょうか。まずは、キャリアを生涯を通じて学び続けることで蓄積される『資本の総体』として捉えましょう。」(91頁)

社会人になってからも学び続けることで、毎年、向上し続けることが大切です。

頭ではわかっていてもなかなかできないのが現実です。

日々、業務に忙殺されており、勉強をする時間的・精神的余裕がないからです。

みんな忙しすぎるのです。

次のステージに進むためには、それでもなお時間を捻出し、勉強するほかありません。

退職勧奨24 原告の辞職または退職合意申込みの意思表示が否定され、賃金の支払が命じられた事案(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、原告の辞職または退職合意申込みの意思表示が否定され、賃金の支払が命じられた事案を見ていきましょう。

永信商事事件(東京地裁令和5年3月28日・労経速2538号29頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されたXが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、当該雇用契約に基づく令和4年1月分以降の賃金月額22万6000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

地位確認認容
→バックペイ

【判例のポイント】

1 Y社は、令和3年12月27日、Y社代表者が、XがC大へフローリング材を搬送した際にガードマンに暴言を吐くなどしたと聞き及んだことから、Xに問い質したところ、Xが「もう勤まらない。」と発言したため、「勤まらないのであれば、私物を片付けて。」と返答したところ、Xが、貸与された携帯電話及び健康保険証を置いてY社の事務所を立ち去り、翌日以降出勤しなかったことを指摘して、Xが辞職又は退職合意申込みの意思表示をした旨を主張する。
しかし、Y社が主張するXが本件発言をするに至った経緯を前提としても、XがY社における就労意思を喪失したことを窺わせる事情は見当たらず、本件発言は、Y社代表者からC大の案件について問い質されたことに憤慨したXが、自暴自棄になって発言したものとみるのが自然であり、これを辞職又は退職の意思をもって発言したものとみるのは困難である。
また、Xが本件発言をした後、健康保険証等を置いてY社の事務所を去り、翌日から出勤しなかったとする点も、Y社代表者の「勤まらないのであれば、私物を片付けて。」との返答を受けての行動であって、かかる発言は、社会通念上、Xの退職を求める発言とみるのが自然であることからすると、これを解雇と捉えたXがとった行動とみて何ら不自然ではなく、その約3週間後(年末年始を挟んでいるため、近接した時期といえる。)である令和4年1月15日に、XがY社に対し解雇予告手当の支払などを求める書面をY社に送付していることもこれを裏付けるものといえる。
そうすると、Y社主張の事実からXが辞職又は退職合意申込みの意思表示をしたということはできない。

よくある事例です。

上記のようなやりとりから、会社が当該従業員の退職意思を判断することも十分理解できるところですが、裁判所は、非常に慎重に判断します。

会社としては、しっかり、退職届を受領するようにしましょう。

退職勧奨の際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介2090 僕たちは、地味な企業で食っていく。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

副業としての「地味な起業」にフォーカスした本です。

リスクが少ない分、リターンも知れていますが、最初の一歩としてはいいと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

そんな見通しが立たない世の中で生きていくには、今働いている会社だけに依存せず、経済的に自立することがとても大切です。『経済的に自立できる個人』とは、会社にいてもいなくても、周囲の人から『指名される力』を持っている人。」(19頁)

サラリーマンのみなさんは、是非、このような「指名される力」を身につけることをおすすめします。

この力を持っていると、どこに配属されようが、どの支店に異動になろうが全く関係なくなります。

では、どうすれば「指名される力」を身につけられるのでしょうか。

是非、いつもお客さんから指名されている「売れっ子」の方をよく観察し、また、話を聞きに行きましょう。

きっと「いや、別に特別なことはしていないけど・・・」と言われるでしょうが、それを鵜呑みにしてはいけません。

その人にとっては特別なことをしているつもりがないだけであって、普通の人がやっていないことを必ずしているはずです。

もじもじしていないで、売れっ子の良い所をどんどん吸収しましょう。

もじもじしているうちに人生は終わってしまいます。

労働者性54 業務委託契約の終了にあたって、原告の労働契約法上の労働者性が否定された事案(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、業務委託契約の終了にあたって、原告の労働契約法上の労働者性が否定された事案を見ていきましょう。

アイグラフィックサービス事件(東京地裁令和5年3月2日・労経速2538号3頁)

【事案の概要】

本件は、平成14年8月以降、Y社が取り扱っていた紫外線硬化装置等の設置、移設、補修及び保守等の業務に携わっていたXが、Y社に対し、(1)主位的に、Y社と労働契約を締結して上記業務を行っていたところ、Y社から令和元年10月20日をもって解雇または雇止めをされたが、いずれも無効であるとして、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②労働契約に基づく賃金の支払を求めるとともに、③不法行為に基づく損害賠償の支払を求め、(2)予備的に、Y社と業務委託契約を締結して上記業務を行っていたところ、Y社から上記日をもって当該契約を解除されたが当該解除は無効であるとして、④業務委託契約上の権利を有する地位にあることの確認、⑤業務委託契約に基づく報酬の支払、⑥不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 予備的請求のうち、④は却下

2 その余は請求棄却

【判例のポイント】

1 一般に業務委託契約は報酬支払特約が附帯した有償の準委任契約の形式をとるものと解されるところ、その場合、委任事務の受託者は、委託者に対して委任の本旨に従って事務処理義務、善管注意義務、忠実義務を負い、委任事務の履行に応じて約定の報酬請求権等の債権を有することになるが、このような業務委託契約に係る債権債務関係について契約当事者間に争いが生じたとしても、通常、契約当事者は、当該業務委託契約から発生する報酬請求権等の個別の請求権に基づく給付の訴えが可能であり、かつ、それにより紛争の解決を図ることができるから、これとは別個に確認訴訟により契約関係の存否そのものの確認を求める必要がある場合は限定されるものと解される。さらに、本件についてみても、XはY社との間でX主張の業務委託契約が締結された旨を主張するところ、Xの主張を前提としても同契約では、委託の対象となる業務の種類が定められているにとどまり、実際に委託を受けた具体的な業務は特定されていないから、包括的な基本契約にとどまるものといわざるを得ない。そうすると、上記の契約から直ちにXとY社との間における報酬請求権等の具体的な債権債務関係が形成されるものではなくその後の個別の業務委託契約の締結によって初めて具体的な債権債務関係が生じるものと解され、また、Xの主張を前提としても、X主張の業務委託契約により、Y社がXに対して個別の業務を委託することが義務付けられているものとも認め難い。
以上の事情に照らせば、Xにつき、個別契約として締結された業務委託契約に基づく給付請求とは別に、基本契約として締結されたものとみられるX主張の業務委託契約上の権利を有する地位にあることを確認することが、Xの現在の権利又は法律関係に生じている不利益又は危険を除去するために必要かつ適切であるとは認め難い。
したがって、Xの上記主張は採用することができず、本件の予備的請求に係る訴えのうち、業務委託契約上の地位を有することの確認を求める部分は、確認の利益を欠くものといわざるを得ないから、不適法な訴えとして却下されるべきである。

上記論点については、すぐに労働者性に関する判断要素のあてはめに入りがちですが、そもそも論として、確認の利益が認められるかをまずは確認する必要があります。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、判断に悩まれる場合には、事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介2089 迷ったら、二つとも買え!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から11年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には、「人生を豊かにするお金の使い方」と書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

本を読んできた人と、全く読まずにテレビばかりみてきた人とでは、50歳、60歳になったとき、その人となりに歴然とした差が生まれてくる。人相だって変化を生じる。だから、定年になってからといわず、本当は若いうちから読書に親しむ習慣をつけることが大切だ。」(80頁)

若いうちに読書の習慣が身についていない人が、50歳、60歳になって、突如、読書の習慣が身につくことはほとんどないと思いますが。

人生は、多くの場合、10代~20代で培った習慣によって形成されています。

何事も最初が肝心と言われる所以です。

良い人生を送りたければ、良い習慣を身に付けましょう。

管理監督者59 工場部門に置かれた業務部(製造部門)の責任者の管理監督者性が否定された事案(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、工場部門に置かれた業務部(製造部門)の責任者の管理監督者性が否定された事案を見ていきましょう。

三栄事件(大阪地裁令和5年3月27日・労判ジャーナル140号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員であるXが、Y社に対し、①雇用契約に基づき、平成30年9月21日から令和2年3月4日までの未払割増賃金合計745万4359円+遅延損害金、②労基法114条に基づき、付加金510万8321円+遅延損害金、③雇用契約に基づき、本件請求期間における未払の食事手当合計12万4950円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

 Y社は、Xに対し、562万7090円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、Xに対し、付加金374万1093円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、13万0692円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、工場部門に置かれた業務部(製造部門)の練りの責任者であったことが認められ、Y社の役員を除けば、工場部門の長である工場長、業務部(製造部門)の長である総責任者に次ぐ地位にあったことが認められる。
しかしながら、他方、Y社の経営方針は幹部会議において決定されていたところ、幹部会議の出席者は、会長、社長、専務その他の役員のみであり、Xが出席したことは一度もなかったこと、Xは、労務管理や人事の権限を有していなかったことが認められ、これらのことからすると、XがY社の経営に参画していたとはいえず、Xが経営者と一体的な立場にあったとは認められない。
Y社は、Xが製造部門の中核かつ最も重い責任のある立場にあったと主張するが、そのことは、Y社が出荷する生コンの質の良し悪しを決定づけるという意味においてその立場が重視されていたというにすぎず、Xが経営者と一体的な立場にあったことを基礎づけるものとはいえない。
また、Xが他の従業員に対し業務上の指示を行い得る立場にあったことをもってXが経営者と一体的な立場にあったともいえない
   
2 Xが遅刻や欠勤をした場合でも賃金控除がされていなかったものの、Xの労働時間は、タイムカードによって管理されていたほか、Xは、就業時間中に被告営業所を中抜けして本件歯科医院に通院していたことが発覚してY社に始末書を提出していることが認められることからすると、Xが勤務時間に関する裁量を有していたとは認め難い。日曜日や大型連休に出勤を要することは直ちに勤務時間に関する裁量を有していたことに結びつくものではない。
   
3 Xの年収は、平成30年は729万円余り、平成31(令和元)年も679万円余りであったことが認められ、その金額自体はそれなりに高額であるといえるものの、かかる金額は、他の従業員と比較しても、時間外手当を含めれば、その年収が特に高額であったとは認められない。また、Xの平成24年4月分以降の給与の額は、X自身の同年1月分から同年3月分までの給与と比較しても、時間外手当を含めれば、その差は最大でも2万円程度にとどまり、遜色はないものと認められる上、平成30年1月から令和2年2月分までとの比較でも、基本給の増額分が2万0375円又は2万8486円が加算されるにすぎず、その差が大きいとまではいい難い。これらのことからすると、Xが管理監督者として相応の待遇を得ていたとまではいい難い。

4 以上によれば、Xは労基法41条2号にいう管理監督者には当たらないというべきである。

ご覧のとおり、管理監督者に該当する労働者はほぼ存在しませんのでご注意を。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。