本の紹介804 本番力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
本番力 本番に強い人が必ずやっている26の習慣

サブタイトルは、「本番に強い人が必ずやっている26の習慣」です。

必ずしもみんながこの本に書かれていることをやっているわけではありません。

結局は、「場数」と「慣れ」だというのが私の考えです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・けれど、トップセールスの人たちは違いました。むすっとした相手でも穏やかな表情を絶やさず、いつのまにか相手を自分の空気に染めていくのです。私とは反対に、彼らが相手に影響しているのです。それはあきらかな事実でした。私は知りました。人と人とが対面すると、そのどちらが影響するかによって関係が決まるということを。売れている人は目の前にいるお客さんに影響を与える人だったのです。」(28頁)

決して意識するような話ではなく、また、決して勝負するようなことでもありませんが、

出会った瞬間、どちらがもう一方に影響を与えるかによって関係性が決まるというのは真実です。

どれだけ自分を大きく見せようとしても、そんな小手先のテクニックなどではいかんともしがたい「オーラ」みたいなもので関係性は決まります。

これまでどのような生活をしてきたかがいやでも「オーラ」として出てしまうのです。

競業避止義務23 退職後の競業行為に基づく損害賠償請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、元社員に対する競業行為に基づく損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本圧着端子製造事件(大阪地裁平成29年11月15日・労判ジャーナル73号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社でコネクタの開発等に従事していた元従業員Xが、退職金約555万円を受給してY社を退職した後、コネクタの製造販売等を業とする別会社に就職したため、Y社が、Xに対し、主位的に、競業行為をした場合に退職金相当額を支払う旨の合意に違反したと主張して、賠償額の予定に基づく損害賠償として約555万円等の支払を求め、予備的に、競業会社に就職した場合に退職金を支給しない旨の退職金規定により、Xの退職金の受給が不当利得に当たると主張して、不当利得返還請求権に基づき、約555万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社及びA社は、いずれも自動車用のコネクタの製造及び販売を業とする点で共通するところ、自動車用のコネクタの中でも主として取り扱う部品に差異があるとしても、いずれも自動車の動力用装置に使用されるカードエッジコネクタの開発を行っていたことが認められ、少なくともこの点において、両者の業務は競業していると認めるのが相当である。そうすると、競業の程度はともかく、Xが、Y社を退職した日の翌日にA社に就職したことは、本件不支給規定における「2年以内に競業会社に就職し、もしくは競業業務に従事した」場合に当たると認めるのが相当である。

2 使用者が、退職金を不支給又は減額するには、当該退職者について、それまでの勤続の功労を抹消ないし減殺する程度の背信的行為があることを要すると解するのが相当であるところ、Xが、A社において、Y社在籍中に知り得たカードエッジコネクタの製品仕様を利用してカードエッジコネクタの開発に従事したとまでは認められず、また、Xは、A社入社後、営業担当者を同行して、B社及びC社を訪問した事実が認められるが、仮に上記訪問の際、Xが営業活動を行った可能性があるとしても、それは単に従前の取引関係により構築されたコネクションを利用してなされたものとうかがわれるのであって、Y社の取引先を奪取する意図で行われたものであるとまでは認められず、さらに、Xが、十分な引継ぎをしないまま退職したとまで認めることはできず、そして、Xが、Y社の従業員2名を引き抜いてA社に転職させたことを認めるに足りる的確な証拠は認められないこと等から、Y社主張に係るXの功労末梢行為があるとは認められない。

退職後の競業避止義務違反はいたるところで頻発しています。

一言で言えば「やりすぎ注意」ということなのですが、その線引きが問題となります。

もっとも、多くの事例では、会社側に厳しい判断がなされていますので気をつけましょう。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

本の紹介803 自分のことだけ考える。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
(146)自分のことだけ考える。: 無駄なものにふりまわされないメンタル術 (ポプラ新書)

タイトルだけ見ると、自己中心的な内容かに誤解してしまいますが、そういう内容ではありません。

そのことはサブタイトルが「無駄なものにふりまわされないメンタル術」とされていることからもわかると思います。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ビジネスの現場でも日常生活でも、効率を低下させるもののひとつに『悩む』という行為がある。よい結果を出そうとして、人は悩む。だが、『ああでもない。こうでもない』とやっているうちに思考は堂々巡りし、袋小路に入り込む。これでは何も考えていないのと同じである。こういう時間は無駄だ。だから、僕はビジネスの決裁からプライベートの買い物まで、いつも即断即決である。」(124頁)

決断力がある人か、ない人か。

決断が速い人か、遅い人か。

仕事のしかたを見ていれば、すぐにわかります。

食事の注文をするときもしかり。

すべては習慣の問題なので、「何事もすぐに決める」ということを決めているかどうかなのです。

優柔不断な人に魅力的な人はいません。

不当労働行為197 団交の開催場所への固執と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員の雇用維持や組合活動の保障等を議題とする団交申入れに対して、法人の提案する団交ルールに応じなければ団交開催は困難であるとした法人の対応を不当労働行為に当たるとした事案を見てみましょう。

学校法人大乗淑徳学園(淑徳大学)事件(中労委平成29年10月4日・労判1174号93頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の雇用維持や組合活動の保障等を議題とする団交申入れに対して、法人の提案する団交ルールに応じなければ団交開催は困難であるとした法人の対応を不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に当たる

【命令のポイント】

1 5.9団交申入れにおいても、組合は、学外施設の使用は、移動に要する時間、交通費、労力、借用時間の制限を伴うこと及び団体交渉で資料が必要となった際の対応が困難となることを理由に挙げて学内での団体交渉を求めたが、Y社は、4.22回答と同様に学校施設は教育の場であり労働組合の活動等の場所ではないという抽象的な理由をもって学内での開催を拒否し、学内での開催による大学の業務や教育活動上の支障等について具体的な説明を行っていない

2 Y社は、組合員の雇用の維持という重要な議題を含む本件団交申入れに対し、交渉場所について組合の主張する条件を採れない合理的な理由を具体的に説明することなく、学外に限るとの自らの条件に固執して団体交渉を開催しなかったといわざるを得ない。したがって、Y社は、団体交渉の開催条件について労使の主張の食い違いを解消し、団体交渉の開催に向けて真摯に努力したとはいえず、Y社が団体交渉の開催に応じなかったことに正当な理由があったとはいえない

このような例はとても多いです。

使用者側は気をつけましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介802 本気の言葉(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
成功者を奮い立たせた本気の言葉

千田さんの本です。

3000人のエグゼクティブの背中を押し続けた参謀が放つ勇気と覚悟の72のメッセージ」だそうです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間は『やらなくてもいい理由』を述べさせると、途端に頭の回転が速くなる。どんなに冴えない人間でも、やらない理由を述べさせた途端、“逸材”に豹変するのだ。しかしそれが、これから成長し、飛躍しようとしている挑戦者の集団にとって、大きな妨げになるのは目に見えている。だから私は、経営陣に『うちの業界は特殊でね・・・』が口癖の人が一人でもいれば、徹底的に矯正するか、排除してもらうか、あるいは私が嫌われ者になって去るか、いずれかの選択肢だと固く決めていた。」(33頁)

いつも言うことですが、やらない理由を言っている時点は、それは単に「やりたくない」だけなのです。

面倒くさいだけなのです。

いかに面倒くさいことから逃げるかしか考えていないのです。

つまるところ、やる気があるかどうか、ただそれだけです。

楽をするくせがついてしまうと、そこから抜け出すのは至難の業です。

人が休んでいるときに汗を流す。それをやり続ける。

辛いけれど、凡人が結果を出すにはこれしかありません。

不当労働行為196 労組法上の使用者性の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、A社に雇用され、Y社の施設の保安警備業務に従事していたXの解雇に関する金銭解決や謝罪等を議題としてXの加入した労組が申し入れた団交について、Y社は労組法7条2号の使用者に当たらないとされた事案を見てみましょう。

国際基督教大学事件(中労委平成29年11月15日・労判1174号90頁)

【事案の概要】

本件は、A社に雇用され、Y社の施設の保安警備業務に従事していたXの解雇に関する金銭解決や謝罪等を議題としてXの加入した労組が申し入れた団交について、Y社は労組法7条2号の使用者に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

労組法7条2号の使用者には当たらない

【命令のポイント】

1 Y社が、Xとの関係で労働契約上の雇用主に当たるものではないことは当事者間に争いがない。

2 そうすると、本件団体交渉事項は、XがY社の構内で保安警備業務を行っていた際の就労の諸条件に係るものではなく、解雇によるXの雇用終了という雇用問題そのものに係るものであるから、解雇を含む一連の雇用管理、すなわち、採用、配置、雇用の終了に関する決定に関わるものということができる。
よって、こうした本件事実関係のもとで、Y社が、本件団体交渉事項に関し、労組法第7条の使用者に当たるといえるためには、上記一連の雇用管理に関する決定について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していなければならないと解するのが相当である。

3 雇用の終了については、・・・A社が決定したものと認められ、その過程において、Y社が、主体的にこれを決定していたとの事情は窺えないから、Y社が、Xの解雇を含む一連の雇用管理について、雇用主たるA社と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたと認めることはできない。
なお、本件団体交渉申入れ当時、Y社とXとの間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存在したとも認められない

労組法上の使用者性の問題です。

上記命令のポイント2が規範となります。 参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介801 SUPER FOCUS(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
極度集中 世界500万人が支持する最強の自己啓発入門

ブライアン・トレーシーさんの本です。

薄い本ですが、成功するためのエッセンスが詰まっています。

タイトルのとおり、1点に集中することの大切さを説いています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・私たちの大半は、自分の人生をそんなふうに生きている。何十、何百という様々な的に、ぼんやりとダーツを投げ続けるかのように、意義のないことに時間を浪費しているのだ。そして、投げてもなかなか的に当たらない“退屈さ”から、ダーツそのものを諦めてしまう。自分には的の中央を射抜く『才能』がなかったのだと言い残して。」(12頁)

そう。人は1つのことをやり続けると「飽きてしまう」のです。

だから、いろんなことをやりたくなってしまう。

1つのことに集中してやるよりもたくさんのことに手を広げるほうが実は楽なのです。

手を広げることは楽でもすべてを成功させることは至難の業です。

僕たち凡人は、限りある力を多くのことに分散させる余裕はありません。

1つのことに集中し、飽きずにやり続けることが結果を出す唯一の方法なのです。

有期労働契約77 経営方針転換に伴う雇止めと雇止め回避努力(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、経営方針転換に伴う雇止めが無効と判断された裁判例を見てみましょう。

NTTマーケティングアクト事件(岐阜地裁平成29年12月25日・労経速2338号35頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社との間で、いずれも雇用期間を3か月とする有期雇用契約を反復更新し、営業等に従事してきたところ、Y社が、平成27年10月1日以降のXらとの間の各雇用契約を更新しなかったことが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことから、上記各雇用契約は、労働契約法19条1号又は2号によって継続していると主張して、Y社に対し、上記各雇用契約に基づく権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、上記各雇用契約に基づき、賃金及び遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Xらのうち、雇用通算期間が最も長いX1については、12年で51回にわたり雇用契約が更新されているし、雇用通算期間が最も短いX3ですら、4年11か月で22回にわたり雇用契約が更新されていることに照らせば、XらとY社との間の雇用契約に係る雇用期間はいずれも長期間にわたり、雇用契約の更新回数も多いと評価することができる。
しかし、Y社は、Xらを含む契約社員Dとの雇用契約の更新の都度、契約社員Dに対し、更新後の雇用契約に係る雇用条件が記載された雇用契約書を交付し、同契約書に署名・押印の上、提出してもらうという手続をとることによって、雇用契約の更新に係る契約社員Dの意向を更新の都度、確認してきたことが認められる。また、新たな雇用契約の始期の後に雇用契約書が渡されることがあったものの、これが常態化していたと認めることはできない。
これらによると、Y社は、Xらとの雇用契約の更新に当たり、その都度、雇用契約書を提出させることによって、雇用契約の更新に係るXらの意向等について確認していたものであり、XらとY社との間の雇用契約の更新手続が一概に形骸化していたとまでいうことはできない
以上によれば、XらとY社との間の各雇用契約は、期間の定めのない労働契約と社会通念上同視できるとまで認めることは困難であるから、労契法19条1号所定の有期労働契約には該当しないというべきである。

2 XらとY社との間の雇用契約に係る雇用期間はいずれも長期間にわたり、雇用契約の更新回数も多いと評価することができること、Xらが、アクト岐阜、NTT西日本ー岐阜又はNTT西日本ー東海に採用された後、一貫して一般消費者に対するフレッツ光の直接販売業務等に従事していたところ、Xらの業務内容や従事していた期間に照らしても、Xらが従事していた業務は、Y社において恒常的に存在していた基幹的な業務であると認められること、雇用契約の更新について、X1は、打切りの可能性も含めて何らの説明も受けなかったし、その余のXらについても、最初の雇用契約の締結に際し、健康で、極端に営業成績が悪くなければ雇用契約の更新が続けられる、健康で売上目標を達成していれば最長65歳まで雇用を継続する、年齢は関係なく、健康で成績がよければいつまでもいられるなど雇用の継続を期待させるような説明を受けるなどしていたこと、Xらに係る雇用期間の始期を平成20年4月1日とする雇用契約書以降の各雇用契約書には、「雇用更新の可能性」について「有」と明記されるようになったこと等の事情を総合的に勘案すると、Xらにおいて、Y社との間の各雇用契約満了時に当該雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認めるのが相当である。

3 本件雇止めについて、人選の合理性や手続の相当性を欠くとはいえず、また、Y社において、契約社員C・Dに係る人員削減の必要性が一定程度生じたことは否定できないとはいえ、雇止めの対象者の人数等に見合うほどの人員削減の必要があったか否かについては疑義があること、Y社の対応は、Xらを含む雇用契約社員Dの雇用確保又は雇用喪失に対する手当てとして不相当であり、Y社が本件同意書の提出を前提条件として、本件斡旋措置や本件支給措置を講じたとしても、本件雇止め回避努力としては、不十分なものであることを総合的に考慮すれば、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものであると認めることはできない

2号事案ですが、雇止め回避努力が不十分ということで無効と判断されています。

現在は5年ルールがあるので、12年にもわたる長期間の更新は少なくなっていくと思いますが、これだけ長いとそう簡単に雇止めができないことは明らかです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介800 凡人の野望(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
凡人の野望

サブタイトルは「億万長者の思考法と毎日の行動」です。

マーケティングの本として読むと参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人を動かすのは、お金ではなく、褒章でもない。褒章を与えてくれる、その気持ちに人は動く。自分のステージを上げてくれる人間、その人間に人はついていく。自分を成長させてくれるリーダー、値打ちを上げてくれる、人生のステージを変えてくれるリーダー。そして何より『世界で誰よりも自分のことを理解してくれて、高い評価をしてくれる』リーダー。そんなリーダーのために、人は命さえ投げ出す。」(193頁)

まだ力がないうちは、自分のステージ・値打ちを上げてくれる人の下で生きていくことがとても大切です。

考えてみてください。

賞与がいくら高くても、自分の価値がずっと上がらない、そんなステージでずっと働きたいと思いますか?

これは仕事でもプライベートでも同じことです。

自分の格を下げるような人と付き合ってはいけません。

同様に、一緒にいる人の格を下げるような行動はしてはいけません。

解雇269 整理解雇の4要素をいずれも充たさないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、新聞店における整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

林崎新聞店事件(東京地裁平成29年5月24日・労判ジャーナル73号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのない雇用契約を締結して就労していた元従業員Xが、Y社のした解雇が無効であると主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇後本判決確定の日までの未払賃金等の支払並びに平成27年7月以降本判決確定の日まで毎年7月及び12月に各30万円の賞与等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

未払賞与等は棄却

【判例のポイント】

1 Y社においては、平成27年8月期には経常利益が赤字になっていることが認められるが、他方で、平成21年度には960万円であったY社の役員報酬が平成23年度には1320万円、平成24年度には1560万円に増額されていることが認められるところ、仮に役員報酬額が平成21年度以降も同年度の960万円から増額されなければ、Y社の経常利益の額はさほど減少傾向にはならず、平成27年8月期においても赤字になることはなかったことが明らかであるから、人員削減の必要性が高かったとはおよそ認め難いというべきであり、また、Y社は、本件解雇の際、移籍をXに提案したと主張するが、当該提案の事実をもってY社が解雇回避のための経営上の努力を尽くしたと認めることはできず、さらに、勤続年数が最も長く、業務に習熟し、Y社専売所において営業上最も好成績を挙げていたXを、Y社が被解雇者として選定することの合理性は見当たらないものといわざるを得ず、本件解雇は即日告知されており、Xに対する十分な説明等が尽くされたともいえないから、本件解雇は、整理解雇の4要素をいずれも充たさないものであるから、有効と認めることはできない。

2 使用者は、労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間収入の額を賃金額から控除することができるが(民法536条2項後段)、労基法26条の趣旨を勘案し、上記賃金額のうち、労基法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当であるところ、Xは、本件解雇後Y社以外の雇用主から、平成27年に33万6751円、平成28年には70万9252円の給与支払を受けていること、平成29年1月以降は収入を得ていないことが認められるから、本件解雇中のXの平均賃金(30日分)の額は26万9188円(その4割は10万7675円)と認められる。

ただでさえ判断要素が厳しい整理解雇において、上記判例のポイント1のような事情に基づき整理解雇を有効に行うのは到底不可能です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。