本の紹介2171 弱者の兵法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

サブタイトルは「折られてしまいそうな君たちへの遺言」です。

弱者のゲームチェンジのしかたが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・最近になってこのフィクションは綻び始めています。いや、一部の人々が、あることに気づき始めているといった方が正しいかもしれません。その『あること』とは何なのでしょうか?それは、最適な選択肢が、日本フィクションの外にある、だと私は思います。これまで教わってきたことをしなくても、もっといい選択肢があるし、それを選んでもいいんだよ、ということです。」(81頁)

よく出される例としては、お寿司屋さんでの修行でしょうか。

賛否両論ありますが、「もっといい選択肢」、すなわち、何年も下積みをしないで、YouTubeを見て、どんどん握ってみるみたいな。

昔から受け継がれている「べき論」の多くは、実はたいした理由がないものも多く存在します。

学校の意味不明な校則などもその一例です。

社会や組織のメインストリームからは外れることになるかもしれませんが、一度、外れてしまえば、はるかにそちらのほうが生きやすいことがすぐにわかることでしょう。

そう。みんな、メインストリームから外れるのが怖いのです。

労働時間111 ビル設備管理業務と変形労働時間制等(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう!

今日は、ビル設備管理業務と変形労働時間制等に関する裁判例を見ていきましょう。

大成事件(東京高判令和6年4月24日・労判1318号45頁)

【事案の概要】

 本件は、Y社の従業員であったX1~X3が、Y社に対し、それぞれ労基法37条に基づく割増賃金、同法114条に基づく付加金及び遅延損害金の各支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

変形労働時間制の適用は無効

【判例のポイント】(原審判決内容)

1 労基法32条の2の定める1箇月単位の変形労働時間制は、使用者が、就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間(単位期間)を平均し、一週間当たりの労働時間が週の法定労働時間を超えない定めをした場合においては、法定労働時間の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において一週の法定労働時間を、又は特定された日において一日の法定労働時間を超えて労働させることができるというものであり、この規定が適用されるためには、単位期間内の各週、各日の所定労働時間を就業規則において特定する必要があるものと解される。
また、具体的勤務割である勤務シフトによって変形労働時間制を適用する要件が具備されていたというためには、作成される各書面の内容、作成時期や作成手続等に関する就業規則等の定めなどを明らかにした上で、就業規則等による各週、各日の所定労働時間の特定がされていると評価し得るか否かを判断する必要があると解される(前記最高裁平成14年2月28日第一小法廷判決参照)。

2 本件において、Y社就業規則には、変形労働時間制における具体的な所定労働時間につき、日直勤務が午前9時から翌朝9時までの勤務で休憩は仮眠を含み8時間(労働時間は休憩を除き16時間)であること、日勤勤務が午前8時から午後5時までの勤務で休憩は1時間であることが規定され、他には、「その他」として、「本条の勤務時間の範囲で、始業・終業・休憩時間を決める。」との規定があるのみ(23条)であり、本件タワーでの勤務表における日勤勤務の始業時刻(午前9時)及び終業時刻(午後6時)並びに日直勤務の労働時間(休憩・仮眠を除き17時間。)は、そもそも就業規則の規定と一致していない。Bセンター現業所では、時期によって変わる、多数のシフトパターンの組み合わせにより勤務表が作成されており、就業規則とは全く一致していない
また、Y社就業規則において、本件タワー及びBセンター現業所のいずれについても、勤務割に関して作成される書面の内容、作成時期や作成手続等について定めた規定は見当たらず、勤務表の作成によって、就業規則等による各週、各日の所定労働時間の特定がされていると評価することもできない。

3 Y社は、当初から就業規則上に完全な勤務シフトを記載することはおよそ困難であり、シフトパターンを変更することになった場合に、その都度就業規則を変更する手続を経ることは、現実的でないなどと主張する。
しかし、具体的な勤務シフトを当初から就業規則に記載することは確かに困難であるとはいえるものの、少なくとも本件タワーにおいては、勤務表上のシフトパターンが、日勤勤務及び宿直勤務(宿直明番)並びに一回の勤務でその双方を行う宿直明日勤の勤務シフトがあるのみで比較的単純であり、当該シフトパターンのほか、勤務表の具体的な作成時期や作成手続等も含めて就業規則に規定することは困難とはいい難いにもかかわらず、Y社はそれすら行っていない

変形労働時間制が有効要件を満たさず無効と判断される例は枚挙に暇がありません。

上記判例のポイント3のような会社側の主張は採用してくれませんので、愚直に有効要件を満たす準備をするほかありません。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2170 仕事ができる人の当たり前(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

本のそでに「仕事ができる人になる唯一の秘訣は誰でも『当たり前』にできる仕事の基本を徹底的にやり切ることです。」と書かれています。

ある人にとっての「当たり前」は他の人の「当たり前」ではありません。

そもそも人によって「当たり前」の中身が全く異なるからです。

実際のところ、やり切る人とそうでない人は、ごく一部の例外を除き、早いうちに決まっており、途中で両者が入れ替わるということはまずありません。

人は若い頃に培った習慣に支配されながら人生を生きていくため、良くも悪くも、そう簡単には変わりません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事を軽視し、プライベートを重視しすぎると、短期的には楽しくても、いつまでたっても自分の人生をコントロールすることができません。その結果、長期的に見るとプライベートにかける時間もお金も脅かされることになるのです。死を意識することで生を実感できるように、実は仕事ができる人になることが、プライベートを充実させる一番の解決策になります。」(272頁)

仕事も勉強もスポーツも、最初が肝心です。

初期の段階で、いかなる習慣を身につけたかが、その後の長きにわたる人生に強く影響を与え続けます。

短期的な快楽を求める人と、長期的な計画の下、こつこつ積み重ねている人で、10年後、20年後、同じ人生であるはずがありません。

最初からワークライフバランスなんてことを言っている成功者を、私は見たことがありません。

解雇419 PIP(業務改善計画)の実施には合理的な理由があるとした一方、原告の能力不足を理由とした普通解雇は無効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、PIP(業務改善計画)の実施には合理的な理由があるとした一方、原告の能力不足を理由とした普通解雇は無効とした事案について見ていきましょう。

華為技術日本事件(東京地裁令和6年3月18日・労経速2563号20頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社による2020年3月13日付け普通解雇が無効であると主張し、Y社に対して、各請求をする事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 項目2については、自らの責任で作成すべきAMS広告の計画案として代理店作成の資料をそのまま提出した行為であり、Xの責任感の欠如を窺わせる事情と言わざるを得ない。この点については、直前の提出期限変更や夏季休暇直前という点で酌むべき事情がないとはいえないものの、同様の責任感の欠如は項目9においても露呈している。項目9については、チームで業務遂行する上で必要な協調性の欠如を窺わせる事情でもある。そして、項目12は、担当業務につき数字による結果報告にとどまらないXなりの分析や考察を加える能力の欠如を示す出来事であって、Senior Digital Marketing Managerとしてデジタルマーケティングにおける専門的能力の発揮が求められる従業員の適格性を疑わせる事情というべきである。
こうしてみると、Y社がXの就労状況を踏まえ、本件PIPを実施したことは相当であったというべきである。しかしながら、本件PIP期間を終えて退職勧奨に踏み切る前に、Y社において求められる業務の在り方についてより踏み込んだ指導や教育を施す余地はあったと考えられる。一例を挙げれば、H本部長は繰り返し数字の報告にとどまらない「分析」を求めたが、XはY社において求められる「分析」がいかなるものか理解できないまま、従前どおりY社には「分析」とは評価し得ない程度のコメントを付することを繰り返していたことが窺われる
本件PIPについても、その目標設定はXの就労状況に照らして適切なものと考えられるが、実施の過程でXと上長との面談等がどの程度行われ、Y社がXに求める業務改善の具体的内容についてXとの間で共有されていたのか、本件PIP実施中のXの取り組みにつきどのようなフィードバックがされていたのか等の詳細については、本件証拠上明らかでない

2 Xはデジタルマーケティングの経験者として中途採用されたとはいえ、管理職ではないデジタルマーケティングの1担当者にすぎず、給与水準もそれなりに高いとはいえ、Y社内部における相対的位置付けは明らかでないこと、Y社への入社からはそれほど長い期間を経過していたわけではないことにも鑑みれば、上記のような指導、教育が十分に行われた事実が認められないにもかかわらず、能力不足を理由に行われた本件解雇については、客観的合理的理由があり社会通念上相当であるとはいえず、無効であるというべきである。

能力不足を理由とする解雇の難しさ、大変さがよくわかります。

求められる業務の在り方についてより踏み込んだ指導や教育を施す必要があるとのことです。

「学校じゃないんだから・・・」という嘆きが聞こえてきそうですが、日本における雇用契約では通用しないようです。

解雇を有効にするためには、日頃の労務管理が非常に重要です。日頃から顧問弁護士に相談できる体制を整えましょう。

本の紹介2169 世界の一流は「休日」に何をしているのか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう!

今日は、本の紹介です。

「一流」が休日にすること、絶対にしないことがまとめられています。

特に驚く内容が書かれているわけではなく、やるべきことをやり続けることの大切さを再確認できるものです。

三日坊主ではなにをやっても結果は出ません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『エネルギー管理』という発想は、日本のビジネスパーソンには馴染みが薄いと思いますが、世界の一流ビジネスパーソンは、『集中力』と『モチベーション』と『生産性』を高めるために、『限られた時間』と『限られた自分のエネルギー』を最適配置するという考え方をしています。
トニー・シュワルツの主張も、簡略化すれば、『いかに重要なところにエネルギーを費やすか?』に重点が置かれています。」(196頁)

エネルギー管理なんていうかっこいい言葉を使わなくても、限られた時間とお金を何に投資してきたかが、ビジネスにおけるその人の商品価値に決定的な影響を与えていることは明白です。

やるべきことをやり続け、やるべきでないことに時間とお金を使わない。

本当にシンプルなプリンシプルです。

人生は、すべて習慣によって支配されているということです。

賃金290 社宅制度の適用について均等法の趣旨に照らし間接差別を認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、社宅制度の適用について均等法の趣旨に照らし間接差別を認めた事案について見ていきましょう。

AGCグリーンテック事件(東京地裁令和6年5月13日・労経速2565号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の一般職の女性労働者であるXが、Y社が総合職のみに社宅制度(Y社の社宅管理規程に基づき、Y社が従業員の居住する賃貸住宅の借主となって賃料等の全額支払い、その一部を当該従業員の賃金から控除し、その余をY社が負担する制度)の利用を認めていることが、男女雇用機会均等法の趣旨に照らし差別にあたり違法である等と主張した事案である。

【裁判所の判断】

均等法の間接差別に当たるとして、損害賠償請求を一部認容。

【判例のポイント】

1 社宅制度適用対象の大半を占める営業職が、女性からの応募の少ない職種であることが原因であると認めることができ、社宅制度に伴う上記の待遇の格差が、性別に由来するものと認めることはできない。

2 社宅制度の利用を、住居の転移を伴う配置転換に応じることができる従業員、すなわち総合職に限って認め、一般職に対して認めていないことにより、事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えていることについて、合理的理由は認められない。
Y社が上記のような社宅制度の運用を続けていることは、雇用分野における男女の均等な待遇を確保するという均等法の趣旨に照らし、間接差別に該当する。

どのようなケースが間接差別に該当し得るのかについてはある程度勉強しておかないと、無意識に間接差別をしてしまうことがありますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2168 会社をつぶさない社長の選択(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

著者は税理士の方です。

「客単価を上げるvs客数を増やす」、「外注化するvs社員を雇用する」、「社宅を借り上げるvs住宅手当を支給する」などの選択がいくつも掲載されています。

税理士と弁護士では意見が異なる内容もあり、とてもおもしろかったです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成長する会社はほとんどと言っていいほど、社長自らが研修に行って勉強しています。学ぶことに対する自己研鑽のモチベーションがとても高いのです。一方、伸びない会社の社長は、研修があると自分は行かずに社員に行かせます。ですから、社員のスキルは上がるのですが、社長がまったくスキルアップをしない状態となります。」(278頁)

率先垂範を基本とするのであれば、自身が勉強をしない限り、説得力がありません。

子に対して「勉強しなさい」と言いながら、自分はまったく勉強していない親のように。

まあ、反面教師という言葉もありますのでなんとも言えませんが。

解雇418 盗撮行為による懲戒解雇が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、盗撮行為による懲戒解雇が無効とされた事案を見ていきましょう。

日本郵便(懲戒解雇)事件(名古屋地裁令和6年8月8日・労経速2569号3頁)

【事案の概要】

 本件は、Y社の従業員であるXが、令和5年9月21日付けの懲戒解雇が無効であるとして、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約の賃金請求権に基づき、令和5年10月から本判決確定の日までの賃金及び賞与の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【裁判所の判断】

1 本件行為の内容自体は、Xが電車内で女性の乗客のスカート内を撮影しようとしたものであるところ、被告は、職務外非行による信用失墜行為の根絶に向け、ミーティングにより従業員に対して周知するなどの取組を行っていたことが認められる。
そうすると、本件行為について報道がされず、被告の社会的評価を低下させることはなかったとの原告の主張を考慮しても、本件行為は、Y社の企業秩序に直接の関連を有するものであり、Y社の社会的評価の毀損につながるおそれがあると客観的に認められるから、懲戒の対象となり得るということができる。そして、Xは、被害者を撮影したことを認めているから、本件行為は、愛知県迷惑行為防止条例に違反する行為であるといえ、法令に違反したとして就業規則81条1項1号に該当する。また、従業員による盗撮行為は、会社の信用を傷つけ、又は会社に勤務する者全体の不名誉となるような行為といえるから、就業規則81条1項15号にも該当するというべきである。

2 本件行為については、前記のとおり、行為時においては条例違反にとどまり、その法定刑に照らせば、他の法令違反行為と比較して重い法令違反行為であるとまではいえない。Xは被害者と示談をし、令和5年11月16日には不起訴処分がされており、刑事手続において有罪判決を受けたものではない
また、懲戒標準においては、職務外の非違行為において刑事事件により有罪とされた者は、基本として「懲戒解雇~減給」とされているのに対し、それ以外の非違行為については、基本として「減給~注意」、重大なものとして「懲戒解雇~停職」とされているところ、本件行為は、それ以外の非違行為に分類されるものであり、刑事事件において有罪判決を受けた場合と比して、類型的に、会社の業務に与える影響や被告の社会的評価に及ぼす影響は低いということができる。
さらに、本件行為が行われて以降、本件行為ないし本件行為に係る刑事手続について報道がされておらず、その他本件行為が社会的に周知されることはなかったことが認められ、X自身も本件行為日の翌日には釈放されており、通常の勤務に復帰できる状態になったことが認められる。
そうすると、本件懲戒解雇時点において、本件行為及びXの逮捕によって、Y社の業務等に悪影響を及ぼしたと評価することができる具体的な事実関係があるとはいえない。
これらの事情に加え、Xが過去に懲戒処分歴を有していないこと等も考慮すると、本件行為を懲戒事由として、懲戒解雇を選択したことは、懲戒処分としての相当性を欠き、懲戒権を濫用したものとして無効であるといわざるを得ない。 

懲戒事由には該当するが、処分が重すぎるという理由で無効とされています。

特に私生活上の非違行為に基づき懲戒処分を行う場合には、相当性要件については慎重に検討する必要があります。

労務管理に関する抜本的な改善については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2167 ストレスゼロの生き方#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

パワフルな言葉が並んでいます。

共感できる内容ばかりです。

ストレスだらけの生き方をしている方が果たしてこの本を手に取るかわかりませんが、この本に書かれていることをやれば気持ちは多少楽になると思います。気休め程度ですが。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

これだけはいっておく。他人や政治があなたの人生を変えてくれることは絶対にない。うまくいかない理由を外部の要因のせいにするな。『親が悪い』『政治が悪い』と自分以外の何かを責めるのは簡単だ。実際にそうかもしれない。が、それでは前に進めない。すべて自分の責任だと割り切って問題に向かい合うことでしか改善は望めない。外部要因はコントロールできないのだからほうっておけ。コントロールできるのは自らの行動のみだ。人生は己の手で切り拓いていくと覚悟を決めろ。」(92頁)

他責思考はそう簡単には変わりません。

今の自分の不満を社会、会社、政治、時代、親、上司のせいにしたところで、状況は何1つ好転しないことは自分が一番よくわかっているのです。

一見、自分のせいではないと思われることであっても、冷静に客観的に考えれば、自分の決断や選択が遠因であることは少なくありません。

とはいえ、良くも悪くも、人はそう簡単に変わりません。

一度作られた習慣や考え方の癖を修正するのは至難の業です。

セクハラ・パワハラ94 取締役の言動等に基づく損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、取締役の言動等に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見ていきましょう。

イーライフ事件(東京地裁令和6年1月19日・労判ジャーナル151号58頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、未払割増賃金及び労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求め、また、不法行為に基づく損害賠償請求として、300万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払割増賃金等支払請求棄却

損害賠償等請求一部認容

【判例のポイント】

1 Y社の取締役であるCの令和2年9月30日の発言は、XとC以外にも、正確な人数は不明であるが複数の従業員がウェブ会議等を通じて参加する営業会議という場でされたものであり、そして、Cは、Xが同日を最終出勤日とすること及び急な引継ぎを要することの説明に加え、同月28日及び同月29日のXとCとのやり取りや顛末の詳細を述べ、その中では、自閉症や対人恐怖症といった精神に関わる障害の名称を示して、Xには対人関係の構築等に問題があるとの意見があったことを述べつつ、CはXを評価しXの労働環境に配慮をしていたにもかかわらず、Xが転職先も答えず、最終出勤日の2日前に退職届を提出し、引継ぎに関するCからの要請に応じなかったことを非難したものであり、その時間は10分から15分に及ぶものであり、このようなCの発言は、業務上の必要に基づくXへの叱責や他の従業員への説明という範疇を超えて、Xの名誉感情を著しく害する行為というべきであるから、Xに対する不法行為となると認めるのが相当であり、Xが被った精神的苦痛に対する慰謝料は、20万円と認めるのが相当である。

慰謝料の相場観で言うとこのような金額です。

弁護士費用との関係ではなかなか判断が難しいところですが、会社のレピュテーションダメージをいかに捉えるかが和解で終わるかに直結しています。

労務管理に関する抜本的な改善については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。