賃金296 タクシー乗務員の歩合給の出来高払制賃金の該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、タクシー乗務員の歩合給の出来高払制賃金の該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

正和自動車事件(東京地裁令和6年11月29日・労経速2582号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結したXが、Y社に対して、以下の金員の支払を求める事案である。
(1)雇用契約に基づき、168万7611円+遅延損害金
(2)付加金+遅延損害金
(3)不当利得に基づき、6万円+遅延損害金

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、15万4273円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、11万9729円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 労基法27条及び労基則19条1項6号の「出来高払制その他の請負制」とは、労働者の賃金が労働給付の成果に応じて一定比率で定められている仕組みを指すものと解するのが相当であり、出来高払制賃金とは、そのような仕組みの下で労働者に支払われる賃金のことをいうものと解される。また、出来高に対する賃金比率が完全に相関する形で定められていないとしても、その賃金支払合意が、労基法等の法令に反しない内容で労使間で合意されている場合には、そのような賃金支払合意も出来高払制賃金の支払合意と認めて差し支えないと解される。

2 本件雇用契約は、原告の賃金について給与規定を適用する旨が定められており、給与規定が本件雇用契約の内容となっていると認めるのが相当である。そして、給与規定13条では、歩合給の計算方法について(1)歩合給=営業収入×歩率×業務比率とし、(2)歩率について、〈1〉営業収入のうち38万円以下の部分(49%)、38万0001円以上42万円以下の部分(91%)、42万0001円以上46万円以下の部分(95%)、46万0001円以上の部分(100%)ごとに定め、〈2〉ただし、歩合給の額が営業収入の62%を超える場合、歩率全体が62%となる、(3)業務比率について、総労働時間を、総労働時間、みなし残業時間に0.25を乗じた時間及びみなし深夜時間に0.25を乗じた時間の合計で除して算出すると定められている。

3 次に、上記の歩合給の計算に関し、みなし残業時間が3時間、みなし深夜時間が7時間であることが、本件雇用契約の内容となっているかについて検討するに、給与規定14条は、みなし残業時間及びみなし深夜時間を各人ごとに定めるものの、給与規定にそれ以上の定めはなく、被告から、原告に対し、原告のみなし残業時間3時間及びみなし深夜時間7時間であることの説明がされていないこと自体は、当事者間に争いがない
しかし、証拠及び弁論の全趣旨によれば、Y社が、上記で計算する場合に、給与規定13条の定める最大歩率62%ではなく、61%で計算していたことがあったことがうかがわれるものの、基本的に給与規定13条の計算式に基づいて計算がされていたと認められ、これに対し、Xが歩合給の計算額に異議を述べていたという事情はうかがわれず、Xは、Y社の計算式に基づく歩合給を受領していたと認められる。
そうすると、みなし残業時間3時間及びみなし深夜時間7時間であることは、本件雇用契約の内容となっていると認めるのが相当である。

4 上記の計算式に加え、みなし残業時間が3時間であること及びみなし深夜時間が7時間であることが本件雇用契約の内容となっていることからすれば、歩合給は、営業収入という労働者の成果に応じて一定比率で定められているといえる。
これに対し、Xは、原告の営業収入の額と歩合給の額が正比例の関係にない、また、歩合給の計算に、労働者の勤務日数という成果以外の計算要素が影響すると主張する。
しかし、上記からすれば、出来高払制賃金について賃金が労働給付の成果と正比例の関係にあることを要するとはいえず、この点をもって、歩合給が出来高払制賃金でないとはいえない
また、総労働時間が一定である場合、みなし残業時間及びみなし深夜時間が増えれば増えるほど(みなし残業時間とみなし深夜時間は、勤務日数が増えれば、これに比例して増える。)、業務比率の割合が減ることになるものの、勤務日数が増えれば総労働時間もそれに合わせて増えることが多く、勤務日数の増減に応じて直ちに業務比率が増減する関係にあるとはいえない。勤務日数によって業務比率の割合が影響を受ける関係にあり、出来高に対する賃金比率が完全に相関する形で定められていないものの、このことによって、歩合給が労働給付の成果に応じて一定比率で定められている賃金と評価することができないとまではいえない。また、このような本件雇用契約の内容が、労基法等の趣旨に反しているとまでは評価できない。
そうすると、歩合給は、労働給付の成果に応じて一定比率で定められている仕組みの下で労働者に支払われる賃金のことをいうものと解され、出来高払制賃金に該当すると認めるのが相当である。
よって、歩合給は、出来高払制賃金であると認められる。

上記判例のポイント3の認定は、やや危うい感じがしますがいかがでしょうか。

出来高払制賃金を採用している会社は少なくありませんが、実際には、法律上のそれに該当しないケースも散見されますのでご注意ください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2201 「言葉にできる」は武器になる。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

表紙には「『言葉にできない』ことは、『考えていない』のと同じである。」と書かれています。

言語化が上手な人というのは、それだけもう素敵ですよね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間は、その人の思考の産物にすぎない。人は思っている通りになる。 マハトマ・ガンディー」(62頁)

思考は知識の上に成り立ちます。

知らないことは考えようがないからです。

また、思考は日々の訓練によっていくらでも鍛えることができます。

逆に、車のエンジン同様、使わないといざという時に動かなくなってしまいます。

日々、正解がないことについて考え抜く訓練・習慣が大切なのだと思います。

セクハラ・パワハラ97 会社の代表者によるパワハラ発言による慰謝料の金額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社の代表者によるパワハラ発言による慰謝料の金額に関する裁判例を見ていきましょう。

NJH事件(東京地裁令和6年7月25日・労判ジャーナル156号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社の代表取締役であるC及びDからそれぞれ違法な退職勧奨、パワー
ハラスメント、名誉毀損行為を受け、また、Y社から令和4年8月分以降の月額給与を毎月2万円ずつ違法に減額されたと主張して、C及びDに対しては共同不法行為に基づく損害賠償として、Y社に対しては会社法350条又は不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料等330万円等の連帯支払を求め、また、XとY社との間の令和4年11月20日をもって退職する旨の合意は有効に成立していないにもかかわらず、退職扱いとされたと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、XとY社との間の雇用契約に基づく未払賃金請求として、Y社に対し、違法に減額された未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

合意退職は有効

C及びDのパワハラ→慰謝料10万円

【判例のポイント】

1 本件面談において、Cは、Xに対し、Xの経理部での仕事ぶりに対するCの認識に関する発言の域や、Xの経理部での働きぶりに対してXに反省を求める発言の域を超えて、「うーん。すごい人だね、あなたね。心の中、のぞいてみたいよね。夜叉だよ、夜叉。そんなことをね、言う人はね、普通じゃないって」などと、Xに対する個人的な人格非難と評価されてもやむを得ない発言をするとともに、「もうあなたに給料出す気はないし、早く、1日でも早く辞めてほしい。いなくなってほしい」、「有休マックスなんか、取れると思っちゃ、大間違いだからね。言っとくけど。大間違い」などと、有給休暇の取得を否定する発言をしたことが認められ、本件面談においてCが行った発言のうち、少なくとも上記各発言に関しては、Xに対する選法なパワーハラスメントとして不法行為を構成する。

2 Dは、本件面談に同席し、本件面談を通じて、CがXに対して各発言をすることを制することもな<、かえって、「最後に正義が勝つんだなって、僕、思ってるし、なぜE君(元社長)がこういうふうに精神的に追い詰められたかって、今、自分でもずっと考えてて。うん。その理由は、まあ、本人の問題もあるだろうけど、うん、Aちゃん(Xのこと)もあるんじゃないかなと思います」などと、Cに同調する発言もしていたことからすると、CとともにXに対して共同不法行為責任を負うものと解するのが相当である。

いろいろとあったことは容易に想像できます。

とはいえ、このご時世、仮に心の中で思っていたとしても、それを1度でも口に出したらこのような問題に発展してしまいます。

慰謝料額よりもレピュテーションダメージのほうがはるかに大きいです。

労務管理に関する抜本的な改善については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2200 自分を信じ抜く100の言葉#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

周りに流されず、自分の生きたいように生きることが幸せというものです。

いつしか自分の幸せの定義すら忘れて、気づけば1日が終わっている、なんて人も多いのではないでしょうか。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

多くの人が、自意識で自分自身を縛り付け、あたかも『牢獄』に入っているように不自由に生きています。その方が、楽なように思えるからです。さらに困ったことに、その生き方を目下の下や年下の人に強要する人もいます。前例や慣例にこだわる人は、無意識のうちに自らの『牢獄』に他人を引きずりこもうとしているのかもしれません。」(15頁)

人は、自分の状況に不満を抱いたとしても、なんとかこじつけても、正当化しようとする生き物です。

そして、「みんなそうしているよ」とか「こうやるのが常識だ」とかなんとか言って、自分の状況に他人を引きずりこもうとします。

自分の頭で考えず、誰かの言いなりになって生きるなんて、考えただけ眩暈がします。

1度きりの人生にもかかわらず、あたかも牢獄で生活しているかのような窮屈で不自由な生活なんて、まっぴらです。

解雇425 不法な金銭の領得行為の金額が少額であっても、普通解雇の有効性を肯定した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、不法な金銭の領得行為の金額が少額であっても、普通解雇の有効性を肯定した事案について見ていきましょう。

美容室A事件(東京地裁令和6年10月15日・労経速2580号24頁)

【事案の概要】

本訴は、Y社との間で労働契約を締結してY社の運営する美容室で美容師として稼働していたXが、Xによる売上金の領得行為を理由とするY社による普通解雇の意思表示が無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、民法536条2項に基づき、解雇日である令和3年10月8日から同月31日までの賃金13万9354円及び同年12月から本判決確定の日まで毎月10日限り18万円の賃金の支払を求める事案である。

反訴は、Y社が、XがY社の運営する美容室において継続的に売上金を不法に領得していたと主張して、Xに対し、不法行為に基づく損害賠償として、260万0400円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Xの本訴請求をいずれも棄却する。
2 Xは、Y社に対し、2200円+遅延損害金を支払え。

【裁判所の判断】

1 原告が顧客に対し、顧客から受領した額と代金額との差額の全額を釣銭として交付しており、認定事実(12)については、原告が顧客から代金額と同額を受領しており、いずれにおいても、顧客から本件美容室における代金額を上回る金額の交付を受けていない。そうすると、認定事実(4)、(8)、(9)及び(12)の機会において、原告がレジから五百円硬貨を取得する行為は、顧客から前記アのような態様で釣銭の一部等をチップとして受領する機会があることに乗じて、本件美容室の売上金を不法に領得したものと認めるほかない

2 原告は、4回にわたって本件美容室の売上金を不法に領得したものであるところ、その金額は合計2000円と少額であるものの、従業員を雇用して営利事業を営む者において、当該事業による売上金をレジから複数回にわたって不法に領得した者を雇用し続けることは不可能であって、原告の上記行為は、労働者と使用者の間の信頼関係を破壊するものというほかない。そして、原告が売上金を不法に領得したことを認めておらず、被害弁償をしていないことも併せ考慮すると、本件解雇について、客観的に合理的な理由を欠くとも、社会通念上相当であると認められないともいうことはできず、権利の濫用に当たるとはいえないから、本件解雇は有効というべきである。

原告が不法領得を認め、反省及び謝罪をし、被害弁償をしていたら、結論は変わったでしょうか。

犯罪については、被害額の多寡のみで判断せず、回数や犯行後の態度等も考慮要素となることを押さえていきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

本の紹介2199 起業家#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から12年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

なんでもそうですが、軌道に乗せるまでが大変です。

やり切る人の生半可でない情熱や覚悟がよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

金のためにやっている訳ではないのに、金を批判され。名声名誉のためでもないのに、陰口を叩かれて。前に進もうとするととられるあげ足。成功するたびに増えていく妬みや嫉妬。少しの本当を混ぜながら嘘をつかれたり、全くの出鱈目の噂話も、今ではもう慣れました。」(7頁)

いつからか他人の評価など、気にしても仕方がないことに気付きます。

できるだけ批判されないように、できるだけ嫌われないようにと、常に他人の評価に怯えながら自分を殺して生きていくことのあほらしさに気付くのです。

大丈夫。何をやろうと、何を言おうと、万人から好かれることも万人から嫌われることもありませんので。

そんなしょうもないことを気にしているうちに人生は終わります。

生きたいように生きればいいのです。

労働災害118 同僚の暴行による傷害に基づく療養補償給付等不支給処分が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、同僚の暴行による傷害に基づく療養補償給付等不支給処分が認められた事案を見ていきましょう。

国・豊橋労基署長事件(名古屋地裁令和6年9月11日・労判ジャーナル154号38頁)

【事案の概要】

本件は、A社の期間従業員であったXが、業務に従事中、同僚のbに顔面を殴打され、これにより右眼角膜裂傷及び虹彩脱出の傷害を負い、療養及び休業を余儀なくされたと主張して、豊橋労基署長に対し、労働者災害補償保険法に基づき、療養補償給付及び休業補償給付の支給を請求したところ、同署長が業務と本件傷害との間に因果関係が認められないとして、これらを支給しない旨の各処分をしたため、労働者が、国に対し、本件各処分に違法があるとして、その取消しを求めた事案である。

【事案の概要】

請求認容

【裁判所の判断】

1 Xは、同僚のAとパレット作業を開始し、他方、bは、同時刻頃、同僚のBとトレイ作業を開始し、Xが、休憩を終え、パレット作業に戻ろうとした際、bは、Xに対し、パレット作業からトレイ作業に交代するよう指示をしたが、Xが、これに応じなかったため、Xの対応に憤慨したbとの間で、口論(本件口論)となり、そこで、Aが、Xとbとの間に入り、これを仲裁したところ、Xとbは、一度離れ、その後間もなく、bは、Xに再び近づき、Xに対し、その顔面を左拳で1回殴る暴行を加え、これにより、労働者は、右眼角膜裂傷及び虹彩脱出の傷害(本件傷害)を負った本件暴行の経緯によれば、bは、Xに対し、パレット作業からトレイ作業に交代するよう本件指示をし、Xがこれを断ったことを契機として本件口論となり、その後、本件暴行を至ったものであり、本件傷害は、Xが業務に従事している場合において、bの故意に基づく本件暴行により本件傷害を負うに至り、そして、本件暴行がbのXに対する私的怨恨に基づくものとも、Xの自招行為によるものともいえず、本件傷害は、Xの業務に内在する危険が現実化したものであって、業務上のものであると認められるから、本件傷害について業務起因性を否定し、労働者の療養補償給付及び休業補償給付の各請求について支給しないとした本件各処分は、判断を誤るものであり、Xの請求は、理由がある。

業務に起因しているといえば起因していますね。

これで会社が安全配慮義務違反を問われたらえらいことですが・・・

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2198 大切なことだけやりなさい#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

何が大切であるか、何を大切にするかが、決定的に重要であるということがよくわかります。

時間は有限ですので。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生をよりよくする唯一の方法は、成長することである。」(240頁)

どのくらいの人たちが、「成長」にフォーカスして日々生活しているのでしょう。

肌感覚では、ほんの数パーセントな気がします。

成長には成長痛が伴いますが、それを楽しめるかどうかなんだと思います。

山登りと同じ。

決して「楽」ではないですが、その過程を「楽しい」と思えるかどうか。

もうそこに尽きるのではないでしょうか。

管理監督者65 管理監督者と認められ、未払割増賃金請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、管理監督者と認められ、未払割増賃金請求が棄却された事案を見ていきましょう。

SMAジャパン事件(東京地裁令和6年3月28日・労判ジャーナル154号54頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社に対し、労働契約に基づき、時間外労働及び深夜労働に係る未払割増賃金等の支払及び付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社代表者とともにJMCメンバーとして会社の経営の中核に関与するとともに、Y社代表者に代わって、法務・人事部門という会社にとって重要な部門を続括し、同部門の社員の人事及び労務管理を行う権限を相当程度有していたものと認められるから、労働基準法の定める労働時間規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ない重要な職務と権限を付与されていたといえ、また、Xが職務繁忙等の理由により所定労働時間内は就業を余儀なくされるような状況にあったとしても、Xの勤怠が厳格に管理されていたと評価することはできず、そして、Xは、本件請求期間中、令和3年4月支給分までは理論年収1200万円、同年5月支給分以降は理論年収1420万円の賃金の支給を受けていたところ、これらの額は、Y社において管理監督者ではない者として扱われているジョブレベル6以下の社員の平均理論年収645万円と比較すると、相当に高額であるといえ、さらには、管理監習者として扱われているジョブレベル7以上の社員の中でも3番目に高く、これら社員の理論年収の中央値970万円と比較しても、相当に高額であるから、Xには、従業員の職務及び権限に相応しい待遇がされていたと評価することができ、XはY社において同号所定の管理監督者の地位にあったものと認めるのが相当である。

管理監督者性が肯定されています。

とはいえ予見可能性に乏しい分野のため、リスクを考えると、なかなかお勧めできない制度です。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。 

本の紹介2197 世界的な大富豪が人生で大切にしてきたこと60#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「他人が目もくれない場所に、チャンスは転がっている。」と書かれています。

みんなと同じことに不安を感じるくらいがちょうどいいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

結局、私はお金で『自由』を買いたかったのです。会社勤めをしていたら、なかなか思うように自分のやりたいことを実現できない。私の目標は人生でやりたいことができる『自由』を手に入れることであり、そのためにお金を稼いだのです。ですから、今でもそれ以外のことにはほとんどお金を使いません。」(151頁)

全く同意見です。

「幸せ」の定義は人それぞれですが、私の場合は、あらゆることに対して「自由でいること」です。

自由でいることとは、すなわち、選択できることを意味します。

お金があれば、経済的には自由かもしれませんが、精神的に不自由であれば幸せとはいえません。

やりたいことができるという価値も大切ですが、それ以上に、嫌なことを嫌だと拒否できることのほうがはるかに価値が高いです。

結論、お金は経済的自由を与えてくれますが、それだけでは本当の自由を手にしたとはいえないわけです。

本当の意味で「自由でいる」ためには、経済的・精神的自由を獲得し、生涯、死守し続けることがキモではないかと思っています。

そのためには、兎にも角にも、勢い余って、経済的・精神的自由を奪われる選択を自らしない、ということに尽きます。