本の紹介2162 サバイブする力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

サブタイトルは「経験を増やし、違和感を磨き、言語化すると未来が拓ける」です。

自分の心の声を聞き、本能に従ってシンプルに、本質で生きろ。」というメッセージが全面に出ています。

世間体や他人の評価ばかり気にして、自分の心の声が聞こえなくならないように気を付けましょう。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕の同次元共鳴者は、本質に添ってシンプルに生きている。本質で生きる人とは、自分がどう生きたいのかを知っていて、世間の常識や価値観に惑わされず、人と比べることなく、自分なりの幸せの形を追求している人のこと。彼ら、彼女らは、総じて笑顔が素敵で誰に対しても優しい。ピュアで飾らず、自然体で生きている。」(190頁)

さて、みなさんはいかがでしょうか。

「本質で生きる」とは、自分の幸せの定義が明確になっていることを意味するのだと思います。

他人との比較、他人の模倣からは決して幸せにはなりません。

幸せの定義は、十人十色であり、純個人的なものだからです。

世間体や他人の評価を気にすることは、幸せから遠ざかる行為です。

そんなことばかりしていると、いつの間にか、自分がどう生きたいのかがわからなくなってしまいます。

どう生きたって、人生はあっという間に終わります。

自分が生きたいように生きればいいのです。

管理監督者62 中古自動車販売買取店の店長の管理監督者性が肯定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、中古自動車販売買取店の店長の管理監督者性が肯定された事案を見ていきましょう。

自動車販売事業A社事件(岐阜地裁令和6年8月8日・労経速2565号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され店長として稼働していたXが、Y社に対し、未払時間外労働賃金及び付加金等の支払を求めるとともに、上司から指導の域をはるかに逸脱した暴言を受けるなどしたと主張し、不法行為(民法715条)に基づく損害賠償請求として慰謝料及び弁護士費用の合計220万円等の支払を求める事案である。Xが令和4年9月24日に死亡したため、Xの父母が本件訴訟手続を承継した。

【裁判所の判断】

Y社は、Xの父母各自に対し、27万5000円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 買取店の店長は、買取店における中心的な業務である買取業務に関し、一切の権限、すなわち、営業方法を決め、これに応じて店舗の従業員に対し指揮命令を行う権限、買取りを行うか否か及び適正な買取金額を決定する権限、顧客への代金の振込みを承認する権限並びに買い取った車の販売方法を決定する権限を有しており、勤務態様については、遅刻や早退による減給等の不利益はなく、状況に応じて自らの判断で直帰するなど労働時間に関する裁量を有し、また、人事の関係では、正社員の採用権限及び部下従業員の人事考課に関与する権限を有している。そうすると、買取店の店長は、自身が店長を務める買取店という一店舗単位でみれば、当該店舗の実質的な経営者であると評価することができ、利益を生み出す主体である買取店の、被告における重要性に鑑みれば、買取店の店長は、被告の経営者と一体的な立場にあるとも評価することができる。なお、買取店の店長は労働時間に関する裁量が実際には相当程度制限される場合もあるが、店長の職責や職務内容に照らしやむを得ないと考えられるのであって、これをもって上記評価が直ちに左右されるものではない。
以上に加え、買取店の店長が労働時間、休憩、休日に関する労働基準法の規定を適用しないこととしても保護に欠けることにはならないと評価し得る程度の待遇が設けられていると認められることも踏まえれば、買取店の店長は、労働基準法41条2号の掲げる管理監督者に該当すると認めるのが相当であり、この点に関する原告らの主張はいずれも採用できない。
したがって、買取店の店長は、管理監督者に該当し、労働基準法37条等の規定の適用はないから、争点(1)について検討するまでもなく、XのY社に対する未払時間外労働賃金支払請求権が存するとは認められない。

珍しく管理監督者性が肯定されています。

一店舗単位でみれば、経営者と同等の裁量が与えられていたことが決め手となっています。

店長であれば、当然に管理監督者に該当するわけではないので、ご注意ください。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。   

本の紹介2161 人生の教科書 ストイシズム(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今のぬるま湯社会において、「ストイックな生き方」をあえて選択する人はそれほど多くないでしょう。

この本を購入する人はもともとストイックな生活を好むタイプかと思いますので、書かれている内容は特に驚くようなものではありません。

普段、普通にやっていることが言語化されているといった感じです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

偉大なものは突然生まれない。一房のブドウや一玉のイチジクであっても、いきなり実ることはない。いま『イチジクがほしい』と言われたら、わたしは『それには時間が必要だ』と答える。まずはイチジクの花を咲かせ、次に果実をつけさせ、さらにそれを熟させる。イチジクの果実ですら、ほんの一時間で熟すことはないというのに、それでもなお、それほど短い時間で、それほど簡単に、思考の果実を手に入れようというのか?」(102頁)

継続的な努力がいかに必要であるかがよくわかる例えですね。

他人の成功を目の当たりにして、嫉妬して、誹謗中傷して、足を引っ張って、自分のいるレベルまで引きずり下ろすことばかりを考えている人が世の中にはたくさんいます。

他人を引きずり下ろしたところで、自分自身は何一つ変わらないのに。

人が休んでいるとき、遊んでいるときに、どれだけ準備をし続けてきたのか。

ただそれだけの違いです。

賃金289 窃盗(荷抜き)を行ったことを理由とする未払退職金等支払請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、窃盗(荷抜き)を行ったことを理由とする未払退職金等支払請求が棄却された事案を見ていきましょう。

焼津漁協協同組合事件(静岡地裁令和6年5月23日・労判ジャーナル149号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元職員Xが、Y社に対し、労働契約に基づき、退職金及び手当の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 顧問弁護士等を構成員とする調査委員会が、聴き取り調査を行った結果、Y社の市場部次長であるCを含む複数の従業員が、約3年間にわたり荷抜きをしていたことが確認され、具体的には、Cは、上司であったEから指示され、未計量のパレットをY社が所有する旧第四冷蔵庫に搬送し、冷蔵庫の従業員が入庫伝票を起票せずに入庫させ、その後、Cから冷蔵庫に搬入した旨の連絡を受けたEが、運送の担当者に連絡し、この連絡を受けた運送担当者が、冷蔵庫から当該パレットを搬出し、Eの親族が勤務する市外の倉庫業者が所有する市内冷蔵庫に搬入し、Eは、上記親族から報酬を受け取り、Cに対して1か月に5~10万円程度を分配しており、Y社は、上記調査委員会の調査結果を踏まえて、X及びCに対する処分を決定したことが認められるところ、この調査結果によれば、Xは、自らが中心となり、主導的に荷抜きを行っていたのに対し、Cは、荷抜きにおいて、従属的立場にあったと判断されるから、退職金の支給において、差を設けたことについて、平等原則・比例原則に反しているとはいえず、Xの行った荷抜きは、Y社の業務に関して窃盗を行ったというものであり、Y社に対する直接の背信行為であって、Y社の名誉及び信用を失墜させた犯罪行為であり、Xの永年の勤続の功を抹消する重大な不信行為であるというほかないから、Xに対する退職金を不支給としたことについて、裁量権の逸脱・濫用があるとはいえない。

このような事案の場合、担当する裁判官によって、「永年の勤続の功を抹消する重大な不信行為」の評価のしかたが異なります。

微妙な事案の場合は、運的な要素が多分にあります。

親と裁判官は選べませんので。

三審制のどこかで妥当な結論が出されることを祈るほかありません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2160 あたりまりまえだけどなかなかできない42歳からのルール(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から15年前の本ですが、この歳になって読み返すとおもしろいですね。

30代前半のときに読んだ感覚とはまったく異なります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ぼくは、ビジネスの世界で生きるということは、不自由さから解き放たれて、自由を獲得するための戦いだと思っている。戦いに勝つために必要なことは、3つある。1つ目は、どこでもやっていけるだけの普遍的な力を身につけること。2つ目は、周囲から信頼されること。そして最後は、明確な意思とビジョンを持つこと。」(67頁)

「不自由さから解き放たれて、自由を獲得するための戦い」

みんながみんなそうだとは思いませんが、これはまさに私が弁護士を目指そうと思った理由です。

30代前半から、40歳になったときにどうなっているかという明確なビジョンを持ち、そのための準備と努力を重ねてきました。

自由でいるためには、自分に力をつけなければなりません。

誰かに(何かに)依存している限りは、真の自由を獲得することはできません。

依存は不自由への入り口なので。

一朝一夕にはいきませんが、権利のための闘争を続けるほかに手にすることができないものがあるのです。

労働時間110 運行開始前点検行為に基づく未払割増賃金等請求が一部認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、運行開始前点検行為に基づく未払割増賃金等請求が一部認められた事案を見ていきましょう。

トーコー事件(大阪地裁令和6年3月8日・労判ジャーナル149号58頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、以下の請求をした事案である。

(1)有期労働契約の更新をせず雇止めしたことは違法である(労働契約法19条により更新される)旨主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求(請求1)
(2)(1)を前提に、労働契約に基づき、雇止め後である令和3年7月分から令和4年10月分まで(16か月分)の、月額11万円の賃金(合計176万円)の支払請求(請求2)
(3)(1)を前提に、労働契約に基づき、令和4年11月支払分(末日締め、翌月15日払)から本判決確定の日までの、月額11万円の賃金の支払請求(請求3)
(4)時給1300円との合意を口頭でしたにもかかわらず時給1100円しか支払われなかったと主張し、労働契約に基づき、未払賃金合計20万円の支払請求(請求4)
(5)令和2年9月分の賃金につき、被告の責めに帰すべき事由により労務の提供ができなかったと主張し、労働基準法26条に基づき、又は労働契約に基づく民法536条2項による、1か月分の給与11万円の支払請求(請求5)
(6)始業時刻前に、アルコールチェック等の作業を指示され、1日当たり30分の残業が生じていた旨主張し、労働契約に基づき、合計9万9000円の支払請求(請求6)

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、1万4300円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、渋滞等のアクシデントに備えて早めに出勤していたことはうかがえる。しかし、出勤後から始業時刻までの間、常に労務を提供していたことを裏付ける証拠はなく、Xの供述によっても、出勤後から始業時刻までの間、継続して作業を行っていたものとは認められない。また、FがXに対して交付した文書には「①は7:00出発、②は7:15出発。皆さんはそれに間に合うように出社されています。」と記載されているのであって、被告が、業務命令として出発時刻の30分前の出社を指示していたことを認めるに足る的確な証拠はない
もっとも、出発時刻である午前7時又は午前6時50分より前に、バスの乗務という労務提供の前提となる作業として、アルコールチェック、運行開始前点検(車両を目視及び運転席で確認する。)、運転前チェック項目のチェック等の作業があることが認められ、これらは被告の指揮命令下における労働時間と評価できる。これらの作業に必要な時間は1勤務当たり5分と認める。
原告が勤務したと証拠上認められる日における出発時刻前の労務提供の前提となる作業に要した時間は以下のとおり、合計13時間となり、これに対する未払賃金は1万4300円となる。

アルコールチェック、運航開始前点検、運転前チェック項目のチェックは労働にあたりますので、運送会社の皆様、ご注意ください。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2159 フォーカル・ポイント#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

ブライアン・トレーシーさんの本です。

人生において、本当に大切なことに「焦点」を合わせることがいかに重要であるかが説かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたが取り組む分野で、頂点に立つための方法をご紹介しよう。『収入の3パーセントを自分自身に投資するという『3パーセントの法則』だ。この法則は、実に不思議な力を持っている!自分に投資する1ドルごとに、仕事がうまくいって収入が増える。最終的には10ドル、20ドル、30ドル、50ドルと稼ぎ、ときには100ドルになって自分のもとに戻ってくることがある。あなたにとって、あなた自身がいちばん価値のある資産なのだ。」(119頁)

真実です。

ほとんどの人はやらないですけどね。

でも、やっている人は、本当に愚直にやっています。

収入は、自らの商品価値との等価交換だと認識し、自己投資を続けることが大切です。

今後、今以上に格差が広がっていくことが予想されます。

日々、努力。

継続は力なり。

賃金288 降格は有効であるが、本俸を減額した点は無効であると判断した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、降格は有効であるが、本俸を減額した点は無効であると判断した事案について見ていきましょう。

住友不動産ベルサール事件(東京地裁令和5年12月14日・労判ジャーナル148号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員Xが、Y社が平成30年10月にXを管理職である所長から営業職に降格したこと及びこれに伴う賃金減額は無効であると主張して、Y社に対し、管理職の地位及び資格等級5級の地位にあることの確認、賃金減額により未払となった賃金等の支払を求め、また、平成30年下期から令和4年上期までの報奨金について、本来は管理職の報奨金テーブルに基づいて計算されるべきところ、無効となるべき降格により営業職の賃金テーブルに基づいた金額しか支給されていない等として、報奨金の不足分等の支払を求め、そして、Y社のXに対する言動はパワーハラスメントに該当し、不法行為を構成する等と主張して、不法行為に基づく損害賠償として462万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払賃金請求一部認容

損害賠償請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、部下に対して威圧的な言動により理不尽な指導を行うなど、管理職としてふさわしくな言動があったことが認められ、現にこのようなXの言動を理由として、少なくとも2名の従業員が退職したことが認められ、これに加えて、Xは、一度は、部下のない地位となったものの、その後に改めて部下を持つようになった際にも、同様の言動を繰り返していたことが認められるところ、Y社においては、このような事情を踏まえ、Xを管理職の地位に配置することはふさわしくないと判断し、本件降格を行ったものと認められ、このことについては、証人kが、Y社にとしては、Xの部下が疲弊しきっていたという状況から、Xから部下を守るということを主眼に置いた判断をした旨証言しているところであり、十分に合理性を有するから、本件降格が使用者の有する人事権の行使に当たって、その裁量の範囲を逸脱又は濫用したものとは認められず、本件降格は有効である。

2 Y社が、本件降格に伴い、Xの本俸を減額した点については、労働契約又は就業規則上の根拠がなく無効というべきであるが、ポスト手当を減額したことは労働契約又は就業規則上の根拠があり有効というべきである。

降格処分が有効であるからといって、当然に賃金の減額が有効となるわけではありませんので注意が必要です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2158 吉田松陰(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

読んでいて身震いがします。

なんというか・・・本当にすごいお方です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

死は好むべきではない。また、厭うべきことでもない。行うべきことは全て行い、もう行うべきことが尽きて、心が安らかである状態。これが死すべきところである。世の中には肉体は生きているが、心が死んでいるものがいる。また、肉体は滅びていても、魂が生き続けているものがいる。心が死ねば、生きていても意味はない。魂が生き続けていれば、肉体は死んだとしても意味がある。」(391~392頁)

享年29歳。

20代にしてこの人生観です。

行うべきを行うという強い気持ちが読み取れます。

大勢に反して自分の信念を貫いて生きるのか、

長い物に巻かれ、権力に忖度して生きるのか。

人によって価値観は異なります。

自分の人生のフィロソフィーがわかっている人は、人生を無益に過ごすことがありません。

労働時間109 飲食店における非混雑時間帯の休憩時間該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、飲食店における非混雑時間帯の休憩時間該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

月光フーズ事件(東京地裁令和3年3月4日・労判1314号99頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結し就労していたXらが、Y社に対し、労働契約に基づき、X1につき①平成28年10月分から平成30年9月分までの未払割増賃金合計1999万9769円並+遅延損害金、②平成30年6月分から平成30年9月分の未払月額賃金合計20万円+遅延損害金及び③上記未払割増賃金に係る労基法114条に基づく付加金として平成29年4月分から平成30年9月分までの法外割増賃金相当額である1468万1415円+遅延損害金の支払を求め、また、X2につき④平成29年5月1日から平成30年12月31日までの期間分の未払割増賃金から既払額を差し引いた残額合計492万6670円+遅延損害金及び⑤上記未払割増賃金に係る労基法114条に基づく付加金として平成29年11月分から平成30年9月分までの法外割増賃金相当額である455万8363円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、X1に対し、2072万0714円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X1に対し、20万円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X1に対し、1468万1415円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X2に対し、489万1905円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X2に対し、453万0871円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 労基法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、同労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。
本件においては、ランチタイムの営業時間とディナータイムの営業時間の間においても、Xらが業務に当たっており、業務以外の理由で店舗を離れることはできなかったことからすると、当該時間はXらがY社の指揮命令下にあった時間帯というべきであり、労働時間に該当すると解するのが相当である。

2 本件就業規則及び本件給与規程の施行日の月日は空欄となっており、また、X1及びX2ともに本件就業規則等を見たことがなくその説明を受けたこともないと述べていることからすると、本件就業規則及び本件給与規程がいつから施行されたものであるのか、現に施行されているのか、周知がなされているのか、明らかでないと言わざるを得ない。そして、仮に本件就業規則が有効であるとしても、本件就業規則においては毎月1日を起算日とし、所定労働時間を1か月を平均して週40時間以内とする1か月単位の変形労働時間制による労働をさせることがある旨規定されているが、各日、各週の労働時間は前月末日までに勤務表を作成して従業員に周知することとされており、それ以上の詳細な定めはないため、各日の勤務時間やその組み合わせ等が勤務表においてどのように定められるのか就業規則から推認することができない。また、本件雇用契約書及び本件労働条件通知書にも1か月単位の変形労働時間制に関する記載があるが、本件就業規則以上の詳細な規定はない。さらに,実際に作成されているシフト表を見ると、各従業員の各日について記号が付されているものの各記号の示す始業時間及び終業時間並びに休憩時間がシフト表上一義的に明らかでなく、各日の勤務時間がシフト表上明らかにされているとはいいがたい上、仮にシフト表上「○」と記載されている部分の一日の勤務時間を8時間と解したとしても、例えば平成29年10月分のシフト表ではX1につき「○」が27日あり合計216時間、X2につき「○」が24日あり合計192時間となり、1か月の変形労働時間制における労働時間の総枠(1か月31日の月では177.1時間)を超えたシフト表が組まれている
これらの点からすれば、Y社の主張する変形労働時間制が有効であるとは認められない。

休憩時間、管理監督者、変形労働時間制、固定残業制度のいずれも否定されました。

特に管理監督者と変形労働時間制は有効に運用するのは至難の業です。

また、飲食店において、上記判例のポイント1のような運用がなされていることは珍しくありませんが、法的には休憩時間とは評価されません。わかっていてもマンパワー的に無理なことも理解しております・・。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。