賃金111(東和工業事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、コース別雇用制における性別振分けと差額賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

東和工業事件(金沢地裁平成27年3月26日・労判1128号76頁)

【事案の概要】

本件は、契約期間の定めのない労働者としてY社に雇用されていたXが、Y社に対し、以下の各理由により、以下の各支払請求をした事案である。

Y社において総合職と一般職から構成されるコース別賃金制度が導入されて以降は、Y社はXに総合職の賃金表を適用すべきであったのに、一般職の賃金表を適用してきたと主張して、①主位的に、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金として、1864万3460円+賃金損害金、②予備的に、不当利得返還請求権に基づき694万8600円+遅延損害金(以下、省略)。

【裁判所の判断】

不法行為に基づく損害賠償請求として328万円(年齢給差額198万円、慰謝料100万円、弁護士費用30万円の合計)+遅延損害金

賃金請求として6万0672円+遅延損害金

付加金請求として6万0672円+遅延損害金

退職金請求として101万6266円+遅延損害金

を支払え

【判例のポイント】

1 労働基準法4条は「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」と定めている。
労働基準法4条は、性別を理由とする賃金差別を禁止した規程であり、使用者が男女別の賃金表を定めている場合のように、男女間に賃金格差が生じており、かつ、それが性別の観点に由来する(その他の観点に由来するものとは合理的に考えにくい)ものと認められるときには、男女の労働者によって提供された労働の対価が等しいかを問うまでもなく、同条違反を構成するものである。そして、この理は、賃金表に男性や女性といった名称が用いられていない場合であっても、実態において男女別の賃金表を定めたのと異ならない態様で複数の賃金表が適用されているときにも同様に当てはまると解すべきである

2 本件コース別雇用表においては、総合職と一般職とで異なる賃金表が適用されているところ(特に年齢給については、年連という要素だけで、総合職と一般職の間で相当の差額が生じる。)、この総合職と一般職の区別が、事実上、性別の観点からされていたのであれば、実態において男女別の賃金表を定めたのと異ならない態様で複数の賃金表が適用されていたものとみるほかないのであり、このような事態は労働基準法4条に違反するものといわざるを得ない。

3 Y社が従業員数十名程度の規模の会社であり、従業員も採用する機会が限られていることを考慮しても、上記のことからすると、本件コース別雇用制導入時の従業員の振り分けは、総合職及び一般職のそれぞれの要件にしたがって改めて行ったものではなく、総合職は従前の男性職からそのまま移行したもの、一般職は女性職からそのまま移行したものであり、その状況が本訴提起後まで継続していたと理解するのが素直であって、本件コース別雇用制における総合職と一般職の区別は、結局のところ、男女の区別であることが強く推認されるというべきである。

4 労働基準法4条は強行規定であり、同条に違反する労働条件は無効である(同法13条前段)。そして、Y社における一般職(事実上の女性用)の賃金表が、総合職(事実上の男性用)の賃金表に比べて、労働者に不利なものであることは明白であるから、Y社と女性労働者との労働契約のうち、一般職の賃金表を適用する部分は無効であるというべきところ、無効となった賃金の定めは総合職の賃金表によって補充されるものと解するほかない(労働基準法13条後段)。
そうすると、労働基準法4条違反の前記Y社の不法行為におけるXの損害は、Xが一般職の賃金表に基づき現に支給されていた賃金と、総合職の賃金表の適用があるとすればXが得られる賃金との差額であるというべきである。

非常に重要な裁判例です。

コース別の雇用表を採用している会社は、この裁判例を参考に現在の雇用制度が労基法違反になっていないかチェックする必要があります。

是非、実務に活かしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介546 IBMを世界的企業にしたワトソンJr.の言葉(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
IBMを世界的企業にしたワトソンJr.の言葉 (Eijipress business classics)

今から約15年前の本です。

ユニクロの柳井社長の本の中で紹介されていたので、読んでみました。

非常に具体的な経営方針が書かれています。

大企業に限らず、すべての会社が参考にすべき本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

良好な人間関係とそれによってもたらされる士気の高さに代わるものは、何もない。利益目標を達成するために必要な業務を行うには良い社員がなくてはならない。ただし、良い社員がいればよいというものではない。どんなに良い社員であろうとも、もし社員が事業を本当に好きでなければ、もし社員が事業に全面的に関わっていると感じていなければ、あるいはもし社員が自分たちは公正に扱われていないと考えるならば、事業を軌道に乗せるのはおそろしく困難である。」(97頁)

会社は人の集まりである以上、会社の力は、会社のメンバーの力で決まるのだと確信しています。

個の力、チームとしての力のいずれもが高い会社は、恐ろしく強いですね。

従業員個々人が、自らの力を高めていくことにより、会社に貢献する、社会に貢献するという志を持てると最高ですね。

会社としては、多くの従業員がそのように考えられるような社風を目指すべきだと思います。

逆に、従業員は、決して会社や自らの置かれた環境のせいにするのではなく、今置かれている場所でどうしたら自分の力を高めることができるのか自ら考え、日々、成長を目指すべきです。

奇跡が起きるのを待つのではなく、自分の力で奇跡を起こすくらいの気概が必要です。

有期労働契約63(三洋電機(契約社員・雇止め)事件)

おはようございます。

今日は、約30回更新した後の事業譲渡等を理由とする雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

三洋電機(契約社員・雇止め)事件(鳥取地裁平成27年10月16日・労判1128号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、Y社に対し、Y社のXに対する解雇ないし雇止めは無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに平成25年4月から判決確定の日までの賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社との間の雇用契約は、約30年にわたり更新されてきたものの、契約期間満了の都度、雇用契約を締結し直すことにより、雇用契約を更新してきたことが認められるのであるから、本件の雇用契約を終了させることについて、期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できるとまでいうことは困難であり、労働契約法19条1号該当性は、これを否定せざるを得ないというべきである。

2 Xに生じた雇用契約の更新への合理的期待が生じ、かつ、これが消滅したとか大きく減弱したとかいうことはできなから、Xにおいて、雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるというべきであって、労働契約法19条2号該当性が認められる。

3 本件雇止めが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」といえるか(同法19条柱書)が問題となるところ、既に認定・検討したとおり、Xには、雇用契約の更新の合理的期待を有していたといえるし、本件雇用契約は、約30年にわたり更新されてきたものであるが、他方、その更新の大半において、Y社は、契約書を作成し直しているし、労働条件が変更するごとに契約書を作成しXに提示してきており、更新手続は厳格であって、契約書の文言上も、当然には更新することが予定されているとはいえないこと、Xが所属していたG事業部が人員余剰となり、Y社に事業移管されて鳥取地区から撤退するなど、Y社の鳥取地区における事業は縮小の一途をたどっていたことからして、雇用契約の更新に寄せられる期待の合理性は相対的には減弱していたと評価すべきである。そうすると、本件雇止めにおいては、その理由自体に強度の合理性が要求されるべきであるとはいえず、Xから寄せられる上記期待に見合った程度の合理性さえ欠くといった場合においてはじめて「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」場合に該当するというべきである

上記判例のポイント3の考え方は非常に参考になります。

期待の合理性についてあるかないかの2択で考えるのではなく、強弱で捉えた上で、減弱している事情がある場合には、それに見合った雇止めの理由があれば足りると考えるわけです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介545 君は、奇跡を起こす準備ができているか。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
君は、奇跡を起こす準備ができているか。: 実力以上の結果が出せる人になる66の言葉

まず、この本のタイトルで学ぶべきなのは、奇跡は起こるものではなく、起こすものだという考え方ですね。

起こるの待っている時点で完全に他力本願です。

奇跡は自分で起こすものだと考えることにしましょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成功を目指すと、一発野郎で終わる。
今の時代、2年以内に成功の賞味期限は切れる。
5年成功し続けたら、サラリーマンの生涯賃金は稼ぎ終わる。
2年以内で消える人は、ずっと”成功”を目指していた人。
5年以上続く人は、途中から”成長”を目指すことに切り替えた人。」(36~37頁)

「成功」ではなく、「成長」を目指すというのは、このブログで紹介した他の書籍でも述べられていることです。

成功という到達点に辿り着くまでのプロセス自体を人生の目標とする。

こう考えると、「燃え尽きた」という状態にはならないのではないでしょうか。

人生は死ぬまで成長です。

40歳、50歳あたりで「もうこれ以上成長できない」ということには到底ならないでしょうね。

どこまで成長できるのか、これこそが自分の人生の目標です。

競業避止義務18(甲社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、転職に関し競業避止義務違反は生じないとされた裁判例を見てみましょう。

甲社事件(東京地裁平成27年10月30日・労経速2268号20頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、元従業員であったY社に対し、X・Y社間の雇用契約上の競業避止義務違反又は不法行為に基づき損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 一般に、会社の従業員は、元来、職業選択の自由を保障され、退職後は競業避止義務を負わないのが原則である。したがって、退職後の転職を禁ずる本件競業避止規定は、その目的、在職中のXの地位、転職が禁止される範囲、代償措置の有無等に照らし、転職を禁止することに合理性があると認められないときは、公序良俗に反するものとして有効性が否定されるというべきである。

2 確かに、Y社の主張する、労働者派遣事業を行うためにY社が負担する顧客開拓・維持の費用あるいは業務拡大の期待利益については一応保護に値する利益と考えられるが、1年勤務したに過ぎないXに対する職業選択の自由の制約として見た場合、本件競業避止規定がそれぞれ定める要件は抽象的な内容であって、幅広い企業への転職が禁止される禁止されることになる。また、禁止される期間も、3年間の競業避止期間はXの勤続期間1年と比較して非常に長いと考えられるし、本件誓約書及び本件覚書については期間の限定が全くないことから、いずれも過度の制約をXに強いているものと評価せざるを得ない

3 これに対して、Xは、休日出勤手当や残業手当の支払がなく、賞与の支給もなかった。また、Y社に内定後入社までの研修期間中にもXは業務に従事しているが、事前に聞かされていたアルバイト料の支払をなかったことからすれば、Xは、Y社から本来受けるべき対価としての賃金を十分に受け取っていないものと認められる。そればかりか、Xが転職活動をするにしても、Xが希望する積算業務の求人が非常に少なく、応募が困難な中でようやくZ社への転職が決まったという事情もあった

4 そうすると、本件競業避止規定によってXの転職を禁止することに合理性があるとは到底認められないことから、公序良俗に反するものとして有効性が否定されるというべきである。

競業避止義務に関する考え方を知るにはよい裁判例です。

上記判例のポイント1や2の考え方を理解し、それを踏まえた労務管理を行う必要があります。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

本の紹介544 ハーバード×MBA×医師 目標を次々に達成する人の最強の勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
ハーバード×MBA×医師 目標を次々に達成する人の最強の勉強法

タイトルにも書かれているとおり、著者は、医師であり、ハーバード大学医学部を出て、ボストン大学でMBAを取得したという、まさに努力の方です。

普通の人では、そもそも挑戦する前からあきらめてしまいそうなことを達成しています。

英語の勉強法や向き合い方についても書かれており、参考になります。

素晴らしいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

目標を効率良く達成するには、『勉強に対する考え方や姿勢』『勉強のスキルやプロセス』『勉強以外のネットワーキング』といったものが良循環する必要があります。そのなかでも私が最も気をつけているのは、『人生で達成したいことを見据えて目標を立てる』ことと、『何をやらないかをはっきりと決める』ことです。・・・人生は一度きりです。しかし、挑戦したいことや知りたいことは山のようにあります。その限られた時間というパイの中で、効率良く学び、目標を達成するためには、『ムダを省いて、やるべきことに100%時間を集中する』必要があります。」(3頁)

1つのことを達成するのでも、大変な努力を要するところ、同時に複数の目標を達成している人の共通点は、モチベーションの持続力と計画遂行能力の高さだと思っています。

多忙な日常生活の中で、いかにして勉強する時間を捻出するか。

限られた時間の中で、いかにして少しでも効率よく勉強をするか。

てっぺん目指して下克上を計画している若手は、是非、この本を読んで刺激を受けまくるといいと思います。

99%の人は、本を読んで終わり。実行には移しません。

だからこそ、本を読んで学んだことを実行に移す習慣を付けることで結果が、人生が変わるのです。

管理監督者36 飲食店店長の管理監督者性と固定残業制度の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、飲食店店長の管理監督者性と固定残業代に関する裁判例を見てみましょう。

穂波事件(岐阜地裁平成27年10月22日・労判1127号29頁)

【事案の概要】

本件は、平成20年7月からY社に勤務しているXが、Y社に対し、平成23年9月分ないし平成25年9月分の未払の時間外・休日・深夜割増賃金282万1547円があると主張して、同金員及びこれに対する遅延損害金を請求するとともに、労基法114条に基づいて、同額の付加金及び遅延損害金の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し282万1547円+遅延損害金を支払え。

Y社はXに対し227万8089円の付加金+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、Y社の「店長」として勤務しており、担当店舗に勤務するパート等従業員の採用、給料、昇給等について一定の権限を有しており、毎月のシフト割などを決めるほか、担当店舗の金銭の管理、食材の発注量の決定、店舗の什器備品の購入について一定の範囲の権限があったことが認められる。
しかしながら、他方で、当該店舗の営業時間を変更することはできず、パート等従業員の給料や、昇給等についても一定の枠の範囲内での権限であった上、Xに与えられていた権限は、担当店舗に関する事項に限られていて、Y社の経営全体について、Xが、決定に関与することがなされていたとは認められないのであって、企業経営上の必要から経営者との一体的な立場において、労基法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないといえるような重要な職務と権限を付与されていたということは困難である

2 また、その勤務態様についても、タイムカードを打刻することが求められ、出退勤について監理されていた上、店長が担当店舗の営業日や営業時間を自ら決定する権限はなく、休むためにはアシスト等代行者を確保する必要があったというのであるから、Xは、実質的には、自らの労働時間を自由に決定することはできないものであった。
さらに、Xの収入が、賃金センサスによる平均賃金を上回っていたとしても、Y社において、店長が賃金面で、他の一般労働者に比べて優遇措置が取られていたとは認められない
以上を総合すると、Xが労基法の41条2号の管理監督者に該当すると認めることはできないというべきである。

3 Xは、少なくとも、平成25年1月7日以降は、管理職手当(管理固定残業)として毎月10万円支給されているものが、みなし残業手当83時間相当として支給されていることを認識していたと認められる。
しかしながら、上記の83時間の残業は、36協定で定めることのできる労働時間の上限の月45時間の2倍に近い長時間であり、しかも、「朝9時半以前及び、各店舗の閉店時刻以後に発生するかもしれない時間外労働に対しての残業手当」とされていることを勘案すると、相当な長時間労働を強いる根拠となるものであって、公序良俗に違反するといわざるを得ず、これがXとY社との間で合意されたということはできない
また、他方、Y社が本件において、店舗開店前や、閉店時刻以後の残業はあまり考えられないと主張していることなどに照らすと、「朝9時半以前及び、各店舗の閉店時刻以後に発生するかもしれない時間外労働」が、月83時間も発生することはそもそも想定しがたいものであったと言わざるを得ず、その意味でも、これをXとY社との間の労働契約において合意がなされたということはできない。
よって、管理者手当(管理固定残業)は時間外労働に対する手当として扱うべきではなく、月によって定められた賃金として、時間外労働等の割増賃金の基礎とすべきである。

管理監督者性と固定残業代が争点となっています。

いずれももはや昔の論点といえます。

近くに「社長、これだと裁判、100%負けますよ・・・」とアドバイスしてあげる弁護士や社労士がいたらよかったのに・・・と思ってしまいます(実際にはアドバイスをしても聞く耳を持たない経営者もおりますが)。

固定残業制度を導入する場合には、ちゃんとやらないと、基礎賃金が増えてしまうので、余計に多くの残業代を支払うことになってしまうことをまずは理解すべきです。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介543 リーダーになる前に20代でインストールしておきたい大切な70のこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
リーダーになる前に20代でインストールしておきたい大切な70のこと

ここ最近、著者の本を手当たり次第にアマゾンで購入して読んでいます。

内容としては、徐々にかぶってくるのは仕方がないことです。

その点は別に批判されることではありません。

むしろ、同じような内容でも、角度を変えて、本を出し続けるということは、簡単なことではありません。

1冊につき、1つの気付きがあれば、十分元が取れるのが、本のいいところです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

上からご馳走になったら、下にご馳走する。上から育てられたら、下を育てる。・・・一番ダメなのは、上から授かったものを一人占めしてせき止めてしまう人だ。人体がインプットとアウトプットのバランスをとりながら生存しているのと同様、恩返しも流通させていかなければ淀んで腐ってしまう。」(67頁)

このような教えは、私たちも先輩から受けてきました。

先輩と食事に行って、お金を出そうものなら、本気で怒られたものです(笑)

懐かしいですね。

若いうちは、先輩にかわいがってもらい、できるだけ多くのことを教えてもらう。

そこで、社会や仕事のルールを学ぶわけです。

徐々に自分が先輩になっていき、今度は、後輩にご馳走しつつ、先輩からの教えを下に伝えていく番です。

これがまさに恩返しならぬ恩送り。

かっこいい先輩に巡り会えた後輩は、本当に幸せです。 一生の財産です。

労働災害86(市川エフエム放送事件)

おはようございます。

今日は、自殺した精神疾患を有するDJの職場復帰への対応と安全配慮義務に関する裁判例を見てみましょう。

市川エフエム放送事件(千葉地裁平成27年7月8日・労判1127号84頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが自殺をしたことについて、安全配慮義務違反があったと主張するXの相続人が、Y社に対し、損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、約3000万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 Y社は、Xの職場復帰を認めた平成23年10月7日の時点で、・・・に照らせば、Xの精神状態や他の従業員との人間関係に改善が見られない状態で、職場復帰を認めれば、Xが再度自殺を試みることは予想できたというべきである。
・・・その結果、Xは、職場復帰後、外形的には精力的に職務をこなしていたものの、内面では、極めて多忙であることに疲弊し、職場での人間関係は更に良くなくなっていると感じていたことが認められ、その結果、Y社の職場を壊したのは自分であり、自殺することしか責任を取る方法はないと思い込み、自殺に至ったものと推認できる

2 Aは、Xの職場復帰に当たり、Bの勤務日との調整をするなど一応の配慮をしているほか、X自身、継続的にC医師の診察を受けており、専門家による指導下にあったという事情は認められるものの、そのような状況下においてすでに自殺未遂を起こしているわけであるから、このことをより深刻に捉え、Xの職場復帰の可否を判断するに当たっては、Xに臨床心理士の診察を受けさせ、あるいは、自ら臨床心理士や主治医であるC医師と相談するなど、Xの治療状況の確認や職場における人間関係の調整などについて専門家の助言を得た上で行うべきであった
しかるに、Aは、上記のとおり、自分だけの判断でXの職場復帰及び業務内容を決めたものであり、その業務内容も前記のとおり、Xの精神的・身体的状態を十分配慮したものとはいえないものであったことからすれば、Aの対応は、Xの生命身体に対する安全配慮義務に違反するものというべきである。

3 Xは、Y社に就労する以前から精神疾患に罹患しており、自殺に結びつく素因を有していたこと、Xは、自殺未遂後、主治医であるC医師から3週間ほど休むよう勧められたにもかかわらず、その指導を受け入れなかったこと、Xは、C医師にジェイゾロフトなどの服薬を止めたい旨を申し入れ、C医師の了解を得たが、この服薬の中止がXの精神状態に何らかの悪影響を及ぼした可能性を否定できないこと、Xは、Y社から10日間の休暇を取る了解を得られ、休養の機会を与えられたにもかかわらず、それをあえて短縮して職場復帰をしたこと、Y社の職場における人間関係の悪化について、X自身相当程度の寄与をしていることが認められることなどに照らせば、XとAとの立場の違いや、Y社に求められる前記安全配慮義務違反の内容を考慮しても、Xに認められる前記損害について、損害の公平な分担という観点から、過失相殺ないしその類推適用により、3割を減額するのが相当である。

精神疾患を理由とする休職後、職場復帰をさせる際、使用者としては、細心の注意を払う必要があります。

上記判例のポイント2を理解し、リスクヘッジを図るべきです。

独自の判断だけで手続を進めることは決しておすすめしません。

本の紹介542 折れないハートをつくる7つの秘訣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
折れないハートをつくる7つの秘訣―メヴィウスの翼

著者は美容室やネイルサロン等を展開するフォルテさんの社長です。

お食事にご一緒させていただいたこともありますが、鈴木社長の人柄、人間力に触れると、多くの人がファンになってしまうのがよくわかります。

本についても、とてもわかりやすく、これまで社長が勉強を重ねてきたことが凝縮されています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

美容師のカリスマブームが訪れる以前、人手不足で非常に苦労していた時代があった。新卒といわれる学生さんは、僕のような小さな美容室にはなかなか就職してくれない。当時は僕も、早朝からいくつもの美容学校をまわり、先生にご挨拶をする毎日だった。・・・ある日、求人に大成功しているサロンの噂を聞きつけた。さっそく僕はそのサロンの経営者に会いに行き、話を伺うことにした。
『すごいですね。毎年、50人以上、入社されると聞きました。僕も毎日走り回って頑張っているんですが・・・なんでうまく行かないんでしょうかね?』
『ハハハ。それで何校ぐらいまわったの?』
『30校ぐらいでしょうか』
『鈴木君、それじゃあ、やっているうちに入らないよ。僕は北はオホーツクから南は西表島(沖縄県)まで行ったよ。まわった数は・・・そうだなぁ、各種学校も含めて、400校くらいかな』
”バットで頭を殴られた感じ”・・・という表現があるが、その時の僕の気持ちを表現するなら、まさにそれだった。僕は、自分が恥ずかしかった。『本気のつもり、やっているつもり』の落とし穴とはこういうことか!本気にも、『レベルと質』があるのだ。・・・」(66~67頁)

「本気のつもり、やっているつもり」の落とし穴について、ご自身の経験を交えて説明されています。

近くに圧倒的な努力をしているメンターがいる人は、本当に幸せなことです。

自分では本気でやっている「つもり」でも、近くに、自分の何倍も努力している人がいるのを見ると、「もうダメだ」という言葉が「まだダメだ」に変わります。

今の自分を変えたいという人は、今のレベルの努力では足りないということを自覚させてくれるメンターに話を聞きに行きましょう。

刺激を受けまくって、翌日から日々の習慣、考え方を変えるのです。