解雇182(アールインベストメントアンドデザイン事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、解雇制限に関連する裁判例を見てみましょう。

アールインベストメントアンドデザイン事件(東京高裁平成22年9月16日・判タ1347号153頁)

【事案の概要】

甲事件は、Y社の従業員であるXが、Y社による解雇が無効であると主張し、Y社に対し、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と②平成20年6月から毎月末日限り賃金30万円の支払を求めた事案である。

乙事件は、Y社の代表取締役であるAが、Xらによる街宣活動の際、プライバシーと肖像権を侵害されたと主張し、Xらに対 し、不法行為に基づく損害賠償請求権として、連帯して、慰謝料300万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、甲事件について、Xの請求のうち、本判決確定日の翌日以 降の賃金の支払を求める部分の請求にかかる訴えを却下し、その余の請求をいずれも棄却し、乙事件について、Aの請求を、Xらに対し、 連帯して、慰謝料70万円及び遅延損害金の支払を求める限度で認 容し、その余の請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

Xらは、Aに対し、連帯して30万円及び遅延損害金を支払え。

XのY社に対する控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 労働基準法18条の2(現労働契約法16条)は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」と規定し、他方、同法19 条1項は、「労働者が業務上の疾病の場合の療養を安心してなし得るよ うに解雇制限を行ない、但書で例外として、使用者が、同法81条の規定による打切補償を支払う場合にこの限りではない」と規定している。 これらの規定によれば、労働基準法19条1項が業務上の疾病によって療養している者の解雇を制限している趣旨は、労務提供の対価としてその報酬を支払うという労働契約の性質上、一般に労働者の労務提供の 不能や労働能力の喪失が認められる場合には、解雇に合理的な理由が認められ、特段の事情がない限り社会通念上も相当と認められるというべきところ、業務上の疾病による労務不提供は自己の責めに帰すべき事由による債務不履行とはいえないことから、労働者が労働災害補償としての療養のための休業を安心して行えるよう配慮して、例外として解雇を制限したところにあるというべきである。
そして、同項但書は、さらにその例外として、労働基準法81条に定める打切補償を支払う場合(労働者が療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合において、使用者が平均賃金の1200日分の打ち切り補償を行った場合)には、労働基準法19条1項本文の解雇制限に服することなく労働者を解雇することができると定めているものである。
この打切補償とは、業務上の負傷または疾病に対する事業主の補償義務を永久的なものとせず、 療養開始後3年を経過したときに相当額の補償を行うことにより、その後の事業主の補償責任を免責させようとするものであり、上記のような労働基準法各条の解釈に照らすと、打切補償の要件を満たした場合には、雇用者側が労働者を打切補償により解雇することを意図し、業務上の疾病の回復のための配慮を全く欠いていたというような、打切補償制度の濫用ともいうべき特段の事情が認められない限りは、解雇は合理的理由があり社会通念上も相当と認められることになるというべきである

2  確かに、証拠及び弁論の全趣旨によれば、Xが本件打切補償による解雇の理由とされた業務上の疾病に罹患するに至った原因は、Xが、Y社の親会社である株式会社Cにおいて過重な労働を行っていたことに あると認められるが、その労働の実態は、他の社員とともに会社の当面の業務課題について、プロジェクトチームを作って集中的に仕事を行うというもので、株式会社Cが意図的にXに対して過重な労働を強要したとまで認めることはできない。
そして、株式会社C及びY社は、Xが自宅療養に入って以降、平成17年1月まで1年7か月余りにわたって、Xの自宅での療養を静観し、休業補償として給料の6割を支給していたものであり、この時点までの経緯をみる限りでは、Y社において、Xを打切補償により解雇することを意図していたようなことは窺えないし、また、 業務上の疾病の回復のための配慮を欠いていたというような事情も認められないものである

解雇制限と打切補償の争点については、先日、学校法人専修大学事件で最高裁判決が出ました。

今回のこの裁判例のうち、「打切補償の要件を満たした場合には、雇用者側が労働者を打切補償により解雇することを意図し、業務上の疾病の回復のための配慮を全く欠いていたというような、打切補償制度の濫用ともいうべき特段の事情が認められない限りは、解雇は合理的理由があり社会通念上も相当と認められることになるというべきである」との規範は、非常に重要ですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介461 「営業の仕事」についてきれいごと抜きでお話しします(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日で37歳になりました。

光陰矢のごとしです。

この1年もばりばり働こうと思います。

今日は本の紹介です。
「営業の仕事」についてきれいごと抜きでお話しします: 「売るテクニック」よりも大事なこと (単行本)

プルデンシャル生命の川田さんの本です。

これまでにも何冊か紹介をしてきましたが、営業のプロが何を大切にしているかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

「私がリクルートの新人営業マンだった頃、いつも目標を達成していた先輩に質問したことがあります。『どうやったら毎回目標達成することができるんですか?』そのときの先輩の答えは、当時の私にはよくわからないものでした。『秘訣を教えてやるよ。”達成癖”をつけること。毎回達成していると自然と達成できるようになるんだよ』」(120頁)

いわゆる「勝ち癖」というやつです。

日々、小さな目標を達成し続けるようにする。

「何をやってもどうせ達成できるにきまっている」と思えるまで達成癖をつけるのです。

達成癖をつけることが自信につながるのです。

賃金98(甲商事事件)

おはようございます。

今日は、年休・夏季休日の取得妨害、法内時間外労働の賃金未払を理由とする損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

甲商事事件(東京地裁平成27年2月28日・労経速2245号3頁)

【事案の概要】

本件は、XらがY社に対し、不当に年次有給休暇や夏季休日の取得を妨害されたとして債務不履行に基づく損害賠償を求めるとともに、就業規則上、所定労働時間は7時間30分とされているにもかかわらず、実際には8時間労働しており、1日当たり30分の法内時間外労働について賃金が未払であったとして債務不履行に基づく損害賠償の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、X1に対し、80万5871円+遅延損害金を支払え。

Y社は、X2に対し、76万7568円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 労基法の規定に基づいて労働者に年次有給休暇を取得する権利が発生した場合には、使用者は、労働者が同権利を行使することを妨害してはならない義務を労働契約上も負っているということができる。
本件のように、Y社が、平成15年7月を堺に給与明細書の有給残日数を勝手に0日に変更したり、通達を発して取得できる年次有給休暇日数を勝手に6日間に限定したり、しかもその取得理由を冠婚葬祭や病気休暇に限るとしたことは、Xらに対して、労基法上認められている年次有給休暇を取得することを萎縮させるものであり、労働契約上の債務不履行にあたる

2 Xらは、Y社の妨害により取得することができなかった年次有給休暇の日数分に相当する賃金額をY社の債務不履行に基づく損害として主張する。しかし、Xらは、Y社に対して、実際に取得した日数以上に、年次有給休暇の取得申請行為を行っていないのであるから、Xらが取得することを妨害されたと主張している年次有給休暇(予定日)についても、Xらの就労義務は消滅しておらず、同日就労したことをもって、就労義務がないのに就労したとXらに賃金相当額の損害が発生していると評価することはできない
もっとも、Y社がXらの年次有給休暇の取得申請を妨害した行為自体は認めることができるため、かかる妨害行為により、Xらが被ったであろう精神的苦痛等を慰謝するのに必要な限度で損害を認めることができる。
これを本件についてみるに、・・・Xらについて、各50万円ずつの損害の発生を認めるのが相当である。

3 就業規則の変更により労働条件を変更する必要性や変更後の就業規則の内容の相当性についてみるに、もともとの就業規則が当時、従業員の間でも1日の所定労働時間は8時間であることが共通認識であったところ、Y社の誤りで7時間30分とされていたものを訂正したものにすぎず、就業規則を変更することにより労働条件を変更する必要性は高いといえ、変更後の就業規則の内容についても不相当なものとは認め難い。
本件では、就業規則の変更にあたって、労働基準監督署への届出がなされ、外形上、労働者代表者の意見聴取もなされているところであるが、Xらは就業規則の変更に伴う労働者の過半数代表者の意見聴取手続が行われていないと主張しており、従業員代表を選ぶための投票等の手続がとられた事実も証拠上認めることはできない。
もっとも、就業規則の変更にあたっては、従業員代表の意見聴取、労働基準監督署への届出がなされていることが望ましい(労契法11条、労基法90条)ものの、就業規則の変更の有効性を認めるための絶対的な条件であるとはいえず、これらの事情は、労契法10条における「その他の就業規則の変更に係る事情」として、合理性判断において考慮される要素と解される
そうすると、本件においては、就業規則の変更は労働基準監督署に届け出られているものの、本件訴訟に至るまでにXらに対し、実質的な周知がなされていたと認めることはできず、就業規則の不利益変更の要件を満たしているということはできない

年次有給休暇の取得妨害についての判断です。

賃金相当額についての損害は認められませんが、そのかわりに慰謝料で認定されています。

また、就業規則の周知要件についての判断も参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介460 ビジネスは30秒で話せ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ビジネスは30秒で話せ!

「短く、魅力的に伝えるプレゼンの技術」が紹介されています。

コンパクトに要点を伝えるためのノウハウがまとめられています。

一度目を通しておくとプレゼンのしかたが変わると思いますよ。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

例えば、クルマのセールスポイントとして、みなさんの頭に最先端の潤滑剤ブレーキ・システムのことが浮かんだとする。ガソリン使用量、騒音、ブレーキ荷重を軽減するその新システムにはカッコいい機能が満載で、話したいことがいっぱいある。しかし、聞き手が車の″色”に強い関心があったり、こだわりを持っていたりしたら、その話にはあまり耳を貸さないだろう。コミュニケーションの達人になって他人を説得する力をアップさせたいなら、話す相手を十分に知り、それに合わせてメッセージを調整することが不可欠になる。何度も言うが、大切なのは自分が何を伝えたいかだけでなく、相手が何を知りたいかが重要なのである。」(36頁)

このブログでも何度か同様の内容を書いています。

「大切なのは自分が何を伝えたいかだけでなく、相手が何を知りたいかが重要なのである」

相手の関心がないことをどれだけ熱心に話しても、受け入れてはもらえません。

相手の関心事は何なのかを知るために、まずは徹底的に相手の話を聞くことが大切です。

これはすべての仕事に通じることだと思います。

話し上手は聞き上手なのです。

解雇181(X高等学校事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、諭旨解雇は無効だが普通解雇は有効とされた裁判例を見てみましょう。

X高等学校事件(東京地裁平成27年2月18日・労経速2245号15頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結して労務を提供していたXが、Y社がした諭旨解雇及び普通解雇がいずれも無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、雇用契約に基づく賃金請求権に基づく、諭旨解雇後の未払賃金及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、246万3809円+244万3930円に対する遅延損害金を支払え

Xのその余の請求を棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件非違行為には、都条例18条の6違反の犯罪が成立する旨主張する。しかし、本件非違行為は、本件被疑事実とは、日時・場所及び態様を異にする行為であり、本件諭旨解雇事由における都条例18条の6に違反する行為であると認めることはできない。

2 Y社就業規則72条1項ただし書は、出勤停止以上の懲戒に該当すると判断されるときは、査問のため調査委員会を設ける旨を定める。この点、懲戒が、Y社の懲戒権の発動として行われる不利益な処分であり、これが正当化されるためには、当該懲戒を受ける者に対し、特段の支障なき限り、弁明の機会が与えられる必要があるというべきであり、そのような観点からすれば、Y社就業規則が定める調査委員会の査問は、特段の支障なき限り、Xに対して直接なされることを要求しているものと解するのが自然かつ妥当であると解される
これを本件についてみると、調査委員会は、本件諭旨解雇に当たり、Xに対する査問を行っておらず、本件諭旨解雇には、Y社就業規則72条1項ただし書が規定する手続違反があるというべきである。・・・加えて、Y社が懲戒処分通知書において、本件諭旨解雇事由における非違行為の内容を明らかにしておらず、本件訴訟で、当初、本件諭旨解雇事由として主張した本件非違行為が、本件被疑事実とは、日時、場所及び態様を異にする行為であったことからすれば、Y社(調査委員会)は、本件諭旨解雇を決定する手続において、本件被疑事実自体を把握しておらず、Xが実際に行った行為を確定しないままに、本件諭旨解雇をしたことが強く推認され、そのことからも、本件諭旨解雇の手続面における相当性を認めることはできないというべきである

3 ・・・ところで、Xが民法536条2項により、本件諭旨解雇後の賃金を請求するためには、XがY社に対する就労の能力及び意思を保持していることが必要であるところ、Xは、平成25年4月1日から、本件学校とは別の高等学校において、常勤講師として勤務し、平成26年4月からは、常勤専任講師として勤務しており、同校の社会保険にも加入していることが認められ、このことからすれば、Xは、Y社が主張するとおり、平成25年4月1日の時点で、Y社に対する就労の意思と能力を保持していたと認めることはできない

懲戒解雇につき、適正手続違反を認定した裁判例です。 参考になります。

また、上記判例のポイント3は、解雇後、別の会社に就職した場合に問題となります。

復職の意思がない判断されないように労働者側としては注意しなければなりません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介459 運を支配する(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
運を支配する (幻冬舎新書)

「雀鬼」桜井さんとサイバーエージェント藤田社長の共著です。

帯には、「なぜ運は特定の人に集中するのか?」と書かれています。

あまり「運」というものについて考えたことがないですし、成功も失敗も運のせいにしたくないというところはありますが、「運」を軽視する者は「運」に泣くことがわかる本です。

お二人の考え方がよくわかり、とてもおもしろかったです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ある有名なビジネス書には、『勝ちすぎたことが失敗の原因になっているケースが、実はものすごく多い』ということが書かれています。中身が伴った上で勝ちすぎているなら、そう簡単には崩れないかもしれませんが、勢い余って勝ちすぎた企業や人間というのは、往々にして成長のスピードが速すぎて、基盤がまだしっかりできていないことが少なくありません。
絶好調の状態を自分本来の姿だと思ってしまうと、現実に見合った対応ができなくなります。絶好調なときを基準にするのでなく、未熟な中身というものを基準に考え、行動すれば、その企業や人は軸をブレさせることなく、堅実な成長を遂げていくことが可能になると思います。」(226頁)

藤田社長の言葉です。

うまくいっているときこそ、冷静に現状を把握しなければなりません。

絶好調な状態を基準とすると、あとから修正がきかなくなってしまいます。

自分や会社の調子は、経済と同じように、アップダウンを繰り返しながら、少しずつ向上していくものだと思っています。

いいときもあれば悪いときもありますよ。

そんな波に乗りながらも、継続的に一定の成果を上げていく人が本物なのでしょうね。

労働時間40(ビソー工業事件)

おはようございます。

今日は、警備員らの仮眠・休憩時間の労働時間該当性と差額賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

ビソー工業事件(仙台高裁平成25年2月13日・労判1113号57頁)

【事案の概要】

Xらは、A社との間で労働契約を締結し、同社が保安・防災等の業務を受託していた宮城県立B病院で警備員として勤務していたが、Y社が、A社に替わって平成19年4月1日以降の上記業務を落札してこれを受託したことから、同年3月末日頃、Y社との間で、労働契約を締結し、同年4月1日以降、Y社の従業員として同種の勤務を続けていた。

本件は、Xらが、Y社に対し、Y社との労働契約上は仮眠時間や休憩時間とされていた時間帯について、実際には労働からの解放が保障されておらず、労働時間に当たるのに、その点を踏まえた適正な賃金の支払を受けられなかったと主張して、平成19年4月分から平成21年12月分までの適正な賃金と実際に支払われた賃金との差額相当額につき、主位的に労働契約に基づく未払賃金として、予備的に賃金支払拒否を理由とする不法行為に基づく損害賠償として、各々請求した事案である。

原審は、Xらの主位的請求について、仮眠・休憩時間も全部労働時間に当たると判断してXらの請求を大筋で認めた

これに対し、Y社のみが控訴をし、Xらは不服申立てをしなかった。

【裁判所の判断】

仮眠・休憩時間が全部労働時間に当たるとした原審を破棄

予備的請求は棄却

【判例のポイント】

1 実作業に従事していない仮眠・休憩時間とされている時間帯であっても、労働からの解放が保障されていない場合には、労働基準法上の労働時間に当たるというべきであり、その時間帯に労働契約上の役務の提供を義務付けられていると評価される場合には、労働者は労働からの解放を保障されているとはいえず、使用者の指揮命令下に置かれているということができ、使用者に賃金の支払義務が生じる。しかし、他の従業員が業務に従事していて仮眠・休憩時間中に実作業に従事する必要が生じることが皆無に等しいなど、実質的に実作業への従事が義務付けられていないと認めることができるような事情がある場合には、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているとは評価できず、労働基準法上の労働時間に当たらないと解するのが相当である(大星ビル管理事件最高裁平成14年2月28日、大林ファシリティーズ(オークビルサービス事件)最高裁平成19年10月19日)。

2 本件係争期間中に仮眠・休憩時間中の警備員が例外的に実作業に従事した頻度が前記の程度にとどまっていたことにも照らすと、仮眠、休憩時間中の警備員が常時、守衛室や仮眠室でも業務に従事する態勢を要求されて緊張感を持続するよう強いられてはいなかったというべきである。
以上によれば、本件係争期間において仮眠・休憩時間中に実作業に従事した事例は極めて僅かであり(その中には必ずしも客観的に当該警備員が実作業に従事する必要性はなかったが、他の警備員への配慮等から引き受けたものもあったと見受けられる。)、例外的に実作業に従事した場合には実作業時間に応じた時間外手当を請求することとされていたのであって、Xら警備員に対しては、仮眠・休憩時間中に守衛室又は仮眠室で業務に従事する態勢を要求されていなかったのである。そうすると、Y社は、一般的、原則的に仮眠・休憩時間中も業務に従事する義務をXらに課していたものではなく、Xらも一般的にこのように義務付けられていると認識していたとは認められない。したがって、本件において、仮眠・休憩時間中に実作業に従事することが制度上義務付けられていたとまではいえないし、少なくとも仮眠・休憩時間中に実作業に従事しなければならない必要が皆無に等しいなど、実質的にXらに対し仮眠・休憩時間中の役務の提供の義務付けがされていないと認めることができる事情があったというべこである。

3 これに対し、Xらは、B病院は大規模医療機関で急患等の非常事態がいつ発生するか予測不可能であり、警備業務もこれに即時対応することが求められていて、B病院も本件仕様書で常時4人以上が実作業に対応できる態勢をとるよう定めていたのであって、Xらは仮眠・休憩時間中も緊張を強いられていたと主張する。しかし、上記のような突発的な業務に備えて、監視警備等業務に当たる警備員以外に仮眠・休憩時間帯ももう1人の警備員が守衛室で待機し、巡回警備業務中も必要があればこれに応じる態勢がとられていたこと、本件仕様書も4人以上が常時業務に従事することまで義務付けるものではなく、基本的に上記のような態勢によって対応が可能であったと認められること、Xらはシャワーを浴び、着替えをして仮眠室で仮眠をとっており、休憩時間中は必ずしも守衛室での待機が義務付けられていなかったことなど先に認定説示したところからすれば、Xらが仮眠・休憩時間中も常時緊張を強いられていたと認めるのは困難であり、上記主張は採用することができない。

労基法上の労働時間性の問題の中でも、この警備員等の仮眠・休憩時間の問題は、業務内容について丁寧に主張立証しなければ、結論がどちらに転ぶかわかりません。

この事案でも一審と二審で結論が異なっています。

労使ともに注意が必要な分野です。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介458 速さは全てを解決する 『ゼロ秒思考』の仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
速さは全てを解決する---『ゼロ秒思考』の仕事術

著者は、マッキンゼーで14年間活躍された方です。

タイトルのとおり、「スピード」を重視した仕事法や勉強法を紹介してくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事を速く進めるうえで重要な点は、できることは全部前倒しすることだ。・・・早めにやるほうが精神的には楽で余裕があるので、落ち着いて広い視点から取り組むことができる。心に余裕があるので頭もよく働く。・・・『ぎりぎり』だと、目先のことにあくせくし、先手を打つこともできず、想定がはずれたときに挽回のチャンスもなく、好循環など起こりようもない。人の協力も得にくい。ストレスが強くなり、体も心も疲れ果てる。」(57頁)

いまさら言うまでもないことですが、仕事が速い人は、着手が早いのです。

とっかかりが遅いと、それだけで出遅れているわけです。

ぎりぎりになって着手することだけは避けなければなりません。

とにかく着手することが大切です。

特にヘビーな仕事の場合には、「できるところから手をつける」という発想を持ち、少しずつ攻略するのです。

すべては習慣の問題です。

賃金97(全駐留軍労働組合事件)

おはようございます。

今日は、ストライキ支援のための年休取得と未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

全駐留軍労働組合事件(那覇地裁平成26年5月21日・労判1113号90頁)

【事案の概要】

本件は、沖縄県内のアメリカ合衆国軍隊基地に勤務するXらが、年次有給休暇の時季指定権を行使したにもかかわらず、年次休暇時間分の賃金の支払いを受けていないとして、雇用者であるY国に対し、各自、未払賃金及び遅延損害金、付加金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y国はXらに対し、各自、別紙未払賃金一覧表の各未払賃金額欄記載の金員及び遅延損害金を支払え。

Y国はXらに対し、同額の付加金+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件年休申請は、Xらの有する有給休暇の範囲内でされたものであり、その有給休暇の取得に違法はない。そして、Y国は、何ら時季変更権の行使等の主張をしないから、帰するところ、Xらに対し、未払となっている本件各未払賃金を支払う義務を負うものというべきである
したがって、Xらの請求のうち、Y社に対して本件各未払賃金及びその遅延損害金の支払いを求める部分は理由がある。

2 Y国は、全駐労による交渉や申入れ等を受け、本件年休申請につき在日米軍が適法な時季変更権を行使しないことへの懸念を有していたものであるところ、本件各未払賃金が現実化した後もその支払をせず、本件訴訟において、一旦は時季変更権の主張をしたもののこれを撤回し、その後に至っても未だ各未払賃金を支払っていないのであるから、このようなY社による本件各未払賃金の不払の状況や、これによるXらの不利益は軽視することはできない
そうであれば、Y社に対し、本件各未払賃金と同額の付加金の支払を命ずるのが相当である。

3 付加金の支払による制裁の対象は、当該労働者の雇用主であると解されるところ、Y社と在日米軍は、いわば雇用主の権利義務を分掌しているものと見ることができるから、両者を併せて制裁の対象ととらえることができる。しかるに、付加金の支払を命ずることによって、Y国がその制裁を受けることはいうまでもないが、在日米軍についても、Y国は、命ぜられた付加金の支払をした後に、在日米軍に対してその求償をすることができるのであるから、その意味において、在日米軍も制裁を受けるということができるのである(仮に、在日米軍がその償還を拒んだとしても、制裁が無意味であるとまでいうことはできないし、いずれにしても、本件と同様の事態を招かないという意味において、制裁の効用を認めることできると考えられる。)。

国の方はあまり強く争う気持ちが見られませんね。

付加金のことを考えると控訴をして有給分を支払って終わりにしたいところです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介457 「最高の結果」はすべてを「捨てた」後にやってくる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
「最高の結果」はすべてを 「捨てた」後にやってくる

これまでにも何冊か紹介をしてきました早川勝さんの本です。

「捨てる」ことにフォーカスした本です。

著者の本を読むと、日常生活における弱さや甘えが吹っ飛ぶので、とても好きです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私の人生においても、誰に相談することなく、捨てて、捨てて、捨てまくってきた。安定を捨て、積み上げた実績も捨て、ときには地位や名誉も捨ててきた。『逃げることなく、チャレンジしてきた』のだ。
人生における重要な決断をするとき、最も相談してはいけない『不幸のメッセンジャー』は”両親”である。両親は反対するのが仕事だ。親の願いは、子供の成功や成長ではない。実の子供には、『ぬるま湯』で苦労することなくヌクヌクと育ってほしいのだ。それが親の愛なのである。『いつまでも子供でいてくれること』それが親の願いなのだ。親のいうことを聞いていたら、成功を手に入れることはできない。両親へは、100%事後報告にすること。人生の重要な決断を下すときには、絶対に不幸のメッセンジャーに相談してはならない。」(37~38頁)

本当にやりたいことについて、事前に誰かに相談するという感覚が僕にはよくわかりません。

相談して、「やめておきなさい」と言われたらやめるのでしょうか。

その程度の気持ちならば、やらないほうがいいでしょう。

きっと少し挫折したら、すぐにやめてしまうでしょうから。

多くの場合、事前の相談をする人は、「相談」ではなく、単に「背中を押して欲しい」だけなのです。

甘えん坊さんなのです。

安定を捨てて、次のステップに進むことこそが、成長だと考える人には、この本に書かれていることがわかるのでしょうね。