本の紹介100 幸せの遺伝子(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は、本の紹介です。
幸せの遺伝子
幸せの遺伝子

タイトルだけ見ても、意味がよくわかりません・・・。

しあわせのいでんし・・・? なんじゃそりゃ!

さて、この本で「いいね!」と思ったのは、こちら。 

自分が死んだあとにも業績は残ります。それが後世の人に役立つこともあります。その意味で、『これに成功したら、おれは死んでも惜しくない』といえるような対象をもっている人は非常に幸せだといえます。」(205頁)

う~ん・・・今のところ、ないな(笑)

まだまだ死ぬのは惜しいです。やりたいことが山ほどあります。

かくすれば かくなるものと 知りながら やむになまれぬ 大和魂

身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置くかまし 大和魂

吉田松陰の言葉です。

いい言葉ですね。 重みが違います。

このくらいの覚悟をもって取り組なければ、世の中は変わらないんでしょうね。

もっとも、「大和魂」とはどんなものなのか、今の私には、うまく説明できません。

不当労働行為43(シオン学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、一時金の協定平均額以下の支給と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

シオン学園事件(神奈川県労委平成24年3月29日・労判1046号91頁)

【事案の概要】

Y社は、自動車学校を経営する会社である。

X組合とY社は、平成21年7月、上期一時金について、1人平均15万円とする協定を締結した。

同日、Y社は、上期一時金として支部組合員16名に平均11万1883円(組合員16名中13名は協定平均額以下)を支給した。

Y社は、各人の一時金支給額の決定にあたり、稼働考課及び考課査定を実施した。

【労働委員会の判断】

一時金の協定平均額以下の支給は不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 稼働考課は、それ自体としては客観的な基準や、組合員か否かを問わない基準を内容とするものであるとしても、法令の趣旨に反したり、組合活動を行う支部組合員らにとって殊更に不利益な結果となるものを含み、Y社はそのことを容認してきたものと認められるのであって、このような稼働考課を含む考課査定制度が稼働状況を端的に評価するものであるというY社の主張は採用できない。

2 考課査定において、Y社の定める評価項目やその評価基準は、基本的にはY社の裁量に任せられているものだとしても、本件においては、その評価基準が曖昧であることにより、支部組合員が恣意的に評価される可能性を多分に含んでいるものだと言うことができ、そのような制度的問題点についてY社はあえて改善策をとることなく放置し、支部組合員にとって不利益な結果を容認してきたものである。したがって、考課査定には恣意性が生じる余地がなく、不利益取扱には当たらないとの会社主張は採用できない。

3 Y社は従来組合活動を嫌悪していたところであるが、訴訟や労働委員会での紛争が続き、Y社は組合らをいっそう好ましくない存在と捉え、また、組合活動を行う支部組合員らの給料の水準が高かったことは、Y社の経営を逼迫させるものだと捉えていた。そして、Y社が経営上、人件費の軽減を迫られた際、稼働考課に関しては、Y社が会社に貢献していないと考える支部組合員の組合活動時間を稼働可能時間から減算するなどして結果的に支部組合員を低査定とし、考課査定に関しては、基準の曖昧な評価項目を残したまま公正な評価を確保するための努力を怠り、組合らに対する情報開示や説明も十分なものではなかった。そして、そのことが本件格差の原因となったものと認められ、Y社はそのような結果を容認したまま、積極的に是正しようとすることもなかったのである
よって、本件格差は不当労働行為に当たらないとのY社の主張はいずれも採用できず、本件格差が労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとの前記推認を覆すものではない。

実質的にみれば、査定のしかたが、組合員を不利益に取り扱うようになっていると判断されてしまえば、どれだけ体裁を整えても、不当労働行為と判断されてしまいます。

また、評価基準をあえて不明確なものにしておき、いかようにも判断できるようにしてある場合であっても、結果的に組合員ばかりが不利益な評価を受けているのであれば、不当労働行為意思が推認されてしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介99 見えない空気を売る方法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
見えない空気を売る方法
見えない空気を売る方法

株式会社アルカサバ社長の貞方さんの本です。

20代でフェラーリを手に入れ、30歳で豪邸を建て、40歳でホテルオーナーになるのを夢見て、福岡から単身上京したそうです。

結果を出しているので、いいと思います(笑)

こういうことを正直に書いてしまう貞方さん、嫌いではありません。

さて、この本で「いいね!」と思っているのはこちら。

私たちが提供するサービスを受けた結果、お客様が取る選択は2つに1つしかありません。
また来るか、もう来ないか。それを決定する理由は、お客様の意識されない小さな快感・不快感の積み重ねかもしれないのです。だから私はいつも社員に繰り返し伝えます。大切なのは、お客様に気づかれないサービスだと。何となく心地がいいという空間は、気づかれないサービスの積み重ねから生まれます。理由はわからないけど嫌だという感覚は、小さな不快が積み重なった結果です。
」(132頁)

この感覚、よくわかります。

自分が客として、どこかのお店に行くと、大きな不快はないが、小さな不快がたくさんあると、もう行きたくなります。

難しいのが、お店側の立場で、常に顧客の目線でサービスをチェックすることです。

言うのは簡単ですが、実際には、日常のサービスのレベルに慣れてしまっており、「小さな不快」を見逃してしまいがちです。

スタッフ全員が、「自分が顧客だったら・・・」という姿勢を持ち続け、「小さな不快」を感じ取ることが大切なんだと思います。

結局は、スタッフ全員が、会社の一員として、サービスの質を向上していく気持ちがあるかにかかっているのではないでしょうか。

経営者は、スタッフ全員にそのような気持ちをもってもらうためにはどうしたらよいかを考えるべきです。

私の事務所も、法律事務所として、最高のサービスを提供できるように、努力を続けています。

有期労働契約31(北海道宅地建物取引業協会事件)

おはようございます

さて、今日は、懲戒処分と雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

北海道宅地建物取引業協会事件(札幌地裁平成23年12月14日・労判1046号85頁)

【事案の概要】

Y社は、宅地建物取引業法74条に基づき北海道知事の認可を受け設立された公益法人である。

Xは、平成22年4月、Y社の嘱託職員として採用された。また、Xは、税理士登録し、北海道税理士会に入会している。

Xは、平成22年6月、Y社代表者から出頭命令を受け、Y社本部へ出頭したところ、Y社役員数名から、本件税理士登録等が本件兼職禁止規定に反することを理由として税理士業を廃業するように求められたが、これを拒否した。

Y社は、平成23年2月、Xについて、雇用契約を更新しない旨を決議し、3月末をもって期間満了となる旨を通知した。

【裁判所の判断】

懲戒処分は無効

雇止めは無効

Y社はXに対して慰謝料10万円を支払え

【判例のポイント】

1 本件兼業禁止規定及び本件履歴書規定の文言の通常の意味に照らせば、本件税理士登録等が本件兼職禁止規定に該当し、また本件履歴書に本件税理士登録等を記載しなかったことが本件履歴書規定に違反すると解するにはいささか無理がある反面、本件処分に至る経緯において、Xに何らかの落ち度があるとは言い難い。・・・以上の事実に照らせば、本件処分は、Y社によるXに対する嫌がらせとして行われた側面があるといわざるを得ないから、Y社が本件処分を行ったことは、本件処分が無効である以上、Xに対する不法行為を構成するというべきである。そして、かかる不法行為によってXが被った精神的苦痛に対する慰謝料の額は、本件処分がY社の懲戒処分における最も軽い戒告であること等本件に現れた一切の事情を考慮すれば、10万円が相当である

2 本件嘱託細則3条1項において、「嘱託職員の委嘱契約期間は、原則として1年以内とし、業務の必要に応じて契約期間を更新するものとする。」と規定されていること、Y社は、本件雇止めが行われるまで、Xを除く嘱託職員を雇止めしたことはなかったこと、Xを含むY社における嘱託職員は、採用に際し、Y社との間で、本件契約書と同様の書式を用いた「嘱託職員雇用契約書」を作成していたこと、Y社は、嘱託職員との雇用契約の期間満了時において、契約更新のために同職員との間で上記「嘱託職員雇用契約書」を新たに作成するものの、他にY社内部において特段の手続は行われていなかったこと、Xは、Y社小樽支部において、会計処理、資料作成、資料送付及び電話応対等といった恒常的かつ常用的業務を担当していたこと並びに、Y社代表者自身、少なくともXが採用される前に採用されたY社の嘱託職員については、雇用期間の限定がないか、少なくとも雇用契約が更新されることが原則であるとの認識を有していたと認められることからすれば、本件契約による雇用継続に対するXの期待利益に合理性があるというべきである

3 本件契約による雇用継続に対するXの期待利益に合理性がある以上、本件契約に解雇に関する法理を類推すべきである。そして、本件処分は無効であること、そもそも事務局業務の効率化の観点からY社小樽支部の嘱託職員を削除しようとする計画が存在したこと自体極めて疑わしいこと及びXの就業態度その他適格性等について、Y社は何ら具体的に主張立証しないことからすれば、本件雇止めは、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないから、無効である

4 雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する判決が確定した後に支払期が到来する賃金については、上記判決確定後もなお賃金の支払いがされない特段の事情のない限り、「あらかじめその請求をする必要がある」ということはできないところ、Xの本判決確定後に支払期が到来する賃金に係る訴えについては、上記特段の事情があることは窺われないから、将来請求の訴えの利益を欠くものとして不適法であるといわざるをえないから、これを却下する。 

期待利益の合理性に関する事実認定は、勉強になりますね。

代理人としては、こういう事実をどれだけ取りこぼさずに主張できるかが大切ですね。

履歴書の問題は、今回のケースでは、それほど大きな問題ではないと判断されています。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

本の紹介98 ニーチェの言葉(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
超訳 ニーチェの言葉
超訳 ニーチェの言葉

2年程前の本ですね。

もう一度、読み返してみました。

こういう感じの本、多いですよね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『ああ、もう道はない』と思えば、打開への道があったとしても、急に見えなくなるものだ。
『危ないっ』と思えば、安全な場所はなくなる。
『これで終わりか』と思い込んだら、終わりの入口に足を差し入れることになる。
『どうしよう』と思えば、たちまちにしてベストな対処方法が見つからなくなる。
いずれにしても、おじけづいたら負ける、破滅する。
相手が強すぎるから、事態が今までになく困難だから、状況があまりにも悪すぎるから、逆転できる条件がそろわないから負けるのではない。
心が恐れを抱き、おじけづいたときに、自分から自然と破滅や敗北の道を選ぶようになってしまうのだ。
」(62頁)

確かに、あまりにも状況が悪いと、「もうだめだ」と諦めてしまいたくなるときがあります。

諦める方が楽ですよね。

もう考えなくてもいいんですから。

他にいい方法がなさそうな状況で、それでもなお、「なにかいい方法はないか」と考えることは、出口が見えないトンネルを走っているようなものです。

だから、走るのをやめる理由を必死に探すようになるわけです。

でも、このようなことを繰り返していても、全く自分の成長につながりません。

苦しい状況から脱出するには、徹底的に、その問題と向き合うことしかないと思っています。

逃げれば逃げるほど、状況は悪化します。

このことが経験的にわかっている人は、問題から逃げずに、出口の見えないトンネルを走り続けることができるのだと思います。

有期労働契約30(本田技研工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、不更新条項と継続雇用に対する期待利益に関する裁判例を見てみましょう。

本田技研工業事件(東京地裁平成24年2月17日・労経速2140号3頁)

【事案の概要】

Y社は、四輪車、二輪車、耕うん機等の製造・販売等を目的とする会社である。

Xは、平成9年12月、期間契約社員としてY社に入社し、パワートレイン加工モジュールに所属して業務に従事した。

Xは、それ以降も、同業務に従事し、Y社との間で有期雇用契約の締結と契約期間満了・退職を繰り返してきたところ、平成20年12月末、1年間の有期雇用契約が満了したとしてY社から雇用契約の更新を拒絶された。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 Y社は、期間契約社員に対し、約1年ごとに有期雇用契約を更新せずに終了させ、慰労金や精算金を支払って一旦雇用契約関係を解消した上、再入社希望者について改めて選考した上で再度入社する機会を与え、改めて入社手続を行っていたこと、期間契約社員のほとんどが5年以内に雇用契約を終了させており、期間契約社員が一般的に長期間継続してY社に雇用されて勤務するという実態は存在しないこと、Xが長期間Y社で雇用されたのは、自らの意思に基づいてそれを望んだ結果でしかないこと、有期雇用契約の更新手続は、前契約期間中に新契約書を作成して取り交わす等新たな有期雇用契約の締結事実を明確にしており、自動更新とはいい難いこと、以上の事実が認められ、これらの事実によれば、X・Y社間の有期雇用契約が実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態にあったと認めることはできない

2 Xが、Y社との間で、自らの意思に基づいて不更新条項を定める本件雇用契約を締結したことは明らかであり、また不更新条項が公序良俗違反であるとはいい難い。

3 Xは、有期雇用契約に基づき、平成9年12月から平成20年12月末までの11年余もの長期にわたり、有期雇用契約の締結、契約更新、契約期間満了・退職、一定期間経過後の再入社・新規有期雇用契約の締結を繰り返してY社の業務に従事してきたこと、Y社は、平成20年9月、この頃既に一部の期間契約社員の雇止めを実施せざるを得ず、またリーマンショックによる深刻な世界経済の停滞等の事態が生じつつあったにもかかわらず、Xに対し、契約更新の上限期間を1年間から3年間に延長する本件直前雇用契約を締結したこと、XはこれまでのY社に再入社して同年6月から平成21年5月末ころまでの1年間の継続勤務ではなく、平成23年5月末ころまでの約3年間Y社での勤務を継続できると期待したこと等によれば、Xが、本件直前雇用契約を締結した平成20年9月の時点において、自動車業界の最大手の1つであるY社の経営状態に不安を覚えずに、安堵感を抱き、また本件直前雇用契約の満了日の翌日である同年12月1日以降もなお引き続き平成23年5月末日ころまでY社での勤務を継続できると期待したことは、やむを得ないというべきであって、Xが、本件直前雇用契約の期間中、Y社に対して抱いた有期雇用契約の継続に対する期待は合理的である

4 Xが、本件雇止めになることについて、これを粛々と受け入れ、継続雇用に対する期待利益と相反する内容の不更新条項を盛り込んだ本件雇用契約を締結し、さらには平成20年12月には、本件退職届をも提出したのであり、本件雇止めに対して何らの不満や異議を述べたり、雇用契約の継続を求める等を全くしていないのであるから、Y社の説明会が開催された同年11月時点において、本件雇用契約の期間満了後における雇用契約の更なる継続に対する期待利益を確定的に放棄したと認められる

5 Xが、本件雇用契約の期間満了後における雇用継続に対する期待利益を有しているとは認められないのであるから、本件雇止めについては、解雇権濫用法理の類推適用の前提を欠くものといわざるを得ない。

上記判例のポイント4は、非常に参考になります。

裁判所は、Xの雇用契約の期間満了後における雇用継続に対する期待利益を認めませんでした。

その理由として、契約更新できなくなった事情等をY社が真摯に労働者に説明し、労働者がそれを理解して不更新条項付き労働契約を締結したことをあげています。

本件では、Y社が、労働者に理解を求めるべく説明を尽くしたこと、相談窓口を設け、上司の面談を設定するなど、相応の手続を尽くしたという事情を評価したものだと思われます。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

本の紹介97 菜根譚(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は本の紹介です。
中国古典の知恵に学ぶ 菜根譚
中国古典の知恵に学ぶ 菜根譚

この本も、前回同様、5年程前の本です。

前回の本と同じようなタッチで書かれています。

とても読みやすいです。

この本は、今から400年程前に、中国の学者によって書かれたもので、日本には、江戸時代末期に伝わったそうです。

ちなみに、この本の題名「菜根譚」とは、「人よく菜根を咬みえば、すなわち百事なすべし」(堅い菜根をかみしめるように、苦しい境遇に耐えることができれば、人は多くのことを成し遂げることができる)という言葉に由来しているそうです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

質素で無欲な人は、派手で欲の強い人から疎まれるものであり、慎み深く厳しい人は、勝手気ままでだらしのない人からは嫌われるものである。
嫌がられるからといって、人の上に立つ人間は自分の信念を曲げてはいけないが、その信念を無理に人に押しつけてもいけないのである。
」(105頁)

「人の上に立つ人間は・・・その信念を無理に人に押しつけてもいけない」という部分がいいですね。

意識しないと、他人に、自分の信念を押しつけがちですよね。

人それぞれ信念が違いわけですから、「人の上に立つ人間」は、気をつけなければいけません。

また、そもそも信念などというものは、人から強要されて持つものではありません。

部下や従業員にも、自分と同じ信念を持ってほしいと願う方もいると思います。

でも、強要しても仕方がありませんよね。

もし、上司が部下や従業員に、信念を共有してほしいと思うのであれば、それは、言葉ではなく、態度で示すべきだと思います。

共感できる信念であれば、自然と共有されていくのではないでしょうか。

むしろ、信念が異なる部下を認める寛容さが必要なのだと思います。

解雇72(三枝商事事件)

おはようございます。

さて、今日は、不動産営業事務員の解雇と賃金に関する逸失利益の範囲に関する裁判例を見てみましょう。

三枝商事事件(東京地裁平成23年11月25日・労判1045号39頁)

【事案の概要】

Y社は、不動産業、自社ビル賃貸・売買、農業等を目的とする会社である。

Xは、平成22年5月、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、不動産営業事務員として、電話・来客対応、不動産営業事務を行ってきた。

Y社は、Xを、営業成績が悪かったことなどを理由に口頭で解雇の意思表示をした。

これに対し、Xは、Y社が行った不当解雇により著しい生活上の不利益を被ったとして不法行為に基づく損害賠償を請求した。

【裁判所の判断】

解雇は不法行為に該当する。

不法行為に基づく逸失利益として、賃金の3か月分相当額の損害賠償請求を認めた。

慰謝料の請求は認められない。

【判例のポイント】

1 いわゆる解雇権濫用法理を成文化した労契法16条により労働者は、正当な理由のない解雇により雇用の機会を奪われない法的地位を保障されているものと解されるが、ただ、同条は、あくまで使用者に原則として「解雇の自由」(民法627条1項。解雇自由の原則)が保障されていることを前提とする規定である。そうすると、かかる原則の下に行われた当該解雇が同条に違反したとしても、そのことから直ちに民法709条上も違法な行為であると評価することはできず、当該解雇が民法709条にいう「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」する行為に該当するためには、労契法16条に違反するだけでなく、その趣旨・目的、手段・態様等に照らし、著しく社会的相当性に欠けるものであることが必要と解するのが相当である

2 確かに、不動産営業担当社員としてのXの仕事ぶりには問題があったようであり、このことが本件解雇の背景にあることは否定し難い。また本件解雇の意思表示それ自体もややXのもの言いに触発された面もある。
しかし仮にそうであったとしてもY社は、Xに対し、試用期間終了後も解約権を行使することなく、不動産営業担当の正社員として雇用し続けているのであるから、試用期間終了後1か月も経過しないうちに全く職種の異なる他部門への配置換えを検討することは性急に過ぎる上、本件配転打診は、1割以上の減給だけでなく、別居・転勤を伴う配転命令の打診であって、Xに対して、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるおそれの強いものであったといわざるを得ない
そうだとするとXが本件配転打診をにべもなく拒絶したことはむしろ当然のことであり、これに加え、本件解雇に至るまでの経緯やその後の対応等を併せ考慮すると客観的にみて本件雇用契約を直ちに一方的に解消し得るほどの解雇事由が認められないことは明らかであって、してみると何ら解雇を回避する方法・手段の有無が検討されないまま行われた本件解雇は、余りに性急かつ拙速な解雇というよりほかなく、労契法16条にいう「客観的に合理的な理由」はもとより、社会通念上も「相当」と認められないことは明らかであって、著しい解雇権の濫用行為に当たるものというべきである
このように考えると本件解雇は、労契法16条に違反するだけでなく、不法行為法上も著しく社会的相当性に欠ける行為であると評価することができ、したがって、民法709条にいう「他人(X)の権利又は法律上保護される利益を侵害」する行為に該当する。

3 ここで「過失」とは、予見可能性を前提とした結果回避義務違反の行為をいうものと解されるところ、Y社社長は、長年にわたって使用者の代表者として従業員の労務管理を経験してきたものと推認される代表取締役であって、本件についても、その経験に基づき使用者として通常払うべき法令等の調査・注意義務を尽くしていたならば、本件解雇のような性急かつ拙速な解雇は許されないものであることを認識することは可能であったというべきである(予見可能性)。
にもかかわらず、Y社社長は、これを怠り、解雇を回避するための手段・方法を検討することなく、その場の勢いでもって本件解雇の意思表示を行ったものであるといわざるを得ず(結果回避義務違反)、したがって、Y社には本件解雇が侵害行為に当たることにつき少なくとも「過失」が認められることは明らかである

4 一般に同法に違反する違法な解雇を受けた労働者が、従前の業務への復帰を諦め、当該解雇によって失った賃金についての逸失利益等の損害賠償を求めることは、決して希なことではなく、むしろ通常よく散見される事象ではあるが、ただ本件解雇(不法行為)と相当因果関係を肯定することができる上記賃金に関する逸失利益の範囲については、特段の事情が認められない限り、通常、再就職に必要な期間の賃金相当額に限られるものと解すべきである

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介96 賢人の知恵(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
バルタザール・グラシアンの 賢人の知恵
バルタザール・グラシアンの 賢人の知恵

5年ほど前の本ですが、読み返してみました。

あの頃は、どんな気持ちでこの本を読んでいたんだろうな~などと、どうでもいいことを考えてしまいます。

いっぱい線が引いてあります(笑)

この本の著者は、17世紀のスペインで活躍した方だそうです。

今読んでも何の違和感もないのがすごいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

すべてを手にするのは不幸なことだ。思いこがれるものがないと精神は活力を失い、すべて達成してしまえば、どれもが灰と化してがっかりする。
精神を生き生きと保つには、情熱と好奇心が必要なのだ。満足しすぎることは不運だ。望むことが何もないと、今度はあらゆることが心配の種になるからだ。欲望がなくなったとき、心配が始まるのだ。
」(217頁)

まあ、そうなんでしょうね。

すべてを手にすることは、ずっとないのかもしれませんが、目標を達成した後は、今のようなバイタリティーはなくなると思います。

そう考えると、目標を達成しようと、がんばっているときが一番楽しいのかもしれません。

今はまだ欲望がたくさんありますので、心配はあまりありません。

やるべきことがたくさんあるため、余計なことを心配している時間がありません。

10年後、20年後にこのブログを読んだとき、「あの頃は、よくがんばっていたな~」と振り返ることができるように、今は、めいっぱいの活力と情熱で、仕事をしていきますよ。

競業避止義務16(山口工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、退職した支社長の未払賃金請求と背任行為への損害賠償に関する裁判例を見てみましょう。

山口工業事件(東京地裁平成23年12月27日・労判1045号25頁)

【事案の概要】

Y社は、建築工事業、とび・土木工事業等を業とする会社である。

Xは、Y社の東京支社長の地位にあった者である。

Xは、Y社と取引関係にあるA社の東京支店長という肩書の名刺を作成し、A社から業務を受託して月額10万円(合計350万円)の金員を受け取っていた。

Xは、名刺の作成については、業務委託先の名刺を作成しておけば円滑に業務が進む旨を述べてY社社長の承諾を得ていたが、金員の受け取りについては、Y社社長に報告していなかった。

その後、Xは、Y社を退職した。Y社社長は、Xの退職に不明朗な点を感じ、東京支社の調査を行ったところ、上記状況が判明した。

Y社社長は、東京支社の収支に関してXに問い合わせたが、Xへの電話で感情的になって「お前は1000万円の使い込みをしたんだ。告訴する。警察にも言っている。お前の家族をがたがたにしてやる。出て来い。こら。」などと怒鳴った。

またXの仕事上の知人への電話で「Xについては在籍中、横領の事実が明らかになったため解雇した。横領金額は1700万円である。警察に告訴する。このような人とは一緒に仕事はしない方がよい。」などとXを非難する発言をした。

Xは、Y社に対して、同社を退職後に、未払いとなっていた平成21年3月分の給与を求めるとともに、Y社社長に対して、同人から脅迫的言動を受けたり、名誉を毀損する発言をされたなどとして、不法行為に基づく損害賠償を請求した。

これに対し、Y社は、Xに対し、在職中の背任行為について、不法行為に基づく損害賠償請求をする反訴を提起した。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、給与の支払うように命じた。

Y社社長はXに対し、慰謝料として20万円を支払うように命じた。

XはY社に対し、約435万円を支払うように命じた。

【判例のポイント】

1 ・・・Xは、上記金員については、Y社との間の業務委託契約以外の業務を行ったことに対するアルバイト料であると主張するが、何らの客観的な裏付けもなく、その内容も不自然というほかないものであって、信用することはできない。したがって、これは、Y社とA社との間の業務委託契約に関連して受け取ったものであると推認すべきものであるが、本来、Y社の東京支社長としてY社の利益を最大限に図るべき立場にあるXが、単に形式的、対外的な意味で他社の名刺を所持するというだけでなく、業務委託契約の相手方である業者から定期的に定額の報酬を受け取り、実質的にも当該業者の利益のために行動するというのは、明らかにY社との関係で利益相反行為であるというべきであって、背任行為に当たるというべきである

2 また、XはA社以外の取引先業者からも金員を受領しているところ、これらも、XがY社社長に秘してY社の売上の一部を自らに還元させていたと認められるもので、このような点からも、Xが背信的な意図の下に行動していたことが窺われるところである。さらに言えば、Xの退職に当たっての行動も、明らかにY社の取引先業者を、自らが立ち上げる新規事業の取引先として丸ごと奪う意図に出た行動と理解するほかはなく、この点も、XのY社に対する背信的意図を基礎付けるものである
以上のように、XがA社から月額10万円の金員を受け取っていた行為は、Y社に対する背信行為であって、不法行為に当たると認められるところ、これらの金員については、Xが、Y社とA社との間の業務委託契約の趣旨に従い、A社の在日米軍関係の入札関連業務を誠実に履行し、Y社の利益を最大限図るべく行動していれば、Y社に帰属したはずの利益であると推認するのが相当であるから、その全額がY社の損害に当たるというべきである

3 XがY社に対し背信行為を行っており、Xがそれに関してY社社長に真摯に説明しようとしなかったことは、その限度において事実ではあるものの、X及びその家族にことさら恐怖感を与える言動をすることは許されるべきではないし、仕事上の知人に対し、Xの経済的信用を損なうことを意図して、Y社の金員を横領した旨流布することは社会通念上その相当性を逸脱した行為というべきであって、Xに対する不法行為に当たるというべきである。
Y社社長の上記言動によりXが精神的苦痛を被ったことが認められるところ、その言動の態様、それに対応するXの対応、それまでのXの行状、言動が流布した範囲等を総合考慮すれば、上記精神的苦痛に対する慰謝料としては、20万円を相当と認める。

Xが訴訟を提起したわけですが、結果として、XがY社に支払う金額のほうが大きくなってしまいました。

会社に無断で取引先から定期的にお金を受け取っている行為は、本件では、会社に対する利益相反行為であり、背信行為にあたると判断されています。

自分の立場を利用して、取引先からお金を受け取ってしまうと、このようなトラブルにつながりますので、やめましょう。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。