本の紹介95 Think Simple(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます もう一週間、終わりですね。

とはいえ、土、日も法律相談がいっぱい入っています がんばります!

写真 12-06-20 12 12 03←先日、事務所の近くの「銀杏亭」で久しぶりにお昼ごはんを食べました

肉野菜定食。 味付けがうますぎます!! おすすめです。 

今日は、午後から、損保会社主催のセミナーでお話をしてきます。

テーマは、「弁護士の見解!~労災問題に対する対策の現状~」です。

過労死、過労自殺、メンタルヘルス等について会社としてどのようにして対策を講じていくべきかをわかりやすく説明したいと思います。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学
Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学

スティーブ・ジョブズと長年仕事をしてきた著者が、「シンプル」の効力について述べている本です。

最初から最後までアップルのことが書かれています。

ジョブズに関する本をいくつか読みましたが、読めば読むほど、ジョブズと一緒に働いていた人は、大変だっただろうなと思います(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

シンプルであることは、複雑であることよりもむずかしい。物事をシンプルにするためには、懸命に努力して思考を明瞭にしなければならないからだ。だが、それだけの価値はある。なぜなら、ひとたびそこに到達できれば、山をも動かせるからだ。-スティーブ・ジョブズ」(307頁)

確かに、複雑なものよりシンプルなものの方が美しいですよね。

サービス内容や機能について、凝ろうと思えば、いくらでも凝ることができます。

凝れば凝るほど、どんどん複雑になっていくわけです。

でも、それって、たいていの場合、自己満足のような気がします。

その複雑さ、顧客は本当に求めているんでしょうか。

凝ること自体は決して悪いことではありません。

大切なのは、凝った結果、複雑になった状態をいかにシンプルな形に持っていけるかだと思います。

顧客が商品を見たときに、「なんだかめんどくさそうだな。」「結局、なんのことだかわからんよ」と思ってしまうようでは、本末転倒ですよね。

「シンプルは、いいことだ」という意識を持って、最後の詰めを行うことが大切です。

何も考えていないシンプルさと、凝りまくった後でシャープにした結果のシンプルさは、やはり見る人が見れば、その違いに気づいてくれると信じています。

解雇71(トムス事件)

おはようございます。

さて、今日は、整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

トムス事件(札幌地裁平成24年2月20日・労経速2139号21頁)

【事案の概要】

Y社は、無地衣料及び無地の衣料にオリジナルのデザインをプリントする加工衣料の製造、企画及び販売を業とする会社であり、東京都内に本社を置くほか、国内では、札幌、仙台、埼玉、名古屋、大阪、広島及び沖縄に支店を、中国では、上海及び青島に連絡事務所を置いている。

Xは、平成18年3月、Y社との間で、雇用期間の定めなく、就業場所をY社札幌支店とし、業務内容を営業事務職とする雇用契約を締結した。

Y社は経営の合理化、効率化の必要にせまられ、その方策として「コンタクトセンター」を設置して全国の無地衣料に関する業務を集約し、また、加工衣料に関する業務についても大きな支店への移管を進めた。

その結果、X一人が執り行っていた札幌支店の営業事務職は大幅に業務量が減少することになったため、Y社は、Xに対し、東京本社に転勤するよう命じたが、Xは、これを承諾しなかった。

そこで、Y社は、Xを整理解雇した。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Y社は、国内外の競合による価格競争によって売上単価が低下する一方、中国の綿花価格及び人件費の上昇により、利幅が少なくなり、従前増収を続けていたのが、平成22年には減収に転じたことなどから、経営の合理化、効率化の必要に迫られ、その方策として、「コンタクトセンター」を設置して全国の無地衣料に関する業務を集約し、また、加工衣料に関する業務についても大きな支店への移管を進め、それに伴い、他に業務を移管した支店の営業事務職を減員することとし、その一環として、札幌支店については、無地衣料に関する業務も仙台支店に移管し、その結果としてX一人が執り行っていた札幌支店の営業事務職は大幅に業務量が減少することから、これを廃することにしたことが認められる
しかるに、Xは、C営業本部長及びD取締役から、東京本社に転勤するという提案を受け、さらにその旨の配転命令(辞令)を受けたのに、これを承諾しなかったのであるから、本件解雇については、Y社の就業規則所定の解雇事由があるといわざるを得ない。

2 Xは、本件解雇について、人選の合理性が認められないと主張するが、Y社札幌支店で営業事務職を執り行っていたのはXのみであり、その営業事務職を廃することにしたのであるから、およそ人選の余地はなかったといわざるを得ない

3 また、Xは、手続が妥当性を欠いていたと主張するところ、Xが勤務地限定採用社員であることを肯定したC営業本部長の言辞はいささか適切でないといえるものの、これについてはその後D取締役が相応の説明をしている上、そもそも、Xが異動を予定しない社員であるということと事業の縮小・休止等によりXを解雇するということは、直接には関係しないことであって、前者に関する説明が適切でないとしても、後者の手続が妥当性を欠くということにはならないというべきである。その他、本件解雇の手続が違法であるといえるような事情を認めるべき証拠は存在しない。

整理解雇の事案で、これほど短い判決理由は見たことがないというくらいあっさりとした判決です。

しかも解雇は有効との判断ですから、従業員側からすれば、納得しにくいでしょうね。

解雇回避努力についてもう少しちゃんと判断したほうがいいと思いますがいかがでしょうか。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介94 超凡思考(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

超凡思考
超凡思考

3年程前の本ですが、もう一度、読み直してみました。

非常に読みやすく、内容的にもとてもいい本だと思います。

著者は、岩瀬大輔さんと伊藤真先生です。

岩瀬さんは、ライフネット生命保険の副社長です。

伊藤先生は、弁護士で司法試験等の資格試験の「伊藤塾」塾長でもあります。

岩瀬さんも司法試験には合格されているのですが、法曹業界には入らず、コンサルタント会社等で活動されていた方です。

さて、この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

どんなに狭いニッチな分野であっても、そこを極めれば、必ず道は拓けるものだと実感しました。・・・何かを選ぶとき、人はわかりやすい花形の人気分野を求めがちですが、地味でも、専門性の高い、狭い分野で秀でたほうが目立てます。すぐに専門家になれなくても、与えられた仕事で『誰にも負けない』切り口を意識的に作ることです。どんな職業でも役割でも、まずは目の前の仕事においてこだわる。はじめはニッチで小さくても徐々に大きく広がるものだから。」(45~46頁)

これは、特にチャレンジャーの方が持つべき発想です。

まずは、狭い分野でその道を極める。

その分野では、誰にも負けないところまで掘り下げるわけです。

いろいろと他の分野に目がいってしまいがちですが、そこはじっと我慢です。

とにかく1つの分野に力を集中させることが重要ですね。

もう一つの視点としては、普通の仕事を他の人とは違う切り口、角度から取り組むということです。

常に人と違う視点を意識することが大切だと思います。

「もっといい方法はないか」「もっと新しいサービスは提供できないか」ということを考え、形にする。

こんな楽しいことはありません。

裁量が広く与えられ、自分の判断でチャレンジできる人生って、エキサイティングですよね。

どんどんリスクをとって、これからもチャレンジしていきたいです。

不当労働行為42(衛生事業所労組(街宣活動)事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合の街宣活動と不法行為に関する最高裁判決を見てみましょう。

(なお、本件判例は、不当労働行為に関する判例ではありませんが、便宜上、不当労働行為のカテゴリーとしました。)

衛生事業所労組(街宣活動)事件(最高裁平成24年1月31日・労判1045号97頁)

【事案の概要】

A社の衛生事業所の代表取締役であるXが、その労働組合の組合員であるY1ら7名に対し、Y1らがした街宣活動とビラの配布によって平穏な生活を営む権利が侵害され、名誉を毀損されたとして、不法行為に基づき、Y1ら各自に対し、損害賠償請求をした。

なお、Y2を除くY1ら6名は、A社の従業員である。

1審は、本件街宣活動のうち本件和解前のものは、Xの平穏な生活を営む権利を侵害するものであったと認定し、また、Xの社会的評価を低下させるものであったと認定した。
そして、本件各表現による名誉毀損は、正当な組合活動として違法性を阻却されるものではないと判断し、慰謝料50万円及び弁護士費用5万円を損害として認めた。

2審は、本件街宣活動及び名誉毀損については、1審と同じ判断を下したが、正当な組合活動として違法性が阻却されるかについては、一審判決を取り消し、正当な組合活動としてY1らに不法行為は成立しないとした。

【裁判所の判断】

上告棄却、上告受理申立不受理
→街宣活動は違法とはいえず、不法行為は成立しない。

【判例のポイント】(原審の判断)

1 本件街宣活動のうち本件和解前のものは、A社周辺、市役所周辺及びX宅近辺区域を中心として、自動車を停止させることなく進行しながらなされたものであって、その態様からすると、A社の営業区域であるB市内において、地域住民に広く労使紛争の実態を訴え、有利な紛争解決を図ることを目的としたものであったと認められ、X宅の平穏をことさら害するような目的の下に、X宅を狙い撃ちにしたものであるとは認められない
また、上記目的を達成するのに必要な音量を超過し、Xやその家族に受忍限度を著しく超えるような騒音被害を与えたとも認められず、X宅近辺区域における街宣活動の継続時間がそれ程長いものであったとは考えられず、その時間帯も夜間や早朝に及ぶことはなかったこと、更には、X自身は労使紛争について第三者であるとはいえず、純粋な第三者に比して受任すべきは範囲はより広いといえることを総合すれば、本件和解前の本件街宣活動は、社会通念上、正当な組合活動の範囲を超えた違法なものであったとは認められない
したがって、本件街宣活動のうち本件和解前のものは、それがXの平穏な生活を営む権利を侵害したからといって、正当な組合活動として違法性が阻却され、Y1らは不法行為責任を負わない。

2 労働組合の活動として配布されているビラに通常見られる表現方法であるといえるし、その配布回数及び配布場所についても、正当な組合活動としての社会通念上許容される範囲を逸脱しているということはできない。したがって、本件各表現及び本件ビラ記載のいずれについても、少なくとも真実相当性の要件を充たすものということができるし、また、その表現方法等の点に照らしても、本件街宣活動及び本件ビラ配布による名誉毀損は、社会通念上正当な組合活動としての範囲を超えておらず、Y1らに不法行為は成立しないというべきである

組合活動として許容される範囲がよくわかります。

憲法上保障されている権利ですから、かなり広範に認められていることがわかります。

使用者側としても、組合活動として許容される範囲がかなり広いということを理解しておくほうがよろしいかと思います。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介93 一流の人たちがやっているシンプルな習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
一流の人たちがやっているシンプルな習慣
一流の人たちがやっているシンプルな習慣

帯には、こう書かれています。

本書を読む前に、わかってもらいたいことがある。それは、超一流の人たちが毎日やっていることは、特別なことではないということ。誰でもできるということ。

多くの本で書かれていることですが、特別なことをやる必要はないわけです。

誰にでもできることを誰にもできないくらいやれば、成功します。

もう、本当にそれだけだと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・勝者・敗者を決める大きな要素は、スタートの思い切りである。出だしに躊躇した人は、まずいい成績を残せない。・・・ビジネスでも同様で、躊躇ない出だしは非常に重要である。多くの情報を集めたうえで自分を信じて決断をしたなら、それ以上心配することは意味がないのだ。『負けたらどうしよう』『失敗したらどうしよう』こういう無意味な思考回路は捨て去ることだ。」(194~195頁)

いろんな人が、表現を変えて、同じことを言っていますね。

これを読んですぐに思い浮かんだのは、マクドナルド社長の原田さんの言葉です。

決定したらすぐ実行しろではなく、決定しなくてもいいからすぐ実行だ!

いい言葉ですよね。

だいたいお話をしていると、決断力・実行力がある人かどうかはわかります。

そういう人の特徴は、リスクを積極的にとれるということです。

「負けたらどうしよう」、「失敗したらどうしよう」という後ろ向きな発言をする人は、好きではありません。

そんなことを悩んでいる暇があったら、少しでも勝てるように、成功するように、準備をするべきです。

準備こそ命です!

考えても仕方がないことに悩んでいる時間があるなら、準備をしましょう。

解雇70(日本基礎技術事件)

おはようございます。

さて、今日は、適格性不足等を理由とする試用期間中の解雇の成否に関する裁判例を見てみましょう。

日本基礎技術事件(大阪高裁平成24年2月10日・労判1045号5頁)

【事案の概要】

Y社は、建築コンサルタント、地盤調査、地盤改良・環境保全工事などを業とする会社である。

Xは、Y社に平成20年4月から新卒者(試用期間6か月)として勤務したが、試用期間中である同年7月29日、Y社で勤務する技術社員としての資質や能力等の適格性に問題があるとして、解雇の意思表示を受けた。

Xは、本件解雇は無効であると主張し、争った。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、試用期間中の解雇であっても普通解雇の場合と同様に厳格な要件の下に判断されるべきであると主張するが、解約権の留保は、採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い、適切な判定資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされるものと解されるのであって、今日における雇用の実情にかんがみるときは、一定の合理的期間の限定の下にこのような留保約款を設けることも、合理性を有するものとしてその効力を肯定することができるというべきである。それゆえ、留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない(最高裁昭和48年12月12日大法廷判決)。

2 6か月の試用期間のうち、4か月弱が経過したところではあるものの、繰り返し行われた指導による改善の程度が期待を下回るというだけでなく、睡眠不足については4か月目に入ってようやく少し改められたところがあったという程度で改善とまではいかない状況であるなど研修に臨む姿勢について疑問を抱かせるものであり、今後指導を継続しても、能力を飛躍的に向上させ、技術社員として必要な程度の能力を身につける見込みも立たなかったと評価されてもやむを得ない状態であったといえる

3 Xとしても改善の必要性は十分認識でき、改善するために必要な努力をする機会も十分に与えられていたというべきであるし、Y社としても本採用すべく十分な指導、教育を行っていたといえるから、Y社が解雇回避の努力を怠っていたとはいえないし、改めて告知・聴聞の機会を与える必要もない

試用期間中の解雇が有効と判断されたケースです。

適格性不足による解雇なので、解雇をためらうところですが、判例のポイント2のような事情がある場合、裁判所は解雇を有効と判断してくれることもあるわけですね。

また、当該従業員に対する弁明の機会についての判断も参考になります。

なお、このケースでも、会社は、Xに対して繰り返し指導を行っています。

たいした指導もせずに解雇すると、無効になりますので、ご注意ください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介92 1000人の経営者から教わった一流の人の考え方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
写真 12-06-08 19 43 39先日、七間町の「こはく」に夜ごはんを食べに行きました

←駿河軍鶏のたたき。引き締まりまくりで、とってもおいしかったです。

「こはく」、レベル高いですね。

今日は、午後は、外部の法律相談があり、夜は、清水の会社で社内セミナーを行います。

100名以上参加されるということで、今からわくわくしています。

今日のセミナーのテーマは、

身近に潜む労務リスク~職場で知っておきたい最新労務知識~

です。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
1000人の経営者から教わった 一流の人の考え方
1000人の経営者から教わった 一流の人の考え方

著者がこれまでに会ってきた数々の経営者から学んだことや気づいたことがまとめられています。

勝間さんに対しては辛口なところがおもしろいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・ビジネスも同じである。とくに最近は技術も変化が激しいので、風向きもしょっちゅう変わる。時流に乗って一躍時の人となり、ビジネス誌に出まくっていた人が、翌年には忽然と消えてしまったというケースは珍しくない。一方、ずっと第一人者でいるというのは、その間に状況や環境が変わってもそれを乗り越えてきた、あるいは変化に適応してきたということだ。これはかなり力がないとできることではない。・・・いくら驚異的な潜在能力の持ち主であっても、環境が整わないとその力をアウトプットできないというのでは、いかにも脆弱だ。これでは本当に実力があるとはいえない。」(50頁)

確かに。

そもそもの前提として、何十年も風向きや環境が変わらないほうがおかしいです。

最初から、「いつの日か、今までの常識が通用しなくなる日がくる」と思っていれば、慌てふためくこともないと思います。

今、当然の前提としていることが当然の前提にならなくなったとき、その事実をありのまま受け入れて、柔軟に対応できる人が本当に実力のある人なんでしょうね。

そのときそのときの環境をうまく活かして、よりよいサービスを提供する。

結局、それしかないんじゃないかな。

どんな変化も味方につけられるように、日々、意識して準備をしています。

若手弁護士のみなさん、お互い、最高のサービスを提供できるよう、がんばりましょう!!

配転・出向・転籍14(N事件)

おはようございます。

さて、今日は、京都工場から横浜所在の本社への配転命令に関する裁判例を見てみましょう。

N事件(京都地裁平成23年9月5日・労判1044号89頁)

【事案の概要】

Y社は、自動車・電気その他の部品に対するコーティング加工を行う会社である。

XとY社は、平成18年6月に労働契約を締結し、Xは、京都工場で製造課長として勤務をするようになった。

Y社は、平成21年8月、Xに対し、客先や京都工場の部下からXに対する苦情がでていると述べ、解雇すると述べた。

Xは、解雇の撤回を求めるとともに、労働組合に加入し、団体交渉を申し入れた。

Y社は、本件解雇を撤回するとともに、Xに横浜市所在の本社勤務を命じる配転命令をした。

Xは、本件配転命令の撤回を求めて本社での勤務をせず、これに対し、Y社はXが本件配転命令に反して本社で勤務をしなかったことから、給与を支払わなかった。

【裁判所の判断】

配転命令は無効

【判例のポイント】

1 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働することを合意するものであるところ(労働契約法6条参照)、使用者は、企業目的を達するため、変化する顧客のニーズや経済情勢に合わせて、あるいは労働者の能力開発や育成などをしながら企業を効率的かつ合理的に運営することが必要となり、そのためには、従業員から提供される労働力について、その種類、態様、場所を適正に配置することが必要となるから、通常、使用者が一定の配転命令権を有することは明示あるいは黙示に労働契約において予定されており、多くの場合、就業規則にその旨の定めがされている。
他方、就業規則に配転に関する定めがない場合であっても、それをもって直ちに配転命令権がないということはできないが、配転命令の内容が多様で、労働者の社会生活上、職務上の負担やキャリア形成に与える影響も様々であることや、労働契約の内容は労働者及び使用者が対等な立場で自主的交渉において合意することにより締結し、変更されるべきであること(労働契約法1条、3条1項参照)にかんがみると、Y社が主張するように、労働契約を締結したことにより使用者が包括的な配転命令権を取得するということはできないのであり、労働契約締結の経緯・内容や人事異動の実情等に照らして、当該労働契約が客観的に予定する配転命令権の有無及び内容を決すべきである。
そして、本件配転命令は、住居の移転を伴う配転を命じるものであるところ、このような配転命令は、使用者が配慮すべき仕事と家庭の調和(労働契約法3条3項)に対する影響が一般的に大きなものであるから、その存否の認定判断は慎重にされるべきものであると考える

2 Y社の就業規則には、諸規則や上長の指示命令に従うことを定めた32条があるが、その文言に照らすと、これをもってY社の配転命令権の根拠とすることはできず、他に配転命令権に関する定めが一切ないと認められる。そして、Y社の求人広告においても、Xの採用面接においても、勤務地が京都工場であるとされていた上、転居を伴う異動の可能性があることについての説明が全くされていない。また、Xの採用は、長期人材育成を目的とした新卒者の採用ではなく、管理職としての即戦力を重視して、当初から京都工場で勤務するために行われた中途採用であって、本社で採用された後に京都工場に配置されたものではない。加えて、転居を伴う配転実績も、本件配転命令が発令されるまでに、約20年前に1件、約12年前に1件の合計2件あったのみであり、Y社の企業規模を考慮しても極めて少ないといわざるを得ない
これらのことからすると、本件労働契約において転居を伴う配転が客観的に予定されていたとはいえず、Y社に本件配転命令をする権限があったとは認められない

3 これに対し、Y社は、Y社がXの雇用維持を考慮して解雇を回避し、配転命令としたにもかかわらず、配転命令が無効であるとなれば、(1)解雇権濫用法理を前提とする日本の雇用システムにおいて矛盾となること、(2)整理解雇の4要素のうち解雇回避努力において配転の可能性の考慮が求められていることと相反することを指摘する。
・・・しかしながら、一般的な配転命令権が認められない場合であっても、使用者が個々の場面で配転に対する労働者の個別の同意を得る努力をすることで、解雇を回避することは可能なのであり、解雇権濫用法理や整理解雇における解雇回避努力の要請も、それを前提にしていると解されるから、当裁判所の考え方も、解雇権濫用法理を前提とする日本の雇用システムと矛盾したり、整理解雇の解雇回避努力において配転の可能性の考慮が認められていることと相反するものではない。かえって、上記の極限的な場面を想定することで、労働者の社会生活上、職務上の負担に影響する配転命令権を安易に認めるのは相当とは思われない

配転命令に関する裁判所の考え方がよくわかります。

京都から横浜への転居が必要となる配転ということもあり、比較的厳しい判断がされています。

上記判例のポイント3は、思考方法として参考になりますね。

解雇回避努力との関係でどのように考えたらよいかは、会社側とすれば当然悩ましい問題です。

裁判所は、「極限的な場面を想定することで・・・配転命令権を安易に認めるのは相当とは思われない」と判断しています。

会社側としては、どのような判断が妥当かを適切に判断するのはとても難しいと思います。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。

本の紹介91 マクドナルドの経済学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

マクドナルドの経済学
マクドナルドの経済学

マックの社長原田さんとテレビでおなじみ東大教授の伊藤さんの対談形式の本です。

これまでも何冊か原田さんの本を紹介してきましたが、この本もとても勉強になります。

「他分野の顧客を取り込むこと」「他業種を競争相手として考えるビジネス戦略」の重要性が説かれています。

業界は違っても、参考になる部分は非常に多いです。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

伊藤 いま日本で業績不振に陥った企業をよく見ていると、原田会長のいう『らしさ』を失ったところが多いのかもしれません。では、企業の『らしさ』を保つためには、どうすればよいのでしょうか。

原田 それには『お客様の声に迎合しすぎないこと』という覚悟をもつことも大事でしょう。たとえば、マクドナルドのメニューに関するアンケートを取りますと、『オーガニックで、ヘルシーなメニューをそろえてほしい』という声が寄せられます。ところが、いざそうしたものを提供しても、あまり売れていない。

伊藤 なるほど(笑)

原田 ・・・『マクドナルドらしさ』を追求するのであれば、メニューについてはやはり『アメリカらしさ』を貫かなければなりません。・・・いたずらに日本のお客様の消費傾向に迎合する商品を小手先でつくっても、受け入れていただけません。」(49~50頁)

非常に参考になりますね。

その会社「らしさ」を失ったサービスを提供しても、決して、うまくはいかないというわけです。

顧客の声に迎合しすぎることにより、あれやこれやと何でも取り入れると、最終的に、その会社「らしさ」がどんどんなくなってしまうんですね。

まずは、自分の会社や事務所がどのような「らしさ」を持っているのかがわかっていないといけません。

次に、その「らしさ」、つまり、ブランディングを貫くことが必要です。

この商品、この分野といえば、この会社、この事務所と言っていただけるためには、根っこの理念がぶれないことが大切です。

常にこのことを頭に入れておかなければ、いろんなことをやりたくなってしまうんですよね。

私の事務所でも、たくさんの新しいアイデアがありますが、事務所らしさがないものについては、手を出しません。

これから5年間は、ますます「らしさ」を追求していく予定です。

管理監督者28(HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド(賃金等請求)事件)

おはようございます。 

さて、今日は、管理監督者性と未払残業代等の請求に関する裁判例を見てみましょう。

HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド(賃金等請求)事件(東京地裁平成23年12月27日・労判1044号5頁)

【事案の概要】

Y社は、A銀行東京支店等の関連会社から受託した業務を行う外国法人であり、Xは、人材紹介会社の紹介を受け、平成19年12月にY社に入社すると、A銀行東京支店へ出向という形で、個人金融サービス本部に勤務していた。

Xは、採用時に、期間の定めのない労働契約が締結され、年俸は1250万円とされたが、3か月の試用期間満了時に、Y社から本採用を拒否された。

Xは、Y社に対し、未払残業代とその付加金等を請求した。

これに対し、Y社は、Xは労基法41条の管理監督者であるか、仮にそうでないとしても割増賃金を年俸に含める合意が成立していたなどと主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定
→未払残業代として約325万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体の立場にある者をいい、管理監督者か否かは、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである。そして、管理監督者と認められるためには、(1)職務の内容が、少なくともある部門の統括的なものであって、部下に対する労務管理上の決定等について一定の裁量権を有していること、(2)自己の出退勤を始めとする労働時間について裁量権を有していること、(3)一般の従業員に比してその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていることが必要であると解される

2 管理監督者に当たるか否かの判断は、管理監督者に当たるとされた労働者について、労基法の定める時間外労働等に関する規制の適用がすべて排除されるという重大な例外に係る判断であるから、管理監督者の範囲は厳格に画されるべきであるところ、インターネットバンキング担当のVPというXの職務上の地位や権限は、上記規制の適用が排除されても、当該労働者の保護に欠けるところがないと断定できるほど高次のものでなかったことは明らかである

3 年俸の中に時間外労働等に対する割増賃金が含まれるとする合意については、年俸のうち割増賃金に当たる部分とそれ以外の部分とを明確に区別することができる場合に限り、その有効性を認めることができると解されるところ(最高裁昭和63年7月14日・労判523号6頁)、XとY社との間の契約においては、そのような明確な区分がされているものとは認められないから、法定時間外労働等に対する割増賃金について、これを年俸に含むとする旨の合意は、労基法37条に反し無効であると言わざるを得ない
なお、Y社は、(1)Xに過重労働はないこと、(2)Xは年俸1250万円という高額の報酬を受けていること、(3)X自身も年俸とは別に割増賃金が支給されるものとは考えていなかったこと等の事情に照らせば、年報に含む旨の合意の効力が認められるべきである旨をも主張するが、独自の見解であって採用の限りではない。

4 さらに、Y社は、いわゆる法内残業については、これを年俸に含むものとしても何ら労基法に定職するものではないから、年俸に含む旨の合意により、Y社には法内残業に係る賃金の支払義務はないとも主張する。
・・・このような法内残業について、年俸に含む旨の合意の効力を認めても、何ら労基法に反する結果は生じないから、法内労働に対する賃金につき、これを年俸に含むものとする旨の合意は有効であって、Y社には、法内残業に対する賃金の支払義務はないものと解するのが相当である
なお、この点については、就業規則の最低基準効(労働契約法12条)との関係も問題となり得るが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められるY社の賃金規程によれば、Y社においては、Xのように年俸制で採用された従業員に対しては、所定時間外労働及び所定休日労働に対する割増賃金は支払われないものとされていることが認められるから、法内残業に対する賃金が年俸に含まれる旨の合意の効力を認めても、就業規則との抵触は生じない。
以上によれば、年俸に含む旨の合意は、法定時間外労働、法定休日労働及び深夜労働については無効であるが、いわゆる法内残業に対する限度では有効であるということができる

この事件、本人訴訟みたいですね。

管理監督者性については、いつもどおり、否定されています。

年俸制と残業代の関係については、既に判例がありますので、特に目新しい点はありません。

今回、参考になるのは、上記判例のポイント4の法内残業に関する考え方ですね。

年俸に法内残業に対する賃金を含めるという合意は有効であるようなので、その点について、書面で明確に合意をしておくことをおすすめいたします。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。