管理監督者23(アイマージ事件)

おはようございます。

さて、今日は、昨日に引き続き、管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

アイマージ事件(大阪地裁平成20年1月14日・労経速2036号14頁)

【事案の概要】

Y社は、カラーコピーサービス業務及びコンピュータのプリントアウトサービス、広告、出版及び印刷業等を営む会社である。

Xは、Y社の従業員としてコピーサービス店の店長をしていた。

Xは、Y社を退職後、Y社に対し、未払時間外手当の支払を請求した。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定

付加金の支払いは命じない

【判例のポイント】

1 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあり、そもそも労働時間の管理になじまない者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである。
Y社の主張するXの待遇に関する点は、いずれもXが本件店舗の店長であったことによって説明することも可能なものである。Xは、店長であるといって、その権限は、本件店舗の3階部分に及んでいたことをうかがわせる証拠はなく、1階部分に限定されていたものと推認される。また、Y社と強い結びつきがあり、Y社の経営に強い影響力を有していたことがうかがわれるAも頻繁に本件店舗を訪れていたことからすると、店長である以上に経営者と一体的な立場にあったとまでは認められない

2 Y社の主張するXの賃金待遇に関する点は、いずれもXが本件店舗の店長であったことによって説明するkとも可能なものである。他方で、合計26万円の月額賃金は、他の従業員に比べると好待遇であるとはいえ、店長であることを超えて管理監督者としての地位にあることを裏付けるものとしては不十分である

3 Xがタイムカードの打刻を懈怠することが少なかったことは事実であるが、打刻されている限りでは、所定の勤務時間は、きちんと就労しており、契約上も実態上も、時間管理がなされていなかったとは認められない。また、Xの意識においても、時間管理がなされていないとの認識はうかがわれない

4 Xの業務内容のうち、従業員の採用や従業員の給料の決定を行っていたことを認定するに足りる証拠はない。経理業務を担当していたことについては争いがないが、これのみを以て、Xが管理監督者の地位にあったと認めることはできない。
以上の検討によれば、Xが管理監督者の地位にあるとのY社の主張は採用できない。

5 事情はどうあれ、Xは、格別、困難を来すような事情がうかがわれないにもかかわらず、タイムカードをきちんと打刻しておらず、Y社が的確に時間外労働時間数を把握することを困難にしていることを考慮すると、Y社に付加金の支払いを命じるのは相当でない

付加金に関しては、珍しい判断のしかたです。

裁判所の裁量なので、ありなんでしょうけど、Xがタイムカードをきちんと打刻していなかったこととY社が残業代を支払ってこなかったことって、関係あるんでしょうか?

よくわかりません・・・。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者22(ゲートウェイ21事件)

おはようございます。

さて、今日は管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

ゲートウェイ21事件(東京地裁平成20年9月30日・労判977号74頁)

【事案の概要】

Y社は留学・海外生活体験商品の企画、開発、販売等を業とする会社である。

Xは、Y社に勤務し、銀座支店の支店長であり、Y社社内では、シニアブランチマネージャー(SBM、部長相当、非役員では最高等級)の地位にあり、営業を担当していた。

Xは、Y社を退職後、Y社に対し、未払時間外手当等の請求をした。

【裁判所の判断】

管理監督者には当たらない

付加金として、請求認容額とほぼ同額を認めた

【判例のポイント】

1 Y社は、Xに勤務上の広い裁量があり、Xに残業を命じる立場の者はいないので、残業命令がないところを自らの意思で残業したにすぎないと主張する。
しかし、Y社代表者は、午前10時ころのみならず、遅い時刻にもメールや電話で、Xらに、営業成績の報告等をするよう、強く求めていたことが認められる。Xの地位からすれば、具体的に何日の何時まで残業せよという命令が出ることはないと考えられる。けれども、Y社では、全社的に営業成績(ノルマ)の達成を強く義務づけ、従業員一般に対して、これを達成するよう叱咤激励を繰り返したことが認められるところ、その達成には所定労働時間内の勤務では不十分であることは明らかであるから、Xに対して残業命令が出ていないという理由により、Y社が時間外手当の支払を免れることはないというべきである。

2 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき、経営者と一体的な立場にあるものをいい、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであると解される。具体的には、(1)職務内容が、少なくともある部門全体の統括的な立場にあること、(2)部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、待遇において、時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、(4)自己の出退勤について、自ら決定し得る権限があること、以上の要件を満たすことを要すると解すべきである。

3 Xの職務内容は、部門の統括的な立場にあり、部下に対する労務管理上の決定権等はあるが、それは小さなものにすぎないといえる。また、時間外手当が支給されないことを十分に補うだけの待遇を受けておらず、出退勤についての自由も大きなものではないといえる。これを総合すれば、Xは、経営者との一体的な立場にあり、労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されるような地位とそれに見合った処遇にある者とはいえず、労働時間等に関する規定の適用を除外されることが適切であるとはいうことができない。したがって、Xは管理監督者には当たらないというべきであるから、Y社はXの時間外労働に対する手当の支払を免れられないというべきである。

4 本件において、Y社は、X1に対し時間外手当を支払わず、本件訴訟提起後も、X1の時間外労働自体を争うなどし、弁論の全趣旨によれば、逆に損害賠償訴訟を提起するという態度をとるなど、時間外手当を支払う姿勢が見られないから、付加金の支払いを命ずるのが相当である。なお、時間外手当の総額は、386万8621円と認められるが、請求の趣旨の範囲内(370万1571円)で認容する

この裁判例は、とても参考になります。

特に、判例のポイント1は、労働者側にとって非常に参考になります。

ノルマの達成が強く義務づけられていたという事実を裁判所は重く評価しています。

付加金に関する裁判所の判断は、会社にとっては、痛いところです。ただ、やむを得ないといった感じでしょうか。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

不当労働行為20(JR東日本(千葉動労・安全運転闘争)事件)

おはようございます。

さて、今日は、懲戒処分と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

JR東日本(千葉動労・安全運転闘争)事件(中労委平成23年4月20日・労判1026号181頁)

【事案の概要】

Y社は、鉄道事業法等の法令に従い、列車運転速度表および運行図表を定めるとともに運転作業要領等の各種規程を設けて、これらを運転士全員に配布し、列車を利用する乗客に対して駅での列車の発着時刻を列車時刻表として公表している。

X組合は、運転保安確立を求めて平成18年3月、千葉支社管内の全線区で列車の最高速度を制限する安全運転闘争を行った。

これに対し、Y社は、組合所属の運転士の乗務する列車に管理者を添乗させて運転状況を確認した。その結果、乗務区間において1分以上の遅れが生じた列車は15本、関与した運転士はAら12名の組合員であった。

Y社は、安全運転闘争を決定・指示した組合本部役員であるBら6名を戒告処分に、また、安全運転闘争に参加したAら組合員12名を厳重注意処分に付した。

【労働委員会の判断】

戒告処分、厳重注意処分は、不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 本件争議行為は、意図的に会社における列車の定時運行体制に支障を生じさせるものであり、単に不完全な労務提供や労務の一部のみの提供という消極的態様にとどまるものではない。また、本件争議行為への会社の対応に照らすと、本件において会社が組合員らの就労を受け入れたからといって、本件争議行為を容認したとか、これが正当性を有するということにはならない。さらに、本件争議行為は、乗務員等の連携作業を乱すものであり、その結果として、列車事故等を招来しかねないという内在的危険性を有するものである。

2 以上のとおりであるから、本件争議行為は、いわゆる怠業という範疇を超えたものであり、争議行為として正当性の範囲を逸脱するといわざるを得ない。したがって、本件争議行為は労働組合の行為として正当性を有しないものである

3 ・・・そうすると、Bら6名に対する戒告処分については、その根拠や処分の程度等において相当性が認められ、また、上記各処分に当たって、会社がことさら組合員を萎縮させることにより、組合の弱体化を企図したとする事情はうかがえないから、労働組合法7条3号の支配介入に当たるとすることもできない。

4 したがって、Aら12名に対する厳重注意処分は、労働組合法7条3号の支配介入には当たらない。

本件では、組合員による争議行為が正当ではないと判断されたため、戒告処分等については、不当労働行為性が否定されています。

「安全運転闘争」により、かえって危険運転となってしまうと判断されたわけです。

皮肉なものです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為19(飛鳥交通神奈川(井土ヶ谷営業所)事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合別残業抑制と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

飛鳥交通神奈川(井土ヶ谷営業所)事件(神奈川県労委平成23年4月27日命令)

【事案の概要】

Y社は、従業員465名(井土ヶ谷営業所に262名)をもってタクシー事業を営んでいる。

X組合は、Y社に対し、団交において、深夜勤務の残業代を支払うよう求め、その後、時間外割増賃金の支払を求める訴訟を提起した。

Y社は、訴訟の原告であるか否かにかかわらず、自交総連組合の組合員全員を対象に残業抑制等を開始した。

【労働委員会の判断】

組合別残業抑制は、不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 時間外勤務が禁止されたことで、自交総連組合の組合員には賃金額の減少という経済的不利益性が存在する。また、公休出勤についても、休日における所定時間外労働であるから、これを禁止することは、前記時間外勤務の禁止と同様の理由で賃金が減額となり、経済的不利益性があるものと言える。

2 以上のことからすると会社は、個々の組合員が残業代について異議があること及び自交総連組合の組合員であることのゆえをもって残業抑制等の不利益取扱いを行っているものであり、また、本件残業抑制等の措置は、残業代未払請求という労働組合の活動方針に対する重大な妨害行為に当たるとともに、組合員を自交総連組合から脱退させようとの意図に基づく支配介入に当たると言うほかない。

3 すなわち、残業代未払請求という自交総連組合及びその組合員の行為は、その請求に係る法的結論の帰趨はともかくとして、労働基準法に基づく正当な権利主張と言うことができる。したがって、労働組合の正式な活動方針に従い、当該組合員が裁判所に支払請求を提起することは、労働組合の正当な行為に当たるから、本件残業抑制等の措置は、正当な組合活動を理由とする報復的な不利益取扱いに該当する。また、会社が、個々の組合員が別件訴訟の原告となっているか否かを問うことなく、自交総連組合の組合員であることのみをもって一律に残業抑制等を行っていることは、労働組合の組合員であることを理由とする不利益取扱いに該当する

4 さらに、会社が別件訴訟を取り下げさせるために本件残業抑制等の措置を取っていることは、労働基準法に基づく残業代未払請求という組合の自主的な活動方針に対する露骨な妨害行為に当たる。と同時に、本件残業抑制等の措置は、自交総連組合を脱退した者が直ちに残業抑制等の対象から外されていることからすれば、同組合員に自交総連組合からの脱退を強く促す悪質な脱退工作というべきであり、これらの点でも労働組合法7条3号で禁止された支配介入に該当する

やり方が露骨だと、このような結果になってしまいます。

会社としては、もう少し「見せ方」を工夫しなければいけません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

労働時間22(奈良県(医師・割増賃金)事件)

おはようございます。

さて、今日は、産婦人科医の宿日直勤務や宅直勤務の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

奈良県(医師・割増賃金)事件(大阪高裁平成22年11月16日・労判1026号144頁)

【事案の概要】

Y病院は、奈良県が設置運営する病院である。

Xらは、Y病院の産婦人科に勤務する医師である。

Xらは、奈良県に対し、宿日直勤務および宅直勤務は労働時間であるとして、労基法37条の定める割増賃金の支払いを請求した。

【裁判所の判断】

宿日直勤務については、割増賃金の請求を認める。

宅直勤務については、割増賃金の請求を認めない。

【判例のポイント】

1 労働基準法41条3号の監視労働とは、原則として一定部署にあって監視するのを本来の業務とし、常態として身体又は精神的緊張の少ない者、断続的労働とは、休憩時間は少ないが手待ち時間は多いものをいうと解されるところ、これらの労働は労働密度が薄く、精神的肉体的負担も小さいことから、当該労働時間は、全て使用者の指揮命令下にある労働時間であることを前提とした上で、所轄労働基準監督署長の許可を受けることを条件として、労働基準法32条その他同法上の労働時間に関する規定、休憩やや休日に関する規定の適用を免れるとしたものと解される。

2 Y病院の産婦人科医師の宿日直勤務は、その具体的な内容を問うまでもなく、外形的な事実自体からも、奈良労働基準監督署長が断続的な宿直又は日直として許可を行う際に想定していたものとはかけ離れた実態にあった、ということができる。このことに照らすと、奈良労働基準監督署長がY病院の宿日直勤務の許可を与えていたからといって、そのことのみにより、Xらの宿日直業務が労働基準法41条3号の断続的業務に該当するといえないことはもちろん、上記許可の存在から、Y病院における宿日直業務が断続的業務に当たると推認されるということもできない。

3 マンションの住み込み管理員が、雇用契約上の休日に断続的な業務に従事していた場合において、使用者が、管理員に対し、管理員室の証明の点消灯及びごみ置場の扉の開閉以外には、休日に業務を行うべきことを明示に指示していなかった事実関係の下では、使用者が休日に行うことを明示又は黙示に指示したと認められる業務に管理員が現実に従事した時間のみが、労働基準法32条の労働時間に当たる
ところが、本件で問題となっている宅直については、Y病院長がY病院の産婦人科医らに対し、明示又は黙示の業務命令に基づき宅直勤務を命じていたものとは認められないのであるから、Xらが宅直当番日に自宅や直ちにY病院に駆けつけることが出来る場所等で待機していても、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができない
・・・以上のとおり、Xらの宅直勤務は、Y病院の明示又は黙示の業務命令に基づくとは認められないので、これが労働基準法上の労働時間に当たると認めることはできない。

4 とはいっても、Y病院の宅直制度が、医師は緊急の措置を要請された場合にはこれに応ずべきであるとする、プロフェッションとしての医師の職業意識に支えられた自主的な取組みであり、Y病院における極めて繁忙な業務実態からすると、現行の宅直制度の下における産婦人科医の負担は、プロフェッションとしての医師の職業意識から期待される限度を超える過重なものなのではないか、との疑いが生ずることも事実である(また、そもそも、雇用主である奈良県が、雇用される立場のXらのプロフェッションとしての医師の職業意識に依存した制度を運用することが正当なのかという疑問もある。)。
奈良県においては、Y病院における1人宿日直制度の下での宿日直担当医以外の産婦人科医の負担の実情を調査し、その負担(宅直制度の存否にかかわらない。)がプロフェッションとしての医師の職業意識により期待される限度を超えているのであれば、複数の産婦人科宿日直担当医を置くことを考慮するか、もしくは宿日直医の養成に応ずるため、自宅等で待機することを産婦人科医の業務と認め、その労働に対して適正な手当を支払うことを考慮すべきものと思われる。

少し前に、この事件の記事についてこのブログで取り上げました。

裁判所は、宿日直勤務を、労基法41条3号の断続的労働とは認めず、その全体についてY病院の指揮命令下にある労基法上の労働時間であるとして、割増賃金の請求を認容しました。

他方、宅直勤務については、医師の自主的な取組みであり、Y病院からの黙示の業務命令によるものとは認められないとして、労基法上の労働時間に当たらないとしました。

このような判断をしておきつつ、裁判所は、上記判例のポイント4で、バランスを保とうとしています。

こういうのを「蛇足」とかいわれちゃうんでしょうか・・・。 僕は、いいと思うんですけど。

なお、本件では、上告受理申立てがされているようです。 最高裁の判断が待たれます。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

解雇54(互光建物管理事件)

おはようございます。

さて、今日は、就業場所についての事前協議条項と解雇に関する裁判例を見てみましょう。

互光建物管理事件(大阪地裁平成23年1月27日・労判1026号172頁)

【事案の概要】

Y社は、委託を受けてマンション管理等を業とする会社で、従業員数は2400名程度で、そのうち、マンション管理人は350名程度である。

Xは、平成16年8月頃、Y社との間で雇用契約を締結し、訴外B社が管理するマンションの住み込み管理員として派遣されていた。

Xは、Y社から、B社との間の直接雇用契約にすべく転籍出向の意向打診がなされたが同意せず、また、研修を欠席したことなどから解雇された。

なお、Y社には、就業場所についての事前協議協定が存在する。

Xは、本件解雇は、就業場所についての事前協議協定に反し無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 Y社は、Xの就労場所としてCマンションと決定しているが、同決定は、本件確認書4項に基づき「事前に乙に説明し、乙の意見を聞く等して、別途労使間で誠実に協議することとし、加えて、乙の家庭事情その他を尊重した上」で行わなければならない義務に反した行為であって、違法無効といわなければならない
同決定の瑕疵の重大性からして、。それを前提とするY社のXに対する本件2研修命令は違法と言わなければならない。そうすると、Xが同研修命令に反して欠勤をしたとしても、それをもって直ちに違法とまで言うことはできない。また、Xは、同研修命令で命じられた期間以降もCマンション等に出勤することがなかったが、同研修命令が違法であることからすると、同出勤しなかったことをもって欠勤ということはできない

2 Y社は、Xが同2研修命令に従わず、1か月に7日以上無断欠勤をしたとして本件解雇を行ったが、同解雇は、解雇権の濫用というべきで、無効といわなければならない。

3 本件2研修命令に伴う欠勤であるが、同研修命令は違法と言わなければならず、したがって、Xが同研修命令に反して欠勤をしたとしても、それをもって直ちに違法とまで言うことはできない。そうすると、同欠勤をもって減額措置をとることはできないといわざるをえない。したがって、Y社の同研修命令を基礎とする賃金減額措置は違法で、無効といわなければならない。また、Xの同研修命令以降の欠勤であるが、同研修命令以後それに引き続いて欠勤していること、Y社が同研修命令を命じたにもかかわらず欠勤を継続している旨認識していたことを踏まえると、違法無効な同研修命令を基礎として業務命令を出したことについてXが従わなかったことが契機となってY社に出勤しないことが継続されたものと推認される
以上の事実を踏まえると、違法な同研修命令が契機として出勤しなかった日をもって無断欠勤等として減額措置をとることはできないというべきである

上記判例のポイント3の判断は、参考になります。

研修命令に伴う欠勤による賃金の減額措置の適法性について、以下のような論理展開をしています。

研修命令は違法→研修命令に反して欠勤しても違法ではない→だから欠勤を理由とする減額措置はダメ

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇53(京電工諭旨解雇事件)

おはようございます。

さて、今日は、仕事のミスを理由とする退職勧奨に関する裁判例を見てみましょう。

京電工諭旨解雇事件(仙台地裁平成21年4月23日・労判988号53頁)

【事案の概要】

Y社は、平成8年に設立された電気工事業・通信設備工事業・配管工事業及びこれに付随する一切の業務を業とする会社である。

Xは、平成17年12月、Y社に採用され、東北6県及び新潟県の現場で電気通信設備工事に従事していた。

Xは、Y社に対し、Y社から自主退職の名目で懲戒解雇理由がないのに懲戒解雇同様の不利益処分を下されたとして、不法行為に基づく損害賠償請求をした。

【裁判所の判断】

不法行為が成立する

【判例のポイント】

1 Y社がXに対して退職届の提出を命じたのは、Xに対して懲戒処分の一種である諭旨解雇処分を行ったものと認めることができる。

2 規則上、諭旨解雇事由は明確には規定されていない。しかし、その諭旨解雇処分の内容は、説諭の上で自発的に退職させるというものであり、自発的という文言が使われてはいるものの、懲戒処分としてなされるものである以上、労働者の自由意思が入り込む余地は少ないと言え、労働者にとっては懲戒解雇に準ずる程度の不利益を与えるものということができる。したがって、その事由も、規則38条2項の懲戒解雇事由に準ずるものと解するのが合理的である。 

3 Xには諭旨解雇処分を行うに足りる合理的な理由があったというべきであるが、本件処分は懲戒処分の一種であるから、これをXに対して行う際には、懲戒処分であることを明示した上で、その根拠規定と処分事由を告知すること、及び諭旨解雇事由のあることについて労働基準監督署長の認定を受けた場合のほかは、少なくとも30日前に予告をするか、又は平均賃金の30日以上の予告手当をXに支払うことが必要であったというべきである(労働基準法20条、規則27条2項)。
本件処分においてはY社の過失によって上記手続がとられていないことが認められるから、本件処分はその手続において違法といわざるを得ず、Xに対する関係で不法行為が成立するというべきである

4 Xは、本件不法行為による逸失利益として、1年間の減収額252万円と年次有給休暇の取得権侵害による40万0890円を請求するが、Xには諭旨解雇処分の対象とされるに足りる合理的な理由があったというべきであるから、本件処分が上記の手続を遵守してなされていさえすれば、上記逸失利益は発生する余地はなかったと言える。したがって、本件不法行為と相当因果関係の認められるXの逸失利益としては、予告手当相当額(平均賃金の30日分)の限度でこれを認めるのが相当である

5 上記のとおり、Xには諭旨解雇処分の対象とされるに足りる合理的な理由があったものであり、本件処分の違法性は手続的違法にとどまることを考慮すると、本件不法行為によってXが被った精神的苦痛の慰謝料は、10万円と認めるが相当である

会社としては、単なる退職勧奨と認識していたのだと思いますが、裁判所は、諭旨解雇処分と認定しました。

退職勧奨の違法性を争うというやり方のほかに、退職勧奨は、実質的には諭旨解雇処分であるという争い方があるんですかね。

また、判決理由を読むと、この会社の就業規則には、諭旨解雇処分についての規定がないようですが、裁判所は、懲戒解雇の規定の準用を認めています。

罪刑法定主義は?

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

有期労働契約23(マイルストーン事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣社員の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

マイルストーン事件(東京地裁平成22年8月27日・労経速2085号25頁)

【事案の概要】

Y社は、労働者派遣事業事業等を営む会社である。

Xは、Y社との間で登録型有期雇用契約を締結し、約2年9か月にわたり契約を反復更新して、同一の派遣先に就労していた。

平成21年2月、Y社の責任者は、本件派遣先責任者から、本件派遣契約の期間満了による終了の申出を受け、そのことをXに伝えた。

Y社は、Xとの雇用契約を、期間満了により平成21年3月、終了させた。

Xは、Y社に対し、違法・不当な雇止めにより契約を終了したと主張し、損害賠償を請求した。

【裁判所の判断】

雇止めは有効→請求棄却

【判例のポイント】

1 Xが平成18年7月以降、Y社との間で締結した雇用契約は、いずれも「登録型」有期雇用契約であるところ、Xは、Y社との間において、かかる雇用契約を5回更新した上、平成20年10月、本件雇用契約の締結に至ったこと、いずれの更新時においてもY社担当者(派遣元責任者)とXとの面談が行われ、その際、他の従業員とのトラブルが問題とされた経緯はあるものの、更新の可否それ自体については特に大きな問題が生じたことはなく更新手続が繰り返されていたこと、またXは、本件派遣先の前身であるA社を紹介してもらった人物から本件派遣先の正社員に登用される可能性が十分にあるとの説明を受けており、本件派遣先の専務理事や本部長等もXの仕事ぶりを一応評価し、Xに対し、正社員への登用の可能性をほのめかしていたこと、そして、Y社の派遣元責任者も、平成21年2月初めに本件派遣先の責任者から連絡が入るまでは、本件雇用契約の更新について特に問題はないものと認識していたことなどの事情が認められる。
これらの事情によると雇止めとなった平成21年3月当時、Xは、本件派遣先幹部らの発言から、将来本件派遣先の正社員に登用される可能性が十分にあるものと考え、本件雇用契約が更新継続されることに、かなり強い期待を抱いていたことが認められる

2 しかし、登録型有期労働契約の場合、派遣期間と雇用契約期間が直結しているため、労働者派遣が終了すれば雇用契約も当然に終了する。そうすると本件雇用契約は、本件派遣先との本件派遣契約を前提としていることになり、本件派遣先幹部らの発言のとおりXが本件派遣先の正社員に登用されると、本件派遣契約は終了し、その結果として本件雇用契約も当然終了することになるのであるから、Xの上記期待は自己矛盾を含むものといわざるを得ない

3 そもそも労働者派遣法は、派遣労働者の雇用の安定だけでなく、常用代替防止、すなわち派遣先の常用労働者の雇用の安定をも目的としているものと解されるのであるから、この解釈の下では同一労働者の同一事業所への派遣を長期間継続することによって派遣労働者の雇用の安定を図ることは、常用代替防止の観点から労働者派遣法の予定するところではないものというべきである。
そうするとXの上記期待は、労働者派遣法の趣旨に照らしても合理的なものであるとはいい難く、民法709条ににいう「法律上保護される利益」には当たらないと解すべきである

派遣法の趣旨に照らすとこのような結論となります。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約22(スカイマーク事件)

おはようございます

さて、今日は、客室乗務員の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

スカイマーク事件(東京高裁平成22年10月21日・労経速2089号27頁)

【事案の概要】

Y社は、定期航空運送事業等を行う会社であり、福岡・羽田間等に定期便を運航している。

Xらは、Y社の有期雇用契約社員で客室乗務員として勤務していた。

Xらは、Y社の不当な勤務形態の変更等に抗議したことに対する報復として雇止めを受けたとして、雇用契約上の地位確認と賃金請求、不法行為に基づく損害賠償請求をした。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

不法行為は成立しない

【判例のポイント】

1 X2は、みずから3月31日に退職すると記載して退職届を提出したのであるから、X2について退職の意思表示が存在したと認められる。この意思表示に瑕疵がなければ、Y社とX2の間の雇用契約は、X2の退職の意思表示(及びY社の承諾)により終了することになる。

2 X2は、業務評価不良(135人中133位、ランクD)を理由に雇止めの通告を受けても納得できず、労働組合の関係者からも雇止めは無効と助言されていたが、3月2日、それほど強く説得された形跡がないのに、みずから3月31日に退職すると記載して退職届を提出した
・・・そうだとすると、X2が退職届を提出した時点で、退職の意思がないのに形だけのつもりであったとか、退職の意思表示になるとは思わなかったなどと認めることはできないから、X2の退職の意思表示が心裡留保または錯誤により無効とはいえない。したがって、Y社とX2の間の雇用契約は、X2の退職の意思表示(及びY社の承諾)により終了したというべきである。それ以上に雇止めの相当性について判断する必要はない

3 X1が、カウンター業務支援により疲労状態での業務になりかねず、保安業務等に不安を感じたという点は理解できなくもない。しかし、そうであるからといって抗議目的で欠勤までするというのは、やや行き過ぎというべきであり、一定のマイナス評価を受けてもやむを得ないものと考えられる
X1について、前年度は相当の評価を受けて滞りなく更新を終えたのに、平成19年度は業務評価のうち特に社会人的資質項目が下から2番目であり雇止めになったが、このような悪い評価には、上記の欠勤の問題が大きく影響していると考えられる。Xらは、Y社が欠勤の問題を恣意的に評価したと主張するが、人事総務部における更新・不更新の判断は、15に及ぶ項目を数値化したうえで所定の基準に従い成績下位者から雇止め候補者を抽出して検討するなどの方式に基づいており、一応の公正さが担保されているということができる
・・・このような事実等によれば、Y社が、業務内容の変更に抗議をしたX1に対する報復として、恣意的に評価を低く抑えて雇止めを断行したと認めることはできない。そうだとすると、Y社のX1に対する不法行為は成立しない

本件では、雇止めの前に、従業員が退職の意思表示をしており、性格には、雇止めの問題ではありません。

退職の意思表示が有効か否かが問題となっています。

また、雇止め自体が報復等の不当な動機に基づいて行われたか否かについては、否定されています。

雇止めの対象者を選ぶ際、会社としては、上記判例のポイント3は参考になりますね。

 客観的に、「恣意的ではない」と見えるように準備することが大切です。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

配転・出向・転籍11(マリンクロットメディカル事件)

おはようございます。

今日は、配転に関する裁判例を見てみましょう。

マリンクロットメディカル事件(東京地裁平成7年3月31日・労判680号75頁)

【事案の概要】

Y社は、米国に親会社を置く医療機械器具等の輸入、販売等を業とする外資系会社で、従業員は約100名であり、大阪、仙台、札幌、福岡及び名古屋に営業所がある。

Xは、平成3年2月、Y社に採用され、東京において、マーケティング担当のマネジャー(課長代理待遇)として、職務に従事した。

Y社は、平成6年3月、Xに対し、営業部として仙台へ配転する旨の辞令を発令した。なお、本件配転命令以前に、Y社において、マーケティング部から営業部への異動を内容とする配転の前例はなかった。

Xは、本件配転命令に承服できない旨主張した。

Y社は、就業規則に基づきXを懲戒解雇した。

Xは、本件配転命令及び懲戒解雇の有効性を争い、仮処分を申し立てた。

【裁判所の判断】

配転命令は無効

懲戒解雇も無効

【判例のポイント】

1 本件配転命令につきどの程度業務上の必要性があったかが不明確であるうえ、Y社がそのような配転命令をしたのは、むしろ、Y社が、Y社社長の経営に批判的なグループを代表する立場にあったなどの理由からXを快く思わず、Xを東京本社から排除し、あるいは、配転命令に応じられないXが退職することを期待するなどの不当な動機・目的を有していたが故であることが一応認められ、結局本件配転命令は配転命令権の濫用として無効というべきである

2 本件解雇は、Xが本件配転命令に従わなかったことを主たる理由とするところ、本件配転命令が無効というべきであることは前記認定のとおりであり、また、Y社が主張する他の解雇事由についても、Xの勤務成績ないし勤務態度の不良をいう点については、本件疎明資料の限度では具体的解雇事由としてのそれを認めるには不十分であり、また、Y社や経営陣を誹謗中傷する文書を米国本社に送り続けたという点についても、これを認めるに足りる疎明資料はなく、結局本件解雇は正当な解雇事由の存しない無効なものというべきである

本件は、仮処分事件ですが、賃金仮払いだけ認められています。

仮払期間は、1年間です。

やはり地位保全のほうはダメですね。

本件では、Y社が主張した配転命令の業務上の必要性について、裁判所はことごとく否定しています。

どうしても会社の主張は後付けになりがちなので、うそくさくなってしまうのです。

事前の準備が大切です。 気をつけましょう。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。