解雇51(加西市(職員・懲戒免職)事件

おはようございます。

さて、今日は、公務員の酒気帯び運転と懲戒免職に関する裁判例を見てみましょう。

加西市(職員・懲戒免職)事件(大阪高裁平成21年4月24日・労判983号88頁)

【事案の概要】

Xは、市の職員であったが、休日に行った酒気帯び運転を理由に、懲戒免職処分を受けた。

Xは、本件懲戒免職処分は違法なものであり、取り消されるべきであると主張し争った。

【裁判所の判断】

懲戒免職処分を取り消す

【判例のポイント】

1 地方公務員法29条1項は、地方公務員に同項1号ないし3号所定の非違行為があった場合、懲戒権者は、戒告、減給、停職又は免職の懲戒処分を行うことができる旨を規定するが、同法は、すべての職員の懲戒について「公正でなければならない」と規定し(同法27条1項-公正原則)、すべての国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われなければならない(同法13条-平等原則)と規定するほかは、どのような非違行為に対しどのような懲戒処分をすべきかについて何ら具体的な基準を定めていないし、同法29条4項に基づいて定められた本件条例や本件規則にも、その点の具体的な定めはない。

2 したがって、加西市長は、非違行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、加西市職員の非違行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する懲戒処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分をすべきかを、その裁量により決定することができると解される

3 もっとも、その裁量も全くの自由裁量ではないのであって、決定された懲戒処分が社会通念上著しく妥当を欠いて苛酷であるとか、著しく不平等であって、裁量権を濫用したと認められる場合、公正原則、平等原則に抵触するものとして違法となると解される

4 本件の非違行為というのは、Xが職務とは無関係に、休日に行った本件酒気帯び運転であり、約400メートルを時速約40キロメートルで走行したもので、運転時間も走行距離も極く短く、速度も高速ではなく、酒気帯び運転以外の法律違反を犯したわけでもない。しかも、Xの呼気から検知されたアルコールの量は、道路交通法違反として処罰される最下限の水準(呼気1リットル中0.15ミリグラム)にすぎなかったのである。したがって、本件酒気帯び運転の非違行為の性質、態様、結果という点で、悪質さの程度が高いわけではない

5 非違行為の原因や動機についてみるに、Xは飲酒後に運転することが分かっていながら自動車を運転して出かけたとか、あるいは自ら積極的に飲酒を提案したり酒を注文したわけではなく、休日に知人の草刈りの手伝いをしたことをきっかけとして、たまたま当該知人に勧められて飲酒したにすぎないのであって、また、飲酒後すぐに運転するのを躊躇して店内で30分ないし40分程度時間を過ごして運転を開始したものであって、非違行為に躇して店内で30分ないし40分程度時間を過ごして運転を開始したものであって、非違行為に至った原因や動機について、重い非難に値するとか、破廉恥な事情があったとまではいえない

6 Xは、本件酒気帯び運転の事実を翌日直ちに職場に報告しており、非違行為を隠蔽していないし、Xには前科前歴もなく過去に懲戒処分等の処分歴もないのであって、これらの事情はXに有利に汲むべきものである。

本件は、一審では、懲戒免職処分は有効であると判断されました。

高裁は、上記判例のポイントにある事情等を考慮して、処分を取り消しました。

会社の従業員が、本件同様に、酒気帯び運転をした場合、いかなる処分をすべきか、会社としては決断しなければなりません。

なんでもかんでも懲戒解雇でいいのか。 会社として、モラルハザードを防ぐという観点と、訴訟リスク、敗訴リスクという観点の両方から、実質的な判断が求められます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇50(日本ヒューレット・パッカード事件)

おはようございます。

さて、今日は、無断欠勤等を理由とする諭旨退職処分に関する裁判例を見てみましょう。

日本ヒューレット・パッカード事件(東京高裁平成23年1月26日・労判1025号5頁)

【事案の概要】

Y社は、電子計算機等およびそれらのソフトウェアの研究開発、製造等を目的とする会社である。

Xは、Y社に平成12年10月、雇用されたシステムエンジニアである。

Xは、平成20年4月以降、Y社に対し、Xに対する職場での嫌がらせ、内部の情報の漏洩等を申告し、その調査を依頼した。

Xは、B部長と電話で相談し、問題が調査されるまで、特例の休暇を認めるよう依頼した。

その後、B部長は、Xに対して、調査の結果、本件被害事実はないとの結論に達した旨回答した。

Xの有給休暇は、すべて消化された状態となったが、Xは、その後、約1か月間、欠勤を継続した。

Y社の人事統括本部のC本部長は、Xに対し、「貴職は、会社が認める正当な理由がなく、2008年6月上旬以降、勤務を放棄し、欠勤しています。理由なき欠勤は、あなたが会社に対して負っている労務提供義務についての著しい違反となり、このままの状態が更に続くと、最悪の事態を招くことにもなります。よって、会社として、直ちに出社し就業するよう命じます」とのメールを送付した。

XはY社に対し、明日から出社する旨をメールで伝え、翌日、出社した。

Y社は、その後、Xに対し、諭旨退職処分とする旨通告した。

Xは、本件諭旨退職処分の効力を争った。

【裁判所の判断】

諭旨退職処分は無効

【判例のポイント】

1 Xが欠勤を継続したのは、Xの被害妄想など何らかの精神的な不調に基づくものであったということができるから、Xは、Y社就業規則の「傷病その他やむを得ない理由」によって欠勤することが可能であったということができる。そして、Xが、B部長から調査をしても被害事実はなかったとの説明を受けながらこれに納得せず、倫理委員会調査チームに更なる調査を依頼して調査の継続を求めていたことからすれば、Xには、Y社に申告した被害事実について、Xがこれを自己の精神的な不調に基づく被害妄想であるという意識を有していないことを認識していたということができる。

2 B部長が、被害事実に固執し、休職しようとしていたXに対し、休職の申請についての質問に対して明確な回答をしていないばかりか、勧めていないとか必要ないなどと対応していたことなどを考慮すれば、Xが就業規則63条により、病気を理由として欠勤を事前に届け出ることは期待することができず、前示の事情の下では、上記就業規則63条の「やむを得ない理由により事前の届出ができない場合」に該当するということができる

3 さらに、Xは、B部長に対して休職届を出す方法を尋ね、調査結果が出るまでは欠勤を継続する意思を示し、6月4日には、Y社の人事部門に対して本問題の解決まで特例の休職を申請するなどしていることなどを考慮すると、「適宜の方法で欠勤の旨を所属長に連絡」したものと認めることができる。したがって、Xが有給休暇を消化した後に、申告した被害事実を理由に欠勤を継続したからといって、直ちに正当な理由のない欠勤に該当するということができず、これを無断欠勤として取り扱うのは相当でない

4 Xの欠勤に対して、精神的な不調が疑われるのであれば、本人あるいは家族、Y社のEHS(環境・衛生・安全部門)を通した職場復帰へ向けての働きかけや精神的な不調を回復するまでの休職を促すことが考えられたし、精神的な不調がなかったとすれば、Xが欠勤を長期間継続した場合には、無断欠勤となり、就業規則による懲戒処分の対象となることなどの不利益をXに告知する等の対応をY社がしておれば、約40日間、Xが欠勤を継続することはなかったものと認められる
そうすると、Y社が本件処分の理由としている懲戒理由(無断欠勤、欠勤を正当化する事由がない)を認めることはできず、本件処分は無効というべきである。

本件は、一審では、Xの請求を棄却しました。

つまり、本件欠勤を懲戒事由とする諭旨退職処分は社会的に相当な範囲内であると判断したのです。

上記判例のポイント4が高裁の考え方です。

正直、「なるほど」と納得ができません・・・。 よくわかりません。

どちらかというと、一審の方が理解できます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇49(学校法人関西学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、争点がてんこもりの裁判例を見てみましょう。

学校法人関西学園事件(岡山地裁平成23年1月21日・労判1025号47頁)

【事案の概要】

Y社は、高等学校、中学校を設置する学校法人である。

Xは、Y社から寮監職として採用され、剣道や社会科を担当したこともあったが、主として寮監職(寮生の生活指導)を務めていた。

Y社は、平成19年2月、校長を通じてXに対し、口頭で、4月1日付で寮監職から教諭職に配置換えし、高等学校で社会科教諭として稼働するよう伝えた。

これに対し、Xは、長期間教諭から離れていたこと、高校の教諭として教えたこともなく、同高校が進学校でもあることから6か月ないし1年程度の準備期間がほしいと応答した。

Xは3月下旬になって、不眠症を理由に年次有給休暇を取得する旨の届出をして受理された。

Y社は、Xに対し、社会科教諭として勤務するよう内定していたのに、Xが同勤務に就かなかったことから、職場放棄に近い行為があったという理由で、期間を定めずに休職処分を行った。

さらに、Y社は、Xの生徒に対する暴力行為や保護者とのトラブル、喫茶店での料理長としての勤務、休暇中の仲裁センターへの和解あっせん申立などを理由に、Xには職場放棄の疑いがあり、教職員としての資質に著しく欠けるとして、Xを解雇した。

Xは、本件休職処分および本件解雇処分は、いずれも合理的理由がないから無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

本件休職処分は無効

本件解雇は無効

時間外労働等手当として約738万円の支払いを命じた

付加金として約516万円の支払いを命じた

違法な休職処分および解雇処分による慰謝料として100万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 Y社が本件休職処分の前提として主張している配置換えについて辞令が交付された事実がないことは、Y社が、その後、認めているところである。
したがって、就業規則違反を根拠として本件休職処分を理由付けることはできない。

2 配置換えは、労働契約の内容にかかわる重要事項であるから、同項に定められている校長の監督権から、直ちに口頭による配置換えを根拠付けることは、困難であるというほかはない。

3 本件解雇処分は、Y社就業規則41条1号に基づくものであるところ、同条にはいわゆる解雇事由に関する包括条項は規定されていないことからすれば、Y社の解雇事由は、同号に基づくものに限定されると解するのが相当である

4 Y社の主張する解雇事由は、いずれもXが教職員としての資質に欠けることの根拠たり得ないということになる。そして、Y社自身、平成17年12月、剣道において優れた技能を持つXを表彰していることを勘案すると、本件解雇処分は、合理的な理由に基づくものとは認められず、社会的に相当性を欠くものとして無効であるといわざるを得ない。

5 裁判所が、使用者に対し、付加金の支払いを命じることが相当ではないと認められるような特段の事情がある場合には、裁判所はその支払いを命じないこともできると解され、また、その範囲内で適宜、減額することも許されると解するのが相当である。
そこで、検討するに、Xが本訴で請求している時間外勤務手当等においては、仮眠時間が相当時間数を占めているところ、これらについては、監視断続業務に該当する宿日直勤務として適正な手続を執っていれば、時間外勤務手当などの支払義務を免れる可能性があるものであり、Xを除く他の寮監は労働時間とは認識していない。
これらのことを勘案すれば、少なくとも仮眠時間に係る時間外勤務手当等については、Y社に対し、付加金の支払を命じることは相当とは思われない

以上のことを勘案し、当裁判所は、Y社に対し、付加金として前記認容額の7割相当額である516万7087円の支払を命じることとする。

本件は、争点がてんこもりです。

解雇の有効性、休職処分の有効性、仮眠時間の労働時間性、変形労働時間制の有効性など。

ほぼ全て原告側の主張が通っています。

被告は、労務に関するコンプライアンスを一から見直すべきだと思います。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

管理監督者21(九九プラス事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

九九プラス事件(東京地裁立川支部平成23年5月31日)

【事案の概要】

Y社は、「SHOP99」と称し、食料品、日用雑貨のほか、生鮮食品も取り扱う24時間営業のコンビニ型店舗をチェーン展開して経営する会社である。

Xは、平成18年9月、Y社との間で期限の定めのない雇用契約を締結し、社員として雇用された。Xは、平成19年6月、店長となった。

Y社では、Xは、労基法41条に定める管理監督者に当たるとして、残業代等は支払われていなかった。

Xは、Y社に対し、店長としての扱いを受けて以降の未払割増賃金及び休日割増賃金、付加金等の支払いを求めた。

【裁判所の判断】

管理監督者には該当しない。
→未払割増賃金等の支払いを命じた。

付加金は、時間外手当の5割を認めた。

【判例のポイント】

1 Xが管理監督者に該当するか否かの判断に当たっては、・・・当該労働者が職務内容、責任及び権限に照らし、労働条件の決定、その他の労務管理等の企業経営上の重要事項にどのように関与しているか、勤務態様が労働時間等の規制になじまず、また、自己の出退勤につき一般の労働者と比較して自由な裁量が認められているか、賃金等の待遇が管理監督者というにふさわしいか否かなどの点について、諸般の事情を考慮して検討すべきものと解する

2 この点、Y社は、労働者が、特定の事業所において、使用者のために、他の労働者の労務提供を確保し、又は採用・解雇等の人事管理を行う者で、その職務の内容等が労働時間等の制限になじまないものであれば、管理監督者の該当性を判断する旨主張するが、これは、事業所の規模の大小を問うことなく事業所単位で管理監督者の該当性を判断する点、当該労働者の権限の広狭等を問うことなく使用者のために労務提供の確保等を行う者であれば足りるとする点、使用者が労働者に対し労働時間等の制限になじまない内容の職務等を課せば管理監督者に該当し得るとする点、賃金等の待遇面を考慮しない点等において、上記法の趣旨に合致するものとはいえず、採用できない

3 Y社は、コンビニ型店舗をチェーン展開して経営する会社であり、X勤務当時、約700店舗の直営店を有しており、店長は、エリアマネージャーの指揮の下、そのうちの1つ(兼務している場合は複数)の店舗内の運営を任されているにすぎず、平成18年9月当時かかる立場にある店長は、少なくともY社の正社員の3分の2を占めていた
そして、Y社では、店長は採用後約4か月で社員が4日間の店長養成研修を受講し、その後、2日間の4級店長資格研修及び2日間の店長任命研修を受講すれば店長に任命されるといった短期間かつ簡易なシステムを採用しており、Xの場合、研修終了の約3か月も前に店長として勤務するなど、研修自体も重視されていない実態があった。

4 店長は、PAを採用する権限があったものの、一般社員の採用や昇格等については、何ら権限を有していなかったPAの採用等についても、店長の完全な自由裁量ではなく、時給等については、Y社によって定められた一定の制限があり、また、解雇についても、職務権限表には規定がなく、Y社において、店長にPAの解雇の権限の有無や範囲について明確な説明をしていなかった。また、店長は、シフト作成を行っていたものの、PAの勤務可能な曜日及び時間帯があらかじめ定められているため、これに沿ったシフトを作成せざるを得ず、Xの裁量にも制約があった。

5 店長は、月1回開催される店長会議やエリア会議等に出席し、その場で各店長に本社の経営方針、経営戦略等が伝達されるのみで、店長からの意見聴取や経営方針について討論する機会はほとんどなかった。

6 店長は、その出退勤につき、自由な裁量が認められているとは言い難い上、PAと同じ方法により出退勤時刻等が管理されていたのであるから、自己の出退勤につき一般の労働者と比較して自由な裁量が認められているとは認められない

7 Y社においては年俸制が採用されており、年俸制の14分の1が月例賃金として支払われていたところ、Xが店長に昇格した後、年俸56万円、月例賃金は約4万円それぞれ増額されたが、店長昇格後にXが受け取った賃金額は、店長昇格前の額を超えることはなかった

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

解雇48(T事件)

おはようございます。

さて、今日は、退職勧奨と整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

T事件(大阪地裁平成18年7月27日・労判924号59頁)

【事案の概要】

Y社は、各種印刷等を目的とする会社で、従業員40名ほどの規模である。

Y社には、デザイン室があり、常時2名程度のデザイナーが所属していたが、平成11年5月ころ、1名となっていたデザイナーのBが退職し、空席となったデザイナーを募集していた。

X1、X2は、Y社の従業員として勤務してきた。

Y社は、平成16年5月頃、Xらに対し、デザイン室を閉鎖するとともに、Xらに対し退職勧奨した。

Y社は、同年9月、Xらに対し、解雇通知をした。

Xらは、本件解雇を受け、地位保全、賃金仮払いの仮処分を申し立て、その後、デザイン室に復帰した。

Xらは、Y社に対し、本件退職勧奨について慰謝料等を請求した。

【裁判所の判断】

退職勧奨は違法である。

整理解雇は無効である。

慰謝料請求を認める。

謝罪文については認めない。

【判例のポイント】

1 第2次退職勧奨は、デザイン室の閉鎖を宣言し、しかも、その後、営業からデザイン室への発注を停止するというものであり、単に、退職を勧奨したというものではなく、Xらの仕事を取り上げてしまうものである。解雇するというのであればともかく、勧奨といいながら、デザイン室を閉鎖し、しかも、他への配転を検討することもなく、退職を勧奨することは、退職の強要ともいうべき行為であり、その手段自体が著しく不相当というべきである

2 Y社は、Xらの前任デザイナーが退職した際に、デザイン室の閉鎖を検討することなく、X1を勧誘し、デザイナーとして期間の定めのない雇用契約を締結している。また、Xらを採用する前後において、急激な受注の減少など、デザイン室を閉鎖しなければならないような客観的な状況の変化が存したことを認めるに足りる証拠はない。さらに、そもそも、デザイン室は独立採算部門であったわけではなく、顧客からの受注業務を担当する営業担当者との連携、協力により、円滑、迅速に、より良質のデザインを提供する等の有形無形のメリット、及びこのようなメリットを顧客に対してアピールすることに存在意義を認め、期待していたことが窺える。
そうすると、仮に、デザイン室の収支が赤字になったとしても、直ちにデザイン室を閉鎖し、Xらを解雇する必要性があったとは認められない。

3 Y社は、営業社員がデザインの外注をすることを放置し、デザイン室における営業努力についても、Xらに任せきりにするなど、デザイン室の存続に向けた努力をしたと認めるに足りる証拠はない
以上によると、本件解雇は無効といわなくてはならない。

4 当時のY社代表者であったAの行為は、いずれも違法というべきであり、これらにより、Xらが精神的苦痛を受けたことが認められる。また、この間、AからXらに対し、Xらが結婚後も同じデザイン室に勤務することに対する嫌悪感に基づき、Xらを誹謗する言動が度々あったことが認められ、これらによっても、同様の精神的苦痛を受けたことが認められる。
Y社は、Xらに対し、上記精神的苦痛に対する慰謝料を支払うべき義務があり(民法44条、709条)、その慰謝料の額としては、X1において、50万円、X2において80万円が相当である。

5 Xらは、A社長の行った第2次退職勧奨やこれに続く本件解雇により、精神的苦痛を受けたことが認められ、その際、Y社の中における名誉や信用を一定程度毀損したというべきである。
しかし、上記から窺える毀損の程度を考えると、Xらが求める内容の謝罪文の必要を認めることはできない

やはり、この程度では、整理解雇は認められません。

要件の厳しさがよくわかります。

上記判例のポイント1の退職勧奨に関する判断は、参考になります。

退職の勧奨といいながら、客観的事情を考慮すると、解雇と同じではないかというのが裁判所の意見です。  

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

派遣労働2(アウトソーシング事件)

おはようございます

さて、今日は、整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

アウトソーシング事件(津地裁平成22年11月5日・労判1016号5頁)

【事案の概要】

Y社は、労働者派遣を業とする会社である。

Xは、平成19年12月、Y社と派遣労働の雇用契約を締結した。

Y社は、平成20年12月、Xを整理解雇した。

Xは、本件整理解雇は無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 Y社は、本件解雇の有効性について、解雇権濫用の法理としての整理解雇の4要件(人員削減の必要性、解雇回避努力義務、被解雇者選定の妥当性、手続の相当性)を挙げて主張している。期間内の解雇は、「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項、民法628条)のある場合に限って許されるところ、それは、期間の定めのない労働契約の解雇が権利の濫用として無効となる要件である「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」(労働契約法16条)よりも厳格に解されるべきであるから、期間の定めのない労働契約における解雇権濫用の法理の一形態である整理解雇の要件をそのまま当てはめるのは妥当でない。「やむを得ない事由」があるかについては、期間の定めのある場合の解雇の要件よりも厳格に解されることを踏まえつつ、これらの要件ごとに整理して総合的に判断することとする。

2 人員削減の必要性についてみるに、Y社がXを解雇した平成20年12月当時、Y社の派遣先である製造業及びY社を含む人材派遣業の業界全体が不況に見舞われ、Y社においても、Xの派遣先であるA社や他の派遣先との間の派遣契約を打ち切られるなど経営的に厳しい状況があったものの、他方で、本件解雇前後を通じてY社の経営状態は健全であったと認められ、本件解雇は未だ余力を残した予防的措置と評価されるのであって、必要性の程度は、やむを得ずにしたというものとはいえない

3 次に、解雇回避努力義務についてみるに、Y社は、Xを含む派遣労働者に対し、新規派遣先を確保することがほぼできなかったことから自主退職を勧めることを基本とし、A社に派遣されていた17名のうちXを除く16名については自主退職に応じたが、自主退職に応じなかったXに対しては、もともとXの希望する条件とは合わなかった1社についてのみ新たな派遣先として打診したが、これが不調になるや新規派遣先の紹介を断念し、A社との間の派遣契約解除日と同日に解雇に踏み切ったのであり、解雇回避努力義務を尽くし切ったといえるかについては疑問が残るといわざると得ない

4 そして、被解雇者選定の妥当性をみるに、Xのように期間完了前の有効雇用労働者に対する自主退職や解雇を打診したことは認められるものの、他の労働契約の形態の従業員については特段解雇を打診した事実は窺われない。その上、期間の定めのない雇用契約の従業員と比べて期間の定めのある雇用契約の従業員を期間満了前に解雇すべき合理性についても、これを認めるに足りる事情や証拠はないといわざるを得ない。

5 最後に、手続の相当性を見るに、Y社は、新規派遣先を紹介したいけれども、紹介できるところはないなどと説明したのみで、Xを解雇するに当たって、派遣労働者の削減を必要とする経営上の理由や解雇した後の処遇など十分説明し尽くしたとまではいえず、解雇手続について十分協議したなどの事情も認められない
したがって、Y社のXに対する解雇は無効である。

上記判例のポイント1は、注目すべきです。

期間の定めがない労働者と比べて、期間の定めがある労働者を期間途中に解雇する方が要件が厳しいのです。

盲点です。

いずれにしても、整理解雇を有効に行うのは、かなり大変です。

必ず顧問弁護士に相談しながら、慎重に進めることが大切です。

競業避止義務14(アフラック事件)

おはようございます。

自宅で仕事をしています。

さて、今日は、生保会社の執行役員の競業避止義務に関する裁判例を見てみましょう。

アフラック事件(東京地裁平成22年9月30日・労判1024号86頁)

【事案の概要】

Y社は、生命及び疾病保険業を営む生命保険会社であり、アメリカ合唱国に本店を置いている。Y社は、特にがん保険及び医療保険については、保険業界内においてトップシェアを占めている。

Xは、Y社の執行役員であるが、平成22年9月末にY社を退職し、同年10月付けで、A生命に就職することが予定されている。

Xに係る執行役員契約書では、契約期間は1年間とされ、競業避止義務として、「Xは、執行役員の地位及び待遇に鑑み、在職中はもちろん本執行役員契約終了後2年間、Y社の業務と競業又は類似する業務を行う他社の役員、従業員にならないこと、及び、第三者をして競業又は類似する業務を行う他社を支援してはならないことに同意する。」旨の規定がある。

Y社は、Xに対して、A生命への就職を差し止める仮処分を申し立てた。

【裁判所の判断】

競業避止条項は有効であり、競業他社の取締役、執行役、執行役員の地位への就任、営業部門の業務への従事について差止請求を認めた。

【判例のポイント】

1 本件競業避止条項に係る合意は、不利益に対しては相当な代償措置が講じられており、A生命の取締役、執行役及び執行役員の業務並びに同社の営業部門の業務に関する競業行為をXが退職した日の翌日から1年間のみ禁止するものであると解する限りにおいて、その合理性を否定することはできず、Xの職業選択の自由を不当に害するものとまではいえないから、公序良俗に反して無効であるとは認められない。

2 競業行為の差止請求は、職業選択の自由を直接制限するものであり、退職した役員又は労働者に与える不利益が大きいことに加え、損害賠償請求のように現実の損害の発生、義務違反と損害との間の因果関係を要しないため、濫用のおそれがある。よって、競業行為の差止請求は、当該競業行為により使用者が営業上の利益を現に侵害され、又は侵害される具体的なおそれがあるときに限り、認められると解するのが相当である。

3 Xは、Y社の様々な営業上の秘密を把握している上、Y社の執行役員として、商品のマーケティング戦略を立て、企業系列の大規模な保険代理店などのマーケットに働きかけ、Y社に対抗し得る商品等の提案を行って営業活動を展開すれば、医療保険やがん保険等の商品について、Y社とA生命間のシェアを塗り替えることも可能となると考えられる。かかるシェアの奪取は、必ずしもX個人が単独で行い得るものではなく、A生命のマーケティング部門、営業管理企画部門及び戦略企画部門等の会社組織が一体となって行い得るものであるが、Xが保有するY社の営業上の秘密や保険代理店との高いレベルでの人的関係を利用した場合にはその効果が一段と発揮され、A生命がY社に対して優位な地位に立つことができる。これは、XがA生命に就職した後に新たに開発される保険商品等だけでなく、既存の保険商品等を利用又は改革し、営業活動を展開することによっても可能であるといえる。
よって、Xの競業行為によって、Y社の営業上の利益を侵害される具体的なおそれがあると一応認められる。

本件では、競業避止条項に対する代償措置として、Xに対して、5年間にわたって執行役員を務めたことによる退職金として、3000万円を超える金額が渡されています。

裁判所は、この点を重視しています。

5年間で3000万円オーバーです。 すごいですね。

また、Xが執行役員というポストにいた事実も、当然、重視されています。

もっとも、もし退職金がそれほど高額でなかったら、結論が変わっていたかもしれません。

会社としては、十分な代償措置を講じるという視点を持つとよいと思います。

なお、執行役員契約書では、競業避止期間は2年間と定められていましたが、裁判所は1年間に限定しています。

さすがに2年は長いということです。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

不当労働行為18(北海道大学事件)

おはようございます。

さて、今日は、団体交渉の打ち切りと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

北海道大学事件(北海道労委平成23年3月11日・労判1024号97頁)

【事案の概要】

平成21年8月、人事院は国家公務員の俸給月額の0.2%引下げ、期末・勤勉手当の0.35月分引下げ、4月時点の官民較差の12月期期末手当による減額調整などを内容とする勧告を行った。

X組合は、同年10月、Y大学に対して勧告に準拠した賃金の不利益変更を議題とする団交を申し入れ、3回にわたり団交が行われた。

団交において、Y大学は、勧告の内容を受け止めて賃金引下げの方針を決めたなどと説明し、X組合が代償措置をとるよう求めたところ、Y大学は、資料を配布し、X組合が代償措置として不十分であると指摘しても、最終案を示したとして団交の終了を宣言した。

【労働委員会の命令】

団交の打ち切りは、不当労働行為に該当する。

【命令のポイント】

1 Y大学が国立大学法人となった際に、職員の個別の給与額や適用される給与体系に変更はなく、また終始構造にも実質的には変更がなかったのであり、団体交渉におけるY大学の説明内容によって、Y大学が人事勧告の内容を受け止めて、職員の給与等を減額する方針を決めた理由が説明されていると認められる。

2 第2回団体交渉においては、大学が検討する代償措置について触れるだけで終了しており、第3回団体交渉において、Y大学は書面を交付して、代償措置について述べるものの、書面には項目のみ3点記載されているだけであり、団体交渉議事録等からも、その内容についての詳細な説明などはなされていないと認められる

3 本件において、Y大学が提示した代償措置は、今回の不利益変更に伴う代償措置として説明しているのであり、また、団体交渉において交渉議題としているのであるから、Y大学としてもその内容などに関して具体的に説明するなど誠実に対応することが必要である。このような観点からすると、第3回団体交渉における大学の説明内容は、不十分であると認められ、組合の主張に対する説明も不足していると認められる。

4 したがって、第3回団体交渉において、Y大学が、代償措置について説明したとして団体交渉を打ち切った行為は、不誠実な交渉態度であると言わざるを得ないばかりか、組合の運営に対する支配介入に該当し、労働組合法7条2号及び3号に該当する不当労働行為である

大学側が、団体交渉において、賃金切下げの理由については、誠実に説明していると認められています。

しかし、賃金切下げに伴う代償措置に関しては、説明が不十分であったとされました。

単に団体交渉を拒否したというのではなく、説明が不十分であったという判断です。

現場において、どの程度の説明をすれば足りるのか、判断が難しいところです。

可能な範囲で具体的に説明をする、ということしかないのではないでしょうか。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為17(間組事件)

おはようございます。

さて、今日は、団交拒否と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

間組事件(神奈川県労委平成23年3月15日・労判1024号95頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の従業員として建設現場等で就労し、退職して9年余経過した平成20年6月、悪性胸膜中皮腫と診断され、同年9月、労基署から労災の認定を受けた。

平成21年6月、アスベスト関連組合は、Y社に対してXの組合加入を通知し、同人の就労していた建設現場のアスベスト曝露の実態、本件職業病に関する謝罪と賠償等を求めて団交を申し入れた。

Y社は、Y社と組合との間に労働契約はもとより直接、間接にも使用従属関係はないしこれに類する関係がないことを指摘し、組合が団交を求める得る根拠を具体的に示すよう求めた。

その後、Y社は、組合が団交を申し入れても、同様の回答を繰り返して団交に応じていない。

【労働委員会の判断】

団交拒否は不当労働行為に該当する。

【命令のポイント】

1 Y社は、組合の要求事項のうち、本件職業病に係るXに対する謝罪と賠償については、団体交渉の機能として一般的に認められている労働条件の取引の集合化と労使の実質的対等化の機能を有するものではなく、過去に発生した事実に起因する責任の追及に他ならず、義務的団交事項に当たらないと主張する。

2 確かに、労働条件の取引の集合化及び労使の実質的対等化は団体交渉の機能として一般的に認められている機能である。しかし、個々の組合員の権利問題等について団体交渉の議題とすることは、広く見られることであり、労働条件の取引の集合化は、義務的団交事項にあたるか否かの判断において必ずしも必要な条件であるとはいえない。また、労使の実質的対等化は、会社と組合を当事者とする団体交渉が申し入れられている以上、本件についても当然に認められる機能である

3 さらに、謝罪と賠償は、過去に発生した事実に起因する責任の追及ではあるが、アスベスト健康被害による補償問題の解決に向けた一つの方策であるということができるから、使用者に処分可能な、組合員に関する災害補償の問題である。
よって、謝罪と賠償に関する事項は、義務的団交事項に当たる

4 以上より、Y社は、正当な理由なく団体交渉を拒否したものであるから、労組法7条2号に該当する不当労働行為が成立する

5 また、Y社が正当な理由なく団体交渉を拒否したことにより、Y社との団体交渉を実現させることができなかった組合は、その威信を傷つけられ、組合員に対する影響力が減じられて弱体化するおそれがある
以上のとおりであるから、Y社が正当な理由なく団体交渉を拒否したことは、同時に、Y社が組合の運営に対して支配介入したことになるから、労組法7条3号に該当する不当労働行為も成立する。

会社としては、「義務的団交事項」にはあたらないから、団交には応じないと主張する場合があります。

しかし、この主張する場合には、「義務的団交事項」の範囲をよく検討したほうがいいです。

なかなか厳しいわけです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為16(秋本製作所事件)

おはようございます。

さて、今日は、懲戒処分及び解雇と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

秋本製作所事件(千葉県労委平成23年3月24日・労判1024号94頁)

【事案の概要】

平成21年4月、Y社は、松戸公共職業安定所に従業員代表の記名押印のある休業協定書を添付して中小企業緊急雇用安定助成金の申請を行った。

X組合の分会長Aは、同月、千葉労働局に対して本件休業協定書の従業員代表者選出手続に不正がある旨の申告を行った。

同月、Y社は、Aに対して翌日午後1時までに本件申告を取り下げるよう業務命令を行った。しかし、Aが取り下げなかったところ、Y社は、訓戒処分に付すとともに、本件申告を取り下げるよう重ねて業務命令を行った。

しかし、Aがこれに応じなかったため、Y社は、Aに対して6月、

【労働委員会の判断】

各懲戒処分は、不当労働行為に該当する。

解雇は、不当労働行為に該当する。

【命令のポイント】

1 分会結成前及び分会結成後のこれまでの経緯からして、Y社は、Y社を批判し、公的機関を動かして法令違反を改善しようとする活動方針をとる分解を嫌悪し、とりわけ、その先頭に立つ分会長であるAに対する嫌悪感を強めていったものと推認される

2 Xの本件申告は正当な労働組合活動であったところ、Y社は分会長であるAへ合理的理由のない懲戒処分を複数回に渡り行ったが、これらの処分は会社を批判し、公的機関への通報等によって会社の法令違反を改善させる方針をとっていた分会の労働組合活動を嫌悪したY社が、分会長として中心的に活動していたAに対して行った不利益な取り扱いであるから、労組法7条1号の不当労働行為に該当するものと判断することが相当である

3 また、正当な労働組合活動を行ったことを理由として分会長に複数回に渡り懲戒処分を下すことは、分会の他組合員の活動を萎縮させ、また会社従業員が分会に加入することへの圧力となるものであるから、労組法7条3号の不当労働行為にも該当するものと判断する

4 Y社が合理的理由や相当性が十分といえない解雇をAに行ったことは、従前からY社と対立するAが、分会結成後は賃金の問題を含め分会長として活発に活動していたことを嫌悪し、同人をY社から排除することを決定的動機として行われたものと判断することが相当であり、労組法7条1号の不当労働行為に当たる

本件のような不当労働行為事案は、特に労組法に関する詳しい知識が必要とされていません。

会社の役員や現場担当者としては、組合員に対し、懲戒処分等を行う場合には、通常通り、合理的な理由が存在するかを慎重に検討すれば足りることです。

本件は、単に合理的理由なく懲戒処分や解雇をしたので、その裏返しとして、不当労働行為に該当するだけです。

普段通り、気をつければいいのです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。