労災33(セイコーエプソン事件)

おはようございます。

もう金曜日ですか・・・?

今日は、午前中に遺産分割の打合せが1件、離婚訴訟が1件入っています

午後は、遺産分割協議を含め4件打合せが入っています。

夜は、弁護士会で弁護団会議です

今日も一日がんばります!!

さて、今日は労災に関する裁判例を見てみましょう。

セイコーエプソン事件(東京高裁平成20年5月22日・判時2021号116頁)

【事案の概要】

Y社は、情報関連機器、精密機器の開発、製造、販売及びサービス等を主要な事業とする会社である。

Y社は、平成12年ころ、プリンターの製造を国内生産から海外生産に切り替えた。

Xは、Y社の従業員として、海外現地法人の技能認定業務等に従事していたが、出張先である東京都内のホテルにおいて、くも膜下出血を発症し死亡した(死亡当時41歳)。

【裁判所の判断】

松本労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労働基準法及び労災保険法に基づく労災補償制度は、損害の填補それ自体を直接の目的とするものではなく、被災労働者とその遺族の人間に値する生活を営むための必要を満たす最低限度の法定補償を迅速かつ公平に行うことを目的とするものであり、業務に内在または随伴する危険が現実化して負傷、疾病、障害又は死亡が発生した場合には、使用者及び保険を管轄する政府に無過失の補償責任が発生するとすることにその制度趣旨があり、その補償責任は、危険責任の法理に基づくものと解するのが相当というべきである。

2 前記労災補償制度の目的・趣旨に照らせば、被災労働者が従事していた業務が、被災労働者の疾病の発症につき一定以上の危険を有していたと認められる場合には、被災労働者の従事していた業務と同人の疾病の発症・増悪との間には相当因果関係が認められ、業務起因性は肯定されると解するのが相当である。本件のごとき、脳・心臓疾患の発症に関しても同様であり、被災労働者が、脳・心臓疾患を発症する前に従事していた業務が、被災労働者に発症した脳・心臓疾患の発症につき一定以上の危険を有していたと認められる場合には、被災労働者の従事していた業務と同人に発症した脳・心臓疾患との間には相当因果関係が認められ、業務起因性は肯定されるというべきである。

3 そして、社会通念上、(1)被災労働者の脳・心臓疾患発症当時、同人の基礎疾患(血管病変等)が、確たる発症の危険因子がなくてもその自然経過により脳・心臓疾患を発症させる寸前まで進行していたとは認められないこと、(2)被災労働者が、脳・心臓疾患を発症させる前に、同人の基礎疾患(血管病変等)をその自然経過を超えて増悪させる要因となり得る負荷(過重負荷)のある業務に従事していたと認められること、(3)被災労働者には、他に脳・心臓疾患を発症させる確たる発症因子はないと認められること、の3つの要件を満たせば、被災労働者が脳・心臓疾患を発症させる前に従事していた業務は、被災労働者の脳・心臓疾患の発症につき一定以上の危険を有していたと認められるべきである。

4 本件において、Xがくも膜下出血を発症した当時、同人の解離性脳動脈瘤の基礎的な血管病態が、その抱える個人的なリスクファクターのもとで自然経過により、一過性の血圧上昇でいつくも膜下出血が発症してもおかしくない状態まで増悪していたとみるのは困難であり、むしろ、Xは、フィリピンやインドネシアでのほぼ連続した出張業務に従事し疲労が蓄積した状態であったところ、インドネシアから帰国後ほとんど日を置かず東京台場でのリワーク作業に従事せざるを得ず、かつ、その業務に従事中、解離性動脈瘤の前駆症状の増悪があったにもかかわらず、業務を継続せざるを得ない状況にあったものであり、それらのことが上記基礎的疾患を有するXに過重な精神的、身体的な負荷を与え、上記基礎的疾患をその自然の経過を超えて増悪させ、その結果、解離性脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血が発症するに至ったとみるのが相当である。そうすると、被災者がくも膜下出血により死亡したのはその従事していた業務の危険性が現実化したことによるものということができ、したがって、Xのくも膜下出血の発症と業務との間には相当因果関係があり、Xは業務上の事由により死亡したものというべきである。

第1審では、業務起因性を否定しましたが、控訴審では、これを肯定しました。

第1審では、Xの海外出張の業務は特段考慮せず、長時間の時間外労働はなかったとして業務起因性を否定しました。

これに対し、控訴審では、上記のとおり、時間外労働は月平均30時間を下回るとしながらも、度重なる海外出張という過重な精神的、肉体的負荷で疲労が蓄積したことを重視し、業務起因性を肯定しました。

出張業務が多い場合の労災事件では、労働者にとって、非常に参考になる裁判例ですね。

継続雇用制度15(東京大学出版社事件)

おはようございます。

今日は、継続雇用制度に関する裁判例を見てみましょう。

東京大学出版社事件(東京地裁平成22年8月26日・労判1013号15頁)

【事案の概要】

Y社は、東京大学における研究とその成果の発表を助成し、又は民間出版社において採算上刊行を引き受けないような優良学術図書の刊行、頒布等の事業を行い学術の振興、文化の向上に寄与することを目的とする財団法人である。

Xは、Y社の従業員として、編集局に所属し、学術書・教科書等の編集に携わったが、平成21年3月31日に定年退職した。

Y社には、再雇用契約社員就業規則があり、定年退職者の再雇用の条件として、健康状態が良好であり、再雇用者として通常勤務できる意欲と能力がある者等と規定されている。

しかし、Y社では、高年法9条2項にいう「継続雇用制度の対象となる高年齢者にかかる基準を定める労使協定」は締結されていなかった。

Xは、Y社所定の手続きに従って定年後の再雇用を求めたところ、Y社は、従来のXの勤務状態からすると、誠実義務および職場規律に問題があり、再雇用として通常勤務できる能力がないとしてこれを拒否した。

Xは、本件再雇用拒否は、正当な理由を欠き無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた。

【裁判所の判断】

本件再雇用拒否は無効であるとして、再雇用契約の成立を認めた。

【判例のポイント】
1 法は、継続雇用制度の導入による高年齢者の安定した雇用の確保の促進等を目的とし、事業者が高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用の機会の確保等に努めることを規定し、これを受けて、法附則は、事業者が具体的に定年の引上げや継続雇用制度の導入等の必要な措置を講ずることに努めることを規定していることによれば、法は、事業主に対して、高年齢者の安定的な雇用確保のため、65歳までの雇用確保措置の導入等を義務づけているものといえる。また、雇用確保措置の一つとしての継続雇用制度(法9条1項2号)の導入に当たっては、各企業の実情に応じて労使双方の工夫による柔軟な対応が取れるように、労使協定によって、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、継続雇用制度の措置を講じたものとみなす(法9条2項)とされており、翻って、かかる労使協定がない場合には、原則として、希望者全員を対象とする制度の導入が求められているものと解される

2 以上のとおり検討した法の趣旨、再雇用就業規則制定の経過及びその運用状況等にかんがみれば、同規則3条所定の要件を満たす定年退職者は、Y社との間で、同規則所定の取扱及び条件に応じた再雇用契約を締結することができる雇用契約上の権利を有するものと解するのが相当であり、同規則3条所定の要件を満たす定年退職者が再雇用を希望したにもかかわらず、同定年退職者に対して再雇用拒否の意思表示をするのは、解雇権濫用法理の類推適用によって無効になるというべきであるから、当該定年退職者とY社との間においては、同定年退職者の再雇用契約の申込みに基づき、再雇用契約が成立したものとして取り扱われることになるというべきである。

3 ・・・上記判示の事情にかんがみれば、再雇用拒否理由の事実をもってしても、Xには、職務上備えるべき身体的・技術的能力を減殺すほどの協調性又は規律性の欠如等は認められず、再雇用就業規則3条(2)所定の「能力」がないと認めることはできない。

4 以上によれば、本件再雇用拒否は、Xが再雇用就業規則3条所定の要件を満たすにもかかわらず、何らの客観的・合理的理由もなくなされたものであって、解雇権濫用法理の趣旨に照らして無効であるというべきである。そうすると、Xは、再雇用就業規則所定の取扱い及び条件に従って、Y社との間で、再雇用契約を締結することができる雇用契約上の権利を有するというべきであるから、Xの再雇用契約の申込みに基づき、X・Y社間において、平成21年4月1日付けで再雇用契約が成立したものとして取り扱われることになるというべきである。
したがって、XがY社に対して、労働契約上の権利を有する地位にあることが認められる。

本件は、これまでの裁判例とは異なり、再雇用拒否に対し、解雇権濫用法理を類推適用し、継続雇用を認めました。

とうとう出ましたね。

労働者側からすれば、画期的な判例です!

本件では、再雇用就業規則の解釈として、Y社において再雇用就業規則の解釈として、Y社において再雇用就業規則が制定された経緯(組合に対して、再雇用を希望する定年退職者を排除的に運用しないと説明したこと等)や、実際のY社における運用状況(これまで再雇用を拒否した例がないこと等)など固有の事情も考慮されています。

とはいえ、高年法9条の私法上の効力を認める結論となっています。

当然のことながら、Y社は、控訴しています。

高裁の判断が注目されます。

実際の対応は、顧問弁護士に相談をしながら慎重に進めましょう。

労災32(富士通四国システムズ事件)

おはようございます。

今日は、午前中に自己破産の打合せが1件だけ入っています。

午後は、掛川市役所で法律相談をし、静岡に戻って、打合せが2件です

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

富士通四国システムズ事件(大阪地裁平成20年5月26日・判タ1295号227頁)

【事案の概要】

Y社は、富士通の関連会社であり、ソフトウェアの開発、作成等を主たる業務とする会社である。

Xは、Y社の従業員として、大阪事業所内にあるソリューション統括部において、SEとして、プログラミング等の業務に従事していた。

Xは、うつ病であるとの診断を受け、Y社を欠勤するに至ったが、これは安全配慮義務違反に基づくものであるとして、Y社に対し、損害賠償等を求めた。

なお、大阪中央労基署長は、Xの疾病が業務上のものであると認め、療養補償給付及び休業補償給付等を各支給する旨の決定をしている。

【裁判所の判断】

Xの損害につき、総額約1260万円の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 旧労働省は、通達「心理的負担による精神障害等に係る業務上外の判断指針」において、精神障害等に関する業務上の疾病の判断について基準を示し、精神障害は、業務による心理的負荷、業務以外の心理的負荷及び個体側要因が複雑に関連して発病するとされていることから、精神障害の発病が明らかになった場合には、(1)業務による心理的負荷の強度、(2)業務以外の心理的負荷及び(3)個体側要因について各々検討し、その上でこれらと当該精神障害の発病との関係について総合判断するものとしている

2 Xには、恒常的に本件業務による強度の心理的負荷がかかっていたのに対し、業務以外の側面において、強度に心理的負荷がかかっていたとされるような事情はなく、Xの個体側要因を過大に評価し、これが客観的に精神疾患を生じさせるおそれがあるとみることは相当ではない。

3 Y社は、Xとの間の雇用契約上の信義則に基づき、使用者として、労働者の生命、身体及び健康を危険から保護するように配慮すべき義務
(安全配慮義務)を負い、その具体的内容として、労働時間、休憩時間、休日、休憩場所等について適正な労働条件を確保し、さらに、健康診断を実施した上、労働者の年齢、健康状態等に応じて従事する作業時間及び内容の軽減、就労場所の変更等適切な措置を採るべき義務を負うというべきである

4 なるほど、Y社は、1週間に1回、本件開発プロジェクトの進捗会議を開催し、個別の面談を行うなどとして、Xの作業の進捗状況を把握し、作業に遅れが出た場合にはXの補助をし、業務を一部引き継いだり、補充要員を確保するなどして、Xの業務軽減につながる措置を一定程度講じたことが認められる。しかしながら、X時間外労働時間は、上記業務軽減を行っても、なお1か月当たり100時間を超えており、このような長時間労働は、それ自体労働者の心身の健康を害する危険が内在しているというべきである。そして、Y社は、このようなXの時間外労働を認識していたのであるから、これを是正すべき義務を負っていたというべきである。それにもかかわらず、Y社は、上記義務を怠り、Xの長時間労働を是正するための有効な措置を講じなかったものであり、その結果Xは、本件業務を原因として、本件発症に至ったものである。
したがって、Y社は、Xに対する安全配慮義務に違反したものであるから、民法415条により、本件発症によってXに生じた損害を賠償すべき責任を負う。

5 ・・・もとより、Xのような技術者は、一定期間に高度の集中を必要とする場合もあると考えられるため、勤務形態について、ある程度の裁量が認められるべきものであるとはいえるが、Xは、入社間もない時期に、生活が不規則にならないようにとの正当かつ常識的な指導・助言を上司・先輩から受けたにもかかわらず、これを聞き入れることなく自らが選んだ勤務形態を取り続けた結果、ついに本件発症に至ったものである。このような勤務態度が、原告の生活のリズムを乱し、本件業務による疲労の度合を一層増加させる一因となったことは明らかである
・・・そこで、Y社の安全配慮義務違反の内容・程度、Xの勤務状況、その他本件に現れた諸般の事情を考慮すれば、民法418条の過失相殺の規定を類推適用して、本件発症によって生じた損害の3分の1を減額するのが相当である

裁判所も認めていますが、会社としては、それなりに業務軽減措置を取っていましたが、やはり、時間外労働が月100時間を超えていると、なかなか難しいですね。

Y社が主張したXの勤務状況に関し、裁判所は「損害の3分の1を減額する」という判断をしました。

会社側としては、従業員の労働時間が長時間にならないように徹底して管理しなければいけません。

従業員側としては、本件のように、過失相殺されないように、自己管理をしっかりとしなければいけません。

解雇22(N事件)

おはようございます。

さて、今日は、整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

N事件(東京地裁平成22年3月15日・労判1009号78頁)

【事案の概要】

Y社は、カーテンその他の室内装飾品の輸入販売等を業とする会社であり、大阪、名古屋、福岡および札幌に支店または営業所を有している。

Xは、Y社の正社員として、百貨店内において、Y社が輸入する室内装飾品の販売業務に従事していた。

Y社は、Xが勤務している百貨店の販売業務を代理店に委託することに伴い、Xを解雇した。

Xは、本件解雇は、解雇権を濫用するものであり、また、男女雇用機会均等法6条4号の規定に違反するから無効であると主張するとともに、本件解雇を通知する際のY社従業員の言動が不法行為にあたると主張し、不法行為に基づく損害賠償請求をした。

【裁判所の判断】

解雇は無効。

不法行為にはあたらない。

【判例のポイント】

1 いわゆる整理解雇は、雇用調整及び人員削減の方法の中でいわば最終的な手段ともいうべきものであり、また、労働者に帰責事由がないにもかかわらず、使用者の都合による一方的な意思表示により雇用関係を終了させるものであって、賃金を生活の基盤とする当該労働者に著しい影響を及ぼし得るものである。したがって、整理解雇は、当該企業を経営する立場からする合理的な判断のみから直ちにし得るものではなく、手続的な観点をひとまず措くとしても、人員削減の必要性に加え、(1)人員削減の手段として解雇を選択することの必要性及び合理性があるか否か、(2)被解雇者の選定が客観的に合理的な基準に従って公正にされているか否かという観点から、やむを得ないものと認められることが必要であり、このように認めることができない場合には、当該解雇は客観的に合理的な理由を欠き、また、社会通念上も相当であると認められないものというべきである。

2 本件雇用契約においては、Xの就業場所が特定されておらず、Y社において、本件撤退に当たり他の販売担当者に対する退職勧奨や雇止めを含め、Xの配転先を探すべく真摯に努力することは解雇回避努力として必須のものと評価しうるところ、Y社はそのような努力をしていないから、人員削減の手段として解雇を選択することの必要性と合理性があるとはいえない

3 また、Xが解雇の対象となったのは撤退することになった店舗の販売担当者であったということに尽きるのであって、被解雇者の選定が客観的に合理的な基準に従って公正にされているともいえない

4 Xは、Y社部長らが、差別的で理不尽な本件解雇を通知した際、Xに対し、その勤務態度が不良であるというXの名誉を著しく損なうような虚偽の事実をもって本件解雇を正当化する本件書面を突きつけ、それに沿った説明をしたと主張する。
しかしながら、・・・このような事情に照らすと、本件書面に記載された自らの勤務態度に係る事実関係を強く否定するXの供述があることのみをもって、就業先から原告の勤務態度に関する報告があった等とする本件書面に記載された内容が全くの虚偽であり、これをY社があえて記載したとまで認めることはできない。

5 Xは、本件解雇が男女雇用機会均等法6条4号の規定に違反すると主張するが、平成20年3月から平成21年8月までの間に現に解雇されたY社の従業員はXのみであり、また、Y社において退職勧奨の対象者を女性に限っていたと認めることもできない。したがって、本件解雇が同号の規定に違反するということはできず、整理解雇である本件解雇が無効であるからといって、直ちに本件解雇をしたこと自体が不法行為に当たるとまでいうこともできない。

オーソドックスな整理解雇の事案です。

解雇回避努力が甘いと、簡単に無効と評価されてしまいます。

会社が整理解雇を選択する場合、よほどしっかり準備をしなければ、有効にならないことは、多くの裁判例から明らかです。

この裁判例でも言われているとおり、整理解雇は、リストラの「最終的な手段」です。

リストラ=整理解雇では、まず有効とは判断されませんのでご注意ください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

労災31(労災1~30のまとめ) 

おはようございます。

一昨日、昨日と事務所で仕事ができなかったので、今日は、一日、書面をばんばん作成します

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、これまで見てきた労災の裁判例について簡単に振り返ります。

労災1(電通事件)
安全配慮義務について
労災2(日鉄鉱業事件)
会社の予見可能性について
労災3(三共自動車事件、コック食品事件)
労災保険と損害賠償との関係について
労災4(住友軽金属工業事件)
団体定期保険、生命保険に基づく保険金と死亡退職金について
労災5
保険給付に関する救済制度について
労災6
審査請求の手続について(1)
労災7
審査請求の手続について(2)
労災8(KYOWA事件)
損害賠償請求認容(約8400万円)
労災9(日本電気事件)
業務起因性肯定
労災10(大正製薬事件)
業務起因性肯定
労災11(神戸屋事件)
業務起因性肯定
労災12(NTT東日本北海道支店事件)
業務起因性肯定
労災13(和歌山銀行事件)
業務起因性肯定
労災14(九電工事件)
損害賠償請求認容(約9900万円)
労災15(大庄ほか事件)
損害賠償請求認容(約7860万円)
労災16(鳥取大学附属病院事件)
損害賠償請求認容(約2000万円)
労災17(グルメ杵屋事件)
損害賠償請求認容(約5500万円)
労災18(NTT東日本北海道支店事件(控訴審))
業務起因性肯定
労災19(日本トラストシティ事件)
業務起因性肯定
労災20(康正産業事件)
損害賠償請求認容(約1億8000万円)
労災21(粕屋農協事件)
業務起因性肯定
労災22(Aワールド事件)
業務起因性肯定
労災23(小田急レストランシステム事件)
業務起因性肯定
労災24(マツヤデンキ事件)
業務起因性肯定
労災25(日本マクドナルド事件)
業務起因性肯定
労災26(山田製作所事件)
損害賠償請求認容(約7430万円)
労災27(東芝事件)
業務起因性肯定
労災28(日研化学事件)
業務起因性肯定
労災29(中部電力事件)
業務起因性肯定
労災30(北海道銀行事件)
業務起因性否定

これからも、30個ずつ、索引目的で、まとめていきたいと思います。

競業避止義務13(トータルサービス事件)

おはようございます。

さて、今日は、競業避止義務に関する裁判例を見てみましょう。

トータルサービス事件(平成20年11月18日・判タ1299号216頁)

【事案の概要】

Y社は、建築物・構築物内外装の清掃・補修・保守の各事業、同各事業に関わる機械・車両・器材・塗料・洗剤の輸入・販売・リース、同各事業に関わるフランチャイズチェーン店の加盟店募集及び加盟店指導業務等を目的とする会社である。

Y社は、米国会社2社との間で、これら会社が事業化している車両外装のリペア(修復)を中心とした事業及び家具・車両内装のリペアや色替えを中心とした事業について、日本国内における独占的実施契約を締結し、上記各事業をフランチャイズ商品化して加盟店募集及び加盟店指導業務を行っている。

Xは、Y社の社員としてインストラクターの地位にあり、加盟店への技術指導及び車関連事業の直営施工を担当していたが、自ら退職した。

Xは、退職後、Y社のそれと類似の事業を自ら開業して行っていた。

これに対し、Y社は、Y社就業規則並びに在職中及び退職時にXに提出させた機密保持誓約書を根拠に、Xの行っている事業の差止めと損害賠償を求めた。

【裁判所の判断】

本件競業避止義務規定は、有効であり、2年間の事業の差止めおよび674万円の損害賠償請求を認めた。

【判例のポイント】

1 一般に、従業員が退職後に同種業務に就くことを禁止することは、退職した従業員は、在職中に得た知識・経験等を生かして新たな職に就いて生活していかざるを得ないのが通常であるから、職業選択の自由に対して大きな制約となり、退職後の生活を脅かすことにもなりかねない。したがって、形式的に競業禁止特約を結んだからといって、当然にその文言どおりの効力が認められるものではない。競業禁止によって守られる利益の性質や特約を締結した従業員の地位、代償措置の有無等を考慮し、禁止行為の範囲や禁止期間が適切に限定されているかを考慮した上で、競業避止義務が認められるか否かが決せられるというべきである。

2 ところで、このうちの競業禁止によって守られる利益が、営業秘密であることにあるのであれば、営業秘密はそれ自体保護に値するから、その他の要素に関しては比較的緩やかに解し得るといえる

3 営業秘密として保護されるには、(1)秘密管理性、(2)非公知性、(3)有用性、が必要であると解される。

4 Y社の技術は、営業秘密に準じるものとしての保護を受けられるので、競業禁止によって守られる利益は、要保護性の高いものである。そして、Xの従業員としての地位も、インストラクターとしての秘密の内容を十分に知っており、かつ、Y社が多額の営業費用や多くの手間を要して上記技術を取得させたもので、秘密を守るべき高度の義務を負うものとすることが衡平に適うといえる。また、代償措置としては、独立支援制度としてフランチャイジーとなる途があること、Xが営業していることを発見した後、Y社の担当者が、Xに対し、フランチャイジーの待遇については、相談に応じ通常よりもかなり好条件とする趣旨を述べたこと等が認められ、必ずしも代償措置として不十分とはいえない。そうすると、競業を禁止する地域や期間を限定するまでもなく、XはY社に対し競業禁止義務を負うものというべきである。

5 上記競業禁止特約が効力を認められる以上、Y社の差止請求は理由がある。しかし、その範囲は、技術の陳腐化やY社の上記技術を独占できるわけではないこと等を考慮すると、本判決確定後2年間に限られるべきである

本件は、差止めまで認められた数少ないケースです。

競業避止義務違反の判断基準は、他の裁判例と同じです。

なお、損害賠償請求についは、Y社・X間の競業禁止特約に従い、損害賠償の予定として定められた、違約金としての、フランチャイズシステムの開業資金等及びロイヤリティ相当分を基準にして、Y社が上記技術を独占できるわけではないことから、このうち7割をY社の損害として認められました。

賠償金額をどのように算定するかは、難しい問題ですので、予め損害賠償額の予定をしておくと、便利ですね。

どのような損害賠償の予定を定めておくべきかは、顧問弁護士に相談してみてください。

労災30(北海道銀行事件)

おはようございます。

今日は、浜松のホテルウェルシーズン浜名湖で弁護団会議があります

本来は、1泊2日なのですが、私は、明日、予定があり、今夜、帰宅します

この裁判も、予定されていた証人尋問がすべて終了し、残すは、最終準備書面の作成だけです。

最後まで力を抜かず、がんばりますよ!!

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

北海道銀行事件(札幌地裁平成19年3月14日・判タ1251号203頁)

【事案の概要】

Xは、昭和58年にY社に入社し、本店や各支店で勤務してきたが、平成10年にうつ病との診断を受け、通院治療を受けてきたが、同年、Y社を退職した。

Xは、長時間労働やいじめ等により心理的負荷を受けてうつ病を発症し、その後、Xのうつ病発症が明らかになったにもかかわらず、Y社が療養を認めないなどの対応をとったことにより、Xのうつ病を悪化させたものであるから、Xのうつ病は、業務上の心理的負荷を要因として発症したといえ、Xの従事した業務とうつ病の発症との間には相当因果関係が認められるなどと主張した。

【裁判所の判断】

札幌東労基署長による休業補償給付不支給処分は適法である。
→業務起因性否定

【判例のポイント】

1 精神障害の発症や増悪は、現代の医学的知見では、環境由来のストレスと個体側の反応性、脆弱性との関係で精神破綻が生ずるか否かが決せられ、環境由来のストレスが強ければ個体側の脆弱性が小さく友精神障害が起きる一方、個体側の脆弱性が大きければ環境由来のストレスが弱くとも精神障害が起きるとする「ストレス-脆弱性」理論が広く受け入れられていることからすれば、業務と精神障害の発症との間の相当因果関係の有無を判断するについては、ストレス(業務による心理的負荷及び業務外の心理的負荷)と個体側の反応性、脆弱性を総合考慮し、業務による心理的負荷が、社会通念上、精神障害を発症させる程度に過重であるといえる場合に、業務に内在ないし随伴する危険が現実化したものとして、当該精神障害の業務起因性を肯定するのが相当である。

2 そして、業務による心理的負荷が社会通念上、精神障害を発症させる程度に過重であるといえるか否かの判断に当たっては、通常人を基準として、精神障害の発症の原因とみられる業務の内容、勤務状況、業務上の出来事等を総合的に検討するべきである。

3 ところで、個体側の要因については、顕在化していないものもあって客観的に評価することが困難である場合がある以上、他の要因である業務による心理的負荷と業務以外の心理的負荷が、一般的には心身の変調を来すことなく適応することができる程度のものにとどまるにもかかわらず、精神障害が発症した場合には、その原因は潜在的な個体側要因が顕在化したことに帰するものとみるほかはないと解される

4 このように個体側の要因については、顕在化していないものもあって客観的に評価することが困難である場合がある以上、他の要因である業務による心理的負荷と業務以外の心理的負荷が、一般的には心身の変調を来すことなく適応することができる程度のものにとどまるにもかかわらず、精神障害が発症した場合には、その原因は潜在的な個体側要因が顕在化したことに帰するものとみるほかはないと解される

5 業務そのものが一般的に過重なものであるといえない以上、たとえ本人にとって過重であり、他にストレスとなる要因が見つからなかったとしても、業務起因性があるとは認めることはできない。

6 また、精神障害の発症自体については業務起因性を認めることができない場合であっても、発症後の業務が、社会通念上、客観的に見て、労働者に過重な心理的負荷を与えるものであって、これによって、既に発症していた精神障害がその自然の経過を超えて増悪したと認められる場合には、業務起因性を認めることができると解するのが相当である

7 藤田医師作成の意見書には、症状の発生機序として「仕事上分からない事が多いまま、主任業務に適応せざるを得ず、大きな心理的負担を感じていたと思われる。」「業務負担による反応性のうつ病と診断した。」、また、「仕事から離れている間は安定していたが、復帰に際して、また不安定となっていた。」などという記載があるが、同意見書は、患者であるXの訴えのみを聴取して業務による心理的負荷の大きさを判断していることが窺えることから、仕事を契機としてうつ病が発症したということを述べたにとどまると評価するのが相当である

この事件は、控訴審(札幌高裁平成19年10月19日・判タ1279号213頁)でも同様の判断がなされています。

この裁判例で注目すべきは、上記判例のポイント6です。

精神障害の発病について業務起因性が認められるか否かを問わず、精神障害発病後の業務による心理的負荷により精神障害が「増悪」した場合の業務起因性を認めています。

なお、判断指針は、「対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること」を判断要素としており、あくまで発病前の心理的負荷を対象としています。

判断指針と裁判所の判断基準が異なる場合があるわけです。

労災が認定されなかった場合でも決して諦める必要はありません!!

解雇21(フィリップ・モリス・ジャパン事件)

おはようございます。

さて、今日は、コンプライアンス規定に違反した等の理由でなされた諭旨退職処分に関する裁判例を見てみましょう。

フィリップ・モリス・ジャパン事件(東京地裁平成22年2月26日・判時2077号158頁)

【事案の概要】

Y社は、たばこの販売促進業務等を目的とする会社である。

Xは、Y社の正社員であり、退職するまで、たばこのルート営業等に従事していた。

Xは、当時、Y社の首都圏リージョン内ユニットマネージャーの地位にあり、同ユニットに在籍する7人のテリトリーセールスマネージャーの管理監督をしていた。

Xは、Y社の職務倫理規定に違反した。また、Xの部下に対し、上司らが暴力行為をしたなどという虚偽の報告をするよう働きかけたりした。

Y社は、Xに対し、自宅待機命令と他の社員との連絡を禁じる旨の命令をはしたが、Xは、自宅待機中、部下らに電話をかけた。

事態を重く見たY社は、コンプライアンス委員会において審議し、(1)Xがコンプライアンス調査について守秘義務を課されたにもかかわらず、周囲にその内容を漏らしたこと、(2)Xが部下に対し上司について虚偽の報告をするよう求めたこと、(3)Xが他の社員との連絡を禁じる旨の命令に違反して、部下に電話をかけたこと、(4)Xが部下に対しパックレールの使用を指示した事実が発覚したことに基づき、Xを諭旨退職とするという意思決定をした。

Xは、Y社に対し、退職願を提出して退職の意思表示をしたことについて、この意思表示は、諭旨退職事由がないのにY社の人事部長の強迫により強制されたものであるからこれを取り消すなどと主張して、仮の地位確認と賃金仮払いを求めた。

【裁判所の判断】

諭旨退職処分は有効

【判例のポイント】

1 Xは、・・・会社諸規程・方針に違反したものということができる。特に、Xは、Y社が奨励する「スピークアップ」を悪用して、Y社のコンプライアンス調査を誤らせようとしたものと考えられるのであり、その違反の程度は重大というべきである。

2 コンプライアンスやインテグリティ(高潔さ、廉直さ)を重視するY社において、ユニットマネージャーであるXが、部下に対しパックレールの使用を指示しておきながら関与を認めず、さらにこれを交通事故のようなものというのは、Y社の方針等に合わない無責任な態度といわざるを得ない。

この裁判例で、注目すべきなのは、上記判例のポイント2です。

裁判所が、Y社は「コンプライアンスやインテグリティ(高潔さ、廉直さ)を重視する会社」であることを認めています

訴訟になったときに、裁判所から、このような評価をしてもらうことは会社にとっては非常にありがたいことです。

判決理由を読むと、フィリップ・モリス・ジャパンのコンプライアンスに対する姿勢がわかります。

会社としては、日頃、どのような対策をとれば、裁判所からこのような評価をしてもらえるのか、じっくり検討するべきだと思います

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

労災29(中部電力事件)

おはようございます。

今日から通常業務を開始します

午前中、交通事故の相談が1件、その後、遺産分割調停

午後は、打合せが3件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

中部電力事件(名古屋高裁平成19年10月31日・労判954号31頁)

【事案の概要】

Xは、工業高校卒業後、Y社に勤務し、火力発電所等において一貫して現場の技術職として業務に従事してきた。

Xは、火力センター工事第1部環境整備課燃料グループに配属され、デスクワーク中心の業務に従事した。

Xは、その後、環境整備課の主任(一般職の最高職級に該当)に昇格したが、うつ病を発症し、これによる心神耗弱状態の下で自殺した。

【裁判所の判断】

名古屋南労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労災保険法に基づいて遺族補償年金及び葬祭料を支給するためには、業務と疾病との間に業務起因性が認められなければならないところ、業務と疾病との間に業務起因性があるというためには、単に当該業務と疾病との間に条件関係が存在するのみならず、業務と疾病の間に相当因果関係が認められることを要する。

2 そして、労働者災害補償制度が、使用者が労働者を自己の支配下において労務を提供させるという労働関係の特質に鑑み、業務に内在又は随伴する危険が現実化した場合に、使用者に何ら過失はなくても労働者に発生した損失を填補する危険責任の法理に基づく制度であることからすると、当該業務が傷病発生の危険を含むと評価できる場合に相当因果関係があると評価すべきであり、その危険の程度は、一般的、平均的な労働者すなわち、通常の勤務に就くことが期待されている者(この中には、完全な健康体の者のほかに基礎疾病等を有するものであっても勤務の軽減を要せず通常の勤務に就くことができる者を含む。)を基準として客観的に判断すべきである。

3 したがって、疾病が精神疾患である場合にも、業務と精神疾患の発症との間の相当因果関係の存否を判断するに当たっては、何らかの素因を有しながらも、特段の職務の軽減を要せず、当該労働者と同種の業務に従事し遂行することができる程度の心身の健康状態を有する労働者(相対的に適応能力、ストレス適所能力の低い者も含む。)を基準として、業務に精神疾患を発症させる危険性が認められるか否かを判断すべきである。

4 また、本件のように精神疾患に罹患したと認められる労働者が自殺した場合には、精神疾患の発症に業務起因性が認められるのみでなく、疾患と自殺との間にも相当因果関係が認められることが必要である。

5 うつ病のメカニズムについては、いまだ十分解明されてはいないが、現在の医学的知見によれば、環境由来のストレス(業務上又は業務以外の心理的負荷)と個体側の反応性、脆弱性(個体側の要因)との関係で精神破綻が生じるか否かが決まり、ストレスが非常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神障害が起こるし、反対に個体側の脆弱性が大きければ、ストレスが小さくても破たんが生ずるとする「ストレス-脆弱性」理論が合理的であると認められる。

6 判断指針(「心理的負荷による精神的障害等に係る業務上外の判断指針について」)は、上級行政庁が下部行政機関に対してその運用基準を示した通達に過ぎず、裁判所を拘束するものではないことは言うまでもないし、その内容についても批判があり、現在においては未だ必ずしも十全なものとは言い難い
そこで、業務起因性の判断に当たっては、判断指針を参考にしつつ、なお個別の事案に即して相当因果関係を判断して、業務起因性の有無を検討するのが相当である。

7 Xの上司は、Xに対して「主任失格」、「おまえなんか、いてもいなくても同じだ」などの文言を用いて感情的に叱責し、かつ、結婚指輪を身に着けることが仕事に対する集中力低下の原因となるという独自の見解に基づいて、Xに対してのみ、複数回にわたり、結婚指輪を外すよう命じた。
これらは、何ら合理性のない、単なる厳しい指導の範疇を超えた、いわゆるパワーハラスメントとも評価されるべき
ものであり、一般的に相当程度心理的負荷の強い出来事と評価すべきであるとし、叱責や指輪を外すよう命じられたことは、1回限りのものではなく、主任昇格後からXが死亡する直前まで継続して行われていたと認められ、うつ病発症前、また死亡直前に、Xに大きな心理的負荷を与えたと認められる。

このケースも、日研化学事件同様に、パワハラを一原因とした自殺事案です。

会社としては、上記判例のポイント7のような上司の発言を防止しなければなりません。

また、この裁判例では、平均的労働者最下限基準説とほぼ異ならない基準を採用しています。

上記判例のポイント2、3のとおり、この裁判例は、同種労働者ないし平均的労働者を基準にしながら、その労働者群の中に「相対的に適応能力、ストレス適所能力の低い者も含む」としています。

この裁判例も、判断指針に依拠することについて消極的ですね。

管理監督者18(学樹社事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

学樹社事件(横浜地裁平成21年7月23日・判時2056号156頁)

【事案の概要】

Y社は、進学教室の経営及び運営等を目的とした会社で、小学生・中学生・高校生を対象とする受験予備校を東急田園都市線、横浜線沿線に開設している。

X1は、Y社の学習塾校長でマネージャーの地位にあり、その後、退職した。

X2は、Y社の学習塾の校長代理でマネージャーの地位にあり、その後、退職した。

Xらは、退職後、Y社に対し、時間外労働の割増賃金と付加金の支払いを求めた。

Y社は、Xらが労基法41条2号に規定する管理監督者に当たると主張し、争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定し、時間外手当及ぶ同額の付加金の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 労働基準法37条1項は、割増賃金の算定の基礎となる賃金を、「通常の労働時間又は労働日の賃金」と規定し、同条4項及び労働基準法施行規則21条で割増賃金の算定の基礎となる賃金から除外される手当を規定しているところ、これらの手当は制限的に列挙されているものであるから、これらの手当に該当しない「通常の労働時間又は労働日の賃金」はすべて算入しなければならず、これらの除外される手当は名称にかかわらず、その実質によって判断すべきであると解される。
そして、労働基準法37条4項及び労働基準法施行規則21条3号により割増賃金の算定の基礎となる賃金から除外される住宅手当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいい、住宅の賃料額やローン月額の一定割合を支給するもの、賃料額やローン月額が段階的に増えるにしたがって増加する額を支給するものなどがこれに当たり住宅に要する費用にかかわらず一定額を支給するものは、除外される住宅手当に当たらないと解するのが相当である

2 労働基準法41条2号が管理監督者に対して労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しないと定めているのは、管理監督者がその職務の性質上、雇用主と一体となり、あるいはその意を体して、その権限の一部を行使するため、自らの労働時間を含めた労働条件の決定等について相当程度の裁量権を与えられ、報酬等その地位に見合った相当の待遇を受けている者であるからであると解される。したがって、同号にいう管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき、雇用主と一体的な立場にあるものをいい、同号にいう管理監督者に該当するか否かは、(1)雇用主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を有するか、(2)自己の出退勤について、自ら決定し得る権限を有するか、(3)管理職手当等の特別手当が支給され、待遇において、時間外手当及び休日手当が支給されないことを十分に補っているかなどを、実態に即して判断すべきである。

3 X1については、校長として校長会議及び責任職会議への出席、時間割作成、配属された職員に対する第一次査定等を行っていたものの、校長会議及び責任職会議は、ブロック長以外の者が出席する会議等で決定された経営方針、活動計画を伝達されるだけであり、校長がY社代表者の決裁なしに校舎の方針を決めたり、費用を出捐したり、職員の人事を決定することはない

4 X2については、校長代理として責任職会議に出席していたのみであり、特別な事情がない限り校長業務を代理することはなく、直接他の職員に指示することもないことから、いずれもY社の経営に参画したり、労務管理に関する指揮監督権限を有していたとは認められない。

5 Xらについては、出退勤時間が定められ、勤務記録表により出退勤時間を管理されていたことから、出退勤について自ら自由に決定し得る権限があったとはいえない

6 さらに、役職手当が支給されていたものの、年収が400万円台半ばまでにとどまっていることから、待遇において、時間外労働の割増賃金が支給されないことを十分に補っているとはいえない

7 Y社は、Xらを含め雇用期間の定めのない正社員の約8割に該当するサブマネージャー以上の地位にある社員がいずれも管理監督者であるとして、時間外手当等を支払っていないところ、・・・Y社の行為が労働基準法37条に違反することは明らかである。
よって、本件については、労働基準法114条に基づき、Y社に対し、Xらの時間外手当等の認容額と同額の付加金の支払を命じるのが相当である。

Y社は、Xらに対し、付加金を含め、合計約1000万円の支払いを命じられました。

Y社は、控訴していますが、おそらく結論は変わらないでしょう。

遅延利息が増えるだけです。

また、Y社では、Xらだけでなく、雇用期間の定めのない正社員の約8割を管理監督者として扱っているようですので、この裁判例の影響は測り知れません。

あと、管理監督者性の問題とは直接関連しませんが、上記判例のポイント1の割増賃金の算定の基礎となる手当の範囲について、会社の担当者のみなさんは、もう一度確認してみてください。

せっかく支給しているのに、支給方法を誤ると、この裁判例のように、除外されなくなってしまいます。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。