有期労働契約118 無期転換直前の雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、無期転換直前の雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

日本通運(川崎・雇止め)事件(東京高裁令和4年9月14日・労判1281号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約(最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない旨の条項が付されていた。)を締結し、4回目の契約更新を経て勤務していたXが、Y社に対し、Y社が当初の雇用契約から5年の期間満了に当たる平成30年6月30日付けでXを雇止めしたことについて、①上記条項は労働契約法18条の無期転換申込権を回避しようとするもので無効であり、Xには雇用継続の合理的期待があった、②同雇止めには客観的合理性、社会通念上の相当性が認められないなどと主張し、Y社による雇止めは許されないものであるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同契約に基づく賃金請求権に基づき、上記雇止め後である同年8月25日から毎月25日限り月額賃金26万9497円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原判決は、Xの請求をいずれも棄却したため、Xは、原判決の全部を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 労働契約法18条の規定は、有期労働契約が反復更新され、長期間にわたり雇用が継続する場合においては、雇止めの不安があることによって、年次有給休暇の取得など労働者の正当な権利行使が抑制される問題が生じることなどを踏まえ、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、有期雇用労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換する仕組みを設けることによって、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的とするものと解される。他方で、同条の規定が導入された後も、5年を超える反復更新を行わない限度において有期労働契約により短期雇用の労働力を利用することは許容されていると解されるから、その限度内で有期労働契約を締結し、雇止めをしたことのみをもって、同条の趣旨に反する濫用的な有期労働契約の利用であるとか、同条を潜脱する行為であるなどと評価されるものではない
もっとも、5年を超える反復更新を行わない限度で有期労働契約を利用することが同条に反しないとしても、同法19条による雇止めの制限が排除されるわけではないから、有期労働契約の反復更新の過程で、同条各号の要件を満たす事情が存在し、かつ、最終の更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、同条により、労働者による契約更新の申込みに対し、使用者が従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で承諾したものとみなされ、その結果、労働契約が通算5年を超えて更新されることとなる場合には、有期雇用労働者は、同法18条の無期転換申込権を取得することとなると解される。

2 使用者が、一定期間が満了した後に契約を更新する意思がないことを明示・説明して労働契約の申込みの意思表示をし、労働者がその旨を十分に認識した上で承諾の意思表示をして、使用者と労働者とが更新期間の上限を明示した労働契約を締結することは、これを禁止する明文の規定がなく、同法19条2号の適用を回避・潜脱するものであって許容されないと解する根拠もないというべきである上、使用者と労働者とが更新期間の上限を明示した労働契約を締結したという事情は、上記にいう契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無といった考慮事情と並んで、契約の更新への期待の合理的理由を否定する方向の事情として、当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められるか否かを判断する際の考慮要素となるというべきである。

この論点については、だいたい決着がついたと見ていいと思います。

一番最初の契約締結時に更新上限を設定することが大切です。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

本の紹介1992 人生の99%は思い込み#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは「支配された人生から脱却するための心理学」です。

自分の人生にもかかわらず、何かに、誰かに支配されるなんてまっぴらです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

そもそも禁止令によって『こうしなければならない』『こうあるべきだ』というのは、幼少期に私たちが勝手に抱いた『思い込み』である。誰も『そうならなければならない』とは言っていない。仮に親や教師が『こうあるべきだ』と言ったところで、それに従うかどうかだって、その人次第なのだ。」(94頁)

とはいえ、未成年のうちにこれでもかというほど従順さを心底植え付けられてきたため、大人になって突然、自分の考えで行動するなんて、もはやできない体になっているのです。

本当は羽を羽ばたかせれば、自由に大空を飛ぶことだってできるのに。

自由に飛んではいけないと教育されてきた多くの人たちは、いつしか空を飛ぶことを諦めてしまいました。

自由を手にしたいのであれば、飛ぶことを諦めた親や教師の言うことを聞かないことですよ。

ペンギンだってダチョウだって、本当は飛べるのかもしれません。

でも、周りのみんなが飛ぶことをあきらめているから、自分もきっと飛べないんだろうな、飛んではいけないんだろうなと思っているだけなのかも。

知らんけど。

解雇393 出張に係る経費の不正請求等を理由とした普通解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、出張に係る経費の不正請求等を理由とした普通解雇の有効性について見ていきましょう。

住友重機精機販売事件(東京地裁令和4年6月1日・労経速2507号41頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結して労務を提供していたXが、Y社がXに対してした普通解雇が無効である旨主張して、Y社に対し、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と、令和元年11月30日以降の未払賃金月額52万3120円(なお、Xは、第3回口頭弁論期日において、賃金月額が51万2000円であると主張を変更したが、請求の減縮は行わなかった。)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 本件訴えのうち、本判決確定日の翌日以降の賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める部分を却下する。
 Y社は、Xに対し、77万6258円+遅延損害金を支払え。
 Xのその余の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 Xについては、解雇事由に該当する行為が認められるところ、このうちXによる岡山出張及び福岡出張に係る経費精算の申請は、虚偽の申請により本来Y社が負担する必要のない金銭の支出をさせ、又はさせようとしたもので、Y社に対する背信性の高い行為であるということができ、これらは本件就業規則44条2号ないし8号に該当する行為であると認められる。また、Xによる社用車の私的利用も、Y社の財産を軽視する行為であって、本件就業規則44条2号ないし8号に該当する行為であると認められる。
そして、Xは、福岡出張に係る経費精算の申請について、申請に係る旅費にXの子の旅行代金が含まれていることが窺われる記載のない領収証を一人分の旅費の確証として提出し、金額が過大であるとの疑いが生じたことからY社による調査が開始された後も、当初は実際に使用したのは新幹線であったなどと虚偽の説明をしたり、同行した代理店の担当者に作成を依頼して、実際は業務を行わなかった平成30年8月30日にも業務を行った旨の内容の書面をY社に提出するなど、不正請求の事実が発覚しないよう積極的な行動をとっていたことに加え、本件仮処分手続においても本件訴訟と異なる主張をしていた(Xは本件仮処分手続において、福岡出張の際の旅費9万1000円の半額の4万5500円に、別の出張費用等の代金を上乗せして請求した旨主張していたことが認められる。)ものであって、主張を二転三転させている上、X本人尋問に至っても、当該行為の問題性について認識しているとはいい難い
以上によれば、Xについては、Y社による指導等により改善を図ることは困難であったといえ、Y社がXとの雇用関係を維持できないと判断し、解雇を選択したことが不相当であるということはできない。

同種の解雇事案においては、解雇前の非違行為のみならず、解雇後の言動や態度についても、裁判所は、相当性判断の材料とすることを知っておきましょう。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。
   

本の紹介1991 無意識はいつも正しい#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

いかに日頃の習慣が大切かがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

常に心配や不安や恐れがあるとしたら、それも習慣です。逆に何を見ても聞いても『幸せだなぁ』って思えるのも、これまた習慣です。つまり、『習慣以外で成り立っているものはない』と言ってもいいくらい、あなたの中にある思考や感情も実は、ただ起きたことに対して『反応』しているだけです。」(83頁)

同感。

人生は習慣で成り立っています。

今の自分は、これまでの習慣の集積です。

そして、これから先の人生も。

人生を変えるには、習慣を変えるほかありません。

しかし、1度作り上げられた習慣を変えることは、良くも悪くも、ほとんど不可能と思える程、極めて困難です。

習慣は、それほどまでに強固なのです。

人生がそう簡単には変わらない所以です。

労働者性51 業務委託契約と題して署名押印なく締結された契約が労働契約にあたるため、その解消が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、業務委託契約と題して署名押印なく締結された契約が労働契約にあたるため、その解消が無効とされた事案を見ていきましょう。

TWS Advisors事件(東京地裁令和4年3月23日・労経速2507号28頁)

【事案の概要】

甲事件は、原告Aが、被告a社に対し、被告a社との間で締結した契約は業務委託契約ではなく労働契約である旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに平成30年1月から同年4月分まで及び平成31年1月分以降の未払賃金の支払を求めるとともに、原告Aが被告a社で就労していたにもかかわらず、被告a社が原告Aに対し失業等給付を受給するよう指示したことにより、失業等給付にかかる返還債務268万7448円の損害が発生した旨主張して、不法行為に基づき損害賠償の支払を求める事案である。

乙事件は、原告Aとの間で別紙1物件目録記載の建物につき使用貸借契約を締結していた原告b社が、原告Aに対し、原告Aと被告a社との間の業務委託契約が解消されたことにより、原告Aと原告b社との間の使用貸借契約も終了したにもかかわらず、原告Aが違法に居住を継続した旨主張し、債務不履行、不法行為又は不当利得に基づき、賃料相当損害金86万7225円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

 原告Aが、被告a社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
 被告a社は、原告Aに対し、102万6316円+遅延損害金を支払え。
 被告a社は、原告Aに対し、平成31年1月から本判決確定の日まで、毎月末日限り、50万円+遅延損害金を支払え。
 原告Aの被告a社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
5 原告b社の原告Aに対する請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 原告Aの業務内容は、不動産取引に関連する種々の業務のほか、被告a社の従業員の管理及び採用面接、会議の議事録の作成及び訴訟対応など、被告a社が原告Aの委託業務として主張する土地の仕入れにとどまらず、多岐にわたっており、被告a社の組織体制上、原告Aが執行役員あるいは部長という肩書でE及びBと各従業員との間の指揮命令系統に組み込まれていたことを踏まえると、原告Aは、契約時にあらかじめ具体的に特定された業務だけではなく、E又はBからの指示を受けながら、多様な業務を遂行していたと認められる
また、原告Aに対するEからの業務指示は、特定の案件における細かい業務分担や部下従業員への指導方法に及んでいることからすると、原告Aが受ける業務指示の内容は、個別具体的であったと評価できるし、業務の指示に対する諾否の自由や労務提供の代替性を有していたことをうかがわせる事情もない
さらに、原告Aの勤務時間については、タイムカード等により厳格に管理されておらず、始業終業時刻について明確な定めがあったとは認められないものの、スケジュールを常時共有することを求められていたことに加え、原告Aは、休日以外はほぼ毎日、概ね9時頃から被告a社の事務所又は取引先において業務を行っており、加えて休日も業務を行うことがあったのであるから、実体として勤務時間や勤務場所についての裁量が大きいとはいい難い
以上によれば、原告Aは、被告a社の指揮命令に従って労務を提供していたというべきである。

2 また、原告Aの報酬は、売上に応じたインセンティブとして支払われているものがあるものの、平成30年1月ないし4月までは休日出勤の日数に応じた報酬が支払われ、同年5月から12月までは基本となる報酬が月額30万ないし50万円であることを前提に失業等給付との差額が支払われており、前記アのとおり、原告Aの業務が多岐にわたっていたことも踏まえると、原告の報酬は、特定の業務の結果に対してではなく、労務の提供全体に対して支払われていると評価すべきである
以上の検討結果に加え、原告Aには、経費の負担はなく、被告a社から従業員証明書、机、パソコン及びメールアドレスのほか、無償で社宅が用意されており、個人事業者としての性格が強いとはいえないことも考慮すると、原告Aの被告a社との間の契約は、労働者が使用者の指揮命令に従って労務を提供し、使用者がその対価として賃金を支払う契約である評価できるから、労働契約であるというべきである。

実体は雇用にもかかわらず、業務委託契約を締結している多くの会社のみなさん、こういう契約、よく見かけますので、ご注意ください。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介1990 抜擢される人の人脈力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から15年前の本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「なぜあの人にだけチャンスが来るのか?」と書かれています。

なぜでしょうね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『仕事とはつらいものである』『夫はずっと働いて家計を支えるものだ』『長時間労働することは美徳である』・・・大なり小なり、何かしらの呪縛があるものです。
しかし、できる人は・いきいきと働いている人は、行動に制限をかける呪縛の正体を見抜き、そこから自分を解き放つために、本質的には何が必要かを考えています。本質的に何が必要かを考え抜き、自分なりの優先順位づけや、不要な物を捨てる勇気を持っているのです。」(253頁)

もう本当にそのとおりです。

自分もしくは周囲が作り上げた「呪縛」によってがんじがらめになっている人をよく見かけます。

しかも、「呪縛」から解き放たれることをはるか昔に諦めてしまっているようにも見えます。

自分の人生をどのように作り上げるかは、すべて自らの選択によります。

Born to be free.

Born to be happy.

Time flies.

YOLO.

労働時間92 位置情報を把握できる勤怠管理システムの導入後、直行直帰の営業職に事業場外みなし労働時間制の適用が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、位置情報を把握できる勤怠管理システムの導入後、直行直帰の営業職に事業外場みなし労働時間制の適用が否定された事案を見ていきましょう。

セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン事件(東京高裁令和4年11月16日・労経速2508号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され就労していたXが、Y社に対し、未払割増賃金等の支払及び未払賞与等の支払及び労働基準法114条に基づく付加金請求等の支払を求め、また、XはY社による違法な行為により精神的苦痛を被ったなどとして、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料150万円等の支払を求めた事案である。

現存は、Xの請求をいずれも棄却したところ、Xが請求の確認を求めて控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xは、労基法38条の2第1項により事業場外労働みなし制の適用を受けるためには、雇用契約書又は就業規則により同項の適用があることを明記しなければならないと主張するが、事業場外労働のみなし制は、労基法の規定に基づく制度であり、雇用契約書又は就業規則に別途定めを置くことは要件とされていない

2 週報は、エクセルの1枚の表に、1週間単位で、当該MRが担当する施設ごとに、業務を行った日付とその内容とを入力するものであり、内容欄のセルには相当の文字数の文章を自由に入力することができるから、Y社は、MRに対し、週ごとに、事後的にではあるが、MRが1日の間に行った業務の営業先と内容とを具体的に報告させ、それらを把握することが可能であったといえる。
また、週報には始業時刻や終業時刻等の記入欄はないものの、Y社は、平成30年12月、従業員の労働時間の把握の方法として本件システムを導入し、MRに対して、貸与しているスマートフォンから、位置情報をONにした状態で、出勤時刻及び退勤時刻を打刻するよう指示した上、月に1回「承認」ボタンを押して記録を確定させ、不適切な打刻事例が見られる場合には注意喚起などをするようになった。そうすると、平成30年12月以降、Y社は、直行直帰を基本的な勤務形態とするMRについても、始業時刻及び終業時刻を把握することが可能となったものといえる。
そして、Y社は、本件システムの導入後も、MRについては一律に事業場外労働のみなし制の適用を受けるものとして扱っているが、月40時間を超える残業の発生が見込まれる場合には、事前に残業の必要性と必要とされる残業時間とを明らかにして残業の申請をさせ、残業が必要であると認められる場合には、エリアマネージャーからMRに対し、当日の業務に関して具体的な指示を行うとともに、行った業務の内容について具体的な報告をさせていたから、本件システムの導入後は、MRについて、一律に事業場外労働のみなし制の適用を受けるものとすることなく、始業時刻から終業時刻までの間に行った業務の内容や休憩時間を管理することができるよう、日報の提出を求めたり、週報の様式を改定したりすることが可能であり、仮に、MRが打刻した始業時刻及び終業時刻の正確性やその間の労働実態などに疑問があるときには、貸与したスマートフォンを用いて、業務の遂行状況について、随時、上司に報告させたり上司から確認をしたりすることも可能であったと考えられる。
そうすると、Xの業務は、本件システムの導入前の平成30年11月までは、労働時間を算定し難いときに当たるといえるが、本件システムの導入後の同年12月以降は、労働時間を算定し難いときには当たるとはいえない

この裁判例の理屈でいえば、今の時代、もはや労働時間を算定し難いことなんて想定できないのではないかと思えますがいかがでしょうか。

事業場外みなし労働時間制を導入する際は、必ず事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介1989 エクスポネンシャル思考#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から4年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「テクノロジーが生活も仕事も刷新していく世界で、戦い方をどう変えるべきか。」と書かれています。

ChatGPTの利用だけを見ても、これまでの仕事が無くなったり、大きく変化することは明白です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

かつては一生をかけて挑戦し、ほんの一握りの人だけしかなしえなかった事業の成功が、今は人生のなかで失敗を恐れることなく、何度も何度も挑戦できるようになっていることに気づきます。挑戦する回数が増えればおのずと成功する可能性が高まります。であれば、これは挑戦しないほうが損な時代なのではないでしょうか。」(126頁)

さまざまなことに何度でも挑戦することができる、この現代社会は本当に素晴らしいです。

1つのことだけをやり続けなければいけないなんていうルールはありませんので、好きなことを好きなようにやればいいのです。

その時代、その社会にフィットした生き方や働き方というものがあります。

時代の波に飲み込まれるのではなく、うまく乗りこなすことができれば、こんなに楽しい時代はありません。

昔ながらのライフスタイルに固執すればするほど、どんどん息苦しく感じるのではないでしょうか。

すべては自らの選択。

解雇392 競業避止義務違反等を理由とする懲戒処分の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、競業避止義務違反等を理由とする懲戒処分の有効性について見ていきましょう。

不動技研工業事件(長崎地裁令和4年1月16日・労経速2509号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から競業避止義務違反又は競業行為への加担等を理由として懲戒処分等を受けたA・B・Cが、各懲戒処分等の違法、無効等を主張して、Y社に対し、Aが、懲戒解雇無効地位確認及び未払賃金等の支払を求め、Cが、諭旨解雇無効地位確認等請求及び未払賃金等支払を求め、Bが、降格処分無効管理職群1級の地位確認等請求及び降格処分に伴う差額分等の支払を求め、また、Aらが、Y社が懲戒処分をしたことによる不法行為に基づく損害賠償等の請求及びY社が懲戒処分を従業員等に公表等したことによる不法行為(名誉毀損)に基づく損害賠償等の支払を求め、さらに、A及びCが、未払割増賃金等の支払及び付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認等請求認容

未払割増賃金等支払一部認容

慰謝料等請求一部認容

【判例のポイント】

1 Y社の元従業員Dは、Y社の現職従業員らを引き抜き、Y社と競業する業務を行う新会社を設立し、新会社へ転職させることを計画していたと認められ、Aは、同計画が具体化する当初から、Dから相談を受け、随時、協議を重ねてきたということができるから、同計画について、Dと通謀したと認められ、そして、等級面談の再に所属課員に対し、新会社への転職意向を確認したことは、同計画への参加への働きかけに当たると認められること等から、Aの行為は、就業規則119条24号所定の懲戒事由に該当することが認められるところ、就業規則116条は、服務規律違反について、1項で、適切な指導及び注意を行い、改善を求める旨規定し、2項で、1項にもかかわらず、改善が行われず、企業秩序維持のため必要があるときに、懲戒処分を行う旨規定するが、上記Aの行為について、本件懲戒解雇前に、Y社が指導又は注意をした形跡は認められないから、Aについて、本件懲戒解雇をしたことは、懲戒権を濫用したものとして、労働契約法15条により無効であると認められる。

2 Cは、Dの計画に関与したと認められるが、その関与の程度に照らして、Dと通謀したとは認められず、また、Cは、Dに新会社に引き連れていくことができそうな部下の名前を挙げたが、部下に対して実際に働きかけたことを認めるに足りる証拠はなく、就労時間中にDと連絡し、引き連れていくことができそうな部下等の名前を挙げて、上記計画を助長したことは、就業規則所定の職務専念義務に違反するものであるが、同行為の性質、態様に鑑み、重大な違反行為に該当するとはいえず、就業規則所定の懲戒事由に該当するとは認められず、本件諭旨解雇は無効である。

上記判例のポイント1のように、適切なプロセスを経ることは、懲戒処分(特に懲戒解雇)を行う上ではとても重要です。

懲戒解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1988 試練は乗り越えろ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から13年前に出版された本ですが、再度、読み返してみました。

Z世代が読んでもあまり響かないかもしれませんね(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事というのはセンスも大事だが、どれだけ意気込みがあるかで決まってくるものだ。同じ仕事をやらせてみても三年でできる人もいれば十年かかるやつもいる。その違いは何か?自分の目的がしっかりとしていれば、おのずと親方や先輩の技術をじっくりと観察し、道具の種類と使い方、作業の方法や力加減なんかを、見ながら技を盗むことができる。」(139頁)

私たち凡人の範囲で言えば、仕事における人の能力の差、頭の良し悪しなんてほとんど誤差のレベルです。

それでも結果を出す人とそうでない人がいます。

その原因は何か?

私は、仕事に対する情熱・意気込みから生じる向上心や粘り強さではないかと思います。

指導・教育でどうにかなるものではないとも思えるため、結局、もう最初から勝負は決まっているのではないかとすら思えてきます。