本の紹介1239 60分間・企業ダントツ化プロジェクト#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度読み直してみました。

多くの具体例を交えて、実践的なマーケティングの手法が説かれています。

とてもわかりやすいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

現在においては、どの企業も、自社が事業ライフサイクルのなかで、どの季節にいるのかを把握しなければ、経営の舵取りはまず不可能となってしまった。なぜなら、経済が成熟してくると、事業ライフサイクルがどんどん短期化してくる。現状、参入最適時期がほんの数ヶ月しかない事業も多くなっている。するとその数ヶ月間で全力投球し、後は次の波に備えなければならないのである。」(82頁)

著者は、イソップ童話のアリとキリギリスの話を例として出しています。

これは決して会社に限ったことではありません。

人間もまったく同じことが言えます。

何の備えもなく冬を迎えて困った、困ったと嘆いても、それは仕方のないことです。

春、夏、秋と準備する時間はいくらでもあったはずです。

みなさんは、アリ派ですか? それともキリギリス派?

ライフサイクルを考えて日々、準備をすることがとても大切なのです。

賃金220 正社員としての退職金規程に基づく未払退職金請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、正社員としての退職金規程に基づく未払退職金請求に関する裁判例を見てみましょう。

いづみや岡本鉄工所事件(大阪地裁令和3年7月16日・労判ジャーナル116号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、定年後も正社員として勤務していたとして、雇用契約に基づく退職金等の支払を求めるとともに、会社代表者から、Xが正社員ではなく嘱託社員である、嘱託社員には有給休暇がないと虚偽の事実を告げられたことで失望し、有給休暇を取得することなく退職することとなったため、有給休暇を取得する機会を奪われたとして、会社法350条に基づく損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成23年●月●日に60歳の誕生日を迎えているところ、同日時点において効力を有する就業規則は旧就業規則であり、そして、旧就業規則によれば、60歳の誕生日が定年退職日であるが、労働者が希望し、会社が必要と認めた場合には、嘱託社員として5年を限度に再雇用する旨定められており、また、Xが令和2年3月24日に退職金を受領していることに照らせば、Xが一旦退職し、その後、再雇用するという扱いがとられていることがうかがわれ、さらに、賃金が減額になっていることは雇用形態が正社員から嘱託社員に変動になったことをうかがわせる事情であるといえ、加えて、Y社では従業員はタイムカードで出退勤が管理されていたところ、平成24年以降は1日の勤務時間が8時間に満たない日が散見されるが、Y社における所定労働時間は1日8時間とされているから、かかる勤務状況は、正社員としての勤務とは整合しないことになり、以上からすれば、XのY社における60歳以降の雇用形態は、正社員ではなく、嘱託社員であったと認められ、そして、Y社の退職金規程においては、嘱託として雇用された者には退職金規程が適用されないこととされていることからすれば、Xが、Y社に対し、退職金規程に基づき、退職金の支払を請求することはできない。

Xの主張は、定年後も嘱託社員ではなく、正社員として勤務していたというものですが、上記の状況証拠からしますと、結果としては嘱託社員と判断されることは異論がないと思います。

とはいえ、トラブルを回避するためには、書面で明確にしておくに越したことはありません。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介1238 コトラーのマーケティング4.0#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度読み直してみました。

帯には「loT、AI、ビッグデータでマーケティングは激変する!マーケターがめざすべき最終ゴールは何か。」と書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成功する企業やブランドは、ワオの瞬間を偶然に任せたりはしない。ワオを意図的に作り出し、顧客を認知から推奨へ建設的に導いていく。顧客とのインタラクションを、喜びから経験へ、さらにエンゲージメントへと、創造的に高めていく。あなたのブランドは、そのひとつだといえるだろうか?」(254頁)

これもまた会社に限った話ではありません。

個々人についても全く同じことがあてはまります。

自分の価値=ブランドなわけですから、人生を通じてブランド力を高めることは最も大きな目標の1つなのかもしれません。

給与や報酬は、自分の価値との等価交換ですから、前者を上げたければ、後者を上げるほかありません。

顧客から認知され、選ばれるために、何が必要なのかを考え、行動に移すことでしか現状を変えることはできません。

労働者性39 執行役員として業務に従事していたと主張する者の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、執行役員として業務に従事していたと主張する者の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

リコオテクノ事件(東京地裁令和3年7月19日・労判ジャーナル116号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結し、執行役員として業務に従事していたと主張するXが、Y社がした解雇は無効である旨主張し、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づき、本件解雇日以降の未払賃金等の支払、労働契約に基づき、労働契約締結時から本件解雇日までの未払賃金等の支払、民法650条1項に基づき、Y社のために支出した立替金約2万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認等請求棄却

立替金支払請求認容

【判例のポイント】

1 Xは、Y社において、事業譲渡の企画・立案・書類の作成に関する業務、資金の調達に関する業務、就業規則等の作成に関する業務、人事関係、決算手続に関する会計事務所との折衝・協議、Y社内の会議の調整、月次資金繰り表の作成、売掛金の回収等の業務に従事していたことが認められるところ、Xは、上記業務のうち主に事業譲渡に関する業務に従事し、同業務については他者からの指揮命令を受けることなく自らの裁量により業務を遂行していたものと考えられ、加えて、Xは、勤務場所及び勤務時間の定めがなく、他の従業員とは異なりタイムカードの打刻を求められていなかった上、Y社の事務所での朝礼に出席した後は、事務所から退出することが多くあったことが認められ、勤務時間及び勤務場所の拘束を受けていなかったといえるから、Xは、Y社において、自らの裁量により業務を遂行していたもので、Y社の指揮命令に基づき業務を遂行していたとは認められず、また、業務の依頼に対する諾否の自由を有していなかったとも認められず、さらに、Xは、勤務時間及び勤務場所の拘束を受けていなかったことも考慮すると、Xの労務の提供が使用従属関係の下になされていたということはできず、本件契約が労働契約の性質を有するものとは認められない。

ここまで自由な働き方が認められていたのであれば、労働者性が否定されてもおかしくありません。

逆に言えば、ここまで広い裁量が与えられていない場合には、労働者と評価されるリスクがありますのでご注意ください。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介1237 コトラーのマーケティング思考法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度、読み直してみました。

抽象論に終始せず、具体例を挙げながら説明がされており、とてもわかりやすいです。

自分の業界に応用するとどうなるのかを考えながら読むと勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・いずれの場合も、でき上がったフレーズは非論理的なものであり、一見するとばかげた表現にも思える。このナンセンスさの原因は、ギャップが生じているためである。何であれギャップが生じているようであれば、ラテラル・マーケティングの途上にあると考えてよい。」(127頁)

これだけ読んでもなんのことかわからないかもしれませんね。

新しいサービスや商品を生み出すときにいつも邪魔になるのは「常識」です。

「そんなことはあり得ない」と勝手に想像力にブレーキをかけてしまうと新しいものを創造することはできません。

社会常識、業界の常識から何か新しいものが生まれることはありません。

常に想像力に制限をかけず、一見ばかげたことを大切にすることがとても大切なのです。

セクハラ・パワハラ68 同僚らの嫌がらせ等に基づく慰謝料請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、同僚らの嫌がらせ等に基づく慰謝料等請求に関する裁判例を見てみましょう。

しまむら事件(東京地裁令和3年6月30日・労判ジャーナル116号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y1社の従業員であったXが、同じ職場で勤務していたY2及びY3から暴行、パワーハラスメント、嫌がらせ等を受けたとして、Y2及びY3に対し、共同不法行為責任に基づき、Y2及びY3の使用者であるY1社に対し、使用者責任及び職場環境配慮義務の債務不履行責任に基づき、慰謝料140万円+遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

被告らはXに対し、連帯して、5万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y2は、9月中旬以降、Xに対し、「仕事したの。」と言うようになり、店長代理のBにもXに仕事をしたか聞くと面白いから聞くようにけしかけ、実際にBがY2に言われたとおりXに「仕事した。」と質問し、これに対してXが拒絶反応を示していることに照らすと、Y2は、Xに対し、Xの拒絶反応等を見て面白がる目的で「仕事したの。」と言っていることが認められる。したがって、Y2のこの行為は、Xに対する嫌がらせ行為であるといえる。加えて、Y2の9月26日午後1時頃のXに対する行動も、その前後の経緯からすると、Xに対する嫌がらせ行為の一環として行われたものと認められる。
また、Y3もY2と同じ時期に、Xに対し、個別に、あるいはY2と同じ機会に「仕事したの。」とY2と同じ内容の発言をしているのであるから、Y2と同様にXの拒絶反応等を見て面白がる目的でしたと認められる。したがって、Y3のこの行為は、Xに対する嫌がらせ行為であるといえる。
そして、Xはこれらの嫌がらせ行為により精神的に塞ぎ込んで通院するまでに至ったのであるから、Y2及びY3の行為によりの人格権が侵害されたということができる。
以上によれば、Y2及びY3は、Xに対し、共同不法行為に基づく損害賠償責任を負う。

2 Y2及びY3によるXに対する嫌がらせ行為の態様、継続期間、その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、Y2及びY3による嫌がらせ行為によりXが受けた精神的苦痛を慰謝するには5万円が相当である。

裁判所が認定する慰謝料額の相場がわかりますね。

弁護士費用等を考えるとなかなか提訴の判断が難しいところですね。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介1236 コトラーのマーケティング3.0#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度読み直してみました。

モノを売り込む「製品中心」の「1.0」、顧客満足をめざす「消費者志向」の「2.0」を経て、「3.0」にバージョンアップさせたマーケティング理論が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ドナルド・カルネは『感情と理性の本質的な違いは、感情は行動を導き、理性は結論を導くことだ』と述べている。あるブランドを購入し、ロイヤルティを持ち続けるという決定は、感情に大きく左右されるのである。」(244頁)

人は何かを選択するときに、いちいち合理的な理由など考えていません。

「なんかいい」「なんか好き」という感情こそが重要なのです。

理由はいつでもその選択の合理性、正当性を肯定するための後付けです。

どれだけ優秀な人でもかわいげのない人は選ばれません。

それほど優秀でなくても愛嬌のある努力家であれば周りが助けてくれます。

世の中はそんなものです。

管理監督者51 ビル建材部施工管理課の課長の管理監督者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ビル建材部施工管理課の課長の管理監督者性が争われた事案を見ていきましょう。

三誠産業事件(東京地裁令和3年6月30日・労判ジャーナル116号40頁)

【事案の概要】

本件は、平成30年11月16日までY社に雇用され就労していたXが、Y社に対し、労働契約に基づく賃金請求をした事案である。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定

【判例のポイント】

1 Xは、ビル建材部施工管理課の課長であり、同課にはC及びDが在籍していたが、Xは、C及びDの担当業務を決定する権限は有しておらず、同人らの人事評価を行ったこともなかったこと、Xの業務内容の大半は、C及びDの業務内容と同様の施工管理業務であったこと等から、Xが経営者に代わって他の労働者の労働時間等を決定し、他の労働者の労務を管理監督する権限と責任を有しているとは認められず、また、Xは、他の従業員と同様にタイムカードによって出退勤が管理されていたところ、所定始業時刻に数分遅れた場合にはその都度遅刻の届出を会社に提出していることが認められる上、残業許可申請書を提出せずにタイムカードに21時以降打刻した場合には、その都度「残業未承認」というゴム印を押されていたことが認められることからすれば、Xは、その勤務態様について自由な裁量を有していたとまでは認められず、さらに、Xは、毎月4万円の役付手当の支給を受けていたが、同手当は、再雇用された後も毎月支給されており、同手当等の支給により、厳格な労働時間等の規制をしなくてもその保護に欠けることはないといえる程度の待遇を受けていると評価することは困難であるから、Xは、労働基準法41条2号の管理監督者に該当するとは認められない。

はい、いつものとおりです。

課長レベルで管理監督者性が認められることは1000%ありません。

労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。

本の紹介1235 コトラーのマーケティング・コンセプト#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

10年前に紹介した本ですが、再度読み直してみました。

10年前に何度となく読んだ本の1つです。

マーカーを引いている部分を読むととても懐かしいですね。

マーケティングの意義を知るには最適です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

競合他社に対して独自の優位性を持たない企業は、存在する理由がない」(213頁)

自社の戦略が競合他社と同じものだとしたら、戦略を持っていないことになる。他社とは異なるが、簡単に模倣できる戦略は、弱い戦略である。他社にない独自性を持ち、容易に模倣できない戦略こそが、強固で持続可能な戦略なのである。」(213頁)

みなさんは、自身が提供しているサービスについて、競合他社(他者)と比べて何が優れているのか説明できますか?

これは決して社外における競合との関係の話だけではありません。

社内においても役員や上司に自己の差別化要素をアピールしなければ、勝ち残ることはできません。

選ばれるには理由があり、選ばれないことにもまた理由があります。

うまくいかないのは決して不景気のせいではなく、顧客に選ばれないことが理由です。

差別化するための努力を惜しまないことです。

人が休んでいるときにどれだけ差別化の準備をし続けられるか。

ただそれだけのことです。

セクハラ・パワハラ67 ハラスメント防止委員会決定の名誉感情侵害該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、ハラスメント防止委員会決定の名誉感情侵害該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

A大学ハラスメント防止委員長ら事件(札幌地裁令和3年8月19日・労判1250号5頁)

【事案の概要】

本件は、大学教授であったXが、勤務していた大学のハラスメント防止委員会による決定により名誉感情を侵害されたとして、同決定の取消し並びに不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料160万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

決定取消しを請求する部分は却下

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 本件決定は、本件大学において、ハラスメントに相談や苦情申立てを受けた本件委員会が、その調査結果や対応措置、処分の検討結果を学長に報告するというもので、私人による事実行為に過ぎず、Xに対する具体的な権利義務を形成する法的効果を生ずるものではなく、本件決定の取消しによる権利関係の変動等も観念できない上、その取消権を認めるべき実体法上の根拠も見当たらない。したがって、本件訴えのうち本件決定の取消しを求める部分について、訴えの利益は認められない

2 本件委員会による決定は、学内におけるハラスメントの相談や苦情申立てについて調査した上、その対応措置及び処分の検討の結果等を学長に報告するものであって、加害者である被申立人の言動に対する否定的評価が含まれ得ることは、その性格上当然に想定されているといえ、これが被申立人に通知されることも、本件委員会規程上、不服申立ての機会を確保するために定められた手続であって、被申立人を非難する目的で否定的評価を告知するものではない
そして、本件決定は、本件発言が人権侵害に当たる旨を判断しているものの、その否定的な評価は、発言自体に向けられたほかは、Xによる同様の案件が2度目であることや、Xにおいてハラスメントに当たるとの認識がないことを指摘するに留まっており、それ以上に、Xの人格攻撃に及んだり、殊更に侮辱的表現を用いたりするものではなく、本件委員会の決定として想定される限度を超えてXの名誉感情を傷つけるものとは認め難い。かえって、本件決定においては、懲戒処分に至らない口頭での厳重注意等を相当とするに留めるとともに、付帯事項(留意点)として、Xに対する措置だけでなく、大学内の組織的な対応や管理職等がとるべき対策等についても言及し、本件決定による措置がXとH教授の関係性の改善に資するよう望む旨が表明されていることが認められ、本件決定の文脈全体をみても、Xに対する一方的な非難や攻撃を意図したものではないことがうかがえる
・・・以上によれば、本件決定は、法的保護に値するXの人格的利益を侵害するものとは認められないから、X主張の不法行為は成立しない。

非常にチャレンジングな訴訟ですが、結果としては上記のとおり、認められませんでした。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。