同一労働同一賃金22 嘱託・年俸社員における賞与・家族手当等の相違と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、嘱託・年俸社員における賞与・家族手当等の相違と労契法20条違反に関する裁判例を見てみましょう。

科学飼料研究所事件(神戸地裁姫路支部令和3年3月22日・労判1242号5頁)

【事案の概要】

本件は、①Y社と期間の定めのある労働契約を締結して「嘱託」との名称の雇用形態により勤務していたXら及び②Y社と期間の定めのない労働契約を締結して「年俸社員」との名称の雇用形態により勤務していたXらが、Y社と無期労働契約を締結している上記「年俸社員」を除く他の雇用形態に属する無期契約労働者との間で、賞与、家族手当、住宅手当及び昼食手当に相違があることは、労働契約法20条ないし民法90条に違反している旨などを主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償として、本件手当等に係る賃金に相当する額及び弁護士費用+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

賞与の相違は不合理でない

家族手当、住宅手当の相違は不合理

昼食手当の相違は不合理でない

【判例のポイント】

1 Y社の一般職コース社員に対する賞与は、労働意欲の向上、人材の確保・定着を図る趣旨によるところ、Xら嘱託社員との間の職務内容、職務内容や配置の変更範囲、人材活用の仕組みの各相違、および、再雇用者を除くXら嘱託社員の年間支給額と比較して一般職コース社員の基本給が低い一方、定年後の再雇用者では老齢厚生年金の支給等から賃金が抑制され得ること、さらに、Y社には試験による登用制度があり、嘱託社員としての雇用が固定されたものではないこと等から、一般職コース社員とXら嘱託社員との間の賞与にかかる労働条件の相違は不合理でない

2 Y社の家族手当や住宅手当は、支給要件や金額に照らすと従業員の生活費を補助する趣旨であるところ、扶養者がいることで日常の生活費が増加することは、Xら嘱託社員と一般職コース社員の間で変わりはなく、Xら嘱託社員と一般職コース社員は、いずれも転居を伴う異動は予定されず、住居を持つことで住居費を要することになる点でも違いはないから、家族手当および住宅手当の趣旨は、Xら嘱託社員にも同様に妥当するとされ、これらをまったく支給しないことは不合理である。

3 Y社の昼食手当は、当初は従業員の食事にかかる補助の趣旨で支給されていたが、遅くとも平成4年頃までには、名称にかかわらず、月額給与額を調整する趣旨で支給されていたところ、一般職コース社員とXら嘱託社員との間の職務内容、職務内容や配置の変更範囲、人材活用の仕組み等が異なること、両社員では賃金体系が異なり、一般職コース社員の月額の基本給は、昼食手当を加えてもXら嘱託社員の月額支給額より低いこと、Y社では登用制度が設けられていること等から、一般職コース社員とXら嘱託社員との間の昼食手当にかかる労働条件の相違は不合理でない。

家族手当及び住宅手当の格差については不合理であると判断されています。

転居を伴う異動の有無が考慮要素となりますので注意しましょう。

同一労働同一賃金の問題は判断が非常に悩ましいので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

本の紹介1196 アンソニー・ロビンズの「成功法則」#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度読み直してみました。

言わずと知れたアンソニー・ロビンズさんの本です。

いつ読んでもパワフルで、素晴らしい本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の価値観に従って生きているかどうか、どうすれば分かるだろうか?それは、何を信じるかという自分のルールによってすべて決まる!君は成功するためには何が必要だと信じているだろうか?幸せになるためには?健康のために必要と信じているものは何だろう?君の脳の中ではいつも裁判のようなものが行われている。君が持っているそれぞれのルールが裁判官や裁判員となって、自分の行動が基準を満たしているか、目的達成を祝福するのに十分であるかどうか、ジャッジしているのだ。」(249頁)

人の価値観は千差万別です。

人生において、何を大切にしているのか。

この答えがその人の人生を決めるのでしょう。

できるだけ自由でいたい。

できるだけお金を稼ぎたい。

できるだけのんびりしたい。

できるだけ安定した生活をしたい。

価値観はさまざまです。

他人のことは気にせず、自分の生きたいように生きればそれでいいのですよ。

労働時間73 セミナー受講の労働時間性と受講料返還請求の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、セミナーの受講料返還請求に関する裁判例を見てみましょう。

ダイレックス事件(長崎地裁令和3年2月26日・労判1241号16頁)

【事案の概要】

本件甲事件は、Y社の従業員であったXが、平成26年7月2日から平成28年8月31日まで、時間外労働等を行ったと主張して、労働契約に基づいて、Y社に対し、割増賃金260万0026円+遅延損害金の支払を求めると共に、労基法114条に基づいて、Y社に対し、付加金179万0414円+遅延損害金の支払を求める事案である。

本件乙事件は、Y社において、①XがY社に在職中である平成24年4月25日から平成27年8月19日までに聴講したセミナーの受講料について、Y社との間で、平成24年3月11日、受講から2年以内にY社を退職した場合にはY社にこれを支払う旨を合意したところ、平成28年10月2日にY社を退職したと主張して、無名契約たる上記合意に基づいて、Xに対し、受講料14万4335円+遅延損害金の支払を求め、②Xが、上記受講に当たって要した交通費について、平成24年3月11日、受講後2年間、雇用契約が継続された場合には支払義務が免除されることを条件に、Y社からこれを借り受けたところ、上記のとおりにY社を退職したと主張して、上記消費貸借契約に基づいて、Xに対し、貸金20万8260円+遅延損害金の支払を求め、③Xが、上記受講に当たって要した宿泊費について、平成24年3月11日、Xに代わってこれを支払ったY社との間で、受講後2年間、雇用契約が継続された場合には支払義務が免除されることを条件に、XのY社に対する精算金支払債務を消費貸借の目的とすることに合意したところ、上記のとおりにY社を退職したと主張して、上記準消費貸借契約に基づいて、Xに対し、貸金6万2270円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、153万0581円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、付加金96万4667円+遅延損害金を支払え。
 
Y社の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 本件セミナーの内容は、店舗で販売されるa社のPB商品の説明が主なものであること、本件セミナーの会場は、Y社本社又はY社店舗であったこと、受講料等はY社が負担し、宿泊の場合のホテルもY社が指定していたことからすれば、本件セミナーはY社の業務との関連性が認められる
また、Xは上司に当たるエリア長及び店長から正社員になるための要件であるとして受講するよう言われていた上、店長もXの受講に合わせてシフトを変更していたのであるから、受講前に受信したメールに「自由参加です」との記載があるとしても、それへの参加が事実上、強制されていたというべきである。
そうすると、本件セミナーの受講は使用者であるY社の指揮命令下に置かれたものと客観的に定まるものといえるから、その参加時間は労働時間であると認められる。

2 本件セミナーの受講は労働時間と認められ、その受講料等は本来的にY社が負担すべきものと考えられること、その内容に汎用性を見出し難いから、他の職に移ったとしても本件セミナーでの経験を生かせるとまでは考えられず、そうすると、本件合意は従業員の雇用契約から離れる自由を制限するものといわざるを得ないこと、受講料等の具体的金額は事前に知らされておらず、従業員においてY社に負担する金額を尋ねることができるとはいっても、これをすることは退職の意思があると表明するに等しく、事実上困難というべきであって、従業員の予測可能性が担保されていないこと、その額も合計40万円を超えるものであり、Xの手取り給与額(平成26年8月から平成28年9月までで月額15万円から26万円。平均すると、月額約18万6000円。ただし,平成27年4月以降は家族手当を含む。)と比較して、決して少額とはいえないことからすれば、本件合意につきY社が主張するような法的形式をとるとしても、その実質においては、労働基準法16条にいう違約金の定めであるというべきである。
したがって、本件合意は無効である。

判例のポイント2のような合意は必ず労基法16条との関係で問題となります。

この手の裁判例をいくつか理解しておくと、実務において応用がきくようになります。

いずれにせよ、日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に制度運用することをおすすめいたします。

本の紹介1195 ザ・シークレット#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み直してみました。

この本ほど「引き寄せの法則」をこれでもかという程に説く本を私は知りません。

この本を読むことにより受けた影響は極めて大きいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

この法則を一番簡単に理解するには、自分を磁石だと考えるとわかりやすいでしょう。磁石は物を引き寄せるからです」(23頁)

何てことない一文ですが、これが引き寄せの法則です。

幸運も不運も引き寄せの法則で捉えると、結局、他責ではなく自責にたどり着きます。

なんで私ばかりこんな目に遭わないといけないのか、と落ち込むときに他責で考えた方が気が楽ですが、解決にはつながりません。

責任を国や会社や他人に転嫁しているうちは、人生は1ミリも変わりません。

競業避止義務28 競業避止義務違反に基づく会社からの損害賠償請求の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、競業避止義務違反に基づく会社からの損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

レジェンド元従業員事件(福岡高裁令和2年11月11日・労判1241号70頁)

【事案の概要】

本件は、保険代理店業等を営むY社が、かつてY社の従業員であったXにつき、①Y社在職中に同業他社の使用人となった、②Y社在職中に、同業他社のための営業活動を行い、競業避止義務に違反した、③Y社を退職して同業他社に就職した場合にY社の顧客に営業活動を行わない旨競業避止義務を負っていたにもかかわらず、Y社を退職した後に就職した同業他社においてY社の顧客に対する営業活動を行って、競業避止義務に違反した、④Y社を退職して同業他社に就職した後に秘密保持義務に違反したという義務違反があり、これにより、Y社の顧客の一部が保険契約を更新せず、Y社は契約の更新がされていれば得られたはずの代理店手数料を得ることができず、損害を被ったと主張し、Y社に対し、債務不履行に基づく損害賠償請求としてY社に生じた損害の一部である179万9386円+遅延損害金の支払を求めている事案である。

原判決は、Xについて、上記③の競業避止義務が認められると判断し、Y社の請求のうち141万2059円+遅延損害金の支払を認める限度で認容し、その余の請求を棄却した。

Xは、上記認容部分を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

原判決中、X敗訴部分を取り消す。

前項の部分につき、Y社の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 本件競業避止特約によって課されるような退職後の競業避止義務は、労働者の営業の自由を制限するものである。このような退職後の競業避止義務については、労働者と使用者との間の合意が成立していたとしても、その合意どおりの義務を労働者が負うと直ちに認めることはできず、労働者の利益の程度、競業避止義務が課される期間、労働者への代償措置の有無等の事情を考慮し、競業避止義務に関する合意が公序良俗に反して無効であると解される場合や、合意の内容を制限的に解釈して初めて有効と解される場合があるというべきである。

2 ・・・本件競業避止特約は、その文言によれば、XがX既存顧客に対しても営業活動を行わない義務を課す内容であり、Xがこのとおりの義務を負うとすれば、Xが受ける不利益は極めて大きいものである。

3 XがY社に在職中に受領した賃金や報酬が、Xが退職後に競業避止義務を負うことの実質的な代償措置であると認めることもできない

4 こうした事情の下では、本件競業避止特約により、Xが、Y社退職後に、X既存顧客を含む全てのY社の顧客に対して営業活動を行うことを禁止されたと解することは、公序良俗に反するものであって認められない。そして、本件競業避止特約の内容を限定的に解釈することにより、その限度では公序良俗に反しないものとして有効となると解する余地があるとしても、少なくとも、XがX既存顧客に対して行う営業活動であって、XからX既存顧客に連絡を取って勧誘をしたとは認められないものについては、本件競業避止特約に基づく競業避止義務の対象に含まれないと解するのが相当である。

このように競業避止義務については、かなり限定的に解釈されることは理解しておきましょう。

従業員に独立、転職されること、それに伴い顧客が一定数減少することは、もはや雇用契約に内在するリスクと捉えるほうが現実的だと思います。

競業避止義務の考え方については顧問弁護士に相談をし、現実的な対策を講じる必要があります。

本の紹介1194 経営は何をすべきか#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から約8年前に紹介をした本ですが、再度読み直してみました。

タイトルのとおり、経営において何が重要かが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どの業界でも、時の経過とともに同じ発想が広まっていく傾向がある。幹部層はみな、同じ業界誌を読み、同じ見本市に出かけて同じコンサルタントと言葉を交わす。こうして何年もの歳月が流れるうちに、知恵の泉が枯れて淀んだ池のようになってしまう。」(97頁)

意識をしていないとこうなってしまいます。

「業界の常識」という意味不明なルールに縛られないためには、意識をして業界外の人たちと時間をともにする必要があります。

同調圧力からはできるだけ離れたところで生活をすることが、自由に生きるコツなのです。

配転・出向・転籍46 職種限定労働者に対する配転命令と労働者の同意(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、薬学部教授兼薬剤部長に対する薬剤師としての配転命令の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人国際医療福祉大学(仮処分)事件(宇都宮地裁令和2年12月10日・労判1240号23頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の開学するY大学の薬学部教授及びY病院薬剤部長として就労していたXが、Y社の違法な配転命令により、薬学部教授等の地位を解任され、Y病院において薬剤師として勤務するよう命じられたとして、Y社に対し、主位的に薬学部教授の地位にあることを、予備的に薬剤師として勤務する労働契約上の義務を負わないことを、それぞれ仮に定めるよう求めた保全申立事件である。

【裁判所の判断】

Xは、Y社に対し、Y社が設置するY大学薬学部教授の地位にあることを仮に定める。

【判例のポイント】

1 Xの地位を薬学部教授に限定する明確な合意は認められないが、黙示の合意による成立が認められる余地はあるとして、募集と採用の経緯、人事運用等からみて薬学部教授とする職種限定合意がされたと一応認められる

2 本件配転合意書の上記内容を認識しつつ異議を述べずに署名・押印を行ったからといって、その署名・押印がXの自由な意思に基づいてされたものであるとはいい難く、むしろ、上記のとおり、病院職員証の返却やY病院への着任等につきY社からの要望に応じたのと同様、無用な混乱等を避け、給与や手当の支給手続が円滑に進むよう、とりあえず本件配転合意書への署名・押印に応じたものであって、それは飽くまでY社との無用な軋轢を回避するための暫定的な取決めに過ぎなかったものとみるのが合理的である。
そうすると、・・・本件配転合意書への署名・押印がXの自由な意思に基づいてされたものと一応認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するものとはいえず、本件配転合意の成立は一応も認められないというべきである。

3 なお、Y社は、本件配転合意書の記載内容は一見して明白であることや、本件配転合意書の署名・押印に先立ち、X代理人弁護士からは、人事的な事項に関する連絡等について直接X本人に連絡してよいと言われたことを指摘するが、上記のとおり、Xは、本件配転命令に対し、一貫して異議を述べている上、本件配転命令に従わないことで生じる混乱を防ぐために、Y社からの種々の要求に暫定的に応じていたと認められるから、本件配転合意書の署名・押印についても、それらと同様に、Xは、本件配転命令の効力が確定するまでの間の暫定的な勤務状態を受け入れる意図で署名・押印したものというべきであるから、Y社の上記指摘は上記結論を左右しない。

労働者の同意の有効性については、内容の不利益性に比例して厳格に解釈される傾向にあります。

同意を取りさえすればよいと判断するのは大変危険です。

同意の有無にかかわらず、当該行為の客観的な合理性を慎重に判断することが求められます。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行うことをおすすめいたします。

本の紹介1193 「学ぶ」を「お金」に変える技術#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から約10年前に紹介をした本ですが、再度、読み直してみました。

帯には「成果(お金)に結びつかない学びは浪費と同じです!」と書かれています。

勉強は仕入れですから、売上に変えないと意味がないですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人は動物。動いてナンボ、行動してはじめて価値を生み出すことができるのです。・・・いかなる場合も評価は行動の結果に対して与えられるものです。行動もしないで、評価されない、お金がついてこないといっている人が多すぎます。」(177頁)

動かなければ何も変わらないという真実。

成果がなかなか出ない人の1つの特徴として、成果につながらないことに費やしている時間が多いということがあげられます。

その時間の使い方、投資ですか? 

それとも浪費ですか?

成果を出すためには、できるだけ多くの時間を、自分の価値を高めるために使うことです。

労働者性38 ホテルフロントマン(業務委託)の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、ホテルフロントマン(業務委託)の労働者性に関する裁判例を見ていきましょう。

ブレイントレジャー事件(大阪地裁令和2年9月3日・労判1240号70頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社との間で労働契約を締結したと主張して、Y社に対し、①労働契約に基づき、平成28年7月1日から平成30年6月29日までの間(以下「本件請求期間」という。)の労務提供分につき、労基法37条1項所定の割増賃金合計775万8029円+遅延損害金の各支払い、②労基法114条に基づく付加金575万6920円+遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、737万9533円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、付加金520万2182円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 業務内容及び遂行方法に対する指揮命令
Xの業務は、本件業務委託契約書中に、その内容が細かく特定されていた上、同契約書上、Xは、かかる業務をY社の指示によって行い、勤務日ごとに毎回各種状況の報告を行うこととされていた。そして、Xは、実際に、Y社に対し、受託業務報告書の書式を用いて、利用客についての報告事項、引継ぎ事項を記載する欄のほか、一時間ごとの入室中、掃除中及び利用停止中の客室数に至るまで、業務につき詳細な内容の報告を上げていた。このように、Y社による詳細な特定や報告の要求があったことからすると、Xの業務内容及び遂行方法に対しては、Y社の指揮監督が及んでいたということができる。

2 時間的場所的拘束性
Xの業務は、その業務時間が、基本的に午前11時から翌日の午前11時と定められ、業務を行う場所も、本件ホテルという一つの場所に定められているものであって、時間的場所的な拘束性がある

3 労働契約との内容の近似性
Xは、形式上、Y社との間で、業務委託契約を締結している。
他方、午前11時から翌日の午前11時までというXの業務時間は、労働者であるY社の従業員を対象とした就業規則に記載されている始業時刻及び終業時刻の内容と同一である。また、Xが、本件業務委託契約書に基づいて従事する業務内容や、Xの具体的な勤務日の決定方法については、業務委託契約の締結以前に、労働契約に基づいて労務を提供していたときのものと変わりがなかった

4 小括
以上によれば、Xは、Y社との間で、形式的には業務委託契約を締結しているものの、時間的場所的な拘束を受けている上、その業務時間・内容や遂行方法が、Y社との間で労働契約を締結した場合と異なるところがなく、Y社の指揮監督の及ぶものであったことからすると、Xは、実質的には、Y社の指揮命令下で労務提供を行っていたというべきである。

仕事のしかたとして、これを業務委託と考えるのはやはり無理がありますね。

結果、凄まじい残業代となっております。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

 

本の紹介1192 わたしの人生に奇跡を起こしたマーフィー100の言葉#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

約10年前に紹介をしました本ですが、再度読んでみました。

10年経ちましたが、いまだにマーフィーさんには興味が湧いておりません(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

知識が豊富であることは素晴らしいことですが、それを行動に進化させることができる人はさらに素晴らしい成果を手にします。」(110頁)

何かを知っていることで人生が変わることはありません。

動くことによってしか人生は1ミリも変わりません。

正確には、動き続けなければ何も変わりません。

これまで、途中で投げ出して人生が変わったことがあるでしょうか。

どれだけ忙しくても、暑くても、寒くても、眠たくても、疲れていても、やっている人はやっています。

いつだって、弱い弱い自分との戦いなのです。