労働災害105 精神疾患未発症でも長時間労働について慰謝料請求が認められる?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、懲戒処分の適法性ならびに安全配慮義務違反の有無に関する裁判例を見てみましょう。

アクサ生命保険事件(東京地裁令和2年6月10日・労判1230号71頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、①Xに対する懲戒戒告処分は無効であるとして、不法行為責任に基づく慰謝料+遅延損害金、②Xが上司から受けたパワハラや平成27年5月1日から平成29年9月30日までの間の長時間労働について、Y社が使用者として適切な対応を怠った等として、使用者責任ないし安全配慮義務違反・職場環境配慮義務違反による債務不履行責任に基づく慰謝料+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、10万円+遅延損害金を支払え。

Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社は、遅くとも平成29年3月から5月頃までには、三六協定を締結することもなく、Xを時間外労働に従事させていたことの認識可能性があったというべきである。しかしながら、Y社が本件期間中、Xの労働状況について注意を払い、事実関係を調査し、改善指導を行う等の措置を講じたことを認めるに足りる主張立証はない。したがって、Y社には、平成29年3月から5月頃以降、Xの長時間労働を放置したという安全配慮義務違反が認められる

2 Xが長時間労働により心身の不調を来したことについては、疲労感の蓄積を訴えるX本人の陳述書に加え、抑うつ状態と診断された旨の平成29年4月1日付け診断書があるものの、これを認めるに足りる医学的証拠は乏しい。しかし、Xが結果的に具体的な疾患を発症するに至らなかったとしても、Y社が、1年以上にわたって、ひと月当たり30時間ないし50時間以上に及ぶ心身の不調を来す可能性があるような時間外労働にXを従事させたことを踏まえると、Xには慰謝料相当額の損害賠償請求が認められるべきである。

上記判例のポイント2は注意が必要です。

金額としては大きなものではありませんが、実際、損害賠償請求が認容されていることは軽視すべきではありません。

労災発生時には、顧問弁護士に速やかに相談することが大切です。

本の紹介1116 「人生100年」老年格差(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「超高齢社会の生き抜き方」です。

帯には「健康度、脳機能、若々しさ、お金・・・怖いほど格差が広がる時代がやってくる。」と書かれています。

今後ますます格差が広がっていく中でいかに生きていくべきかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

老化において、いちばんやっかいなのは、意欲が衰えていくことです。意欲がなくなってくると、何に対してもやる気が湧かず、人にも会いたくないし、家にこもりがちになってきます。・・・つまり、意欲を保つことが、老化を遅らせる大前提になります。意欲レベルの高い人ほど、元気で頭もシャキッとしています。」(39~40頁)

個人的には、意欲と筋力の低下が老化の定義と考えています。

年齢は単なる数字ですから、何の意味もありません。

概して、年齢を重ねるごとにさまざまなことが億劫になっていくものです。

それゆえにますます老化していくというスパイラルに陥ります。

意欲格差がそのまま経済や健康等の格差につながっているように思います。

不当労働行為258 技能実習生が加入した労組との団体交渉における使用者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、外国人技能実習生受入れ事業を行う協同組合が実習生の加入した労組の申し入れた団交に応じないことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

中亜国際共同組合ほか事件(広島県労委令和2年3月13日・労判1227号96頁)

【事案の概要】

本件は、外国人技能実習生受入れ事業を行う協同組合が実習生の加入した労組の申し入れた団交に応じないことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に当たらない

【命令のポイント】

1 本件協同組合はA組合員の座学講習の適正な実施について、技能実習制度の範囲内ではあるが、現実的かつ具体的に決定することができる地位にあったものと認められる。したがって、組合が、A組合員の座学講習の適正な実施のために、本件協同組合に対して話し合いを求めたことには相応の理由があると解される。
もっとも、本件協同組合のA組合員に対する座学講習は、監理団体の業務として行われたものと解される。そして、座学講習は雇用契約の効力の発生の前提として密接に関連するものの、座学講習の受講は労務の提供ではないことから、本件協同組合における座学講習の適正な実施に関する事項は、A組合員の基本的な労働条件等に当たらないと解するのが相当である。

2 本件一時帰国の決定は、本件協同組合の監理団体の業務として行われたものと解される。そして、本件一時帰国は、座学講習の中断を意味するものであり、座学講習の受講は労務の提供ではないことから、A組合員の一時帰国における本件協同組合の対応に関する事項は、A組合員の基本的な労働条件等に当たらないと解するのが相当である、
以上のとおりであるから、本件団体交渉事項について、本件協同組合に労働組合法7条2号の使用者性は認めることはできない

労組法上の使用者性や義務的団交事項に関する判断です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1115 人生最後の日にガッツポーズして死ねるたったひとつの生き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

吉田松陰、高杉晋作、野村望東尼、ジョン万次郎、坂本龍馬

5人の生き方を通じて、いかに生きるべきかを説いています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

多くの人は、過去は変えられないと嘆き、過去の出来事(トラウマ)にとらわれています。でも、過去は変えることができるのです。過去をジャンプ台にして、最高の未来を生み出したときに、その過去を受け入れることができるからです。龍馬はそれをした。過去は未来が決めるのです。」(239頁)

過去の起きた「事実」それ自体は、タイムマシンが発明されない限り変えようがありません。

しかし、その事実に対する「解釈」は変えることができます。

「あ、あの出来事があったから今の自分がいるんだ」

これは未来が過去の事実の「解釈」に影響を与えている表れです。

今できることを精一杯やることにより未来が作られ、その作られた未来によって過去に対する解釈が変わるのです。

不当労働行為257 団交の打切りが不誠実団交と評価されない場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、介護老人保健施設で介護職員として勤務してきた組合員を解雇したことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

医療法人健和会事件(大阪府労委令和2年4月13日・労判1229号102頁)

【事案の概要】

本件は、Y法人の設置運営する介護老人保健施設で介護職員として勤務してきた組合員を解雇したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Y法人がB利用者への虐待行為があったと判断したことには理由があり、かつ、Y法人が虐待行為を重視し、虐待行為を行った職員を解雇することが不合理であるといえないことからすると、29.7.18通知書等に記載されたもののうち、B利用者への虐待の件だけを取り上げてみても、解雇には相応の理由があったというべきである。
・・・したがって、Y法人が、平成29年8月24日をもってF組合員を解雇したことは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらない。

2 Y法人は、本件団交の2日後に、29.8.23解雇通知書を送付しているが、Y法人が、F組合員の処遇についての結論を急いだことに、理由がなかったわけではないといえ、また、組合が、29.7.26団交要求書の要求内容について継続して協議する意向を持っていたかについて疑念が残るといわざるを得ず、これらのことを考え合わせると、Y法人が、本件団交の2日後に29.8.23解雇通知書を送付したことをもって、団交を一方的に打ち切ったとまではいえない

上記命令のポイント2のように、使用者側から団交を打ち切ると不誠実団交の疑いが生じます。

打ち切りの合理的理由があるかどうかについては慎重に判断することが求められますのでご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1114 誰も教えてくれなかった金持ちになるための濃ゆい理論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

経済評論家の上念司さんの本です。

帯には「マイホーム、高級車、ブランド物・・・『地位財』を貯め込んでも、一生満たされることはない。自分の欲望の本質を見極めろ!」と書かれています。

まったく同感。

物で幸福度が上がらない人にとっては、これらの購入は、お金の無駄遣い以外の何物でもありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

何度も言いますが、これまで平均で10年に一度の割合で経済危機が来ています。それもリーマンショック級のデカいやつです。つまり、10年を超えるような長期計画というのはよほど慎重に余裕をもって立てなければなりません。住宅ローンの返済計画に代表される私たちの人生設計は甘すぎます。・・・現状が永久に続くと仮定してギリギリ逃げ切れる計画なんて脆弱すぎる。」(163~164頁)

35年間、平穏に暮らせるという前提を本当に信じているのでしょうか。

これだけ頻繁に「危機」に直面しているのに・・・。

10年後どころか来年どうなっているかもよくわからない世の中です。

昭和時代の常識は、令和時代の非常識だということを強く認識する必要があります。

従業員に対する損害賠償請求8 退職従業員に対する労基法16条適用の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、退職した日雇従業員の不動産取引損金補てん合意の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

P興産元従業員事件(大阪高裁令和2年1月14日・労判1228号87頁)

【事案の概要】

本件は、Xとの間で不動産取引に関してY社に生じた損金をXが補填する旨の合意をしたY社が、本件合意により補填されるべき損金239万9835円が生じたと主張して、Xに対し、本件合意に基づき、上記損金+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審はY社の請求を全部認容したところ、Xがこれを不服として本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

原判決を取り消す。

Y社の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは労働契約に基づきY社に対して業務提供をしていたから、XとY社との権利義務関係については、労働基準法の適用を受ける。そして、同法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と規定しているところ、本件合意は、その成立時期がXの退職直後であるものの、使用者が労働契約関係にあった労働者に退職後も上記労働契約に付随して努力する義務を負わせた上、将来Y社に損害が生じた場合には、事情の如何を問わずその全額の賠償を約束させるものにほかならず、実質的には、上記労働基準法の規定の趣旨に反するものである。

2 XがY社に取引を勧めたのは、本件覚書記載の3物件のうち愛知県C物件のみであり、本件不動産及びL物件については、Xが入札の可否に関する判断をしたわけではなく、その他、Y社に生じた損金を補填しなければならないような合理的理由を何ら見出すことはできない

3 本件合意は、上記3物件の転売による利益はY社が取得することを前提としながら、損金が生じた場合はその全額をXに負担させるというものであり、極めて不公平で一方的な内容のものというほかない

4 本件覚書は、Y社に一方的に有利で、かつ、Xに一方的に不利益な内容であって、既にY社を退職していたXが本件覚書に係る本件合意をする合理的理由を何ら見出せないにもかかわらず、Xが本件覚書に署名押印したのは、これを拒否した場合にX及び当時Y社に就労中の妻Mに加えられることが想定されるY社代表者及び関係者からの報復を恐れたためであると解するのが自然であり、これに沿う控訴人の供述は信用できる。
したがって、本件合意は、Xの自由意思によるものとは到底いえないというべきである。

担当する裁判官によって、こうも判断が異なるものかと感じます。

親と裁判官は選べません。

だからこそリスクヘッジのためにも、日頃から顧問弁護士に相談することを習慣化しましょう。

本の紹介1113 人生攻略ロードマップ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「『個』で自由を手に入れる『10』の独学戦略」です。

著者のテーマは「人生においてあらゆる自由度を最大化する」とのこと。

すなわち、金銭的な自由、時間的な自由、精神的な自由、身体的な自由。

これらの自由を手にするために著者が行ってきたことがまとめられています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は年間2000万円以上も知識や経験への自己投資をしています。その理由は、『無知がゆえに損をするのは絶対に嫌』だからです。無知は恐ろしいものです。知識がないと『損をする』どころか、『損をしていること』にすら気づかないということも普通に起こり得ます。」(49頁)

損をしていることに気づかないことは、ある意味、幸せかもしれませんが。

いまやほとんどのことは検索すればわかります。

そのため、「知らない」というのは「知りたいと思わない」とほぼ同義です。

調べないし、知っている人に聞かない。

そりゃ、どう考えたって損しますわ。

同一労働同一賃金17 通勤手当の相違と同一労働同一賃金(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、通勤手当の相違を不合理とし、引っ越し作業中の破損への賠償金負担等も判断した裁判例を見てみましょう。

アートコーポレーション事件(横浜地裁令和2年6月25日・労経速2428号3頁)

【事案の概要】

本件は、引越関連事業を主な事業とする株式会社であるY社との間で雇用契約を締結し、勤務していたXらが、Y社に対し、次の(1)ないし(6)の各請求をするとともに、Y社の企業内労働組合であるZ組合に対し、次の(6)の請求をする事案である。
(1)Xらが、未払の時間外割増賃金等がある旨主張して、雇用契約に基づき、各Xらの別紙集計表(原告主張版)E欄記載の各未払残業代+遅延損害金の支払の請求
(2)Xらが、Y社に引越事故責任賠償金名目で負担させられた金員について、法律上の原因を欠く旨主張して、不当利得に基づき、X1が24万9500円、X3が37万1500円、X2が26万4500円の各返還+遅延損害金の支払の請求
(3)X1及びX2が、未払の通勤手当がある旨主張して、雇用契約に基づき、未払の通勤手当として、X1が38万3120円、X2が13万円の各支払+遅延損害金の支払の請求。なお、X2については、予備的に、アルバイトに通勤手当を支給しない旨の規定は労働契約法20条(平成30年7月6日法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反すると主張して、不法行為に基づき、損害賠償金13万円(通勤手当相当額)+遅延損害金の支払の請求
(4)X3が、Y社からは業務用携帯電話の支給がなく、個人で業務専用の携帯電話を使用していたが、この携帯電話料金はY社が負担すべきであると主張して、不当利得に基づき、4万9563円の返還+遅延損害金の支払の請求
(5)労基法114条に基づき、本件提訴日である平成29年10月10日から2年以内の上記未払割増賃金等と同額とXらが主張する付加金(X1につき38万2696円、X3につき56万3629円、X2につき52万1953円)の支払+遅延損害金の支払の請求
(6)Xらが、XらはZ組合に加入しておらず、組合費の控除について同意していないのに、賃金から組合費の控除が行われ、これがZ組合に支払われていたと主張して、Y社に対しては、雇用契約に基づき、未払の賃金として、平成27年3月分以降に賃金から控除された金員(X1が1万7000円、X3及びX2が各2万4000円)の支払+遅延損害金の支払の請求。
Z組合に対しては、不当利得に基づき、入社時から退職時までに賃金から控除されてZ組合に支払われた金員(X1が5万3000円、X3が7万3000円、X2が4万8000円)の各返還+遅延損害金の支払の請求

【裁判所の判断】

(1)Y社は、X1に対し、29万6517円+遅延損害金を支払え。
 (2)Y社は、X1に対し、24万9500円+遅延損害金を支払え。
 (3)X1のY社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
(1)Y社は、X3に対し、31万6746円+遅延損害金を支払え。
 (2)Y社は、X3に対し、37万1500円+遅延損害金を支払え。
 (3)X3のY社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
(1)Y社は、X2に対し、47万0070円+遅延損害金を支払え。
 (2)Y社は、X2に対し、26万4500円+遅延損害金を支払え。
 (3)X2のY社に対する通勤手当に係る主位的請求を棄却する。
  Y社は、X2に対し、13万円+遅延損害金を支払え。
 (4) 原告X2の被告会社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
 XらのZ組合に対する請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社通勤手当支給規程によれば、通勤手当の受給にはその申請が必要であり、支給漏れがある場合に遡って受給することができるのは過去3か月分に限定されるところ、X1がこの通勤手当の受給申請をしておらず、かつ、X1の本訴請求に係る通勤手当が上記遡及可能期間を徒過していることは明らかである。これに対し、X1は、a支店においては、被告通勤手当支給規程を含む就業規則は、X1を含む労働者に周知されておらず、Y社通勤手当支給規程に定められた受給申請の手続をX1が履践していないことを理由に、Y社が通勤手当の支給を拒絶することは権利の濫用であり認められないなどと主張するが、Y社においては、少なくとも新入社員研修の際には、通勤手当の申請手続が説明されており、通勤手当制度の存在及びその受給のための手続が周知されていないということはできないし、Y社において、通勤手当について従業員に対し虚偽の事実を告げたり、通勤手当の申請を行わないよう不当な圧力を加えたりしたという事情も特段うかがわれないことを踏まえれば、X1に通勤手当を支給しなかったことを権利の濫用などということはできない
したがって、X1の通勤手当の請求は理由がない。

2 X2は、正社員等とアルバイトとの間で通勤手当の支給に関して相違を設けることは不合理であり、労働契約法20条に違反する旨主張し、主位的に雇用契約に基づく賃金として、予備的に不法行為に基づく損害賠償として、通勤手当ないしそれと同額の損害賠償を請求する。
この点について検討すると、同条が有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違は「不合理と認められるものであってはならない」と規定していることや、その趣旨が有期契約労働者の公正な処遇を図ることにあること等に照らせば、同条の規定は私法上の効力を有するものと解するのが相当であるが、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が同条に違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当である。
そうすると、非正規従業員給与規程には、アルバイトに通勤手当を支給すると解釈する根拠となる規定がない以上、アルバイトであるX2に通勤手当を支給することが同人の労働契約の内容となるとはいえないから、その余の点を検討するまでもなく、X2の雇用契約に基づく賃金請求は認められない。

3 X2の予備的請求である、不法行為に基づく通勤手当と同額の損害賠償請求の可否について検討する。労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当であるところ、本件において、通勤手当に係る労働条件の相違は、正社員とアルバイトとでそれぞれ異なる就業規則(給与規程)が適用されることにより生じているものであることに鑑みれば、当該相違は期間の定めの有無に関連して生じたものであるということができる。したがって、正社員とアルバイトの通勤手当に関する労働条件は、同条にいう期間の定めがあることにより相違している場合に当たるということができる。
そして、Y社における通勤手当は、通勤に要する交通費を補填する趣旨で支給されるものと認められるところ、労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に要する費用が異なるものではない。また、職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは、通勤に要する費用の多寡とは直接関連するものではない。その他、通勤手当に差異を設けることが不合理であるとの評価を妨げる事情もうかがわれない。
したがって、Y社における、正社員とアルバイトであるX2との間における通勤手当に係る労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当であり、このような通勤手当制度に基づく通勤手当の不支給は、X2に対する不法行為を構成する。

通勤手当については上記判断で落ち着いています。

まだ対応していない会社は顧問弁護士に相談しながら速やかに制度変更に着手してください。

本の紹介1112 FIRE最強の早期リタイア術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

タイトルのとおりの内容です。

早期リタイアを目指している方は読んでみましょう。

早期リタイアするかどうかはさておき、多くの経済的に豊かな人たちが認識している内容です。

帯には「30代で経済的自立を達成するための全技術」と書かれます。

才能ではなく技術なのだとわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

家は優れた投資になり得ますが、それは不動産業者、政府、保険会社、銀行にとっての話にすぎません。持ち主を除いた全員にとっての話なのです。持ち主にとっては、家は最悪の投資資産です。」(105~106頁)

貧しい人はモノを買う。中産階級の人は家を買う。お金持ちは投資資産を買う。」(109頁)

所有か賃貸かという議論はもうそろそろ飽きたのでおいておきます。

その人の好きにすればいいのです。

「消費」と「投資」を意識して分けるという考えは、生きていく上で非常に有益です。

時間もお金も、なんとなく使うのではなく、このいずれに該当するかを考えると、使い方が変わってきます。

自分の商品価値を高めることに時間もお金も使いましょう。