管理費・修繕積立金31 弁護士費用を滞納者に請求できるとする規約が訴訟提起後に新設された場合の規約の効力は?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、弁護士費用を滞納者に請求できるとする規約が訴訟提起後に新設された場合の規約の効力は?(東京地判平成24年5月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの管理組合法人である原告が、同マンションの301号室を共有する被告らに対し、マンションの管理規約及び使用細則に基づき、各自(不可分債務)、①平成24年3月13日現在の未払管理費(136万9600円)、同日現在の未払修繕積立金(129万0240円)及びこれらに対する平成24年3月13日までの確定遅延損害金68万4724円の合計334万4564円+遅延損害金の支払を求めるとともに、
②平成24年3月13日現在の未払電気水道料金(38万6732円)及び弁護士費用(85万2809円)の合計123万9541円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

被告らは、原告に対し、各自(不可分債務)、458万4105円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 原告は、平成23年5月28日開催の定期総会において管理規約を改正し、管理費等を滞納した場合には、その組合員(区分所有者)に対し、違約金として弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して請求できるとの規定(管理規約57条2項)を設け、同規定は同年6月1日から効力を生じている。
ところで、原告が管理規約57条2項に基づいて弁護士費用の支払を請求しているのに対し、被告らは、管理規約57条2項は、本件訴訟提起後に新設されたものであるから、本件訴訟において、原告が被告らに弁護士費用等を請求する根拠とすることはできないと主張しているが、民事訴訟においては口頭弁論終結時における権利ないし法律関係の存否を判断するものであるから請求根拠は口頭弁論終結時に存在すれば足りると解するのが相当であり、被告らの主張は採用できない。

2 ①原告は、本件訴訟の遂行を原告代理人らに委任し、原告代理人らに対し、以前の日本弁護士連合会弁護士報酬基準と同じ報酬基準に基づいて報酬を支払うことを約束したこと、②同報酬基準によれば、着手金は請求金額の5%と9万円であり、成功報酬は請求金額の10%と18万円であることが認められる。
そして、原告は、報酬金額算定の基礎となる請求金額は、訴状に代わる準備書面の請求金額である361万4678円(未払管理費115万7460円、未払修繕積立金107万5200円、未払電気水道料金38万6732円、確定遅延損害金99万5286円)とするのが相当であるから、同金額を採用すると、①着手金は請求金額の5%と9万円であるから27万0733円であり、これに消費税5%を加算した28万4269円となり、②成功報酬は請求金額の10%と18万円であるから54万1467円であり、これに消費税5%を加算した56万8540円となる(合計85万2809円)。

現在では、多くの規約に弁護士費用の請求に関する規定が設けられていますので、あまり問題にはありませんが、仮に昔からの規約を変更せずに使っている場合には、是非参考にしてください。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。