管理会社等との紛争39 定期総会の開会前における区分所有者による代表理事らに対する暴行事件について裁判所が認めた慰謝料額は?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定期総会の開会前における区分所有者による代表理事らに対する暴行事件について裁判所が認めた慰謝料額は?(東京地判平成28年11月24日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本訴は、本件マンション管理組合法人である原告管理組合、原告管理組合の代表者理事である原告X2及び建築業を営む原告X3が、平成25年7月13日に本件マンションの集会室において開催された原告管理組合の定期総会の開会前、①本件マンションの区分所有者である被告ら夫婦により集会室のドアを壊された、②原告X2及び原告X3が被告ら夫婦から暴行を受け、原告X3は傷害を負った、③被告ら夫婦による警察に対する虚偽の申告により原告X2及び原告X3が逮捕されたと主張して、被告らに対し、共同不法行為に基づき、〈ア〉原告管理組合は、集会室のドアの修理費用相当額4万8090円+遅延損害金、〈イ〉原告X2は、慰謝料500万円+遅延損害金〈ウ〉原告X3は、治療費及び慰謝料合計600万4170円+遅延損害金の各連帯支払を求める事案である。
 
反訴は、被告Y2が、本件総会への被告らの出席阻止を企てた原告X2及び原告X3から暴行を受けて傷害を負い、本件総会出席を妨害され、眼鏡を紛失させられたと主張して、原告X2及び原告X3に対し、共同不法行為に基づき、治療費、眼鏡の時価相当額、慰謝料及び弁護士費用合計34万7190円+遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 被告らは、原告X2に対し、連帯して5万円+遅延損害金を支払え。

 原告管理組合及び原告X3の本訴請求並びに原告X2のその余の本訴請求をいずれも棄却する。

 被告Y2の反訴請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 被告らは、原告X2が本件集会室の中に入ってドアを閉めようとするのを阻止するため、被告Y2において、原告X2の後ろから腰の辺りにしがみつき、また、被告Y1において、原告X2の後ろから首の辺りに腕を回して、原告X2を押さえたことが認められる。これは被告らの原告X2に対する暴行と認められるから、被告らには原告X2に対する不法行為が成立するというべきである。
なお、被告らは、被告ら両名が共に本件総会への出席権を有していた旨主張するが、仮にその主張が原告管理組合の規約50条1項及び51条1項ないし3項の解釈上正当であるとしても、本件総会には被告らのうちの1人しか出席できない旨話をしたにすぎない原告X2に対し、強制力を行使して権利の実現を図ること、すなわち自力救済は許されないから、被告ら両名が共に本件総会への出席権を有していたとしても上記暴行が正当化されるものではないというべきである。

2 上記の被告らによる暴行の際、揉み合いとなったことが認められるが、仮にそのときに原告X2による被告Y2に対する有形力の行使があったとしても、それは原告X2が被告Y2を振り払うための防御的行為であったというべきであるから、原告X2に被告Y2に対する不法行為が成立するとは認められない。
また、原告X3は、被告Y2の後ろから同人の両腋あるいは両脇腹の辺りを掴んで引き離したことが認められるが、上記同様、それは原告X3が原告X2を救うための防御的行為であったというべきであるから、原告X3に被告Y2に対する不法行為が成立するとは認められない。

慰謝料の金額はさておき、このようなケースでは、民事事件のみならず、刑事事件にも発展する可能性がありますので、気を付けましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。