おはようございます。
今日は、区分所有法59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として民事保全法上の処分禁止の仮処分を申し立てることの可否(最決平成28年3月18日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの管理組合の管理者である抗告人が、同じマンションの区分所有者である相手方が管理費や修繕積立金の滞納を続け、区分所有者の共同の利益に著しく反する行為をしていると主張して、区分所有法59条1項に基づく区分所有権の競売請求権を被保全権利として、係争物に関する仮処分としての本件不動産の処分禁止の仮処分命令を求める申立てをした事案である。
【裁判所の判断】
申立て不可
【判例のポイント】
1 区分所有法59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として、民事保全法53条又は55条に規定する方法により仮処分の執行を行う処分禁止の仮処分を申し立てることはできないものと解するのが相当である。
2 民事保全法53条は同条1項に規定する登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行方法について、同法55条は建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するためのその建物の処分禁止の仮処分の執行方法についてそれぞれ規定しているところ、建物の区分所有等に関する法律59条1項の規定に基づき区分所有権及び敷地利用権の競売を請求する権利は、民事保全法53条又は55条に規定する上記の各請求権であるとはいえない。
上記の競売を請求する権利は、特定の区分所有者が、区分所有者の共同の利益に反する行為をし、又はその行為をするおそれがあることを原因として、区分所有者の共同生活の維持を図るため、他の区分所有者等において、当該行為に係る区分所有者の区分所有権等を競売により強制的に処分させ、もって当該区分所有者を区分所有関係から排除しようとする趣旨のものである。このことからしても、当該区分所有者が任意にその区分所有権等を処分することは、上記趣旨に反するものとはいえず、これを禁止することは相当でない。
競売請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分は認められませんので注意しましょう。
上記判例のポイント2の1段落目が形式的理由、2段落目が実質的理由です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。