Daily Archives: 2016年3月14日

労働時間41(北九州市・市交通局(市営バス運転手)事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、待機時間の労働時間性と未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

北九州市・市交通局(市営バス運転手)事件(福岡地裁平成27年5月20日・労判1124号23頁)

【事案の概要】

本件は、北九州市交通局に雇用され、市営バスの運転手として勤務するXらが、Y社に対し、時間外割増賃金の一部が未払であると主張して、未払時間外割増賃金及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXらに対し、各未払残業代を支払え。

*X1:85万6087円、X2:74万2700円、X3:80万0300円、X4:72万8600円、X5:121万5371円、X6:78万5100円、X7:91万1250円、X8:108万1250円、X9:82万7500円、X10:121万1507円、X11:92万1800円、X12:95万5350円、X13:100万9010円、X14:36万6300円

【判例のポイント】

1 労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない時間(「不活動時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである。そして、不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れていることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。
したがって、不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。

2 Xら乗務員は、調整時間中において、乗客の有無や周囲の道路状況等を踏まえて、適切なタイミングでバスを移動させることができるよう準備を整えておかなければならず、また、バスの移動業務がない転回場所やバスの移動業務を終えた後においては、実作業が特になければ休憩をとることができるものの、バスから離れて自由に行動することまで許されているものではなく、一定の場所的拘束性を受けた上、いつ現れるか分からない乗客に対して適切な対応をすることができるような体制を整えておくことが求められていたものであるから、乗務員らは、待機時間中といえども、労働からの解放が保障された状態にはなく、使用者の指揮監督下に置かれているというべきである
よって、本件の事実関係の下においては、転回時間であるか待機時間であるかを問わず、調整時間の全てが労基法上の労働時間に該当するというべきである。

最高裁の考え方からすれば、結論としてはやむを得ないですね。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。