解雇250 非違行為と退職手当返還請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、元教諭のわいせつ行為に基づく退職手当返還処分取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

鹿児島県・鹿児島県教育委員会事件(鹿児島地裁平成29年5月31日・労判ジャーナル67号26頁)

【事案の概要】

本件は、鹿児島県教育委員会が、鹿児島県公立中学校教員として在職していた元教諭Xに対し、XがA中学校校長として勤務中に、教え子である同中学校在学の女性生徒に対しわいせつ行為をしたことが、鹿児島県職員退職手当支給条例14条1項3号「在職期間中に懲戒免職等処分を受けるべき行為」に該当することを理由に、Xに対し支給済みの退職手当2778万8006円のうち失業者退職手当額を除く2677万1456円全額を返納するよう命じたことから、Xが、本件処分は、真実はXがわいせつ行為をしていないにもかかわらずされたものであることなどから違法であると主張して、本件処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件ドライブの際、本件生徒に対して、本件自動車を運転しながら、左手で本件生徒の右手を握り、また、右太ももを触り、そして、本件路上に停車した本件自動車内において、覆い被さるように本件生徒を抱き寄せ、本件生徒の左頬と唇に口付けをするというわいせつ行為をしたものと認められる。

2 Xは、①本件わいせつ行為が1回限りのものであること、②本件わいせつ行為の態様が軽微であること、③本件わいせつ行為によって本件生徒が受けた衝撃は小さいと考えられることから、本件わいせつ行為は「懲戒免職等処分を受けるべき行為」には当たらない旨主張するが、鹿児島県においては、これまでも、生徒に対してわいせつ行為を行った職員については、免職処分としたことが認められ、そして、本件生徒が、本件わいせつ行為によって精神的苦痛を被り、長期間にわたる入通院を余儀なくされたこと、Xの職責と非違行為との関係、Xの行為が社会に与える影響なども考慮すれば、本件わいせつ行為が1回限りのものであることや、その態様を考慮しても、本件わいせつ行為に対して本件指針における標準量定よりも下位の量定とすべき事情があるということはできないから、Xの本件わいせつ行為は「懲戒免職等処分を受けるべき行為」に当たると認められる。

3 Xが行った行為は重大な非違行為に当たるというべきであるから、同行為は、その永年勤続の功を抹消して余りあるものと評価せざるを得ず、Xに対し退職処分等のほぼ全額の返納を命じる本件処分が、裁量権の範囲を逸脱し又は濫用するものとは認められない

前回の事案とは異なり、本事案では、退職金のほぼ全額の返還が認められています。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。